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今オフィスに求められる通信環境とは?
環境の変化や整備ポイント

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今オフィスに求められる通信環境とは? 環境の変化や整備ポイント

快適な業務環境には、適切なインターネット設備が不可欠です。現代では多くの職場でインターネットを用いた業務が行われているだけでなく、テレワークやコワーキングスペースが普及し、働き方が日々多様化・複雑化しています。それに伴い、オフィスに求められる通信環境は大きく変わってきました。
どのような通信環境が適切かは職場により異なりますが、時代に合った環境を整備することは、社員満足度の向上や業務効率化につながる重要な要素です。この記事では、今オフィスに求められる通信環境がどのようなものかを解説し、導入のポイントなどを紹介します。オフィス整備のために通信環境を整えたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

目次

  1. 働き方とオフィス環境の変化
  2. オフィスに求められる通信環境
    1. セキュリティにも考慮が必要
  3. オフィスの通信環境を整備する際のポイント
  4. 働き方に合わせて最適な通信環境の整備を

インターネットが普及した現代のオフィスでは、ほとんどの作業はパソコンやタブレット、スマートフォンなどのインターネットデバイスを使って行います。書類作成から帳簿の管理、社内連絡や取引先との連絡など、いずれもインターネットなしには進められません。

そのような中、社員一人ひとりがパソコンを持つことも当たり前のことになってきています。すべての社員がスムーズにインターネット通信を利用できる環境は、業務を遂行するうえで不可欠といえるでしょう。

また、働き方の多様化やコロナ禍を経て、リモートワークが普及し、オフィス以外で働くケースも増えてきました。自宅やサテライトオフィス、コワーキングスペースなど、仕事を行う場所はさまざまです。オフィス出社の場合でも、固定の席を設けないフリーアドレス制を採用する企業も増えています。会議や商談の形式も直接顔を合わせる対面形式だけでなく、オンラインで行われることが珍しくなくなりました。

働き方が多様化したことに伴い、インターネットの設備やセキュリティといった通信環境も変化してきています。オフィス以外で業務に携わる社員が快適なインターネット環境を確保できるよう通信設備を整えるだけでなく、機密事項に社外からアクセスする機会も考えられるため、高度なセキュリティサービスも実装しなくてはいけません。

出社状況や現場の意見などを加味して、環境の最適化を図ることが大切です。

オフィスのインターネット環境は、事業用の回線を導入することが一般的です。近年では、有線だけでなく無線LANを利用する企業も増えてきました。

有線接続だけの場合、社員は各自のデスクに備えられたパソコンからしかインターネットにアクセスできません。会議室など自席以外の場所でインターネット通信が必要なときに不便を感じることもあるでしょう。

一方、オフィス内のどこでも無線でインターネットにアクセスできる環境を構築すれば、社員は各自のデスク以外の場所でもパソコンを利用することが可能です。たとえば会議などで各自がパソコンを利用できれば、アイデアが浮かんだときにすぐにインターネットにアクセスして書き留めたり、関連事項を検索したりすることができるでしょう。

また、ゲスト用の無線LANを設定すれば、来客もインターネット通信を利用することができます。オフィス内での働き方の自由度を向上させるためにも、無線LANは有効です。

ただ、無線LANは優れた通信方法ですが、インターネット通信の安定性に注目すると、有線のほうが優れていることも事実です。容量の大きいデータの送受信は、有線のほうがスムーズに行える傾向にあります。通信にかける予算にもよりますが、できれば有線と無線の両方を準備しておくほうが良いでしょう。

社内の環境整備だけでなく、外での通信ができるようモバイルWi-Fiルーターやスマートフォンを支給するケースもあります。外回りの多い営業職の社員でも、モバイルWi-Fiルーターやスマートフォンのテザリングを利用すれば、社外での業務をスムーズに遂行できるようになります。

公共の施設や駅ターミナル、カフェなどではフリーWi-Fiを利用できることがあります。しかし、誰でもアクセスできるという利便性は、裏を返せば悪意のあるアクセスも可能ということに他なりません。パスワードなしには利用できないモバイルWi-Fiルーターやテザリング可能なスマートフォンを支給しておくことで、セキュリティ面で不安が残るフリーWi-Fiを社員が使わずに済むというメリットがあります。

場所を問わずインターネットでデータのやりとりをするためには、セキュリティへの配慮が不可欠です。セキュリティをおろそかにすると個人情報や機密事項などのデータが流出するリスクがあり、取引先や顧客からの信用を失ってしまいます。

セキュリティ強化は、固定IPやVPNなどで対策することが可能です。IPとはインターネット上の住所のことです。固定IPとは専用のIPアドレスを割り当てる方式で、接続の際に常に同一のIPアドレスを使用します。

例えば、社外から社内のシステムにアクセスする際、固定IPのみアクセスを許可することでセキュリティを確保でき、安全にリモートワークを遂行できます。また、アドレスを適切に管理することで、クラウドサービスへのアクセスも制限できます。

VPNとは送信側と受信側のそれぞれに専用の機器を設置し、仮想トンネルを形成して通信する仕組みのことです。仮想トンネルを介した通信の内容は暗号化されるため、セキュリティが強化されます。VPNを利用する際には認証が必要なため、第三者による介入も困難です。

サテライトオフィスや自宅での業務がある場合にVPNを利用すると、外部からの不正なアクセスを防ぐことができます。特に社外秘の情報を扱う際は、漏えいに留意が必要です。VPNを利用して、大切な情報を守りましょう。

オフィスの通信環境を整備するにあたって、まずは自社にとって適切な環境とはどのようなものか検討する必要があります。社員数や事業規模、業務内容によっても、適切な環境は異なります。

現場の状況や社員の意見を確認することも必要です。また、有線か無線か、モバイルWi-Fiルーターの貸し出しはどのように管理するのかだけでなく、回線の種類や通信速度、コストなども検討する必要があります。

インターネットの通信環境は、整備するだけでは十分といえません。利用にあたって不具合などが生じたときにスムーズに対応できるように、管理者や社内のサポート体制を整えることも重要です。

ネットリテラシーとセキュリティについての教育も必要になるでしょう。どのような強固なセキュリティ対策を講じたとしても、社員が適切な方法で利用しないならば情報流出などの事態につながることがあります。自宅などの外部から社内のプラットフォームにアクセスするときのルール、パスワードの管理方法などをすべての社員に徹底しなくてはいけません。

なお、通信環境の管理は、社員が担当することもできますが、回線業者の運用サポートも利用するようにしましょう。回線業者では、オフィスに向けたサポートサービスを実施しています。駆けつけサービスやオンラインでの対応など、業者によってサポートサービスが異なるので、契約前に確認し、自社に必要なサービスを受けられる状態にしておきましょう。

働き方が多様化する中で、オフィスに求められる環境も日々変化しています。常に状況を正確に把握し、適切な通信環境に整備することが必要です。

また、どのような通信環境やセキュリティサポートが必要かについては、社員の声も参考になります。実際にインターネット通信を利用する現場の声に耳を傾け、適切な環境を準備していきましょう。

弁護士、宅地建物取引士、松浦綜合法律事務所代表
松浦 絢子 氏
Ayako Matsuura

京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。宅地建物取引士の資格も有している。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産・建築、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。