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地方都市の投資戦略|データから見る将来性

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地方都市の投資戦略|データから見る将来性

企業の不動産担当者が、地方都市での不動産投資や既存不動産の運用に課題を感じているケースは少なくありません。情報や取引が集中する首都圏に比べて、地理的な距離や市場の不透明さがハードルとなり、投資判断に踏み切れないケースも多いでしょう。
その背景には、「地方都市は人口減少により衰退の一途をたどる」という漠然としたネガティブなイメージがあるのではないでしょうか。確かに、少子高齢化や過疎化といった課題を抱える地域が存在することは事実です。
しかし、データを詳しく見ていくと、その繁栄衰退の状況は都市ごとに大きく異なっていることがわかります。つまり、地方都市には、これまで見過ごされがちだった独自のポテンシャルと不動産投資の機会が存在しているのです。
この記事では、データに基づいて地方都市の実態を明らかにし、それぞれの都市が持つ特性と将来性を解説します。単なるリスク分散を超えた、企業のCRE戦略に活かせる地方都市の投資価値を具体的に見ていきましょう。

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目次

  1. ポテンシャルのある地方都市の特徴
  2. データで読み解く、地方都市の「成長モデル」
    1. 人口動態・産業構造から見る、両者の将来性
  3. 【事例分析】CRE戦略に活かす、地方都市の「成功要因」
  4. 投資先としての地方都市
  5. 地方都市の新しいCRE戦略で、課題を機会に変えよう
ポテンシャルのある地方都市の特徴

日本の不動産投資市場では首都圏への一極集中が顕著です。多くの投資資金が東京圏に集中しています。

この集中には大きなリスクがあります。大規模な地震や風水害が発生した場合、企業活動・国政機能・市民生活のすべてが停止する恐れがあるからです。こうした「東京集中リスク」を分散させる選択肢として、地方都市は重要な位置づけとなります。

しかし、地方都市については「過疎化により衰退の一途をたどる」という固定観念が根強く存在しています。なぜ、このような画一的なイメージが生まれるのでしょうか。

それは、「地方都市」という大きなくくりで一律に語られてしまうからです。実際の地方都市の状況は極めて多様です。安定した成長を続けている都市もあれば、特定の産業集積により急速に発展している都市もあります。さらに、企業誘致・交通インフラの整備・大規模プロジェクトの始動といったトリガーによって、これまで注目されてこなかった都市が投資対象として浮上することも珍しくありません。

漠然とした「衰退」のイメージに惑わされず、各都市の実態をデータで捉えることが、新たな地方都市の魅力、ひいては投資機会の発見につながるのです。

この記事では、地方都市を発展段階と特性に応じて、以下の2つのタイプに分けて定義します。

1つ目は「実力派地方都市」です。これは、人口が継続的に増加し、インフラも整備された都市を指します。今後もさらなる発展が見込まれるため、投資対象としてとくに押さえておきたい有力な投資候補都市の一つといえます。

2つ目は「潜在力派地方都市」です。人口の伸びは緩やかですが、特定の産業拠点の形成や企業誘致により、今後の発展が期待される都市を指します。

この2つのタイプを区別し、それぞれの特性と投資機会を深掘りすることで、地方都市への新たな投資戦略が見えてきます。

データで読み解く、地方都市の「成長モデル」

近年の不動産投資市場では、地方都市が「実力派」と「潜在力派」という明確に異なる二つの成長モデルへと二極化しています。以下では、地価・賃料・期待利回りという3つの主要指標から、それぞれの市場特性を見ていきましょう。

1. 実力派都市(主要な地方都市)の安定成長モデル

福岡・札幌・広島などの実力派都市は、経済成長に裏打ちされた安定的な需要拡大のサイクルを形成しています。

地方主要都市における地価動向を把握するため、ここでは地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)の公示地価の推移から現状と傾向を分析します。

地方四市の地価は、2015年を起点として明確な上昇トレンドを形成し、現在まで約10年間にわたって上昇基調を維持しています。直近の2024年においても、全用途平均で5.3%、商業地で7.3%、住宅地で4.1%と、いずれの用途でもプラス成長を記録しました。

特筆すべきは商業地の堅調さです。7.3%という高い上昇率は、都市中心部の商業集積地に対する根強い需要を反映しています。ただし、これらの上昇率は2年連続で前年を下回っており、成長ペースに鈍化の兆しが見られる点は押さえておきたいところです。

