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オフィス移転を「投資」に変える経営戦略|2027年新リース会計基準と不動産流動化の最適解

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オフィス移転を「投資」に変える経営戦略|2027年新リース会計基準と不動産流動化の最適解

「オフィス移転」と聞くと、「会社の引越し作業」としてのイメージを抱く方もいるのではないでしょうか。しかし、実際のオフィス移転は多額の資本が動く大規模プロジェクトであり、会社の採用力や財務の健全性にまで影響する重要な経営戦略です。
移転が成功すれば経営に大きなプラスをもたらす一方で、「いつ動くのが最適か」「移転をどう事業のプラスに繋げるか」といった疑問をあらかじめ解消しておくことが重要となります。
本記事では、オフィス移転を成功に導くために、検討すべきタイミングから保有不動産の有効活用、さらには失敗しないための実務スケジュールまでを包括的に解説します。移転をコストではなく投資と捉え、企業成長を加速させるための指針としてご活用ください。

資産価値を最大化するための不動産戦略をサポート
売却・査定について

購入について

ざっくり要約!

  • オフィス移転は、業務効率化や人材定着など多面的なメリットをもたらす
  • 移転前の旧オフィスには売却や賃貸運用といった複数の選択肢
  • 運用プロセスを理解し、「不動産投資」として移転計画の策定を

目次

  1. オフィス移転を検討すべきタイミングと戦略的意義
  2. 保有不動産を最大限に活かす「有効活用」の選択肢とは
  3. オフィス移転のスケジュール
  4. オフィス移転の実務チェックリスト
  5. 不動産戦略まで見据えた移転計画を
オフィス移転を検討すべきタイミングと戦略的意義

現状の課題解決や、投資の観点から見た企業成長性をオフィス移転によって実現するためには、目的の明確化が不可欠です。

ここでは、オフィス移転を検討すべき3つのタイミングについて、期待される効果とあわせて解説します。立地選定や予算策定に留まらず、自社の目的や市場環境を踏まえた優先順位の整理をしましょう。

  • 人材の獲得と組織の活性化
  • BCP(事業継続計画)の強化とESG対応
  • 財務体質の改善と拠点の最適化

まず挙げられるのは、社員のモチベーション向上や円滑なコミュニケーション体制の構築を図りたいと考えているケースです。最適なレイアウト設計は、組織課題の抜本的解決に直結します。

部門間の連携を加速させるためには、「縦割り組織」の状態を打破する必要があります。その実現に向けて、オフィス移転による環境刷新は効果的です。部門横断的な空間設計にアップデートすればコミュニケーションや情報交換が活性化し、社内イノベーションの発生しやすい職場を目指せるでしょう。

実際、株式会社イトーキが実施した「オフィスワーカーの意識調査2025」では、オフィスは単なる働く場所というだけでなく、働く人の「心理(意義・信頼・自律)」に影響し、その結果として「行動や成果(継続意欲・帰属意識)」にもつながっていく、という関係性が示されています。

同調査では、会社への帰属意識(エンゲージメント)が高まる理由として「働く場が快適で、生産性が上がる環境であること(33.2%)」が、報酬や人間関係に次いで重要な要素として挙げられています。また、「オフィスがコミュニケーションを支えてくれている」と感じている層では、環境満足度が85.5%(全体平均38.7%)と非常に高く、オフィスの質が組織内の連携や活性化に大きく関わっていることがうかがえます。

こうしたデータからも、高付加価値なワークプレイスは優秀な人材を確保する上で長期的なメリットとなる可能性が考えられます。

出典:株式会社イトーキ【オフィスワーカー意識調査2025】「働きたいと感じる時」20代は人間関係、30代は裁量、50代は成果・意義

2点目は、経営リスクを最小化し、安定的・継続的な事業を目指すためのオフィス移転です。

従前の体制を維持しながら、多様な働き方に応えていくことには限界があります。また、環境への負荷が大きいオフィス運営が続くと、将来的に売却や賃貸が難しくなるリスクのある資産として評価される可能性がある点に注意が必要です。

