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不動産評価額は5つある?
それぞれの概要と調べ方を解説

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不動産評価額は5つある?それぞれの概要と調べ方を解説

不動産にはさまざまな価格が存在するのをご存じでしょうか。
不動産の価格は「一物五価」とも呼ばれ、1つの不動産に5つの評価額があります。不動産の評価額は常に変動するため、目的に応じて評価額を使い分け多角的に判断しなければなりません。
この記事では、5つの評価額の内容や調べ方を分かりやすく解説します。

目次

  1. 不動産の評価額とは?1つの不動産に5つの評価額がある
  2. 実勢価格とは
    1. 実際に売買などで取引される価格
    2. 会計簿価との違い
    3. 実勢価格の調べ方
  3. 公示地価や基準地価とは
    1. 土地売買の際に、国や都道府県が取引の指標となるよう定めるもの
    2. 公示地価や基準地価の調べ方
  4. 路線価や固定資産税評価額とは
    1. 主に相続税や固定資産税の課税のために定められるもの
    2. 路線価や固定資産税評価額の調べ方
  5. 5つの不動産評価額を理解しておこう

不動産の評価額とは、不動産の価格や税金を計算するうえで基準となる価格のことを言います。不動産は、取引金額が大きく、また税金も関係するため、ある程度の指標となる価格が決められています。

この不動産の評価額は「一物五価」とも言われ、1つの不動産に次の5つの評価額があります。

  • 実勢価格
  • 公示地価
  • 基準地価
  • 路線価
  • 固定資産税評価額

それぞれ、目的や見る人などによって調べる評価額が異なります。例えば「固定資産税を知りたいなら固定資産税評価額」「売却額を知りたいなら実勢価格」となります。利用する目的によって正しい評価額を調べることが大切です。

ちなみに、5つの評価額に「不動産鑑定評価額」を加えて「一物六価」という場合もあります。不動産鑑定評価額とは、不動産鑑定士が不動産の価値や収益性、周辺の取引事例などの経済価値のみで客観的に不動産を評価した価格のことです。

一般的な不動産取引では、「早く売りたい」などといった売主や買主の事情なども価格に反映され、個々の不動産で価格は大きく異なります。不動産鑑定評価額は、そのような事情を排除して客観的に評価しており、公的な不動産評価の基礎ともいえる価格なのです。

今回は、不動産鑑定評価額を除く「一物五価」について、それぞれの評価額の内容や調べ方をご紹介していきます。

まず、実勢価格について見ていきましょう。不動産売買するうえで、参考となるのがこの実勢価格です。

実勢価格とは、実際の市場で不動産が売買される価格のことを言い、時価とも呼ばれます。
不動産取引が成立したときの価格になるため、将来の実勢価格は取引成立まで正確には予測できません。

したがって、一般的には、過去の取引実績や近隣の類似不動産の取引事例を参考に算出された価格が、取引の際の目安となります。

実勢価格は、最終的には売主と買主の合意で決まるため、それぞれの事情によって不動産の客観的な価値よりも高くなる場合や低くなる場合があります。また、他の評価額を参考にする場合、年に1回(固定資産税評価額については3年に1回)しか公表されないため、最新の動向を反映した価格とは言い切れない点にも注意が必要です。

会計簿価とは帳簿価格とも言い、帳簿に記載されている価格のことを言います。企業は、不動産などの資産を取得した場合、その取得価額を帳簿に記載します。そして、決算期ごとに減価償却など適切な会計処理を行い、取得価額から減価償却累計額を控除した額である簿価で資産を評価します。

しかし、不動産は築年数の経過だけでなく、相場などによっても、その価格は変化していくものです。たとえば数十年前に取得した土地の人気(需要)が上がり、現在は市場価格が倍になっていたとしても、会計簿価は変わりません。

一方、実勢価格は、その時の市場価値であり、最新の相場を反映した価格です。

企業では、所有している不動産の会計簿価は分かっていても実勢価格を把握していないケースが多くあります。

その状態は、実勢価格との差である含み損や含み益が把握できていない状態でもあるのです。しかし、実勢価格を把握することで、簿価や自社の決算見通しと比較し、より良い売却のタイミングを見極めたり、売却価格を設定したりすることが可能になります。不動産を所有するうえでは、定期的に実勢価格を調べることが大切です。

