トレンド解説

ESG経営と不動産~環境、社会、ガバナンスの
観点での経営と不動産の関連性~

ESG

SDGs

有効活用

ESG経営と不動産~環境、社会、ガバナンスの観点での経営と不動産の関連性~

ESG経営とは、環境、社会、ガバナンス(企業統治)に関する課題に取り組むことを指す経営方針です。近年ESG経営が注目されている背景として、持続可能な社会の実現に向けた関心が高まっていることが挙げられます。
経営に関わる要素のなかでも、特に不動産は気候変動や地域社会への貢献、災害への対応などESGと密接な関係があり、企業が所有する不動産を有効活用することでキャッシュフローの改善や企業のブランディングにつながります。
本記事ではESG経営と不動産の関係、企業価値を高める不動産活用について詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。

目次

  1. ESGとは
    1. ESG経営とは
    2. ESG経営とは
  2. ESG経営と不動産の関連性
  3. 不動産を用いたESG経営のメリット
  4. 不動産を用いたESG経営の具体例
  5. ESG経営の重要性は今後も拡大、社会に貢献し持続的な企業成長へ

ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの頭文字を組み合わせた言葉です。主に企業活動において、地球温暖化などの気候変動問題や人権問題などの社会的な課題に対してどのような取り組みを行うのかを重視する概念です。

具体的には以下のような取り組みが挙げられます。

環境:温室効果ガスの削減や再生可能エネルギーの活用
社会:人権や労働基準の尊重、ダイバーシティの推進、地域社会への貢献
ガバナンス:企業統治の強化、企業の責任と透明性の向上

ESGはもともと海外発祥の考え方であり、海外では2000年代半ばから普及していましたが、日本ではあまり浸透していませんでした。しかし、2010年代後半に年金積立金管理運用独立行政法人が後述する責任投資原則(PRI)に署名したことがきっかけとなり、近年日本でも注目されています。

1.1. ESG経営とは

ESG経営とは、ESGの観点に配慮して企業活動を行うことです。

経済発展によって人々の生活が豊かになった一方、環境破壊や労働に関する課題、企業の不祥事などが問題視されています。これらの問題を放置すると経済社会の持続性も損なわれてしまうため、企業活動においてもESGへの配慮が求められています。

企業活動においてESGの観点を重視するメリットは、社会貢献に留まりません。近年ではESGの概念が広く普及してきたため、ESGを重視している企業をステークホルダーが支持する潮流が見られるようになりました。

具体的にはESGに取り組む企業を応援する投資家からの支援、イメージの良い会社で働きたいと考える社員からの支持、消費者間での知名度(ブランド力)向上などです。

そのため、ESGを重視した企業活動を行うことで、経営資源であるヒト・モノ・カネが集まりやすくなり、結果的に事業成績にも好影響を与えると考えられます。

1.2. ESG投資とは

ESG経営に取り組むことで投資家からの支援を受けられると前述しましたが、企業活動だけでなく投資においてもESGが注目されています。

その背景には2006年に国連が保険会社や銀行、年金基金などの機関投資家に対して提唱した、ESGを投資プロセスに組み入れる「責任投資原則(PRI)」があります。

責任投資原則(PRI)の内容は以下のとおりです。

  • 私たちは、投資分析と意思決定のプロセスにESGの課題を組み込みます
  • 私たちは、活動的な所有者となり所有方針と所有習慣にESGの課題を組み入れます
  • 私たちは、投資対象の主体に対してESGの課題について適切な開示を求めます
  • 私たちは、資産運用業界において本原則が受け入れられ実行に移されるように働きかけを行います
  • 私たちは、本原則を実行する際の効果を高めるために協働します
  • 私たちは、本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告します

投資は利益を出すことを目的にしているため、企業の財務諸表を指標にするのが一般的です。しかし、責任投資原則では地球環境への配慮や労働環境の改善など、自社の利益だけでなく社会的な意義(非財務的な要素)が重視されています。

投資家がESGの観点を踏まえた投資をするようになると、ESG経営に力を入れている企業へ投資家からの注目が集まります。一方、ESGの観点をないがしろにしている企業はリスクを負うと考えられます。

例えば、海外の企業ではアジア域内の工場で児童労働が発覚し大規模な不買運動が起こりました。インターネットの普及により情報が拡散されやすい現代だからこそ、企業はより社会への影響を考慮した経営を行う必要があるでしょう。

実際に責任投資原則は、署名機関数や合計資産残高が右肩上がりに成長しています。日本でもサステナブル投資資産が年々増加しているため、ESG投資の波は日本にも影響を及ぼしていることがわかります。

なお、ESG投資とサステナブル投資はほぼ同義であり、サステナブル投資はより環境面に配慮した投資です。

出典:責任投資原則(PRI)

