【2026年最新】東京23区の不動産動向|オフィス・レジデンス・開発規制を踏まえた戦略的投資判断
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2026年の東京23区の不動産市場は、3つの構造変化が重なる局面を迎えています。
大規模再開発が続くオフィス市場、法改正が流動性と開発機会に影響を与えつつある、そして区ごとの規制差異が戦略の分岐点となる開発・コンバージョン環境など、それぞれの領域で、これまでとは異なる読み解き方が求められるようになっています。
本稿では、東京23区で不動産のプロが今押さえておくべき各アセットの動向と実務上の判断軸について、最新データを交えながら解説します。
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ざっくり要約!
- オフィス市場では、再開発供給増の中でも企業の移転・拡張需要は旺盛で、好立地では賃料上昇継続。エリア・スペックによる二極化が鮮明。
- 23区レジデンス市場では、改正区分所有法が高経年マンションの管理・再生を促進。開発事業者には建替え事業への参画機会が到来。
- 開発・コンバージョン事業では、行政別規制の正確な把握が戦略の分岐点。規制を理解した事業者にとっては、参入障壁の高さが競合との差別化要因となる。
目次
1. 東京オフィス市場の動向|再開発供給増の中で「選ばれる物件」とは
東京都心のオフィス市場は、再開発による大規模供給ラッシュ下においてもなお、企業の移転・拡張需要が旺盛な状態を維持しています。
背景にあるのは堅調な企業業績と、人的資本投資の強化に伴う働く環境の質的向上への需要です。採用競争力の維持・強化を目的としたオフィス移転や拡張の動きは、好立地・高スペック物件への需要集中という形で数字に表れています。
特に2026年は、八重洲の「TOFROM YAESU TOWER」や日本橋の「東京ミッドタウン日本橋」など、ランドマークとなる超大型プロジェクトの竣工が相次いでいるのが特徴です。一部で大規模供給が目立つものの、市場全体を俯瞰すると需給の引き締まりが予見されます。
森トラスト株式会社が実施した調査によると、2026年は前年並みとなる112万㎡の供給が見込まれるものの、2027〜2028年は供給が大きく絞られる「谷間」の年回りとなり、今後5年間の平均供給量(87万㎡)は過去20年平均(106万㎡)を大きく下回る見通しです。
さらに、今後の新規供給の3割超が延床面積20万㎡以上の「超大規模ビル」であり、2028年に竣工が予定されている大規模案件は、そのすべてが都心3区(千代田・中央・港)に集中するという極端なエリア・スペックの偏りが示されています。
この偏りは、市場の二極化を示唆するものです。民間企業が実施した調査では、東京23区のうち都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)におけるAグレードオフィスの空室率は2025年第3四半期末時点で0.9%と低水準を維持し、賃料は力強い上昇基調にあります。
一方で、需要が都心3区へ吸い上げられた結果、中位スペック以下のビルからはテナントが流出し、湾岸エリア(晴海・勝どき・豊洲等)に長期空室の約61%が集中する深刻な歪みも生じています。このようにエリアや物件による明暗が分かれているため、23区全体を「堅調」と楽観視することは、実務的な判断を見誤る要因となりかねません。
しかし、こうした「都心超大規模物件」の収益力は、海外投資家にとって強力な投資誘因となっています。
海外投資ファンドによる東京ガーデンテラス紀尾井町の巨額取得(約4,000億円)が示すとおり、国内の利上げリスクを織り込んでも、インカム成長性と歴史的な円安メリットが享受できる都心部の優良オフィスは、グローバルマネーにとって依然として魅力的な投資対象であり、2026年以降も海外からの機関投資家マネーの流入は高水準で継続する見通しです。
このように、激変する市場の中で今後も「選ばれる物件」となるのは、企業の実需を満たす都心部の優良オフィスに集約されていくといえます。
