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遊休不動産は積極活用すべし!
具体的な事例と併せて解説

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遊休不動産は積極活用すべし!具体的な事例と併せて解説

企業が抱える「遊休不動産」の問題は深刻化しています。新型コロナウイルスの影響による経営不振や再開発の延期など、さまざまな理由で利用されない不動産は、全国で増えている傾向にあります。
企業にとっても再活用にかかる費用を考えると何もしないことが無難な選択になりがちでしょう。しかし、遊休不動産は、所有しているだけで固定資産税がかかり、場合によっては修繕費や人件費などのコストが発生する負債でもあるため、積極的に活用することが大切です。
この記事では、遊休不動産の問題について分かりやすく解説します。併せて、遊休不動産の活用事例も紹介するので、参考にしてください。

目次

  1. 遊休不動産とは
    1. 遊休不動産が増えることで生じる問題とは
    2. 遊休不動産を所有し続けることによるリスク
    3. 遊休不動産とCRE戦略
  2. 遊休不動産を活用する方法
    1. バリューアップ(収益向上)
      1. リノベーション
      2. コンバージョン
      3. バリューアップ(収益向上)の事例
    2. 売却(資金化)
      1. 売却(資金化)の事例
  3. プロのアドバイスを受けながらCRE戦略を立てて遊休不動産を積極活用しよう

遊休不動産とは、企業活動でほとんど利用されていない不動産のことを言います。いわば、住宅における空き家と同じようなものと言えるでしょう。

近年、日本では空き家問題が深刻になっています。国土交通省によると、平成30年の全国の空き家数は848.9万戸にのぼり、これは全国の住宅のうち13.6%も占めているのです。

空き家は、倒壊などの危険性や犯罪の温床となるなど近隣にも大きな影響を及ぼすため、各自治体でも空き家問題解決に積極的に取り組んでいます。

しかし、この空き家問題は住宅だけに限らないのです。企業が事業目的に使っていたテナントや倉庫などにも、この空き家問題は波及しています。とくに、近年は新型コロナウイルスの影響による企業の経営不振や再開発の延期などから、活用されずに放置されている不動産は多くなっているのです。

国土交通省による「平成30年土地基本調査」によると、法人の所有している土地のうち
低・未利用地の割合は、12.6%という結果が報告されています。企業による遊休不動産は今後も増加する恐れがあり、その問題はより深刻化する可能性があります。

遊休不動産が増えることで、次のような問題が生じます。

  • 都市の活力の衰退
  • 安全性の問題

空きテナントやシャッター商店街などを目にする機会が増えてきていますが、商業地域で遊休不動産が増加すると、地域全体の活気に影響します。結果として、地域の活気が下がり、経営不振に陥る企業が増加するという負の連鎖につながる恐れもあるでしょう。最終的には都市全体の活力の衰退にもつながるケースも考えられます。

また、空き家同様、利用されていない不動産の大きな問題が安全性の問題です。利用されずに劣化の進んだ建物が倒壊することによる近隣への被害が心配されるだけでなく、誰もいないことから放火や不審者など犯罪の温床となる可能性もあります。また、害虫などの衛生的な問題や景観を損なうなどの問題にも発展してしまうのです。

遊休不動産は、所有している企業にとっても多くのリスクを与えます。

  • 防犯、防災、景観上のリスク
  • 投資家からの評価の低下
  • 所有コスト

先述したように、利用していない不動産は安全性の問題があります。安全面において、近隣からのクレームなどにつながる恐れもあるでしょう。管理ができてない建物は、災害時に被災や破損による近隣への被害をもたらす原因ともなります。とくに、近年は異常気象による災害も増加しているので、適切に維持管理することが重要です。

また、遊休不動産を所有することで投資家や株主からの評価が下がる可能性もあります。投資効率の低い資産を所有していることに対して、財務体質を問われる事態に陥ることもあるでしょう。企業は、資産を所有しない「オフバランス」の検討を視野に入れる必要があります。

遊休不動産については、単に活用方法が分からない場合や、活用するにも人手やコストが掛かることなどを理由に、有効活用に踏み切れないという企業も多いでしょう。しかし、遊休不動産は所有しているだけでも固定資産税や管理費などが発生するので、まさに負債とも言えます。

CRE戦略とは、企業が保有する不動産を最適な状態で活用し、企業価値を高める戦略のことを言います。不動産を単に所有するのではなく、戦略的に活用し資産を最適化することで、企業の活性化・企業評価の向上につながるのです。

この不動産の最適な状態というのは、放置しつづけるということではありません。CRE戦略では、遊休不動産を積極的に活用していくことが求められます。

遊休不動産を活用する方法は様々であり、所有している企業のニーズに合わせた検証が必要です。今回は活用方法について大きく分けて2つ紹介します。

バリューアップとは、経年劣化した設備や使われていない建物を、魅力(需要)がある物件にすることで、不動産の「価値をあげる」ことを指します。

具体的な例としては以下のようなものがあります。

  • リノベーション
  • コンバージョン

それぞれ見ていきましょう。

2.1.1. リノベーション

リノベーションとは、建物の性能以上の付加価値をつけて再生する方法のことを言います。大規模な工事を実施して、性能を向上させたり機能を付けたりすることで建物の価値を高めることです。

