セミナーレポート

NIKKEI Real Estate Summit 特別セミナー
「ESG経営実践の鍵となる“企業不動産活用”その新潮流に迫る」

不動産+ESGで
企業価値向上へ

主催:日本経済新聞社イベント・企画ユニット
協賛:東急不動産、東急リバブル

ESG

SDGs

CRE戦略

不動産+ESGで企業価値向上へ

世界情勢の影響を受け、電力コストが高騰し、再生可能エネルギー(再エネ)の需要は拡大。SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・企業統治)の潮流もあって、ビル、工場、遊休地などの企業不動産も、脱炭素化や有効活用の必要性が増している。複雑に絡まった課題をほどき、企業価値の向上につなげていくには、どのような打ち手が最適なのだろうか。再エネと不動産業界の識者を招いて聞いた。

基調講演

沼田 昭二氏

町おこしエネルギー 代表取締役会長兼社長

沼田 昭二

 私は「業務スーパー」の創業社長として、海外情勢が日本の食糧・エネルギーの安全を脅かすのを肌身で感じた。現在は再エネ事業を通してエネルギー自給率向上を目指している。

 日本は世界3位の地熱資源量がありながら、地熱の発電能力は10位にとどまる。普及しない一因は初期費用で、1本2億円掛かる調査用の井戸を、上場企業が繰り返し掘削することは難しい。当社では自走式の掘削機を独自開発することで、道路や櫓(やぐら)といった付随施設を不要とし、掘削費用を6千万円まで抑えることに成功した。業務スーパーが製販一体で成功したのと同じで、必要なものを自分たちで作れば実現できるのだ。

 当社は太陽光発電をはじめとする他の再エネ事業も展開。将来、再エネで100%の電力をカバーすることは不可能ではないと確信している。

講演①

西田 恵介氏

東急不動産 執行役員
戦略事業ユニット インフラ・インダストリー事業本部長

西田 恵介

 東急不動産は都市、宅地、リゾートなど多岐にわたる街づくりを手掛けてきたが、脱炭素化時代にあって再エネ事業に乗り出し、自治体などと組んだ実証実験にも参画している。北海道松前町では災害時に送配電網を活用して風力発電所の電力を届ける地域マイクログリッド事業構築の検討を進めている。埼玉県東松山市ではソーラーシェア(営農型発電)を取り入れた再エネ実証施設を建設した。

 近い将来、サプライチェーン全体のカーボンニュートラル化なしには、取引を続けられない企業も出るだろう。企業は再エネの採用と、効率的な利用を考えるべきだ。自社で保有する活用できていない土地・建物に再エネ発電所を設ければ、電力の値上がり対策や、遊休不動産の収益化になる。PPA(電力販売契約)事業者と契約することで、初期費用やメンテナンスの負担も不要だ。

講演②

小室 明義氏

東急リバブル 取締役常務執行役員
ソリューション事業本部 本部長

小室 明義

 ESG経営の視点で戦略的に企業不動産を活用していくと、キャッシュフロー改善や新事業の創出から、社会課題対策、企業イメージ向上まで多くの価値を生む。新築時の環境配慮などのほか、老朽化した資産のリノベーションも有効な施策だ。

 都内の既存オフィスビルに耐震補強や新たな意匠計画を加えて再生した事例では、解体・建て替えするより二酸化炭素(CO2)と産廃の排出量を削減しながら、収益性と安全性の向上を図った。価値の下がった事業用不動産を社会性のある形で再生することも可能で、空き家となっていた倉庫兼事務所を近隣企業が取得し、保育園に転用したところ、従業員のエンゲージメントが上がり、近隣住民にも歓迎された。

 ESGの観点で企業不動産を棚卸しすることが重要で、当社はあらゆる選択肢を持って相談にお応えできる。

パネルトーク

パネルトーク
左から 日経BP「日経不動産マーケット情報」副編集長の本間純氏、西田氏、小室氏。

 西田氏、小室氏と、日経BP「日経不動産マーケット情報」副編集長の本間純氏によるパネルトークでは、企業不動産と再エネ、ESG、SDGsを取り巻く課題と方策を議論。社会課題がビジネスチャンスになることや、環境に配慮した「グリーンビル」供給の地域格差など各社の知見が語られた。環境や地域社会との接点として「経営戦略として不動産活用に取り組むことがESG経営にも寄与する」(小室氏)といった興味深い意見も多かった。

 企業への助言として小室氏は、欧米でのESG投資の潮流に触れ「日本でも今後は、ESG経営に取り組まないことが企業価値を下げるリスクになる」。西田氏はコロナ禍やウクライナ危機を例に「変わるときは急激だ。不動産のESG対策は急にはできないので、早い時期から進めておくべき」。最後に本間氏が「政府も脱炭素化を掲げており、規制強化も考えられる。CO2排出の4割はビル・住宅からであり、手遅れにならない施策が重要」とまとめた。

※本記事は2022年12月23日(金)付 日本経済新聞 朝刊掲載の記事体広告を再構成したものです。
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