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2026年(令和8年)の公示地価はどうなる?これまでの地価推移と今後の見通し

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2026年(令和8年)の公示地価はどうなる?これまでの地価推移と今後の見通し

公示地価は、保有資産の評価や投資タイミングの判断、売却戦略の立案などCRE戦略全体の精度を左右する重要指標です。その公示地価が今、大きな転換期を迎えています。
2025年の公示地価はバブル後最高の上昇率を記録しましたが、2026年は全方位的な上昇から「エリアによる優勝劣敗」がより鮮明になる局面へ移行すると予測されます。この明暗を分ける主要因となるのが、再開発・産業誘致の進捗状況に加え、金利動向の変化、そして2025年12月に発表された「令和8年度税制改正大綱」です。
高付加価値型設備投資を後押しする「特定生産性向上設備等投資促進税制」の創設や物流拠点整備の特例など、投資減税の拡充が今後の地価形成や企業の拠点戦略に大きな影響を与えます。
そこで、この記事では、過去データから見える市場トレンド、地価変動の決定要因、2026年の予測シナリオ、そしてCRE戦略への実践的な活用方法を解説します。

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目次

  1. 「公示地価」とは?CRE戦略における基礎知識と重要性
  2. 2025年動向から見る「2026年度の公示地価の見通し」
  3. 2026年の公示地価変動を左右する4大要因
  4. 公示地価の分析から導く、CRE担当者が実行すべき用途・エリア別の具体戦略
    1. 用途別・エリア別の地価上昇要因と「地価乖離リスク」
    2. 公示地価の変動にCRE担当者はどのように対応すべきか
  5. 公示地価を読み解き、CRE戦略のきっかけにしよう
「公示地価」とは?CRE戦略における基礎知識と重要性

公示地価とは、国土交通省の土地鑑定委員会が毎年1月1日時点の標準地の正常な価格を判定し、3月下旬に公示するものです。一般の土地取引の目安や公共事業用地の取得価格算定の基準として活用されます。

土地の価格には、公示地価のほかにも評価目的に応じた複数の指標があり、「一物五価」として実務で使い分けられています。各指標の特徴を把握しておくことで、CRE戦略における適切な判断が可能になります。

主要な土地価格指標は以下の表のとおりです。

価格の種類 価格の概要 発表機関 時期 主な利用目的
公示地価 国土交通省が定める標準地の正常価格 国土交通省 毎年3月下旬
  • 一般の土地取引の指標や、公共事業用地の買収価格の算出基準
  • 自社ビルや工場がいま「いくら程度の価値があるのか」を公的に把握し、会社の資産状況をチェックする
基準地価格 都道府県が定める基準地の標準価格 都道府県 毎年9月下旬
  • 特に地方圏の地価動向を把握するために、公示地価を補うもの
  • 年度途中の経営判断(拠点の新設や統合)の参考にする
路線価 相続税や贈与税算定の基準となる価格 国税庁 毎年7月上旬
  • 相続税や贈与税の算定
  • 事業承継や不動産の移動にかかる税金の概算計算
固定資産税
評価額
固定資産税や都市計画税算出の基準となる価格 市町村 5月頃
  • 固定資産税・都市計画税の算出
    (3年ごとに見直しが図られる)
  • ランニングコストの予測
実勢価格 実際に市場で取引された価格 当事者
  • 実際の不動産売買の参考となる
  • 売却による現金化や新規取得時の「リアルな取引金額」

これらの指標の中で、公示地価と基準地価格は「公的な指標」として位置付けられ、不動産鑑定士が鑑定評価を行う際の重要な基準です。

ただし、実際の不動産取引においては、実勢価格が市場の需給関係を最も直接的に反映します。一般的に、相続税路線価は公示地価の80%程度、固定資産税評価額は70%程度を目安に設定されています。ただし、近年の都市部や人気エリアではこの乖離がさらに拡大する傾向にあり、公的指標と市場実態が一致しないケースも少なくありません。

そのため、CRE戦略における資産の取得・売却の判断においては、公的指標の推移を追うだけでなく、専門家による詳細な鑑定評価や、直近の成約事例に基づいた実勢価格の緻密な分析が不可欠です。指標を「定点観測の目安」として活用しつつ、実際の意思決定には「生の市場動向」を取り入れるのが良いでしょう。

したがって、企業の不動産担当者は単一の指標に頼るのではなく、公的指標と市場価格の両方を多角的に分析することで、不動産市場の全体像と自社保有資産の適正価値を正確に把握することが求められます。

