CRE戦略

CRE戦略とは?
不動産で企業価値を高める中長期的な戦略を詳しく解説

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CRE戦略とは?不動産で企業価値を高める中長期的な戦略を詳しく解説

企業価値を高めるための手法には、例えば、事業の収益性の向上、投資効率の最適化、財務状況の見直し、無形資産の把握・活用などがあります。とりわけ投資効率の最適化を図る上では、不動産の活用が重要なポイントです。
昨今、保有している不動産の活用や投資を経営戦略として導入する企業が増えており、CRE戦略は大切なテーマといえます。
本記事では、このCRE戦略について詳しく解説します。

目次

  1. CREとは「Corporate Real Estate」の略
  2. 不動産取得とCRE戦略は企業価値の向上に何をもたらすのか
    1. キャッシュフローの強化・改善
    2. リスク分散
    3. ブランディング強化
  3. 経営戦略に沿った不動産を取得するためのポイント
  4. CRE戦略は、中長期的に企業価値を向上させ、経営を安定させる重要な経営戦略

「CRE」は1960年代に米国で発祥しました。「Corporate Real Estate」の略で直訳すれば企業不動産という意味になります。企業が保有している不動産のことを指し、事業を行うために必要となるオフィスや工場、倉庫などの不動産のほか、保養所や社宅、福利厚生施設、遊休地などもこれにあたります。

CRE戦略とはこうした不動産を効果的に活用することで、企業価値の向上を図るための中長期的な経営戦略です。

具体的なCRE戦略としては、現オフィスを見直し、余剰になったオフィスを第三者に貸し出したり、遊休地の活用として賃貸住宅や高齢者施設などを建設することで長期安定の賃料収入を確保する、などが挙げられます。

CRE戦略が注目されるようになったのは、2008年に国土交通省が「CRE戦略実践のためのガイドライン」を出したことがきっかけとされています。ガイドラインでは「CRE戦略は企業不動産について、『企業価値向上』の観点から経営戦略的視点に立って見直しを行い、不動産投資の効率性を最大限向上させていこうという考え方である」と定義しています。

この考え方が徐々に広まり、今では収益性の向上のために自社で保有する不動産を有効活用したり、新たに不動産を取得するという考え方が浸透しつつあります。

CRE戦略がもたらす効果としては、主に下記が挙げられます。

  • キャッシュフローの改善・強化
  • リスク分散
  • ブランディング強化

CRE戦略の推進にあたり、まずは不動産の再評価を行い、適切に整理する必要があります。

不動産を所有する企業にとって固定資産に占める不動産の割合は大きく、保有資産に見合った収益を生み出せていなければ資産効率の低さを指摘されてしまいます。資産効率を考慮すると、低稼働の不動産があれば売却して現金化することで流動資産に組み替えるなどの対応が必要です。

売却して得た資金で新規事業を興したり、再評価した不動産の用途を変更して賃貸事業を展開したりすれば、本業以外の長期安定の収益源が確保できます。そうすれば、多方面にわたる企業経営も可能になるでしょう。

また、不動産は維持管理や大規模修繕などに費用がかかり、そのための人手も必要になります。生産拠点の統廃合や点在する事業所の集約を行うことで管理運営にかかるコストや手間を削減することも可能です。

不動産にかかる維持コストのスリム化は利益や生産性の向上につながり、キャッシュフローの改善が見込めます。

本業以外の収益の柱を構築することでリスクの分散・軽減も可能です。自然災害や世界情勢等による予測不能な事態が起き、本業の業績が大きな影響を受けた場合も、決算対策として資産価値の高い不動産を売却することで経営危機を乗り切る保険にもなり得るでしょう。

具体的には、大手アパレル企業において本業の業績が厳しくなり、一等地に保有していたビルを売却して企業価値を維持した事例などがあります。

CRE戦略は企業のブランディングにも有効です。保有不動産の建物・設備、立地条件が良いことや、働きやすい環境づくりにより従業員満足度を向上することで、企業の認知度やブランドイメージが上がる場合があります。

あるコーヒーショップでは新店舗を出店する際、周囲の景観を壊さずに新しい建物を用意する必要がありました。そこで、土地の環境や文化に溶け込む建築造形に定評のある有名建築家に設計を依頼し、街並みを損なわず、かつユニークな店舗を完成させ現在も多くの人が訪れています。

店舗自体に付加価値を持たせて集客につなげただけでなく、景観を損なわず近隣に配慮することで企業としてのイメージアップを実現した事例です。

このように、CRE戦略は企業価値を安定して高めるうえで重要な役割を果たすことがわかります。

CRE戦略を推進する上では経営戦略に沿った不動産を取得することも重要です。最近では先述のように本業の利益が落ち込むことを想定して、リスク回避のために資産価値の高い不動産を保有するケースも増えています。ここでは経営戦略に沿った不動産を取得するためのポイントをみていきましょう。

CRE戦略を考える場合、不動産を「群」でとらえる資産構成の管理・分配が有効です。資産構成を把握することで方針が策定しやすく、企業不動産それぞれの位置づけや特性、各不動産の連携状況を確認できます。

持っているだけで事業や収益に貢献できていない不動産があれば、資産構成を見直し、評価損が出るような資産は、決算で利益が出ているときに処分して損金計上すれば、節税にもなります。

自社の経営戦略に沿って不動産の保有目的を設定することで、例えば、所有するのか賃借にするのかなどの整合性のある判断もできます。その際は、不動産に対して不動産デューデリジェンスを行い、自社にとっての価値を検討します。

企業不動産の評価は定期的に行う必要があり、より自社にとって価値の高い不動産を選択して適切な設定を見極めることが大切です。その結果、企業にとって最適な不動産の把握が可能になり、不動産の売却などでスリム化を図りながら、売却資金で新たに資産価値の高い不動産に入れ替えするなどといった流れが構築できます。

今回はCRE戦略について解説しました。CRE戦略は、中長期的に企業価値を向上させ、経営を安定させる重要な経営戦略です。企業の経営資源の「ヒト・モノ・カネ」のうち「モノ」である不動産は、適切な戦略と運用によって資産価値を発揮するため、CRE戦略は多くの企業において取り組むべき課題といえるでしょう。

しかし、自社内に不動産管理の専門部署を有しておらず、CRE戦略を効果的に実践できていないケースもあるでしょう。その場合は専門業者に相談・依頼するのも選択肢のひとつです。

不動産投資アドバイザー(RIA)、住宅ローンアドバイザー(住宅金融普及協会&金融検定協会)、相続診断士、既存住宅アドバイザー、貸家経営アドバイザー
寺岡 孝 氏
Takashi Teraoka

住宅コンサルタント。住宅セカンドオピニオン。大手ハウスメーカーに勤務した後、2006年に独立。住宅の建築や不動産購入・売却などのあらゆる場面において、お客様を主体とする中立的なアドバイスおよびサポートを行い、これまでに2500件以上の相談を受けている。