不動産デジタル証券(不動産ST)の現状と今後|小口化規制後の市場動向と投資戦略
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不動産デジタル証券(不動産ST)市場は、2021年の誕生からわずか数年で急速な成長を遂げてきました。2023年には国内初のST流通市場「START」が開設され、不動産STを中心に取扱銘柄は着実に増加を続けています。
一方で、市場の拡大とともに小口化商品への規制強化や金融商品取引法改正の動きも進み、「規制によって市場が縮小するのではないか」という懸念の声も一部で上がりました。しかし、その見方は実態と乖離しています。
2026年現在、START市場は個人投資家向けST社債の取扱開始やPEファンドST・動産ファンドSTの検討など、不動産に限らない「総合デジタル証券市場」へのさらなる拡張フェーズに入っています。
本稿では最新の法改正の実態を整理したうえで、規制後の市場展望と投資家が今取るべき具体的なポートフォリオアクションを解説します。
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ざっくり要約!
- 小口化規制強化は「投資家保護のための市場整備」であり、市場の縮小要因ではない。
- START市場の拡大とGK-TKスキームの普及により、流動性と商品多様性はむしろ向上傾向にある。
- 今こそポートフォリオにおける不動産STの位置付けを再設計するタイミングといえる。
目次
1. 不動産デジタル証券(不動産ST)とは
不動産デジタル証券(不動産ST)とは、ブロックチェーン技術を用いて不動産の信託受益権を小口化し、デジタル形式で発行・取引可能にした有価証券のことです。2020年の金融商品取引法改正によって「電子記録移転権利」として法制化され、大手金融機関での取り扱いも可能になりました。
ブロックチェーンを活用する理由は、取引の即時性・透明性・改ざん耐性という3つの特性が投資家の利益保護に直結するためです。従来の不動産取引においては、権利移転に時間と複数の手続きが伴うことが避けられませんでした。
ブロックチェーン上で管理されるデジタル証券は、取引記録が自動的かつ永続的に保全されます。改ざんが実質的に不可能な環境での取引は、機関投資家や資産管理法人が求める透明性と法的安定性を高い水準で担保する仕組みです。
これにより、従来は機関投資家や一部の資産家に限られていた大型優良不動産への投資が、より多様な投資主体へ拓かれることとなりました。
現物不動産が持つ流動性の低さと、J-REITが持つ株式市場との連動性という双方の課題を同時に克服する投資スキームとして、不動産STは今後さらに拡大すると考えられています。
関連記事:デジタル証券(ST)とは?仕組みやメリット・デメリットを解説
2. 不動産デジタル証券(不動産ST)の市場動向
2025年度は、公募ST市場にとって飛躍的な一年となりました。単年の発行額は約1,650億円に達し、累積発行額は約3,333億円と、前年の累積1,684億円から倍増した計算になります。
この拡大を牽引しているのが、市場全体の約85%(単年約1,408億円)を占める不動産STです。
これまで主流だった数十億円規模の案件が底堅く推移するなか、2025年は100億〜300億円規模の大型オフィスやホテル案件が登場、さらに2026年には558億円規模の超大型物件のローンチも実現したことに加え、J-REITや不動産小口化商品といった既存商品が持つ構造的な課題を解消する存在として評価を高めてきたことも、資金流入の大きな背景となっています。
ODX(START市場を運営するオルタナティブ取引所)が公表する月次レポートからも、時価総額の着実な拡大が確認できます。発行規模のこれほどの伸長は、不動産STが一部の先進的投資家向けの実験的スキームから、正式な市場インフラとして機能し始めたことを示しています。
現在、不動産ST市場の発行・購入を実質的に牽引しているのは個人投資家です。
背景には、これまで大口限定だった大型オフィスや最新物流施設などの優良アセットへ、数十万円単位から手軽に指名投資できるようになった点があります。現物を保有しないため、維持管理費や不動産取得税といったコストや手間のリスクもありません。
こうした現物と証券投資の「良いとこ取り」のスキームが、投資家にとって大きな魅力となっています。
この不動産STの特性は、大口投資家からも熱い視線を浴びています。先行する欧米では富裕層や機関投資家向けの「私募ST」がすでに主流です。
日本でも規制緩和をはじめ、流通市場のDXが急ピッチで進んでいます。これまで機関投資家の参入障壁となっていたアナログな権利移転手続きがデジタル完結し、流動性が確保される環境が整いつつある今、国内外の大口投資家による本格参入が市場拡大をさらに加速させる見込みです。
