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事業用不動産を最適化する方法とは?
4つの活用法とメリット・デメリットについて解説

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事業用不動産を最適化する方法とは?4つの活用法とメリット・デメリットについて解説

企業が保有する不動産、いわゆる事業用不動産は、自社ビルや工場、賃貸不動産、社宅などさまざまなものがあり、活用法が異なります。また、保有している不動産の中には、うまく活用できていないと悩んでいらっしゃる方もいるのではないでしょうか。
遊休不動産のまま放置していると、長い目で見ると企業にとって大きな損失となってしまう可能性もあり、最適化していくことが求められます。本記事では、事業用不動産の最適化について、考え方を解説すると共に「買う」「貸す」「借りる」「売る」4つの活用法についてそれぞれのメリット・デメリットをお伝えしていきます。

ざっくり要約!

  • 保有・賃貸・賃借・売却の選択肢を比較し事業用不動産の最適化を図る(土地活用・例)
  • 財務影響と業務効率のバランスを評価し意思決定する
  • 自社の経営戦略に基づき最適な不動産ポートフォリオを構築する

目次

  1. 事業用不動産とは
    1. 事業用不動産の種類
    2. 事業用不動産の動向
    3. 事業用不動産の活用法を判断するポイント
    4. 事業用不動産の主な活用法は4つ
  2. 事業用不動産を「買う」メリット・デメリット
    1. 具体的なメリット・デメリット
  3. 事業用不動産を「貸す」メリット・デメリット
    1. 具体的なメリット・デメリット
  4. 事業用不動産を「借りる」メリット・デメリット
    1. 具体的なメリット・デメリット
  5. 事業用不動産を「売る」メリット・デメリット
    1. 具体的なメリット・デメリット
  6. 4つの活用法や組み合わせの具体例
  7. 状況に応じて適切な方法で事業用不動産を活用しよう

事業用不動産とは企業の事務所や工場、倉庫のほか、賃貸不動産や研修施設、寮・社宅など事業運営に必要な不動産のことです。

事業用不動産の価格や賃料は、その収益性に基づいて形成されており、マイホームなど自己居住用不動産とは区分して取り扱う必要があります。

事業用不動産の種類として以下のような不動産が挙げられます。

  • 自社ビルや店舗、オフィス、工場、物流施設などの本業のために利用される不動産
  • 賃貸マンションやアパート、寮社宅などの本業以外の目的のために利用される不動産

事業用不動産の種類によって活用方法も異なります。それぞれの特徴を理解するようにしましょう。

事業用不動産の動向はどのようになっているのでしょうか。ビルディンググループの「全国5大都市圏オフィスビル市況調査」によると、東京主要5区の空室率は約7%となっています。

コロナ禍の影響が出始めて以降、継続して空室率が増加し続けている理由としては、リモートワークが促進されるなどして、オフィスの在り方が見直されていることが考えられるでしょう。

また、国土交通省の発表した令和2年第2四半期の地価LOOKレポートによると、上昇地区数は73地区から1地区に減少、横ばい地区数は23地区から61地区に増加、下落地区数については4地区から38地区に増加している状況です。

地区別に見ると商業系が住宅系より下落の割合が高く、地域別では大都市圏が地方圏より下落地区の割合がやや高くなっています。

上記から、特にオフィスの多い大都市圏で下落していると見ることができるでしょう。

コロナ禍の影響が出始める前は、東京2020開催やインバウンド需要の影響もあり、地価の上昇傾向が続いていましたが、コロナ禍後は、影響がいつまで続くか分からないことから先行き不透明感が強く、引き続き地価への影響が懸念される状況といえます。

事業用不動産の活用法を判断するポイントは、事業用不動産の種類によって異なります。

本業のために利用される不動産であれば、「事業寄与度」がよいかどうかで判断するのが重要といえるでしょう。一方、投資目的での不動産や寮社宅など本業以外の目的で所有する不動産の場合、「収益貢献度」がどうであるかがポイントとなります。