2. 東京23区レジデンス市場の動向|改正区分所有法が高経年マンションの流れを変える
2026年春、東京23区のレジデンス市場は転換点を迎えています。
株式会社不動産経済研究所が2026年3月に実施した調査によると、東京23区の新築平均価格は1億5,023万円に達し、1億円超の新築マンションの標準化が進む一方、初月契約率は58.6%に低下しました。デベロッパー各社は発売戸数を前年同月比44.6%減と販売ペースを抑制する戦略へシフトしています。
この波を受けた東京23区の中古マンション市場でも、東日本レインズの直近動向(2026年4月度の月例マーケットウォッチ)では、成約件数が昨対比減少、在庫が増加へ転じ、実需層の購買力は限界に達しています。その結果、一般ファミリー層が都下や周辺3県(神奈川・埼玉・千葉)の利便性の高い駅前エリアへとシフトする「郊外分散型」の構造変化が露呈している状態です。
この売買市場の価格高騰による一服感が意識されるなかで、2026年4月施行の「改正区分所有法」は再生事業の強力な追い風となっています。
今回の法改正は、老朽化マンションの建替えや大規模改修ビジネスを展開するデベロッパーにとって、事業推進を後押しする強力な追い風となります。
まず、建替え事業の最大のネックであった合意形成において、耐震性や火災安全性の不足、外壁剥落の危険性等による「要除却認定」等を受けた老朽化物件であれば、建替え決議要件が従来の5分の4から「4分の3」へと緩和されました。これにより、事業化に向けたハードルが大きく下がります。
さらに、バリアフリー化や安全性向上を伴う「共用部分の重大変更決議」についても、総会出席者ベースへの計算方法の変更に加え、特定の目的に該当する場合は賛成要件が従来の4分の3から「3分の2」へとさらに引き下げられる特例措置が導入されました。高経年マンションのバリアフリー改修や大規模修繕を伴う再生提案において、非常に合意が得やすい環境が整ったと言えます。
現在、売り出し物件の平均築年数は30年を超えていますが、法改正を見据え、「自由売却できるうちに流動化させよう」とするオーナー側の売却意欲が高まっており、事業者にとっては仕入れの好機が到来しています。こうした流れの実務への影響は、以下の3点です。
・仕入れ用地・再生候補としての中古マンション
建替え決議が現実味を帯びると市場での自由売却が制限されるため、一戸あたり2,000万円規模とされる費用負担を嫌うオーナーの売り注文が先行しやすくなります。
そのため、決議成立前の早い段階から個別住戸を買い進めて「議決権の集約」を図る手法や、国土交通省のガイドラインでも示されているような、デベロッパーが区分所有者側と連携して一棟丸ごとを取得・再生するネゴシエーション(交渉)の機会が今後さらに拡大する見通しです。
・事業参画への販路増
多数決要件の引き下げで事業の不確実性が低下し、デベロッパーには住戸の先行取得、等価交換による保留床(1階店舗や追加居室)の取得・販売、建替組合からの業務受託など多彩なルートが開かれています。管理組合への早期アプローチが優位性に直結します。
・デューデリジェンス(DD)の重要性アップ
今後は、物件評価の二極化が一段と進む可能性があります。容積率に余裕があり、管理組合の合意形成や事業化の見通しが立ちやすい物件では、建替えへの期待値が「プレミアム(上乗せ価値)」として取引価格へ反映されるようになります。
一方で、容積率が上限に近く、合意形成や事業採算性に課題がある物件では、資産価値の下振れリスクが高まります。そのため、仕入れDDでの厳格な精査が不可欠です。
レジデンスの賃貸市場に目を向けると、都心部を中心に賃料の上昇基調が続いています。背景は複合的で、インフレによる家賃への価格転嫁、分譲価格の高騰や金利上昇による住宅ローン負担の増加が実需層の選択肢を分譲から賃貸にシフトさせているためです。
23区内の住宅需要は底堅く、特に駅近物件では賃料引き上げの動きが顕著です。
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)の直近動向(2026年1〜3月期)を見ると、23区における賃貸マンションの平均賃料㎡単価は3,947円と前期(3,816円)比で3.4%上昇しています。