ESG経営が求められる現代においては、このように環境負荷の軽減・社員のウェルビーイング促進が企業価値の向上に影響します。

また、オフィス移転はBCPを抜本的に見直す好機でもあります。耐震性や防火性を高め、自家発電設備などを備えたオフィスへの移転は、災害時の物理的損失リスクを最小化する上で重要です。

新オフィスの選定においてはハザードマップの確認や旧耐震基準の回避など、災害リスクの物理的低減が優先事項の一つです。非常時の電源確保や通信網の冗長化など、事業を止めないBCPの観点を実装し、顧客や株主に対する企業の社会的信用を守りましょう。

BCPを見直す際には、一つの拠点に依存しすぎない「分散型」のオフィスにも検討の余地があります。本社が機能不全となってもリモート環境へ移行できるクラウド体制の構築やバックアップ拠点の確保などがその一例です。

なお、環境への配慮を求める制度は時代の流れとともに改正されるため、常に最新の動向を確認しましょう。

例えば2050年のカーボンニュートラル実現に向け、2025年4月より「省エネ基準適合義務化」が適用されています。今後、原則としてすべての新築建築物は建築物省エネ法に基づいた基準をクリアすることが必要です。古い基準の自社ビルは資産価値低下のリスクを招く可能性もあるため、こうした法改正も移転を検討する理由の一つとなるでしょう。

関連記事:ESG経営と不動産~環境、社会、ガバナンスの観点での経営と不動産の関連性~

関連記事:BCPとは?企業の不動産にまつわるBCPを考える

3点目は、自社ビルなど現在のオフィスを売却・賃貸に回し、経営資源の最適化を狙う「CRE戦略」としてのオフィス移転です。帝国データバンクの調査によると、2025年上半期における首都圏への本社移転は過去10年で最多を記録しています。多くの企業が「守り」から「攻め」へと転じ、不動産市況の高騰タイミングを捉えてキャピタルゲインを確保するなど、戦略的な再編に動き出しています。

出社とリモート勤務を組み合わせたハイブリッドワークが定着しつつある昨今では、デスクや設備から土地まで、事業のために取得したにも関わらず稼働していない「遊休資産化」現象が散見されます。

このような状況下にある場合は資産効率を改善するためにも、オフィス移転は選択肢の一つとして検討の余地があるでしょう。

ただし、2027年度より適用予定の「新リース会計基準」には注意が必要です。これまで、賃貸オフィスへの移転は「資産のオフバランス化」による財務健全化の象徴でした。

しかし、新基準下では12ヶ月以内の短期リースやおおむね300万円以下の少額リースといった例外を除き、原則としてほぼすべてのオペレーティング・リース(賃貸借)が資産および負債として計上されるようになり、その前提が大きく変わります。

これにより、従来のオフバランス化を前提としたROA向上効果は期待できなくなるため、今後は支払賃料の費用配分(利息・償却)がEBITDAや自己資本比率に与えるインパクトを考慮すべきです。

また、税務上は要件を満たせば引き続き「賃貸借処理(経費計上)」が可能です。この「会計処理と税務処理のギャップ」を戦略的に活用し、実質的なキャッシュフローを最大化することが、今後の拠点戦略の鍵となります。

さらに、オフィス移転を「経費=コスト」ではなく、将来に向けた「投資」として捉える視点も必要です。補助金の活用や引越し閑散期(6〜8月)を狙って初期費用を抑え、浮いた予算を執務環境のグレードアップに充てることができれば、費用対効果の高い配分となります。

例えば、光熱費削減のための最新省エネ設備やDX化に向けたインフラの整備は、短期的には支出の増加に直結する施策です。一方、中長期的には業務効率化やコスト削減をもたらす可能性も考えられます。こうしたROI(投資利益率)の視点を持てば、オフィス移転が「経営戦略」として実感されるでしょう。