2.1. 他商品との違い
不動産STと他商品との主な違いは下表の通りです。
| 比較項目 | J-REIT | 不動産小口化商品 | 不動産ST |
|---|---|---|---|
| 主な投資目的 | インカム・資産分散・インフレヘッジ | インカム (節税効果は税制改正により縮小) |
インカム・指名投資・分散 |
| 投資先の選択 | 複数物件に分散 | 特定物件 | 特定物件 |
| B/S上の 取り扱い |
投資有価証券 | 出資金/信託受益権 (任意組合型は構成資産を按分計上) |
投資有価証券 |
| 流動性 | 取引所で売買可 | 中途換金は困難 | START市場で 二次売買可 |
| 価格安定性 | 株式市場に連動 | 鑑定評価基準 | 株式市場に比べ緩やか、実物価格に連動 |
| 透明性 | 上場基準に準拠 | 商品に依存 | ブロックチェーンで記録が保全される |
上表で示したとおり、不動産STはJ-REITと不動産小口化商品それぞれが持つ弱点を補う形で設計されています。
J-REITは流動性に優れる一方、株式市場との連動により価格が不安定になりやすく、特定物件への指名投資もできません。不動産小口化商品は個別性と安定性を持つものの、2026年度税制改正による相続税評価の変更で節税メリットが縮小しています。
さらに、不動産STは「投資家」「事業法人」双方の財務戦略にメリットが存在しています。
投資家にとっては、現物不動産を抱えずに優良資産の収益を享受できるため、B/Sを肥大化させることなくROAを維持・改善できます。
一方、物件を供給する事業法人にとっても、単一物件から機動的にセキュリティトークン化してオフバランスできるため、資金回収と財務のスリム化を両立できます。
この双方のニーズを満たす設計こそが、市場を広げる大きな原動力となっています。
そのため、不動産STは、「J-REITの手軽さ」と「実物投資の確実性」を両立させ、かつ、B/Sを意識した特定物件への戦略的投資として、企業のポートフォリオにおける新たな隙間を埋める選択肢に位置付けることが可能です。
なお、REITに関する詳細については、下記関連記事で詳しく解説しています。
関連記事:リート(REIT)とは?不動産証券化スキームとして利用される投資手法を解説
3. 不動産デジタル証券(不動産ST)を取り巻く法規制と緩和
市場が急速に拡大すれば、それに伴って制度整備が進むのは自然な流れです。不動産ST市場も例外ではなく、発行額の増加や参加者層の広がりを受け、近年は法規制の面でも制度の見直しが進んでいます。
「規制強化 = 市場の縮小」と受け止められがちですが、実態はそうではありません。
悪質な業者を排除するための規制と、優良プレーヤーの参入を促すための緩和が同時並行で進んでおり、正規の事業者や健全な投資家にとっては、むしろ安心して取引できる環境が整いつつある段階といえます。
3.1. ①不特法の規制強化の動き
不動産STの多くは、不動産特定共同事業法(不特法)に基づく「不動産特定共同事業」というスキームに基づいて組成されています。投資家から資金を集めて不動産を取得・運用し、収益を分配するという構造が不特法の規制対象に該当するためです。
不特法の動向は、不動産ST市場に直接影響を与えるルールとして押さえておく必要があります。
近年、不特法をめぐっては規制強化の動きが続いていますが、これは不動産STやクラウドファンディングの普及によって投資家層が急拡大したことに伴う、いわば市場の成熟化のプロセスといえます。
市場の健全な持続性を担保するため、拡大期に生じがちなSNSを通じた高利回りの勧誘や、原野商法に類似する物件販売、いわゆるポンジスキームの疑いがある案件といった詐欺的行為への対策が急ぎ進められているのが実態です。
具体的には、行政指導・業務停止命令の対象拡大や説明義務の厳格化が実施されています。
ただし、規制の対象はあくまで悪質な不適格業者です。国土交通省や各都道府県の許可を受けた正規事業者への影響は限定的であり、「安心して投資できる市場の整備」が着々と進んでいると受け止めてよいでしょう。
3.2. ②小口化商品の相続税評価変更
2026年度(令和8年度)税制改正により、不動産小口化商品の相続税評価は、例外なく時価評価へと変更されました。従来は、路線価等による評価額と実勢価格との差を利用した相続税対策として用いられるケースもありましたが、この改正により、そうした節税効果は大きく縮小すると見られます。