エリア別では、千代田区(5,664円・前期比+10.7%)のような都心一等地に留まらず、北区(3,731円・同+10.4%)や板橋区・中野区(同+7.6%)など、準都心から外周部まで広範囲で賃料が上昇しており、上昇圧力の裾野が確実に拡大しています。
これに対して23区外(多摩地域)の賃貸市場は、㎡単価2,371円と23区比で単価水準が約40%低い水準で推移しており、賃料負担を抑えながら居住継続を図る実需層の受け皿として機能しています。
売買市場と同様に、賃貸市場においても23区内の賃料高騰を避けて郊外へと移り住む動きが広がっているといえます。
こうした市場の変化や法改正を背景に、実際に23区内で「開発・建替え」や「用途変更」を進める際には、各区独自の行政規制に注意を払う必要があります。次章では、事業の成否を分ける行政別規制の実務ポイントについて詳しく解説します。
ただし、実務上の注意点として、これらの緩和措置はすべてのマンションに一律で自動適用されるわけではなく、個々のマンションが「管理規約」を変更することが求められます。
なぜなら、新しい法律では総会の成立要件や決議要件がガラリと変わったため、古い規約のままだと規約の一部が法律と矛盾して「無効」となり、現場の混乱を招くからです。まずはマンションの管理規約が、新しい法律に合わせて適切に変更されているか、もしくは変更する予定があるかを必ず確認しておきましょう。
したがって、事業者としては、単に工事や建替えを提案するだけでなく、この法改正に伴う管理規約変更のサポートから深く関与していくことが、競合他社との差別化や確実な案件獲得(仕入れ・特命受注)の鍵を握ることになります。
関連記事:東京23区のエリア別人口動態~データで読み解く不動産投資動向~
3. 開発・コンバージョンの実務ポイント|行政別規制を正確に把握する
23区内での開発・コンバージョン戦略において、最も見落とされやすいのが行政別の規制差異です。「東京23区」という括りで開発計画を立案すると、市場の需給トレンドに合致した計画であっても、自治体固有の制約を見落とすことで事業が根底から覆るリスクがあります。
各区が独自の条例・規制を設定しており、同じ戦略が別の区では通用しないケースも少なくありません。規制の存在をリスクとして受け止めるだけでなく、正しい理解を持つ事業者にとっては参入障壁として機能し、競合との差別化要因になり得ます。
3.1. 民泊規制
住宅宿泊事業法(民泊新法)のもとで、各区は独自条例によって営業区域・期間・用途を規制しています。特に新宿区、台東区、豊島区等では区域または期間を限定した上乗せ規制が設けられており、計画段階で各区役所への事前確認が不可欠です。
インバウンド需要を見込んだ民泊転用を計画する場合、初期段階で綿密な行政協議を経ずに進めると、設計完了後や許認可取得の直前で事業そのものが頓挫するリスクを孕んでいます。なお、民泊とサービスアパートメントは法的な位置付けが異なる別制度であり、ターゲット層が類似していても、適用される用途制限やオペレーション規制を混同しないよう注意が必要です。
関連記事:拡大する民泊市場の可能性|法規制、収益構造と投資戦略
関連記事:サービスアパートメントとは?CRE戦略の新しい選択肢
3.2. 敷地面積の最低限度の規定
江戸川区では敷地面積の最低基準(狭小住宅規制)として70㎡という数値が設けられており、用地取得後の区割りや開発計画が制約を受ける可能性があります。
仮に物件取得後にこの規制の存在が判明した場合、計画の大幅な変更を余儀なくされ、コスト・スケジュールの双方に致命的な影響を及ぼしかねません。なお、こうした狭小化を防ぐための敷地面積の最低限度は、江戸川区以外の多くの自治体でも独自に定められているため、事前の網羅的なチェックが必須です。
出典:江戸川区「建築基準法による敷地面積の最低限度の制限(最低敷地面積の制限)」
したがって土地取得前のDDの段階で「行政規制の精査」を必ず組み込み、区ごとの規制状況を先に把握した上で事業性評価を行うことが不可欠です。