関連記事:遊休不動産は積極活用すべし!具体的な事例と併せて解説

関連記事:キャッシュフローとは?計算方法から改善の仕方、企業不動産の経営戦略まで解説

ここまで紹介した移転の目的(人材・BCP・財務)を達成するためには、「現在のオフィスの何が業務を妨げているか」という課題の洗い出しが不可欠です。

全社員向けのアンケートや稼働率調査、コスト推移といったファシリティデータの分析を通じて、現場のボトルネックと経営のギャップを特定します。これらを可視化し、5年〜10年先の組織図や事業展開と照らし合わせることで、初めて「移転で解決すべき優先順位」が明確になります。物件探しを始める前に、こうした丁寧な棚卸作業を行うことが、オフィス移転を成功させるポイントです。

出典:株式会社帝国データバンク 首都圏「本社移転」動向調査(2025年上半期)

保有不動産を最大限に活かす「有効活用」の選択肢とは

資金調達や財務強化が主目的であれば、必ずしも物理的なオフィス移転が唯一の選択肢ではありません。オフィス移転を実施すれば売却・賃貸運用などが旧オフィスの主な活用方法になりますが、移転せずに保有不動産のバリューアップを図る方法も存在します。

ここでは自社の保有不動産を活用するための選択肢として、以下の4点を見ていきます。

  • セールス・アンド・リースバック
  • 売却
  • 賃貸運用
  • バリューアップ(改修・用途変更)

自社が保有する不動産を投資家・不動産会社などに売却し、その売却代金を得ながら、保有不動産をそのまま賃借して使用し続ける手法です。

最大のメリットは、「保有している資産」を「使える資産」へと変換し、資本効率を最適化できる点にあります。得られた資金を借入金返済や成長分野への投資に充当することで、キャッシュフローの大幅な改善が期待できます。

また、不動産の所有から利用へと切り替えることで、固定資産税の納付や修繕手配といった「維持管理事務」から解放される点も魅力です。ノンコア業務を削減し、経営資源をコア事業へ最適化する戦略としても有効です。

なお、2027年度より適用予定の「新リース会計基準」においては、原則としてリース資産を貸借対照表に計上する必要があるため、従来の「オフバランス効果」は限定的になる可能性があります。

しかし、会計上は資産計上が求められる場合でも、税務上の要件を満たせば、支払賃料を「経費」として損金算入することが可能です。この「会計処理と税務処理のギャップ」を理解し、税務メリットを享受しつつ資金調達を行うことが、今後の活用ポイントとなります。

一方、賃貸借契約となることで設備の改造などに制限が生じるほか、継続的な賃料支払いが発生する点には留意しましょう。長期的な総コストと、調達した資金の運用効果を慎重に比較検討することが不可欠です。

セールス・アンド・リースバックの詳細については、以下の記事で詳しく解説しています。この機会にご一読ください。

関連記事:セールアンドリースバックとは?実施目的や具体例、会計処理のポイント

保有していた不動産を完全に手放し現金化するという、シンプルな選択肢です。先述の遊休資産など、自社での利用価値が低下した経営資源を整理する際に効果的だと言えます。

売却によって得た資金は移転コストに充てられるほか、本業の設備投資・開発研究に集中させることもできます。保有を続ける上で生じる維持管理費・固定資産税といったコストを手放すため、不動産価値の下落リスクも回避できるでしょう。含み益があるケースでは、一時的な決算上の利益を押し上げる効果もあります。

一方、売却益が法人税などの課税対象である点には注意が必要です。税制面では2026年度の税制改正で、貸付用不動産等の評価方法や譲渡に関する特例措置の見直しが進められているため、売却時の税負担の試算は従来より複雑になる可能性があります。

例えば、一定の土地・建物については買換え特例や低未利用地の譲渡所得控除が延長される改正が盛り込まれており、適用要件を満たすと譲渡所得を軽減できるケースもあるでしょう。加えて、賃貸用不動産の評価方法そのものの見直しが相続税や贈与税にも影響するため、売却戦略全体の税務設計が重要になります。

したがって、単に売却益の数字だけで判断するのではなく、税制改正を踏まえた最終的な手取り額を正確に試算することが不可欠です。

また、市場の変化によっては希望する価格で売れない「流動性リスク」にも留意しておかなければなりません。

旧オフィスを外部のテナントに貸し出し、賃料収入を得る手法です。本業以外の継続的な収益源としての機能が期待できます。このパターンでは不動産の所有権を維持することになるため、将来的な資産価値の向上を待つという選択も可能です。