CRE戦略において、公示地価やその動向を知り、予測することは非常に重要です。公示地価は、企業が策定する資産評価・売却・取得・新規開発といった戦略の根拠となり得るからです。

例えば、保有資産の含み損益の把握や、売却・入れ替えのタイミング判断、新規開発エリアの選定など、公示地価の変動傾向は、そのエリアの将来的な経済性や不動産市場の活性度を推し量る指標として、多くの局面で活用されます。

また、公示地価の変動要因を詳細に把握することは、経営の観点からも欠かせません。公示地価をベースとした公正な評価は、減損会計の適正な判断や資産情報の正確な開示など、財務・税務上の健全性を担保する基準となります。加えて、恣意的な取引を排除し、ステークホルダーに対する説明責任を果たすというコンプライアンスの観点からも、公的指標を用いた価値判断は行われるべきです。

公示地価を構成するさまざまな要因を把握することで、地価変動の根拠を理解することが可能です。公示地価の分析を通じて、将来的な地価の変動リスクや機会を先取りし、ポートフォリオの最適化につなげることができるため、企業の不動産担当者にはこれらの指標を定点観測することが求められます。

関連記事:公示地価とは?実勢価格との違いや企業不動産における活用法を解説

2025年動向から見る「2026年度の公示地価の見通し」

2025年(令和7年)の公示地価は、全国的な傾向として、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇し、上昇幅は拡大しました。以下は、全国の用途別に見た地価変動率の推移(2020~2025年)を示すグラフです。

用途別 地価変動率の推移(全国)

出典:国土交通省「地価変動率の推移」から作成

地価上昇は東京圏・大阪圏で特に顕著であり、全用途で4年連続の上昇に加え、その勢いもさらに加速しています。一方で、同じ都市圏でも名古屋圏は注視が必要です。依然として高い上昇水準にあるものの、前年比では全用途で上昇幅が縮小しており、エリアごとの勢いに差が見え始めています。

地方圏においても、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇しています。ただし、地方圏はどのエリアでも上昇しているわけではありません。エリアによる差が大都市圏より大きい点に留意が必要です。

全用途地価変動率の推移(圏域別)

出典:国土交通省「地価変動率の推移」から作成

地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)も地価の上昇は継続していますが、2025年(令和7年)は全用途で前年より上昇率が低下し、上昇幅が縮小しました。

近年の急激な地価高騰に伴う「割安感」の消失や、建築費高騰による新規開発の抑制が、拡大スピードを一定程度抑制したことが原因と考えられます。ただし、過去の推移と比較すれば依然として高い上昇水準を維持している点は押さえておきたいところです。

なお、これら地方四市以外の地方圏でも概ね上昇傾向が継続しており、中には上昇幅が拡大している地点も見られます。これは、大都市圏や地方中核都市の活況が、利便性の高い周辺自治体や特定の産業ニーズを持つ地域にも波及しつつあることを示しています。

波及効果が顕著に表れているのが工業地です。広域的な物流網の再編に伴う先進的物流施設の需要や、半導体関連をはじめとする特定産業の進出により、都市圏はもちろんのこと、地方圏においても大きな上昇幅が見られました。

2026年(令和8年)の公示地価は、2025年の上昇トレンドが継続する見込みです。その理由は、2025年の地価上昇を牽引した主要因が現在も継続していることに加え、最新の税制改正による投資促進効果が期待されるからです。

2025年の主要な公示地価の上昇要因は、大都市圏・地方都市を問わず以下のとおりです。

・緩和的な金融環境の継続と金利先高観

日銀の政策転換後も実質金利が歴史的な低水準に留まっていることは、不動産投資意欲を継続させ、2025年度の地価を押し上げる大きな要因となりました。この投資意欲の維持が上昇トレンドを下支えした形ですが、一方で、市場には金利上昇のペースが収益性を圧迫することへの警戒感も常に孕んでいます。

・インバウンド需要の定着と拡大

観光客の回復に伴い、主要都市の商業地や地方観光地では、ホテル開発や店舗需要が地価を力強く押し上げています。

・再開発やインフラ整備によるエリア価値の向上

各地で進行する大規模再開発や交通インフラの整備は、周辺エリアの利便性を劇的に高め、局地的な需要拡大を創出しています。

・産業の地方進出による局地的発展

半導体関連工場などの大型投資は、地方圏において住宅・商業需要を一気に掘り起こし、特定の地点で突出した上昇をもたらしています。

これらの要因は、依然として地価を押し上げる強い力を保っています。また、追い風を与えるように、令和8年度税制改正は、全体として「成長投資の促進」と「既存資産の有効活用」に強い軸足が置かれており、これらの制度は、特に利便性の高い工業地・再開発エリア・地方都市への資金流入を加速させるポテンシャルを有しています。