押さえておきたいのは、不動産STも相続税の評価は時価評価であるという点です。つまり、「不動産STの方が相続税対策になる」という話ではありません。節税効果ではなく、投資商品としての優劣が問われるようになる点が重要です。
小口化商品は、これまで節税メリットを前提に選ばれてきた面がありました。その前提が見直される今、今後は本来の投資基準で商品が評価される時代に移行していくといえます。
そこで問われるのは、流動性・透明性・利回りの三点です。START市場による二次売買の仕組み、ブロックチェーンによる情報開示、特定物件への指名投資という武器を持つ不動産STは、この競争環境において相対的に優位性があるといえるでしょう。
節税目的で小口化商品に流れていた投資資金が、今後不動産STへシフトする可能性があります。
関連記事:2026年度(令和8年度)税制改正~不動産関連のCRE戦略はこう変わる~
3.3. ③不動産デジタル証券(不動産ST)における緩和施策
規制強化と並行して、不動産ST分野では市場の利便性を高める緩和施策も同時進行で進んでいます。主な動きは3点です。
① 「不特法トークン」の金商法適用の明確化
大手金融機関や事業法人が、法的なリスクを負わずに「組成側」として本格参入できる環境が整いました。
従来、不動産STは不特法と金融商品取引法(金商法)の双方にまたがる規制の解釈が曖昧で、発行者にとって法的な位置づけが不透明でした。これが改正によって有価証券として金商法の下に明確に位置づけられ、発行・流通のルールが整理されたことで、参入へのハードルが大きく下がっています。
② プロ投資家向け仲介業者の参入要件緩和
プロ投資家向けセカンダリー市場のプレイヤーが増え、取引の選択肢が広がる環境が作られています。
不動産STを含む非上場有価証券の仲介業務に特化する業者(非上場有価証券特例仲介等業務)への参入要件が緩和され、資本金要件が5,000万円から1,000万円に引き下げられたほか、自己資本規制比率や兼業規制等も除外されました。これにより、参入業者が増え、プロ間での流動性向上が期待されています。
③ 私設取引システム(PTS)の認可要件の特例
限定的な取引規模であれば、重いコストやシステム要件を課されずにデジタル売買の場(PTS)を運営できるようになりました。
流動性の低い非上場有価証券のみを扱う場合に限り、第一種金融商品取引業の登録だけで電子的取引の提供が可能となっています。これにより、通常求められる3億円の上乗せ要件が適用されないだけでなく、システムの第三者評価や二重化(バックアップ)も必須とされない特例が認められました。
こうした規制・緩和の両方が機能していくことで、発行体・投資家・流通市場の三者にとって、より使いやすい市場環境が形成されつつあります。
4. 不動産デジタル証券(不動産ST)市場の2つの変化と将来予測
急速な拡大が着実に進む中で、不動産ST市場では2つの構造的な変化が起きています。それぞれを順に確認しましょう。
4.1. START市場(ODX)の成熟と流動性の向上
START市場(ODX)は、2023年12月に2銘柄での取引開始からわずか1年強で6銘柄まで拡大し(2025年3月時点)、2026年6月の開示情報では不動産STは7銘柄、初の債券STも上場するなど(計8銘柄)、資産の多様化が進んでいます。
上場している不動産STには、1銘柄で複数の物件をパッケージ化したバルク型の運用プランが多く含まれており、実際の組み入れ物件数はすでに20棟を超えています。
銘柄数は一見限定的ですが、本市場の意義は「いつでも換金できるセカンダリーインフラ」の確立にあります。厳格な審査と適時開示により取引の透明性が担保されたことで、従来の不動産投資の弱点だった「流動性の低さ」が解消されつつあります。
今後は不動産以外の多様な資産への拡張も期待されており、デジタル証券の総合取引所として着実な成長を遂げています。
出典:大阪デジタルエクスチェンジ株式会社「マーケットレポート」より
2025年12月に新規銘柄の取り扱いが開始されたことで、時価総額は約42.5億円急増(187.9億円 → 230.4億円)し、市場全体のボリュームが一段階押し上げられました。
新規追加銘柄がない期間(2025年5月〜11月、2026年1月〜3月)は、既存銘柄の基準価格のわずかな変動のみが反映されるため、ほぼ横ばいで推移します。
なお、その後2026年4月には約14.7億円の大幅な減少を記録しています。この減少は、銘柄数の減少に起因するものではなく、主要な既存銘柄の基準価格が月末時点で一斉に下落したためです。
この点は、不動産STにとって本質的に重要な変化です。長らく指摘されてきた「流動性の低さ」という課題は、二次市場の整備によって解消の方向へ向かっています。