注意点として、空室リスクと隣り合わせである点が挙げられます。テナントの有無に関わらず管理コストは発生するため、思うように収益が上がらないケースも考えられるでしょう。

加えて、テナント募集やクレーム対応、設備の保守点検など、業務としての負担も増加します。これらを外部委託によって解決する場合は、その手数料も考慮しなければなりません。

保有する不動産を大規模に改修・改装(リノベーション)、または新しい用途に転換(コンバージョン)して、資産価値を高める選択肢です。建物を解体・建て替えるよりもコストを抑えつつ、資産価値の向上を目指します。

市場ニーズに見合わなくなった空間を需要の見込める用途に向けて改修・転換するため、収益性の改善が期待できるでしょう。既存の構造物を活用し環境負荷を軽減する意味では、ESG経営にも寄与します。

なお、2025年4月から建築物省エネ法の改正により、省エネ基準への適合が新築・増改築時に義務化されることが予定されています。この省エネ基準は、断熱性能や一次エネルギー消費量に関する一定の性能水準を建築物に求めるもので、これに適合しない設計や工事は原則認められません。

この制度の導入により、省エネ性能の高い建物は将来的に資産価値が評価されやすくなる一方、省エネ性能が低いまま放置された物件は市場競争力を失うリスクが高まっています。適合義務化は住宅のみならず非住宅建築物にも適用され、今後省エネ性能が資産価値の評価軸として一段と重要になることが見込まれています。

このような省エネ基準適合の義務化を見据えたバリューアップは、単に用途変更や内装改善にとどまらず、断熱性能の向上やエネルギー効率改善、再生可能エネルギー設備の導入などを含めた総合的なグレードアップとして検討することが重要です。これにより、改修後の物件が将来的にも魅力あるプロダクトとして評価され、賃貸・売却市場での競争力維持・向上につながります。

ただし、リノベーションやコンバージョンには構造上の制約も関係するため、必ずしも望み通りに変更できるとは限りません。初期投資を上回る収益のためには、綿密な事業計画が求められます。

オフィス移転のスケジュール

オフィス移転は単なる「会社の引越し」ではなく、高額な資産を動かす「不動産取引を伴う大規模プロジェクト」と捉えるべきです。ここではオフィス移転の一般的なスケジュールを5つのステップに分類し、売買・契約のプロセスを中心に解説していきます。

  • 【~1年半前】現状分析と資産査定のプロジェクト発足
  • 【~1年前】物件選定・買い手探索と総コストの試算
  • 【~8ヶ月前】レイアウト設計とパートナー選定
  • 【~4ヶ月前】詳細設計・社内調整と引渡し準備
  • 【直前~直後】引越し実行と行政手続き

はじめに、現時点でのオフィスが売却・退去時にいくらの価値を生み出すかについての精査が必要です。オフィス移転実行から1年半前を目途に、プロジェクトを発足させます。

のちのフェーズにおける社内稟議のスピード感に影響するため、「予算や求める内容など移転に際しての社内基準」を発足時に決めておくことが重要です。

移転の目的や達成すべき目標を共有し、足並みを揃えておきましょう。

自社ビルを売却する場合、法人取引の実績が豊富な不動産会社に価格査定を依頼します。利便性や耐震性、セキュリティ面などが総合的に評価されます。売却可能額を早めに知ることで移転に使える原資が明確になるため、早期の市場調査が重要です。

このフェーズにおける契約・法務の動きとしては、不動産仲介会社やコンサルティング会社との「秘密保持契約(NDA)」や「媒介契約」が挙げられます。NDAは移転の情報を秘匿するために締結される契約です。情報が漏洩し、人材流出などを招く事態を回避するために行われます。媒介契約は、不動産の売買活動や報酬金額についての取り決めです。