例えば、次のようなリノベーションでの活用方法があります。

  • 空きビルにオフィス機能を追加してレンタルオフィス
  • 社員寮などを改修して賃貸マンションやホテルとして活用

2.1.2. コンバージョン

もともとの不動産の用途自体を変更するのがコンバージョンです。例えば建物の用途をオフィス用から賃貸用に変更するといったケースがあります。コンバージョンでの活用方法としては、次のような方法があります。

  • 賃貸マンションをサービス付き高齢者向け住宅にする
  • 倉庫を賃貸用住宅にする

コンバージョンは大規模な工事が必要になる場合もありますが、もともとの建物を利用するので、低コストで新しい事業をスタートできるというメリットがあります。

2.1.3. バリューアップ(収益向上)の事例

遊休不動産の特色に応じて、バリューアップの方法はそれぞれ異なります。

ここでは、バリューアップの事例として3つ紹介します。

■物流倉庫

マンションやビルの立地には適さなくても、高速道路沿線に近いなどといった遊休不動産を所有している場合、物流倉庫として活用することも検討できるでしょう。近年は、新型コロナウイルスの影響もあり、EC事業が活性化しています。そのため、物流倉庫の需要が増加している傾向にあるのです。

物流倉庫であれば、大きな設備投資も必要なく低コストでスタートできます。また、建物を建設せずに、事業用定期借地権として敷地を貸し出せば、少ないリスクで活用できるので検討してもよいでしょう。

■賃貸オフィス

オフィス街といった立地で遊休不動産を抱えているのであれば、賃貸オフィスとして活用するのもおすすめです。賃貸オフィスは収益性が高く、居住用物件よりも建築基準法の要請の要件が低いというメリットもあります。

また、賃貸オフィスとして企業に貸し出すだけでなく、シェアオフィスやコワーキングスペースとしての提供も検討すると良いでしょう。リモートワークの普及により、カフェなど職場以外で働く場所を求めている人は増えてきています。

また、コロナ禍を要因として、2021年にはフリーランスの人口が急増しています。このようにフリーランスの方が増えることによって低コストで事業に取り組みたい需要は増えていくことが予想されます。そういった方を対象に、オフィススペースを提供するのも一つの方法でしょう。

■太陽光発電事業

太陽光パネルを設置し、太陽光発電事業をスタートするという方法もあります。

太陽光発電事業であれば、郊外や交通の便が悪いといった立地の場合でも活用を検討しやすく、環境問題対策にもつながります。

近年は遊休地に大規模な太陽光パネルを設置し、メガソーラーとして転用するケースも増えてきています。

大きな収益は見込めませんが、長期的には安定した収益を得られるというメリットもあるのです。

遊休不動産を活用せず、今後も活用の目処が立たないのであれば、売却するというのも一つの方法でしょう。売却すれば、まとまった資金を手にすることができ、その資金を元に別の不動産への投資も可能です。また、遊休不動産を手放すことで、固定資産税などの不要な経費の削減にもつながるでしょう。

安全性や防犯などの先述したようなリスクもすべて解消できるというのも、売却して遊休不動産を手放すメリットと言えます。

2.2.1. 売却(資金化)の事例

単純に売却する方法以外にも、資産の入れ替えやリースバックといった方法があります。

■資産の入れ替え

事業用不動産を売却して新たに買い替える方法です。

こうした資産の入れ替えに関しては、売却してから一定期間内に買い替え資産を取得し、取得から1年以内に事業の用に供した場合に、課税を将来に繰り延べられる特例が用意されている点もポイントです。

老朽化した活用していないビルを売却し、新たに社員寮を購入するといった例も考えられるでしょう。

■リースバック

不動産を単純売却することによってまとまった資金を得ることはできますが、一度売却すると、もうその不動産は活用できません。しかし、リースバックを利用すれば、事業用不動産を買い取ってもらった後も、賃貸という形で、それまでと同様の事業を継続していくことが可能です。

まとまった資金が必要だが、引き続きその不動産で事業を営んでいく必要がある、といったケースで有用でしょう。

遊休不動産の問題や活用方法・事例についてお伝えしました。遊休不動産を活用できるかどうかは企業にとって大きなポイントとなります。

活用に必要な人手や手間、コストを考え放置をしてしまいがちですが、積極的に活用することが大切です。ただし、遊休不動産の活用は、CRE戦略や投資効果などある程度の専門的な知識が必要になるため、不動産会社などのプロからアドバイスを受けることをおすすめします。

この記事を参考に、遊休不動産について理解し、積極的に活用できるようにしましょう。

宅地建物取引士、FP2級技能士(AFP)
逆瀬川 勇造 氏
Yuzou Sakasegawa

明治学院大学卒。地方銀行勤務後、転職した住宅会社では営業部長としてお客様の住宅新築や土地仕入れ、広告運用など幅広く従事。
2018年より独立し、不動産に特化したライターとして活動している。

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