実勢価格は、不動産会社の広告や店頭掲示価格などから、近隣の類似不動産の売り出し価格を参考価格として調べられます。また、次のような方法でも調べることが可能です。

しかし、これらはあくまで参考価格であり、不動産固有の特徴や、需給のバランス、当事者間の事情など、さまざまな理由によって実勢価格は変動します。最新の相場観を含めたより精緻な価格を知るには、不動産会社による査定を受ける必要があります。

土地の適正価格を調べるために必要なのが、「公示地価」と「基準地価」です。公示地価は地価公示法、基準地価は国土利用計画法と、それぞれ法律に基づき公的機関から発表される価格のことを言います。

公示地価と基準地価は、土地取引の際の指標となります。

公示地価とは、国土交通省が発表する全国の標準地の価格のことを言い、公示価格とも呼ばれます。一方、基準地価は都道府県が発表する基準地の土地価格のことを言います。

それぞれ、次のような違いがあります。

公示地価 基準地価
発表主体 国土交通省 都道府県
基準地 全国約26,000地点 全国20,000地点以上
基準日 1月1日 7月1日
発表日 3月 9月

評価方法はどちらもほぼ同じで、不動産鑑定士による鑑定に基づき評価されます。ただし、公示地価は毎年1月1日時点、基準地価は毎年7月1日時点と、基準日が異なり、基準地価は公示地価を補完するためや、半年ごとの動向をみるためなどに利用される場合が多くあります。

公示地価と基準地価は、国土交通省の「土地総合情報システム」で確認できます。また、各都道府県のホームページにも記載されているので確認するとよいでしょう。

参考:土地総合情報システム

税金を算出するうえで、大きく関わるのが「路線価」と「固定資産税評価額」です。順に解説していきましょう。

路線価とは、税金を算出するために路線(道路)ごとに決められた土地の価格で、相続税路線価と固定資産税路線価の2種類があります。単に路線価という場合は相続税路線価を指し、相続税や贈与税を算出する基となる相続税評価額を求めるために利用する価格のことをいいます。

一方、固定資産税路線価は、固定資産税や都市計画税などを算出する基となる固定資産税評価額を求めるための価格です。

それぞれの違いは、次のとおりです。

路線価(相続税路線価) 固定資産税評価額
発表主体 国税庁 市町村(東京都23区は都)
基準日 1月1日 1月1日(3年毎)
発表日 7月 4月~5月頃
価格水準 公示地価の80%ほど 公示地価の70%ほど

相続税路線価が毎年発表されるのに対し、固定資産税評価額は3年ごとに価格が更新されるという違いがあります。また、価格水準も相続税路線価が公示地価の80%ほどなのに対し、固定資産税評価額は70%ほどと低くなります。

相続税路線価・固定資産税路線価は、「全国地価マップ」のサイトで確認できます。調べたい土地の前面道路に記載されている数字が路線価になるので、土地面積を掛けるとおおよその評価額が算出できるでしょう。

参考:全国地価マップ

相続税路線価のみであれば、国税庁のホームページでも調べることができます。また、固定資産税評価額は、すでに不動産を所有している人であれば、毎年市町村から送付される固定資産税納税通知書に記載されているので、確認することが可能です。通知書がない場合などは自治体の窓口でも確認できるので、問い合わせてみるとよいでしょう。

参考:財産評価基準書路線価図・評価倍率表

不動産評価額である「一物五価」について、それぞれの評価額の内容や調べ方についてお伝えしました。1つの不動産であっても5種類の価格があり、それぞれ目的に応じてどの評価額を使うのかを判断しなければなりません。

それぞれの評価額の内容を知っておくことで、不動産を多角的に評価できるようになります。この記事を参考に、不動産評価額について理解し、適切に使い分けることによって不動産の価格を判断できるようになりましょう。

宅地建物取引士、FP2級技能士(AFP)
逆瀬川 勇造 氏
Yuzou Sakasegawa

明治学院大学卒。地方銀行勤務後、転職した住宅会社では営業部長としてお客様の住宅新築や土地仕入れ、広告運用など幅広く従事。
2018年より独立し、不動産に特化したライターとして活動している。

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