新たなオフィス(=経営資産)を手に入れるための交渉が本格化するステップです。

留意すべき点として、現在、都心部を中心にオフィス空室率は低水準で推移しており、需給バランスがひっ迫している状況が挙げられます。優良物件は早期に埋まる傾向にあり、貸し手優位の売り手市場となっているケースも少なくありません。そのため、通常よりもスピーディーな決断が求められます。

候補物件を絞り込み、賃料や共益費・フリーレント期間・敷金といった条件交渉を始めましょう。売却活動の中で買い手候補が見つかった場合は、デューデリジェンスの実施を承諾します。

売却・移転の双方に目途がついた段階で、全体の収支を詳細に把握します。加えて、移転に伴う取引コスト(仲介手数料・保証委託料・火災保険料など)を試算した上で、「いつ払うか・いつ戻るか」というキャッシュのズレについてもシミュレーションを行いましょう。

関連記事:不動産デューデリジェンスとは?不動産の取引に欠かせない調査について解説

「不動産売却契約(または賃貸借契約)」を締結し、新オフィスへの移転が具体化されるフェーズです。売却契約においては「引渡し猶予」の特約を盛り込むなど、新オフィスの工事遅延リスクを想定し、スケジュールにある程度のゆとりを持たせると良いでしょう。

特に近年は、建設業界における慢性的な人手不足や資材価格の高騰を背景に、内装・設備工事の工期が長期化する傾向にあります。不測の事態を防ぐためにも、通常よりも余裕を持った発注や工程管理が不可欠です。

また、移転先の入居日がズレた場合の違約金や契約解除条件を精査し、「売却」「移転」のスケジュールが破綻しないようなリスクヘッジを心がけることも大切です。不動産取引においては複雑な権利関係が絡むため、専門家にリーガルチェックを依頼してください。

加えて同時期は、パートナーとして内装設計会社やプロパティマネジメント(PM)会社を選定するステップです。不動産の「所有」と「経営」を分離させ、不動産運営をプロに任せることでコア業務に注力できるため、相性の良いPM会社の選定が重要になります。自社にとって不動産価値や純利益の向上につながるかどうかを慎重に検討しましょう。

関連記事:プロパティマネジメント(PM)とは?業務内容や重要性、選定ポイントを紹介

関連記事:人件費高騰時代の不動産投資戦略|建築費高騰の動向と対応策とは

契約した新オフィスに、内装・インフラといった具体的なレイアウトを付与するステップです。それに並行して、旧オフィスの決済・引渡しに向けた最終的な条件整備を行うフェーズでもあります。買主や金融機関との調整を密に行い、契約クロージングの確度を高めていきましょう。

具体的には測量・境界確定・土壌汚染調査など、売買契約上の引渡し条件を期限内にすべて完了させることが必要です。買主側への進捗報告と合わせ、決済日(所有権移転日)の確定や当日の資金移動の手続きなど、事務的な最終調整を進めていきます。

旧オフィスの解約通知を正式に提出すると、引渡しの義務が発生します。不履行時には損害賠償リスクを招くため、新旧双方のオフィスに関する法務・財務関連の手続きは細部までの把握が不可欠です。

不動産の「所有権」が移動し、登記や各手続きによって公的に取引を完結させるクロージングのステップです。リスク管理および事業継続性を損なわないために、行政手続きも同時進行で処理していきましょう。

特に留意すべきは、不動産登記法改正への対応です。2026年4月1日より、所有権の登記名義人(法人を含む)の住所・名称変更登記の申請が義務化されます。正当な理由なく申請を怠ると過料が科される可能性があるため、法人の本店移転登記と併せて、不動産登記簿上の変更手続きも遅滞なく行う必要があります。

その他、所在地変更登記(法務局へ届出)や税務署・年金事務所・労働基準監督署への届出など、不動産取引に関する行政手続きは多岐に渡ります。

引越し実行時は物理的な移転作業と並行してシステム稼働確認も行い、翌営業日から新オフィスで問題なく事業がスタートできる状態を確立しましょう。

実際に、専門家のサポートのもとで物件探索から入居工事の管理までをトータルで実施し、従業員のモチベーション向上や生産性の改善に繋げた事例もあります。

以下の記事では、全国200カ所以上のオフィス移転を成功させた具体的な事例を紹介しています。魅力的なオフィス環境への刷新がもたらす「採用力の強化」や「顧客満足度の向上」といった効果について、ぜひ併せてご覧ください。