不動産は、環境や社会の課題解決に貢献できるポテンシャルがあり、ESG経営に活用できます。

例えば、災害への対応や環境への配慮、健康や快適性の向上などです。具体的には下記のような例が挙げられます。

  • 太陽光発電を設置して環境面に配慮する
  • 災害時には避難拠点として地域に開放する
  • 遊休不動産を利活用して地域社会や経済に貢献する

オフィスや工場など、企業の保有する不動産は規模が大きく、周辺環境や従業員に与える影響も大きい傾向にあります。ESG観点で不動産を活用することで、本来の用途に加え、さまざまな付加価値を生むでしょう。

不動産を活用して環境や社会の改善に貢献できれば、社内外の評価向上が見込めます。投資家も不動産の短期的な価格上昇に期待するのではなく、ESG経営によって中長期的に生み出される価値に注目し始めています。

現状、日本国内のESG投資における不動産の割合は低い状態であり、NPO法人日本サステナブル投資フォーラムの「サステナブル投資残高アンケート2022」によると、国内のESG投資のうち、不動産の割合は2.5%ほどです。

しかし、投資家に対する意識調査では将来的にESG 投資に適した不動産の方がそうでない不動産よりも収益が見込めると予測する人の割合が多いとの結果も出ており、不動産を用いたESGへの取り組みは今後の伸びしろが期待されています。

参考:サステナブル投資残高アンケート2022|NPO法人日本サステナブル投資フォーラム

先述の通り、ESG経営を行ううえで不動産活用は有効な手段の一つであり、企業が所有する不動産を活かすことで企業価値が向上し、安定した成長の基礎となります。

不動産を用いたESG経営のメリットは以下のとおりです。

  • キャッシュフローの改善、強化
  • ブランディング強化
  • リスク分散

既存不動産の省エネ性能向上や再生可能エネルギーの導入により、不動産所有にかかる長期的なコストを削減できます。また、環境認証を取得した不動産には企業評点が高いテナントが入居するデータもあるため、入居率が高まり安定した収入が期待できるでしょう。

さらに投資家からの注目度も高まります。公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、ESGの視点を取り入れており、2021年度末時点でESG指数に連動する運用資産額は合計で12.1兆円となっています。投資対象として選ばれることで、キャッシュフローの改善、強化につながり、安定した経営が実現できます。

ESG指数とは、企業のESGへの取り組みを評価する基準のひとつです。ESG指数の構成銘柄に選ばれると投資家への認知が拡大するため、企業に大きなメリットがあります。社会に貢献している企業としてのブランディングにもなり、企業のサービスや理念をより多くの方に届けられるでしょう。

資産価値の高い不動産を所有することで、自然災害や世界恐慌といった不測の事態が発生した際のリスク分散にもなります。

不動産を用いたESG経営の具体例は以下の表のとおりです。

環境 社会 ガバナンス
  • 省エネルギーの導入(LEDなど)
  • 再生可能エネルギーの導入(太陽光発電や地熱発電など)
  • CO2排出量の開示
  • 屋上緑化
  • グリーンリース契約の設定
  • コミュニティエリアや集中して作業できる空間の設置(オフィス)
  • 従業員の休憩室やパウダールームの設置(店舗)
  • 空き地、空き家の利活用
  • 地域社会への貢献(災害時の一時滞留施設の提供など)
  • バリアフリーの推進
  • 情報開示
  • 反社勢力排除
  • ダイバーシティの実現
  • コンプライアンスの遵守

イメージを深めるために、実際にあった事例を紹介します。

企業の営業所として使用していた建物を、保育園にリノベーション&コンバーションした事例です。

使われていなかった建物を保育園にし、自社の従業員が子どもを預けられるようにしたことでワークエンゲージメントが向上しました。自社従業員だけでなく、近隣ショッピングセンターの従業員など周辺に住む方全員が利用できるため、地域の活性化にも寄与しています。

また、地域への貢献によって建物の保有企業に対する地元での評価も高まり、結果として採用活動等にも好影響を与える結果となりました。

上記は既存不動産をワークエンゲージメント改善や地域貢献に活用した事例です。事業に直接的に関わる面でESGに取り組む例としては、環境不動産をオフィスとして利用する、工場の脱炭素化を推進する、などが挙げられます。

環境不動産については下記記事で詳細を解説しているため、合わせてご一読ください。

関連記事:今注目の環境不動産とは?知っておきたいグリーンリース契約の仕組み

ESGの概念は世界的に拡大しており、今後も加速していくことが予想されます。このような社会背景で自社の利益を追い求めるだけの経営では、企業価値が下がってしまうでしょう。

企業が持続的に成長していくためにも社会への貢献が重要です。不動産を活用したESG経営という観点で自社に何ができるかを考える必要があります。

宅地建物取引士
岡﨑 渉 氏
Wataru Okazaki

国立大学卒業後新卒で大手不動産仲介会社に入社。約3年間勤務した後に独立。現在はフリーランスのWebライター・Webディレクターとして活動。不動産営業時代は、実需・投資用の幅広い物件を扱っていた経験から、Webライターとしては主に不動産・投資系の記事を扱う。さまざまなメディアにて多数の執筆実績あり。