賃料についても、堅調な人口流入と供給不足を背景に高い増加率を記録しています。2023年8月と2025年8月の賃料増加率を比較すると、例えば福岡県は全国平均の3.78%に対し9.36%と、全国平均を大幅に上回る水準です。オフィスは新規供給が多数ありながらも空室率は改善傾向、賃貸住宅でも高稼働率が続き、両者において賃料の上昇傾向が持続しています。

投資家の期待利回りは4.0%から5.2%のレンジ、とくに4.5%前後が一つの目安となる低めの水準で底堅く推移しています。これは、都心部に次ぐ高い流動性と安定的な収益性が評価されているためです。つまり、リスクプレミアムが低く抑えられていることを示しています。

2. 潜在力派都市(産業誘致都市など):リスク・リターン追求型モデル

その他の地方圏に位置する潜在力派都市は、市場全体では低調ながら、特定の要因による飛躍の可能性を秘めています。

地価は、エリア全体としては長年の下落基調から住宅地が横ばいに転じたものの、その実情は二極化が進んでいます。全体的な地価水準は低いままですが、半導体工場周辺や観光地など特定の産業拠点周辺では局所的な急騰が見られます。

賃料の増加率は全国平均の約半分程度(2.5%前後)にとどまることが多く、全体的な賃料水準は低い状況です。この上昇は需要増よりも建築費高騰などのコストプッシュ要因が主であり、需給バランスには注意が必要です。

投資家の期待利回りは6.5%といった高い水準に設定されています。表面上は高利回りでインカムゲインが狙いやすく見えますが、この高い利回りは流動性や空室リスクに対する大きなリスクプレミアムの裏返しです。したがって、安定的なインカムゲインよりも、特定の産業参入による地価上昇を狙うキャピタルゲイン型の戦略的な投資が、投資家の間で注目される傾向にあります。

この構造的な課題の根底にあるのは、人口減少による「市場の薄さ」です。これが需要を脆弱化させ、用途転換による物件価値向上の選択肢を奪うため、不動産における賃貸の需給バランスや出口戦略における流動性が硬直化する傾向にあります。結果として、投資サイドからみれば、空室率の上昇や流動性が低下するリスクを織り込む必要があるため、高い期待利回りを要求せざるを得なくなるのです。

したがって、この市場は、表面的な高利回りに惑わされず、過去の稼働実績に裏付けられたインカムの安定性と、売却可能性という確実な出口戦略の両面から投資対効果を見極めることが求められる、リスク・リターン追求型の市場であるといえます。

出典:国土交通省「令和7年都道府県地価調査の概要」

出典:全国賃貸管理ビジネス協会「全国家賃動向」

出典:一般財団法人日本不動産研究所「第52回不動産投資家調査®(2025年4月現在)」

日本は総人口の減少が続いていますが、人の流動は継続しています。これまでは東京圏への一極集中が続き、「大都市の過密」と「地方の過疎」という二極化が長年の課題でした。しかし、この構図は現在、大きく変わり始めています。

直近の移動トレンド(2025年8月予測)を見ると、大都市の求心力が弱まり、地方都市の潜在的な価値が高まる変化が起きています。

まず、日本の都道府県をまたぐ移動数は全体として減少傾向にあり、2024年8月は139,649人だった移動総数が、2025年8月には136,057人へと減少しました。この減少は、総人口の減少に伴うものと推察されます。

一方、大都市圏への人口集中を示す純流入(人口増加数)は、その勢いを大きく失っています。2025年8月時点の純流入は、東京圏でわずか+8人、名古屋圏で+52人に留まりました。さらに、大阪圏では-413人と純流出(人口減少)に転じています。

また、地方の主要都市を含む21大都市全体での純流入を見ても、その減少傾向は明らかです。2024年8月の4,470人から、2025年8月には3,194人へと減少しました。

これらのデータから、日本人が人口減少により総移動数が減る中で、大都市圏への一極集中傾向は依然としてあるものの、移動数全体から見れば極めて小さく、集中とはいえない現象が起きていることが分かります。また、流入人数が減少傾向にあることから、主要都市であっても安心できない状況にあることが明らかになっています。