事業用不動産の活用法を判断する際は、本業のための不動産なのか、本業以外のための不動産なのか、事業用不動産の種類や特徴に合わせてポイントを押さえたうえで検証するのが大切です。

事業用不動産の活用法には主に以下の4つの活用法が考えられます。

  • 買う
  • 貸す
  • 借りる
  • 売る

以下で、それぞれについてメリット・デメリットなど詳しく解説していきます。

事業用不動産を「買う」とは、例えば新たに新社屋を購入したり、収益となる賃貸不動産を購入したりといったことが考えられるでしょう。

ここでは、「買う」活用法のメリット・デメリットをご紹介していきます。

事業用不動産を購入すれば資産として計上されます。対外的な信用が高まる効果が期待できるでしょう。また、事業用不動産を活用して収益化が図れる点もメリットといえます。

事業用不動産を賃貸で利用していた場合、事業の効率化を図るために自由な改装などができません。一方、自社所有であれば使い勝手に応じて自由に手を加えられるため、事業効率化が図れ、収益性のある不動産になる点は大きなメリットといえます。

また、減価償却費などの計上による節税対策も期待できます。例えば、1億円の物件を購入し、20年で償却する場合、毎年500万円ずつの経費計上が可能です。減価償却を経費計上することで節税できる点はメリットといえるでしょう。

次に、デメリットを見ていきましょう。

事業用不動産を購入するには大きなお金が必要になります。融資を利用できる点はメリットといえますが、ある程度の自己資金が必要になるケースも少なくありません。

また、賃貸であれば毎月の賃料だけで済みますが、購入した場合には維持管理費も必要となります。特に年数が経過すれば、メンテナンス費や修繕費といった各種コストも大きくなりがちです。事業状況に合わせて検討すると良いでしょう。

事業用不動産を「貸す」とは、例えば活用できていない遊休不動産を土地として貸したり、賃貸不動産を居室やテナントとして貸したりといったことが考えられるでしょう。

ここでは、事業用不動産を貸すときのメリット・デメリットをお伝えしていきます。

事業用不動産を貸す場合、賃借人がいる限りは継続して賃料収入を得られる点がメリットの一つです。特に借地やテナントなど事業用物件だと長期契約になるケースが多く、安定した収入源になる可能性があります。

また、ビルの場合には1棟丸ごともしくは、区分ごとに貸し出すなど事業不動産の種類によってさまざまな活用法が考えられます。土地の場合は、駐車場として貸し出す以外にも、借地権を利用して借り手に建物を作ってもらって貸す方法も可能です。

一方、デメリットを見ていきたいと思います。

事業用不動産を貸し出す場合、借り手が見つかれば問題ありませんが、必ず借り手がいる訳ではありません。借り手が見つからずに赤字になる可能性も考えられます。

例えば、クリニックなど単一業種を目的としたテナントの場合、借り手が見つからないケースを想定して、他の業種へのコンバージョンを想定した造りにするなど検討してみるとよいでしょう。

他にも、賃貸経営に伴うさまざまなリスクが考えられます。例えば、火災や地震といった災害リスク、賃料支払いがなされないケース、近隣とのトラブルが挙げられるでしょう。特に災害リスクについては、そこまで確率が高いものではありませんが、その可能性をゼロにすることはできません。

火災保険など保険に加入することはもちろん、仮にその不動産が使えなくなった場合に、他の不動産で代用できるように想定しておくといったことも考えておきましょう。

事業用不動産を「借りる」とは、例えば自社ビルを借りて初期コストを抑えるほか、自社ビルや工場を売却し、引き続き賃貸で借りるリースバックなどが考えられます。

ここでは、借りる方法のメリット・デメリットをお伝えしていきます。

事業用不動産を購入するよりも初期コストを抑えられます。新たに事業を始めても、軌道に乗るまでは時間がかかってしまうものです。なるべくコストを抑えつつ、事業が軌道に乗ってきたら事業用不動産の購入を検討しても遅くはありません。

