セミナーレポート

不動産戦略フォーラム2019 Autumn

不動産市場からひも解くCRE戦略の最適解

主催:東洋経済新報社
協賛:東急リバブル ソリューション事業本部

CRE戦略

不動産市場からひも解くCRE戦略の最適解

優秀な人材を獲得・維持できる職場環境整備のため、そして、不透明感が強まる事業環境の中で新たな収益源を求めるため、企業から注目されているCRE(Corporate Real Estate、企業不動産)戦略を考える「不動産戦略フォーラム2019 Autumn」が東京・千代田区で開かれた。開会あいさつで、東洋経済新報社の田北浩章・常務取締役は、オンラインメディア強化に向けてデータアナリストを新たに採用するため、小社本社ビルよりも環境の整ったシェアオフィスを借りることになったと紹介。「不動産は、人材育成、企業文化・事業の新陳代謝と深く結び付いていると実感した」と、不動産戦略の重要性を訴えた。

基調講演(不動産マーケット最前線)

大和不動産鑑定 エグゼクティブフェロー
明治大学専門職大学院
グローバル・ビジネス研究科 兼任講師

村木 信爾

 国土交通省の「CRE戦略を実践するための手引き」作成ワーキンググループ委員も務めた大和不動産鑑定の村木信爾氏は、CRE戦略に必要な7つのポイントを挙げた。まず、(1)経営陣の強いコミットメントが重要であり、以下の要になること。戦略を進めるうえでの基礎的環境としては、(2)全社のCREを統括して把握するCRE組織の存在、(3)社内のCRE情報を収集し利用するためのICT・データベース、および(4)経営者を含む社内ネットワークに精通し、かつ外部専門家を使うことのできる組織内のプロ人材の存在、の3つが重要である。また、CRE戦略の実務には以下3つの段階がありそれぞれの課題に言及。すなわち(5)経営戦略とCREの整合性を検討し、不要な不動産の処分などの計画を立てる段階、(6)その計画に従い売買や賃貸借などを実行する段階、および(7)必要な不動産の管理・運営・利用の段階での効率性、といった課題である。

 また、企業でのSDGs(持続可能な開発目標)やESG投資の広がりに応じ、CRE戦略の各プロセスにおいてもこれらに貢献することが求められること、例えば、不動産管理において、利用者の利便性・快適性、健康の維持・増進に配慮すべきだ、と述べた。

 最後に、食品メーカーや百貨店など不動産業務の売上営業利益率が非常に高く、本業(コアビジネス)を支えている業種の事例を紹介。「これらの企業では、従来の本業を大幅に縮小して不動産投資業にシフトするのか、あるいはイノベーションを起こして本業を伸ばすためにCRE戦略に注力するのか、企業のあり方そのものが問われている」と語った。

課題解決講演

東急リバブル 常務執行役員
ソリューション事業本部 副本部長

柿沼 徹也

 企業不動産サービスを提供する東急リバブル ソリューション事業本部の柿沼徹也氏は、世界的な低金利による日本不動産の優位性、東京や福岡で1%台の空室率を記録する高いオフィス需要などの現状を説明。今後の山手線新駅開業やリニア中央新幹線開通、都心部の大規模再開発を受けて「不動産市況は堅調に推移する」との見通しを示した。

 その中で、企業不動産をめぐる新たな動きが広がっている。東急不動産が開発し、2019年春に竣工したオフィスビル「渋谷ソラスタ」は、IoTサービスの導入や、ワーカーがサードプレイスとしても利用可能な共用スペースを多く設置するなど、働く環境を充実させてテナントの支持を得ている。同社ではテレワークをはじめ柔軟な働き方に対応するため、都内で展開するシェアオフィス「ビジネスエアポート」も拠点を拡大中。企業は、社員の採用、モチベーションに影響する労務環境改善への投資を加速する。一方、不透明感が強い業界を中心に、本業を補完する収益源として不動産投資も復活してきたと語る。

 東急リバブルは、企業不動産について豊富な支援実績を持つ。東海地震想定エリアに複数の不動産を持つ会社には、災害リスクを分散し、新たな地域への事業展開の足がかりにもなるよう、別地方の商業施設取得を支援。本業を補完するため高収益物件を京都エリアで希望した会社には、訪日客増の効果を享受できるホテルと、その収益のカギとなる運営会社をセットで紹介した。全国に点在する数百件の遊休不動産売却を希望した会社には、東急リバブルによる一括引き取りサービスを提供。早期の全物件売却で財務を改善、近隣住民とのトラブルなどのリスクを解消した。

 柿沼氏は「不動産市況の堅調な推移が予測され、また、社会環境が大きく変化する今こそ、不動産を経営資源として見直し、不動産活用を検討すべき」と強調。保有不動産の有効活用に向けて、同社は調査や査定の専門グループが現状を把握するサービスを提供。賃貸料アップ、遊休地活用、自社物件から賃借への切り替え効果などを検証し、税金や電気料金など維持管理コスト削減策も提案する。中小企業の事業清算では、不動産売却だけでなくM&Aによる法人売却の可能性も検討して、より多くの残余財産が得られるよう支援する。企業不動産戦略は「財務改善と事業成長の両面から企業価値向上につながる」と訴えた。

特別講演

一般財団法人日本総合研究所 会長
多摩大学 学長

寺島 実郎

 日本総合研究所の寺島実郎氏は、不動産市場は、1990年から2018年までの約30年で、商業地は75%、住宅地も50%下落。日本が世界GDPに占める割合は、1988年の16%から、2018年は6%まで低下し、このままでは15~20年後に、第一次世界大戦前の3%程度に縮小する可能性が高いとした。豊かさを示す指標の1つである、1人当たりGDPは19年予測で日本は4.1万ドル、すでにシンガポール、香港に抜かれ、差を広げられている。しかし、日本では「戦後の復興・成長の残像を引きずり、パラダイム転換を認識していない人がいる」と指摘。悲観的見通しの中でも、正しい時代認識を持ってチャンスを探る必要性を訴えた。

 日本が活力を取り戻すには「アジアのダイナミズムに正面から向き合う気迫と、ジェロントロジー(高齢化社会の課題解決を目指す学際的な学問)がカギ」と語る。また、インバウンド需要により福岡、札幌、仙台、広島の4都市で19年、基準地価が伸びたことに言及。アジア各国の経済に強い影響力を持つ華人・華僑のネットワークの視点も含め、広い視野でアジアを捉え、そのダイナミズムを取り込む戦略を求めた。高齢化については、2053年に日本の人口は1億を割ると予想されているが、1億を突破した1966年に6.6%だった65歳以上人口が、2053年には38%に達するため「元の1億に戻るという認識は誤り」と強調。現状は65歳以上を非生産年齢人口としているが、「65歳を超えてもクリエーティビティーを通じた生産の可能性が十分にある。女性参画のさらなる促進と併せて、2本柱で制度設計を変えなければならない」と語った。

※本記事は東洋経済オンライン11月20日掲載のPR記事からの転載です。

※会社名、所属部署名、役職はフォーラム当時のものです。