この環境下で、企業のCRE戦略においては、地方都市が持つ新たな求心力と、その需要の持続性を戦略的に見極める必要が生じています。

出典:総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告 2025年(令和7年)8月結果」

【実力派都市】安定的な資産価値とBCP拠点としての魅力

実力派都市は、企業のCRE戦略において「安定成長型ポートフォリオ」として位置づけられます。東京一極集中のリスクを分散する受け皿としても、重要な役割を果たしています。

人口動態の面では、社会増による継続的な人口流入が特徴です。注目すべきは、この流入が二重構造になっている点です。東京圏からのUターン・Iターン人材に加え、周辺の小規模な地方都市からも若年層が集まってきています。つまり、地方圏内においても人口が主要都市へと集約される動きが起きており、実力派都市は「地方圏における求心力のある拠点」として機能しているのです。

こうした人材の集まりによって、企業にとって優秀な人材確保がしやすい環境が整っています。東京圏でも自然減により人口が減少している中で、このような多層的な社会増による人口維持は、賃貸需要や商業施設の集客力といった不動産の収益性を考えるうえで外すことのできない指標といえるでしょう。

産業構造においては、サービス業やIT産業など高付加価値な産業が集まっており、オフィス需要や商業施設需要が安定しています。特定の産業に頼らず、複数の産業が共存することで、景気変動や特定産業の不振による不動産投資リスクが低く抑えられる可能性が高まります。また、企業がBCPの観点から首都圏以外に拠点を構えるときの最有力候補となるでしょう。

【潜在力派都市】戦略的投資によるキャピタルゲインの可能性

潜在力派都市は、企業のCRE戦略において「成長機会型ポートフォリオ」として位置づけられます。特定の産業誘致による急成長の可能性を秘めている一方、選別眼が問われる投資対象でもあります。

人口動態においては、多くの都市で人口流出傾向が見られ、一般的な賃貸需要は低調です。公共交通の縮小や医療サービスの撤退など、都市機能の維持が課題となっているエリアも少なくありません。しかし、大規模な産業拠点が進出したエリアやその周辺都市では、状況が異なります。

半導体工場や自動車関連工場などの大規模施設が進出すると、従業員や関連企業の社員が流入し、住宅需要が急増します。地価も短期間で大きく上昇するケースが見られます。企業が工場や物流拠点を展開する際、従業員向け社宅や寮の需要も急増するため、この変化を先読みした不動産取得が有効な戦略となります。

産業構造の面では、特定産業へ集中しているケースがあります。企業としては、自社のサプライチェーンに関連する産業が集積しているエリアであれば、物流効率化やコスト削減のメリットが得られます。製造業の工場や物流センターの立地選定において、こうした産業集積は重要な判断材料です。ただし、その産業が不振に陥った場合、不動産価値や賃料水準が大きく下落するリスクも抱えています。

【事例分析】CRE戦略に活かす、地方都市の「成功要因」

以下では、具体的な都市の事例を通じて、地方都市がどのようにして投資対象としての価値を高めているのか、その成功法則を分析します。これらの事例は、企業のCRE戦略を考える上で、地方都市への進出や不動産保有のヒントを与えてくれます。

【実力派都市】

1.福岡市:戦略的な都市開発と人口動態

福岡市は、実力派都市の代表格として注目を集めています。その理由は、優れた立地条件と行政主導の戦略的な取り組みによるものです。

立地面の強みは、交通利便性とリスク分散の両立です。九州新幹線と山陽新幹線が接続する西日本の拠点であり、福岡空港は都心部から地下鉄でわずか数分という近さにあります。さらに、南海トラフなどの大規模災害リスクが比較的低いため、首都圏の災害リスクを分散したい企業にとって、BCP上の魅力的な選択肢といえるでしょう。

戦略的な行政の取り組みも特徴のひとつです。天神ビッグバンや博多コネクティッドといった大規模再開発により、都市機能の高度化が進められています。同時に、スタートアップ支援にも力を入れており、開業率は日本の主要な21大都市の中でも最高水準です。官民共働型施設「Fukuoka Growth Next」を核とした支援体制により、新規創業の裾野が広がっています。

加えて、人口動態も好調です。九州全域から若年層が流入し続けており、この継続的な人口流入がオフィスや商業施設の安定需要を生み出しています。

関連記事:福岡市の不動産市場動向|現状分析と今後の見通し

2.札幌市:観光とMICEを中心とした再開発

札幌市は、観光とMICE(国際会議・展示会)を軸とした経済圏の確立を進めています。その特徴は、豊富な観光資源を基盤としながら、通年での経済活性化を図る戦略にあります。

