1000箱の物件資料を精査
迅速な不動産売買をサポート

2018.12.25

ある企業が全国に所有する206棟の賃貸マンションを一括売却することになり、その売買に必要な書類を精査する役割を東急リバブルが引き受けた。膨大な量の書類を整理・保管し、不備があれば新規作成する業務をリバブルが完遂したことで、日本企業のCRE戦略における不動産仲介会社の役割が大きく前進したという。

短期間で206棟を
売却するために

 この賃貸マンションを保有していたのは米国不動産会社の日本法人である。同社は選択と集中を推進するため2015年に日本における不動産事業から撤退。保有不動産を売却して、その資金をヘルスケア事業などに投入することにした。全国206棟の賃貸マンションは、すべて外資系ファンドが取得することになった。

 不動産を売買する際には、入居者との賃貸借契約に関する資料や保険証券、税金関係など、さまざまなドキュメントを売主が買主に渡さなければならない。そのためそれらのドキュメントを取りまとめ、整理する作業が必要になる。数十物件でも大変な作業だが、今回はそれが206棟分。しかも売買契約まで2カ月という期限付きだった。その業務を東急リバブルのソリューション事業本部が引き受けた。

 売主のファイナンシャルアドバイザーである三菱UFJモルガン・スタンレー証券で投資銀行本部不動産グループのマネージング・ディレクター、不動産投資銀行第二部長を務める土岐好隆氏はこう話す。

 「複数の不動産会社に打診しましたが、物件の量が多く、2カ月という短期間では対応できないという会社がほとんどでした。唯一、東急リバブルだけが即答で引き受けてくれました。もっとも当社も、当初から東急リバブルでなければできないと踏んでいました。法人向け事業部門で同社ほど多くの人員を擁する会社はなく、こうしたドキュメント管理業務を、仲介業とは別にビジネスとしてきちんと行っているのは東急リバブルだけだったからです」

 全国に点在する売主の拠点から送られてきたドキュメントの量は、段ボール箱で約1000箱にも及んだ。それを保管するため東急リバブルは社内に100平方メートル近い部屋を確保し、ラックを設置。部屋は施錠できるようにし、出入りできる人間を限定するとともに、入退室をすべて記録して厳重に管理する体制を整えた。これには土岐氏も「そこまでやってくれるとは思っていなかった」と言う。

ドキュメントを保管するため100平方メートル近い部屋を確保した

すべてつくり直した
レントロール

 一方、東急リバブルソリューション事業本部法人営業第三部長の青木信雄氏は、厳重な体制を整えた理由を次のように説明する。

 「ドキュメントは、世の中に1枚しかなく、万が一にでも紛失したりしたら大変なことになります。しかもこれだけの量の不動産取引ですから、事前に情報が漏れると売主の株価にも影響しかねません。だから私は社員に、自分の子供と同じくらい大事なものとして扱うように伝えました」

三菱UFJモルガン・スタンレー証券
投資銀行本部不動産グループ
マネージング・ディレクター
不動産投資銀行第二部長
土岐 好隆

 届いた書類は、受取日時を記録し、中身の写真を撮り、内容を確認してリスト化した。1000箱以上だから、大変な労力が必要になる。中には本来あるべきはずの書類がない場合もあった。そういうときは一つひとつ売主に確認しなければならない。

 実際の入居者と書類上の入居者が異なるなど、契約更新の書類に不備があり、東急リバブルの社員が現地に行って確認しなければならない場合もあった。さらに、物件ごとに書式などが異なっていたため、レントロール(貸借条件一覧表)はすべてつくり直した。途中で買主側のアセットマネジメント会社が変わり、物件概要書を新たに作成するなどの追加業務も発生した。

 「買主やその弁護士などが書類確認のため当社に来ることもよくありました。その際の質問にも当社がすべて対応しました」(青木氏)

保有不動産の現状把握は
CREの入口

 「通常だと、少なくとも半年は必要な業務です。しかし業務を分担して効率化を図り、何とかチームワークで乗り切りました。最終的にはよく整理されたドキュメントを買主に提供することができたと自負しています」(青木氏)

 選択と集中のために不動産を売却した本案件に倣い、保有不動産を見直し、積極的にCRE戦略を展開する企業が増えたといわれる。

 「日本の企業は不動産を保有することを目的とし、その状態を正確に把握していないケースが多いです。しかしCRE戦略の入口は保有不動産に関する情報を収集、把握、認識することです。不動産市場が株式市場とともに好調ないま、保有不動産の活用ができていないと株主の理解を得られません。だからこそ不動産の現状把握は重要になります。東急リバブルは徹底した情報管理の下、必要な情報をわかりやすく管理することで1歩も2歩も先んじており、企業がCRE戦略を展開するうえでのよきパートナーになってくれるでしょう」(土岐氏)

 企業における不動産戦略は、今後より注目されるに違いない。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の土岐氏(右)と東急リバブルの青木氏(左)

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