二次売買(既発行銘柄の流通)が活発になれば、新たな投資家が参加しやすくなり、発行市場のさらなる活性化にもつながります。投資の入口と出口の両方が整うことで、保有期間中の柔軟性が大きく向上する見通しです。
ただし、現時点でのSTART市場の取引規模はJ-REITの取引所市場と比べると限定的で、「いつでも瞬時に売れる」という水準にはまだありません。
現物不動産の売却に比べれば格段に換金しやすい仕組みではありますが、J-REITのような高い市場流動性を前提とした短期的な売買には向かない点は、あらかじめ認識しておく必要があります。
あくまでも中長期保有を前提としたうえで、「出口の選択肢が広がった」という位置付けで捉えるのが適切です。
4.2. GK-TKスキームの普及と投資家層の拡大
不動産STの組成において広く普及しているのが、運用の実務を営業者(合同会社:GK)に委ね、投資家は出資のみを行う「GK-TK(合同会社・匿名組合)スキーム」です。
投資家にとっては管理負担がなく、リスクも出資額に限定される点が大きなメリットですが、従来は「利益超過分配」における税制上の取り扱いが、任意組合型(NK型)に比べて不利である点が実務上のネックでした。
不動産運用においては、実際の現金の支出を伴わない「減価償却費」を計上できるため、手元に十分なキャッシュが残っていても、会計上の利益は小さく圧縮されるという構造的な特性があります。
この帳簿上の利益を超えた余剰キャッシュ(=利益超過分配)を合同会社(GK)が投資家に分配する際、従来の税制では「配当所得」とみなされ、分配時に即時課税される仕組みでした。
しかし、このGK-TK型の弱点を克服する存在として、今「信託型ST(信託受益権型)」に大きな注目が集まっています。
2025年度の税制改正により、信託型STにおける2026年4月1日以後の分配からこの取り扱いが変わりました。
利益超過分配は配当所得ではなく「元本の払い戻し(みなし譲渡)」として扱われることになり、一律分離課税で収まるようになったことに加え、さらに上場株式やJ-REITといった他の「上場株式等」との間で、柔軟な損益通算が可能になりました。
投資家目線では、「手取りの分配金額が増加し、実質利回りが向上する」という実利的なメリットをもたらします。
税制上の不利が解消されたことで、従来は税務メリットを優先して手続きの煩雑な任意組合型を選択していた法人の資産管理会社の間でも、高い流動性と透明性を備えた「信託型(信託受益権型)不動産ST」を本命視する動きが加速する可能性があります。
5. 投資家が今取るべきアクションとリスクヘッジ
法整備・市場インフラの整備・税制改正という三つの要素が整いつつある今、不動産STは「検討する」段階から「どのように活用するか」を考える局面へと移行しています。
規制強化や緩和のニュースに過剰反応するのではなく、自身のポートフォリオ全体に照らして判断することが重要です。以下では、投資家が取るべきアクションとリスクヘッジのポイントを整理します。
5.1. ポートフォリオにおける不動産STの位置付け
まず確認しておきたいのは、不動産STは現物不動産の「代替」ではなく、ポートフォリオ全体の分散を図るための一手段であるという点です。
現物不動産を保有している方には、管理負担という課題があります。J-REITを保有する方は、株式市場との連動リスクを抱えています。不動産STはその両方の課題を部分的に解消し得る選択肢として、個人の資産形成から法人の財務戦略まで、幅広い投資家層のポートフォリオに組み込む新たな意義を持っています。
ただし、リスクヘッジの視点も欠かせません。特に注意すべきなのは、金利リスクです。不動産STのファンドが物件取得のために借入を活用している場合、変動金利であれば金利上昇局面でコストが増大するリスクが生じます。
対処方法は明確で、STファンド自体のLTV(有利子負債比率)が低いかどうか、固定金利で資金調達しているかどうかを事前に確認することです。
もう一つ押さえておきたいポイントは、金利上昇に対して物件の収益力で対抗できるかどうかという視点です。事実上、個別物件に投資する不動産STでは、物件自体にも目を配る必要があります。
利息コストが増加しても、賃料収入をそれ以上に引き上げられれば、もしくは運営コストを適切に見直すことができれば、分配金を維持・増加させることができます。
この成否を左右するのが、物件におけるプロパティマネジメント(PM)の品質です。テナント交渉、建物価値の維持といったPMの力量が、実質利回りの安定性に直結します。商品を選ぶ際は、運用会社のPM体制にも目を向けておくことが重要です。
なお、PMの重要性や職責などについては、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:プロパティマネジメント(PM)とは?業務内容や重要性、選定ポイントを紹介