観光面の強みは、北海道ブランドによる高い集客力です。国内外から多数の観光客が訪れ、インバウンド需要が底堅く、ホテルや商業施設の安定した稼働を支えています。

さらに、MICE施設の整備が積極的に進められています。MICEは国際会議や展示会を誘致することで、宿泊・飲食・交通といった幅広い経済効果を生み出します。観光のオフシーズンを補完し、通年での経済活動を活発化させる役割を果たすと考えられます。この戦略により、観光だけに依存しない、安定した経済基盤が構築されつつあります。

また、将来性も期待できます。北海道新幹線の札幌延伸が2030年代後半に予定されており、本州からのアクセスが飛躍的に向上します。合わせて、札幌駅は再開発により先進的オフィスやホテルの開業を予定しているほか、長期的なインフラ整備計画により、さらなる発展が見込まれています。

関連記事:札幌市の不動産市場動向|現状分析と今後の見通し

関連記事:MICE都市実現を目指す大阪IRに焦点をあてた今後のCRE戦略

【潜在力派都市】

1.熊本県菊陽町:世界的な企業誘致による地域経済の劇的な変化

熊本県菊陽町は、TSMCの工場進出により、潜在力派都市の代表的な事例となっています。一つの巨大企業が、地域全体に与える影響を示す好例です。

TSMCの進出は、町の産業構造を根底から変えました。半導体製造という世界レベルの産業拠点ができたことで、関連企業やサプライヤーが次々と進出し、新たな経済圏が生まれています。これまでの地方都市にはなかった、半導体産業に特化した経済の形が作られつつあります。

人の流れも大きく変わりました。大規模な雇用が生まれたことで、長年続いてきた人口減少が止まり、若年層を中心に人が流入し始めています。その結果、住宅や商業施設、生活に必要なインフラの需要が急増しており、不動産投資の大きなチャンスとなっています。

インフラ整備も急速に進んでいます。行政と金融機関が連携した街づくりに加え、JR九州も豊肥本線沿線を重点エリアと位置づけ、積極的な投資を行っています。TSMC最寄りの原水駅西側には2029年以降に新駅が開業予定で、隣接する大津町では異例のオフィスビル開発も進められています。

さらに、菊陽町のまちづくり事業は民間主導でも進展しています。工場を建てるだけでなく、長く続く都市として発展させていく取り組みが、菊陽町の将来をより明るいものにしているといえるでしょう。

2.茨城県阿見町:都心への交通利便性による物流拠点化

茨城県阿見町は、交通利便性と産業集積を活かし、物流ハブとしての機能を高めています。潜在力派都市の中でも、首都圏近郊という立地を最大限に生かした事例です。

交通面の強みは、圏央道の阿見東ICと牛久阿見ICを擁する立地にあります。首都圏へのアクセスが良好で、東京都心や横浜港、成田空港などへ効率的に配送できるため、物流コストの削減に直結します。この優位性が、物流企業の進出を強く後押ししています。

産業集積も進んでいます。複数の大規模な工業団地が整備されており、製造業を中心とした企業の集積が雇用を安定的に生み出しています。こうした産業基盤の充実が、地域経済を支える基盤となっています。

この交通利便性と産業集積の相乗効果により、阿見町は物流ハブとしての地位を高めてきました。広域からの物流需要を引き付け、倉庫や物流センターの建設が相次いでいます。企業の物流拠点やサプライチェーン戦略において、重要な選択肢となりつつあります。

投資先としての地方都市

地方都市への投資は、企業のCRE戦略において2つの異なる役割を果たします。一つは実力派都市による「リスクヘッジ」、もう一つは潜在力派都市による「ハイリターン追求」です。それぞれの特性を理解し、自社のポートフォリオに組み込むことが重要です。

1. ポートフォリオ戦略

実力派都市は、地方圏独自の需給バランスに支えられているため、首都圏の景気変動に左右されにくい安定した収益源となります。企業にとっては、首都圏一極集中のリスクを分散し、ポートフォリオ全体のリスクを抑える「守りの投資」として位置づけられます。