ただし、上昇トレンドが継続する見込みであるとはいえ、上昇要因に反する「下落要因」が公示地価にどのような圧力をかけるかを冷静に見極める必要があります。

次章では、2026年の公示地価の変動を左右する主要な要因について、上昇圧力と下落圧力を両面から解説します。

関連記事:金利上昇が不動産売買に与える影響とは?不動産投資市場の現状と見通しを予測

関連記事:都市再開発の動向から導く、価値創造とリスク管理

2026年の公示地価変動を左右する4大要因

ここでは、直近の公示地価を上下させ得る主な要因について解説します。これらの要因は相互に影響し合い、地価を変動させる可能性があるため、押さえておきたいポイントです。

1. 金利

低金利は、国土交通省が公表する「令和7年地価公示の概要」でも、地価を押し上げた要因の一つとして明言されています。不動産は借入金での購入が一般的であり、昨今の金利上昇ムードの高まりは住宅を購入したいエンドユーザーや投資家の購入意欲に直結します。

低金利が継続すれば資金調達コストが抑えられ、収益還元法に基づく不動産価値が上昇しやすくなり、地価も上昇傾向を維持しやすくなります。特に、賃貸物件において「低空室率」や「高収益」といった状況が維持される場合、投資家の投資意欲はさらに高まることでしょう。

逆に、住宅ローンや不動産投資ローンの金利が上がれば、資金調達コストが増加します。その結果、投資家が求める利回りが相対的に低下し、不動産取引が伸び悩むことで、地価の上昇が抑制される可能性があります。また、金利上昇は住宅購入層の購買力を低下させ、住宅地の需要減退にもつながりかねません。

関連記事:金利上昇が不動産売買に与える影響とは?不動産投資市場の現状と見通しを予測

2. 建築費の高騰

建築費の高騰は、地価の上昇を抑制する大きな要因の一つです。建築費の影響は、住宅価格に占める割合が大きく、かつ市場需要が脆弱な地方都市で特に深刻です。

新築住宅の価格上昇は、購入者の意欲を低下させます。特に地方都市では土地価格が安価なため、総価格に占める建築費の割合が大きく、建築費の高騰に伴う建物価格の上昇が需要の減退に直結します。その結果、新築需要の減退が街の発展を停滞させ、最終的に地価の伸びを鈍化させる恐れがあります。

さらに、建築費高騰によって再開発計画が頓挫すると、将来の街の価値向上機会を大きく損なってしまいます。特に、代替開発が期待できない地方都市では、再開発の遅延や撤回が長期的な地価上昇に避けられない影響を及ぼすでしょう。実際、地方都市で地価上昇幅が縮小している背景には、建築費高騰による市場の脆弱性があると考えられます。

関連記事:長期化する建築費高騰の影響と今後のシナリオ

関連記事:人件費高騰時代の不動産投資戦略|建築費高騰の動向と対応策とは

3. 行政施策

国や自治体による行政施策は、特定エリアの地価を押し上げる要因となることがあります。

例えば、大規模都市開発、新路線開通・高速道路延伸といったインフラ整備、熊本県菊陽町や北海道千歳市での半導体工場誘致などの産業振興策が挙げられます。これらの行政施策は、建築費高騰という逆風の中でも国家的・戦略的プロジェクトとして推進されており、該当エリアの地価を顕著に押し上げています。

また、住宅取得支援制度や空き家利活用支援、金利・財政政策といった間接的な施策も、個人の不動産取得を後押しし、全国的な地価の底上げに寄与する可能性があるでしょう。政権交代や新政権の発足により、こうしたマクロ政策の方向性が変わることも、広域的な地価動向に影響を与える重要な要素です。

一方、人口減少という構造的課題が解決されない限り、不動産市場の担い手が減少し、地価がいずれ下落に向かう可能性も考慮すべきです。行政的要因は、喫緊の地価動向を左右する大きな要因の一つとなり得ます。