関連記事:営業オフィス211カ所移転労務環境改善をバックアップ

オフィス移転の実務チェックリスト

オフィス移転には、法務や不動産関連を中心に多方面のタスクが伴います。これらの抜け漏れを防ぎスムーズな移転を実現する上では、チェックリストの作成が効果的です。

チェックリストは「契約関連」「設計関連」など、フェーズや項目によって細分化しながら運用しましょう。住所変更にあたっての封筒・Webサイトの修正といった小規模なタスクまで落とし込むと安心です。

以下はチェックリストの一例です。

フェーズ 主なチェック項目
計画関連
  • 旧オフィスの解約予告
  • 預託金の確認
  • 新物件の重要事項説明
  • 省エネ基準適合(2025年4月〜)の確認
  • 資産査定、市場調査
  • 新リース会計基準によるB/Sへの影響試算
設計関連
  • 図面確定
  • 電話、インターネット回線の移設(または新規開設)手配
  • 内装工事業者とのすり合わせ
届出関連
  • 登記変更(2026年4月施行の法人の住所等変更登記義務化への対応)
  • 税務署、年金事務所、労働基準監督署への届出
  • 特定の事業用資産の買換え特例の要件確認(令和11年3月末まで延長)
  • 消防署への届出(防火管理関連)
その他
  • 取引先への案内状送付
  • 名刺、封筒などの記載住所変更
  • 社内マニュアルの更新
フェーズ 主なチェック項目
計画関連
  • 旧オフィスの解約予告
  • 預託金の確認
  • 新物件の重要事項説明
  • 省エネ基準適合(2025年4月〜)の確認
  • 資産査定、市場調査
  • 新リース会計基準によるB/Sへの影響試算
設計関連
  • 図面確定
  • 電話、インターネット回線の移設(または新規開設)手配
  • 内装工事業者とのすり合わせ
届出関連
  • 登記変更(2026年4月施行の法人の住所等変更登記義務化への対応)
  • 税務署、年金事務所、労働基準監督署への届出
  • 特定の事業用資産の買換え特例の要件確認(令和11年3月末まで延長)
  • 消防署への届出(防火管理関連)
その他
  • 取引先への案内状送付
  • 名刺、封筒などの記載住所変更
  • 社内マニュアルの更新
不動産戦略まで見据えた移転計画を

今回紹介したように、オフィス移転は単なる「会社の引越し」ではありません。人的資本の強化やBCP対策、さらには財務体質の改善を促す重要な経営戦略です。本記事で解説したとおり、近年の不動産市況は需給の逼迫や建設コストの高騰、省エネ基準や登記義務化といった法改正への対応など、複雑化の一途を辿っています。

こうした環境下でプロジェクトを成功に導くためには、早期の現状分析と綿密なスケジューリング、そして専門的な知見に基づいたリスクマネジメントが不可欠です。

東急リバブルは、不動産取引に関するアウトソーシングの専門集団として様々な法人の皆様と取引をさせていただいております。「長期的な経営戦略のパートナー」として、ぜひ東急リバブルのノウハウをご活用ください。

一級建築士、宅地建物取引士
野村 正樹 氏
Masaki Nomura

同志社大学法学部卒業後、京都工芸繊維大学造形工学科へ編入学。建築事務所での実務を経て、2000年にローバー都市建築事務所を設立。京都工芸繊維大学大学院にて建築設計学を専攻し、博士前期課程を修了。
一級建築士をはじめ、宅地建物取引士や古民家鑑定士一級など多彩な専門資格を保有。「町家のぬくもりを活かしつつ、現代のライフスタイルに合わせた快適な空間を創出する」という設計思想に基づき、数多くの町家・古民家の改築を手がける。長年にわたり毎日新聞京都版にてコラム「きょうと空間創生術」を連載(全274回)するなど、建築と空間創生に関する深い知見を有している。

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