5.2. 商品選定の4つのチェックポイント
具体的な銘柄を選ぶ際は、主に以下4点を確認しましょう。
・倒産隔離スキームの確認
万が一、販売会社や運用会社が倒産した場合でも、投資した物件(資産)が保護されるよう「倒産隔離」の仕組みが組み込まれているかを確認しましょう。
現在の不動産STの主流である「信託受益権型」では、信託契約によって法的に高い倒産隔離が図られています。しかし、匿名組合型など他の出資スキームでは構造が異なるため、目論見書やスキーム図を見て、万一の際の資産保全(倒産隔離)が確実に設計されているかを必ず確認することが重要です。
・販売会社の登録・許可の確認
法改正により非上場STに特化した第一種金融商品取引業の参入要件緩和(資本金引き下げ等)が進んでいますが、だからこそ事業者が「適切なライセンスを保有しているか」は必ず排除すべき不適格業者を見極めるために、押さえておきたいチェック項目です。
緩和の波に乗って登場する新興のプラットフォーマーや販売会社が、金融庁(財務局)の正規の登録を受けた事業者であるかを、契約前に必ず確認しましょう。
・START市場(ODX)掲載銘柄かどうか
ODXのSTART市場に掲載されている銘柄は、新規取扱審査・適時情報開示が義務付けられており、発行体とは独立した取引所の目が通っているという点で、現時点における信頼性の有力な判断基準となります。加えて、掲載銘柄はセカンダリー市場での売買が可能であり、流動性の面でも一定の担保が得られます。
将来的には別の客観的な目安が整備される可能性もありますが、現段階ではSTART市場掲載の有無が一つの有力な判断材料となっています。
・投資対象物件の内容確認
不動産STは特定物件への指名投資が可能という強みがあります。富裕層や資産管理会社にとってこの特性は、保有する現物不動産や金融資産との分散・補完を意識しながら、収益性・立地・テナント品質を吟味して特定の優良資産を戦略的に選んで保有できる点が実務的なメリットです。
具体的な投資判断にあたっては、物件自体のポテンシャルとして立地・築年数・テナント構成・稼働率・周辺の賃料相場水準を精査します。それに加え、商品としての安全性を測るため、LTVの適正さや金利調達の安定性、そしてPM体制の信頼性をあわせて確認することで、より精度の高い投資判断が可能となります。
6. 不動産デジタル証券(不動産ST)は「検討」から「実行」のフェーズへ
法制度のインフラ整備や税制改正が完了し、流通市場も拡大を続ける現在、不動産STは投資家がポートフォリオに組み込むべき現実的な選択肢になりつつあります。
累積発行額の拡大や対象アセットの多様化が進むデジタル証券市場では、二次流通市場の整備などを通じて、従来課題とされてきた流動性の改善に向けた動きも見られます。そのため、市場の成長性と流動性リスクの双方を踏まえながら、投資機会を検討する局面にあるといえます。
特に2026年の税制改正は、本格参入を促す決定的なトリガーとなりました。「信託型不動産ST」における利益超過分配の税負担が軽減(一律約20%の分離課税化)され、競合である不動産小口化商品の相続税評価が時価評価へと変更されたことで、これまで小口化商品に向かっていた投資資金の一部が、ポートフォリオの見直しを通じて不動産STへシフトしていく可能性があります。
現物不動産とJ-REIT、それぞれの弱点を補い、「管理負担なしでの指名投資」と「株式市場に比べ緩やかで実物価格に連動する安定性」を両立する不動産STは、マクロ環境が激変する中での企業の資産防衛として新たな運用の選択肢となります。
そして、この市場環境の変化は、不動産を保有・流動化させる企業(オリジネーター側)にとっても見過ごせない潮流です。高い透明性と取引所による流動性を備えた「不動産ST」は、次世代の資金調達・資産流動化を担う有力なプラットフォームへと進化しつつあります。
法制度やインフラ、税制の整理が進んだ今、投資家・オリジネーター側の双方が、この次世代アセットを戦略的に活用する具体的な検討を始める好機を迎えているといえるでしょう。
宅地建物取引士
佐藤 賢一 氏
Kenichi Sato
大学卒業後、不動産業界一筋。賃貸仲介・管理から売買仲介まで幅広い実務を経験した後、専門性を深め、プライム企業にて信託関連のオフィスビルや商業施設のAM・PM業務に従事。
現在は注文住宅会社の不動産部門責任者を務めつつ、多様な経験を活かし兼業ライターとしても活動中。不動産の実務から投資・管理戦略まで、多角的な視点に立ったわかりやすい解説を得意としています。
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