4. 税制の変更

税制改正は不動産取引のコストや収益性を変え、地価を動かす決定要因となります。令和8年度税制改正大綱では、投資促進と過熱抑制の両面が打ち出されました。

まず抑制要因として注目すべきは、賃貸不動産の相続税評価の見直しです。被相続人等が課税時期前5年以内に取得・新築した一定の貸付用不動産について、相続税評価の適正化の観点から、課税時期における通常の取引価額に相当する金額で評価する見直しが盛り込まれました(令和9年1月1日以後の相続等から適用)。これにより、駆け込み的な節税目的の購入は一定の抑制が予想されます。また、不動産小口化商品も原則として時価評価へ移行するため、節税メリットに依存したマネーの流入は減少する可能性があります。

一方で、地価を下支えする施策も強力です。自治体と連携した「産業用地整備」への支援や、大規模な設備投資を後押しする「特定生産性向上設備等投資促進税制」の新設は、工業地や再開発エリアへの資金流入を加速させるでしょう。

さらに、土地の登録免許税の軽減措置も延長され、市場の流動性確保が図られています。こうした「促進」と「抑制」の双方向の動きを読み解くことが、今後の地価予測には不可欠です。

この4要因のうち、特に金利と建築費の高騰は、地価の「上昇」と「抑制」という反する圧力を同時にかけており、2026年の地価動向を左右する重要な要素でしょう。

関連記事:2026年の不動産市場はどうなる?現状と今後の見通しを分析

公示地価の分析から導く、CRE担当者が実行すべき用途・エリア別の具体戦略

公示地価の著しい変動は、CRE戦略において回避困難な課題ではなく、むしろ積極的に活用すべき機会として捉えるべきです。

ここでは、地価の変動が著しい具体的なエリアや事例を分析し、CRE戦略への具体的な落とし込み方を解説します。公示地価はすべてのエリアで均一に上昇しているわけではなく、特定の施策や環境要因を持つエリアで急騰しています。その変動を的確に把握し、企業価値向上につなげるための用途・エリア別の具体的な戦略を実行に移しましょう。

住宅地では、大規模開発と子育て支援の恩恵を受け、人口が増加しているエリアが注目されています。地価上昇は、交通利便性の向上に加えて、行政による子育て支援策が組み合わさることで、若年層の人口流入を促し、地価の大幅な上昇を引き起こしています。

この成功モデルは、千葉県流山市の事例に代表されます。2025年の千葉県における住宅地の地価上昇率ランキングでは、流山市内の地点が上位13位までを占め、顕著な上昇傾向を示しました。この勢いは、人気の中心である「流山おおたかの森」での堅調な住宅需要に留まらず、周辺エリアにも地価上昇を波及させています。その結果、住宅需要が商業・物流施設の立地を誘引し、市域全体の地価を押し上げる要因となっているのです。

特定のエリアで行政主導の「街づくり」が進んでいる場合、住宅需要から始まる波及効果を予測することで、CRE戦略として不動産の早期取得やバリューアップ投資の検討時期を見極めることが可能となります。

商業地では、国際化と再開発の相乗効果に注視する必要があります。東京の品川・高輪周辺や大阪の梅田周辺などは、大規模な再開発計画や国際的なビジネス拠点としての機能強化に加え、インバウンド需要の回復もあり、地価上昇が顕著です。

「国際的な集客力」や「特定産業の集積」が見込まれる商業地は、賃貸収益の安定性が期待できるため、新規取得や開発の適地といえそうです。

工業地では、大阪府堺市のデータセンターや、北海道千歳市・熊本県菊陽町の半導体関連工場進出に見られるように、特定産業の進出による局地的な高騰が目立ちます。

こうした大規模プロジェクトは、単なる一企業の拠点開設にとどまらず、地域経済に大きな「乗数効果」をもたらします。例えば、台湾に本社を置く「某半導体ファウンドリ(受託製造)企業」が進出した熊本県では、関連企業の集積やインフラ整備が加速し、地価が劇的に変動しています。2025年(令和7年)地価公示では、熊本県大津町が全用途平均変動率20.0%で全国第2位、菊陽町が14.5%で第6位を記録しました。

両町は2023年(令和5年)から3年連続で高い上昇率を維持しており、特に2025年(令和7年)は前年を上回る上昇幅となっています。この継続的な地価上昇は、某半導体ファウンドリ(受託製造)企業の進出を契機とした半導体関連産業の集積と、それに伴う人口流入・インフラ整備の加速を反映したものといえるでしょう。

こうした大規模企業の進出は工業地の地価上昇を引き起こす要因であり、データセンターや賃貸ラボなど成長市場に対応した新たなアセットへの投資機会を見極める指標となります。