とはいえ、行政ごとに異なる細かな法規制のクリアや、先述した改正区分所有法を睨んだ築古物件の複雑な調査を自社単独で完結させるのは、非常にハードルが高い業務といえます。
東急リバブルでは、専門チームがこうした行政規制の事前調査から、難易度の高い物件のデューデリジェンスまでを一貫してサポートいたします。専門的な知見が求められる開発・再生事業については、ぜひお気軽にご相談ください。
3.3. 規制の把握は差別化につながる
区ごとの規制を精査した上でエリアを選定し、行政との早期協議を行うプロセスを標準化することが、開発・コンバージョン・建替え戦略における実務上の競争力の源泉となります。
なお、今後の法改正や規制緩和の動向によっては、賃貸マンションの区分所有化といった新たなコンバージョン機会が広がる可能性もあるため、引き続き注視が必要です。
関連記事:一棟マンションの用途変更(コンバージョン)による資産価値最大化|実務上のハードルと戦略的出口設計
4. 最新の情勢を踏まえた戦略的不動産開発や投資の方法
これまで整理してきたオフィス・レジデンス・開発規制の動向を踏まえ、以下では、不動産のプロが東京23区で今取るべき具体的なアクションポイントを整理します。
4.1. 「立地・スペック・需要」の3軸を投資判断基準とする
オフィス・レジデンスともに、エリアや物件の質によって明確に明暗が分かれる市場環境において、「東京23区内」という大まかなエリア括りでの投資判断はもはや通用しません。
今後は、好立地・高スペック物件が持つ堅調な収益性と、それ以外の物件が抱える空室・価格下落リスクの差を大前提とした上で、「立地」「スペック」「需要」の3軸による厳格なスクリーニングを、投資判断の絶対的な基準として実務プロセスに組み込む必要があります。
将来にわたって競争力を維持できる「選ばれる物件」のみにターゲットを絞り込む、シビアな選別姿勢が必須のアクションとなります。
4.2. 地政学リスクの顕在化を踏まえ「安全資産」としての日本不動産を活用する
地政学リスクの深刻化と世界情勢の不透明感の増大が、日本不動産への資金流入を促す構造は2026年も継続しています。政治的安定性と法制度の透明性という日本市場の強みは、海外の機関投資家・政府系ファンドに引き続き評価されています。
海外投資家の動向と売買タイミングを連動させて設計することは、売却出口の多様化という観点からも重要なポイントです。
5. 2026年の東京23区は3つの構造変化が同時に進行する
23区オフィス市場の需要偏在、改正区分所有法による23区レジデンス市場の流動化、開発規制の重要性増大は、それぞれ独立した現象ではなく、市場全体として連動した構造変化として読み解かなければなりません。
オフィス市場では、好立地エリアへの資金集中とそれ以外のエリアにおける空室リスクの上昇という「二極化」が同時に進行しています。
したがって、物件取得や開発を検討する際には、エリア特性や建物スペック、テナント需要を精査する姿勢が、投資判断の差を生む局面に入っています。
改正区分所有法の施行は、高経年マンション市場に流動化の波をもたらすと同時に、開発事業者には建替え事業への参画という形で新たな事業機会を開いています。
そして、行政別規制の差異は、正確な理解を持つ事業者にとって競合が入り込めない参入障壁として機能します。
規制とエリア特性を正しく理解し、戦略的な開発・投資を推進することが、2026年の東京23区市場における戦略的判断の成否のカギとなるでしょう。
宅地建物取引士
佐藤 賢一 氏
Kenichi Sato
大学卒業後、不動産業界一筋。賃貸仲介・管理から売買仲介まで幅広い実務を経験した後、専門性を深め、プライム企業にて信託関連のオフィスビルや商業施設のAM・PM業務に従事。
現在は注文住宅会社の不動産部門責任者を務めつつ、多様な経験を活かし兼業ライターとしても活動中。不動産の実務から投資・管理戦略まで、多角的な視点に立ったわかりやすい解説を得意としています。
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