一方、デメリットとしては、事業用不動産を借りる場合、購入するよりもトータルで支払う費用は多くなってしまうケースが多くあります。

購入する場合、取得に際して融資を受けていた場合、毎月の返済は発生します。しかし、返済が完了すれば、最終的には資産として手元に残ります。この点、賃貸の場合は支払う賃料は最終的に資産として残るものではなく、費用でしかありません。こうした点は事業用不動産を借りるデメリットといえるでしょう。

事業用不動産を「売る」とは、例えば遊休不動産を売却したり、場合によっては自社ビルや工場を売却して、その後賃貸として借りてリースバックしたりするといった方法が考えられます。

ここでは、事業用不動産を売るメリット・デメリットを見ていきたいと思います。

事業用不動産を売ればまとまった現金を手に入れられます。借入れを行わずとも事業資金調達に役立てられる可能性は高いでしょう。

また、事業用不動産を売却すれば、企業資産のオフバランス化を図れる点も大きなメリットです。近年では、セール&リースバック方式を利用するケースも増えています。

次に、デメリットを見ていきたいと思います。

売却益が発生した場合、税金を支払わなくてはなりません。本業において大きく利益が出ていた場合、更に利益が上がってしまい結果的に税金支払い額が大きくなる可能性があるので、タイミングや見極めが重要です。

また、一度売却してしまえば当然ではありますが、その事業用不動産を将来活用するということはできなくなります。売却後に賃貸として利用するリースバックの利用の検討を含め、自社の状況や将来の事業展開に合わせた売却を選ぶのが重要です。

ここでは、「買う」「貸す」「借りる」「売る」の4つの活用法について、それらの組み合わせを含めた具体例を見ていきたいと思います。

例えば、老朽化した本社屋とそれに付随した工場があるケースを考えてみましょう。

新たな場所に新社屋と新工場を購入し、建設を検討しようとした際、老朽化した本社屋の売却と、新社屋・新工場の土地を購入するという2つのステップがあります。

その際、新社屋や新工場の購入にはまとまった資金が必要になります。その資金を工面するために、先に老朽化した本社屋を売却する必要があった場合、事業を一時的に中断しなければならなくなるリスクが発生します。そのリスクを回避するために、事業用不動産をリースバックという方法で、売却後に一定期間本社屋を借りるといった方法で中断するリスクを回避することが可能となります。

また、新たに土地を購入するのではなく、新社屋や新工場を借りることで初期コストを抑えたり、現在の本社屋はそのままに、新たに賃貸不動産にリノベーションすることで収益性を向上させるといった方法もあります。

いずれの方法でも、基本は「買う」「貸す」「借りる」「売る」という活用法とその組み合わせです。事業用不動産の活用法として、ぜひ参考になさってください。

事業用不動産の4つの活用法とそれぞれのメリット・デメリットについてお伝えしてきました。

それぞれの活用法にはメリット・デメリットがあり、収益面や税金面など、自社の状況や将来に応じた活用法を選択する必要があります。ただし選択を間違えてしまえば、結果的に事業収益の圧迫、経営状況の悪化を招いてしまう可能性もあります。

事業用不動産は状況に応じて最適化することが大切です。そのためには、本記事でご紹介したように、いくつかの方法があります。事業用不動産について、本記事の内容を参考に、積極的に活用することを検討してみてはいかがでしょうか。

宅地建物取引士、FP2級技能士(AFP)
逆瀬川 勇造 氏
Yuzou Sakasegawa

明治学院大学卒。地方銀行勤務後、転職した住宅会社では営業部長としてお客様の住宅新築や土地仕入れ、広告運用など幅広く従事。
2018年より独立し、不動産に特化したライターとして活動している。

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