これらの大規模な工場や産業の進出は、本来、近隣の商業地や住宅地にも大きなインパクトを与えるはずです。しかし、現時点では地価上昇は極めて局地的であるケースも存在しており、周辺の住宅地や商業地では地価が横ばい、または下落している事例も少なくありません。

例えば、既存の工場用地にデータセンターが新設された場合、工業地の価値は高まるものの、雇用や消費の波及効果が乏しく、地域全体の経済効果は限定的となる状況があります。また、住宅地に近いエリアでのデータセンター建設は、反対運動などの影響により、地価上昇につながらないケースも考えられます。

工業地と周辺地域の地価動向の差は、「地価乖離リスク」が生じていることを示唆しています。この乖離を機会に転換するには、進出企業の規模や施設の重要性に加え、雇用の質、インフラ投資の有無、地域住民との関係性など、地域全体の経済活性化の兆候を多角的に見定めることが極めて重要です。

公示地価の分析は、CREポートフォリオの見直しとブラッシュアップを行う最適なタイミングを教えてくれます。地価の変動を機会と捉え、企業価値の最大化に貢献するため、動向に応じた具体的な戦略を策定する必要があります。

地価が高騰しているエリアでは、資産の売却・利益確定・入れ替えといった戦略が有効です。含み益が期待できるため、適切なタイミングで遊休資産を売却し、収益性の低いアセットを処分することで、キャピタルゲインを確保します。売却益を成長が見込めるエリアへ再投資するアセットスワップを検討し、ポートフォリオ全体のリターンを最大化しましょう。

建築費が高騰しているエリアでは、既存資産の維持・改修を重視するホールドリペア戦略が軸となります。新規開発コストの増加を踏まえ、既存資産のリニューアルや修繕投資に注力することで、競争力と資産価値の向上を図ります。ESG(環境・社会・ガバナンス)に配慮した改修は企業ブランディングにも寄与し、賃貸収益の安定化や賃料の上昇にもつながるでしょう。

災害リスクエリアに関しては、ポートフォリオの物理的リスク分散が不可欠です。被災地では地価が大幅に下落する傾向があるため、BCP(事業継続計画)の観点から、災害リスクに備えた地理的な拠点分散を検討する必要があります。リスクの高い資産については、耐震・浸水対策の強化や売却によるリスク排除を検討する判断が求められるでしょう。

行政施策によって需要増が見込まれるエリアは、戦略的な先行投資先として注目すべき地域です。行政施策(例:工場誘致など)を分析し、これに伴って住宅需要や企業のオフィス需要が増加する可能性がある地域を特定します。そのうえで、戦略的な先行投資を実施します。この早期投資により、将来的な地価上昇による先行者利益の獲得を目指します。

地価の変動は、保有資産の価値変化という「結果」だけでなく、ポートフォリオのリスク分散や多様なアセットタイプへの投資機会を示唆する重要な指標です。

企業の不動産担当者は、常に市場の動きを注意深く見極め、投資機会を逃さないよう、ポートフォリオの最適化を継続的に進めていく必要があります。

公示地価を読み解き、CRE戦略のきっかけにしよう

公示地価は単なる「結果」ではなく、変動する市場環境のある時点の状況を示した指標にすぎません。企業の不動産担当者にとって最も重要なのは、その価格が上昇傾向にあるのか、または下降傾向にあるのか、そして、その要因を理解することです。

2026年の公示地価は、上昇トレンドが継続する見込みですが、一方で金利リスクや建築費高騰など、地価を抑制する圧力も存在しています。こうした上昇・下落の要因を踏まえ、自社のポートフォリオや資産をどのように運用するかを判断する材料としなければなりません。

公示地価をニュースとして捉えるのではなく、自社のCRE戦略を再構築する契機とするべきです。市場のシグナルを適切に読み解き、企業価値の最大化に貢献するCRE戦略の実現を目指しましょう。

宅地建物取引士
佐藤 賢一 氏
Kenichi Sato

大学卒業後、不動産業界一筋。賃貸仲介・管理から売買仲介まで幅広い実務を経験した後、専門性を深め、プライム企業にて信託関連のオフィスビルや商業施設のAM・PM業務に従事。
現在は注文住宅会社の不動産部門責任者を務めつつ、多様な経験を活かし兼業ライターとしても活動中。不動産の実務から投資・管理戦略まで、多角的な視点に立ったわかりやすい解説を得意としています。

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