例えば、福岡市の多様な産業基盤や、札幌市の観光・MICEを組み合わせた通年経済は、その安定性を裏付けるものと言えるでしょう。

一方、潜在力派都市は、特定の産業進出や大規模プロジェクトにより、地価や賃料が短期間で急上昇する可能性を秘めた「攻めの投資」です。熊本県菊陽町のTSMC進出や茨城県阿見町の物流ハブ化はその典型であり、キャピタルゲインを狙った投資対象となります。ただし、特定産業への依存による地域リスクの変動幅が大きい分、慎重なリスク評価は欠かせません。

2. 地方都市のCRE戦略で押さえておきたいポイント

地方都市への投資を成功させるためには、その特性を踏まえた独自のリスク管理が求められます。

地方都市の不動産は、大都市と比べて売買の機会が少なく、買い手を見つけるのに時間がかかる特徴があります。そのため、物件を取得する段階から、将来的な売却や用途転換といった複数の選択肢を準備しておくことが重要です。状況の変化に応じて柔軟に対応できる体制を整えることで、投資リスクを軽減できます。

また、市場のニーズは常に変化するため、物件の用途を柔軟に変更できる準備が必要です。例えば、賃貸物件として運用していたものを、需要に応じて企業の社宅やホテルに転用できるような柔軟性を持たせることで、収益機会を最大化できます。さらに、一つの地域に投資を集中させるのではなく、経済基盤がしっかりした複数の地方都市に分散投資することで、地域特有のリスクを分散させることができます。

加えて、地方都市への不動産投資は、単純な資産運用として捉えるのではなく、企業の本業と結びつけることで大きな価値を創出できます。物流施設の配置最適化による輸送コストの削減、災害に強いサプライチェーンの構築、効率的な生産・開発拠点の配置など、事業全体の競争力強化につながる戦略的な投資として位置づけることが重要です。

3. 企業価値向上のための共創アプローチ

地方都市への投資を単なる「進出」で終わらせず、地域課題の解決に貢献する「共創」の視点を持つことが、企業価値向上に不可欠です。

官民連携協定の締結や、地域課題を解決するための実証実験フィールドの活用など、地域との接点を多角的に持つことで、空き家問題の解消や雇用創出といった社会的な価値を生み出します。こうしたESGへの配慮は、企業価値の向上に直結する戦略的な選択肢となります。

地方都市におけるCRE戦略を具体的に進める上で、空き家問題への対応やESG経営の実践は重要なテーマです。これらについては、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:空き家問題の現状|企業が知るべき対策と今後の展望

関連記事:ESG経営と不動産~環境、社会、ガバナンスの観点での経営と不動産の関連性~

地方都市の新しいCRE戦略で、課題を機会に変えよう

地方都市への不動産投資は、これまで「地理的な距離」「市場の不透明さ」「人口減少」といった課題として捉えられてきました。しかし、新しいCRE戦略の視点を持つことで、これらの課題を大きな成長機会に変えることができます。

重要なのは、地方都市を一括りにするのではなく、個別の都市が持つ特色をよく理解することです。安定成長型の「実力派都市」もあれば、ダイナミックな発展型の「潜在力派都市」も存在しており、それぞれに適したポートフォリオや用途が異なります。

また、人口動態や地価といった数値データも重要ですが、その背後にある社会構造や産業構造の変化を読み解くことが、投資の成否を分けます。データの表面だけでなく、なぜその変化が起きているのかを深く理解することが求められます。

地方都市への投資は、単なるリスク分散に留まらず、企業の基幹ビジネスやサプライチェーンの強化、人材確保、そしてポートフォリオの適正化に直結する成長の機会です。地方都市が持つ「課題」こそが、実は企業にとって新たな価値を生み出す「機会」へと転換できるのです。

企業価値の最大化と地域社会への貢献を両立させるために、データに基づいた戦略的な地方都市への投資をぜひ検討してみてください。

宅地建物取引士
佐藤 賢一 氏
Kenichi Sato

大学卒業後、不動産業界一筋。賃貸仲介・管理から売買仲介まで幅広い実務を経験した後、専門性を深め、プライム企業にて信託関連のオフィスビルや商業施設のAM・PM業務に従事。
現在は注文住宅会社の不動産部門責任者を務めつつ、多様な経験を活かし兼業ライターとしても活動中。不動産の実務から投資・管理戦略まで、多角的な視点に立ったわかりやすい解説を得意としています。

東急リバブル ソリューション事業本部では、減価償却の最適化はもちろん、不動産BPO、相互売買(アクイジション)、M&A関連の不動産戦略まで、企業不動産(CRE)に関するあらゆる課題の解決をサポートしています。

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