【2026年最新】不動産戦略に及ぼす金利上昇の影響と今後の見通し
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2025年12月、日銀は政策金利を0.5%から0.75%程度へと引き上げる決定を下しました。物価の上昇や賃上げが継続するとの見通しから、金融政策の正常化に向けた判断と位置づけられます。
2025年10月に発足した高市政権は「強い経済」を掲げています。そのうえで、積極財政は国民所得の増加や資金需要の拡大を通じて、市場金利に上昇圧力をもたらす要因です。
本稿では、「金利のある世界」への構造的転換を前提とした、新たな不動産戦略の要諦を解説します。
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目次
1. 金利上昇の現状と今後の見通し
日本経済は、ゼロ金利やマイナス金利に象徴される異例の金融政策下に置かれてきました。しかし、コロナ禍を乗り越え、デフレ脱却の兆しが鮮明となり、経済成長を目指す新たなフェーズへと移行しています。その象徴的な出来事の一つとして「金利の上昇」が挙げられます。
ここでは金利に焦点をあて、これまでの金融政策と今後の金利見通しについて解説します。
関連記事:金利上昇が不動産売買に与える影響とは?不動産投資市場の現状と見通しを予測
1.1. 日銀政策金利の推移
日銀の政策金利は、原則として年8回開催される「金融政策決定会合」で決定されます。
過去の推移を振り返ると、2008年9月のリーマンショックを境に金利環境は激変しました。当時0.5%水準だった金利は、同年12月には0.1%へと急速に引き下げられ、日本は出口の見えない金融緩和局面へと足を踏み入れました。
その後も極めて低い金利水準が続く中で、2013年4月にはアベノミクスの下で「量的・質的金融緩和」政策が実施され、日本は大規模な金融緩和と超低金利が長期化する新たな局面に入りました。これが、「金利のない世界」の始まりです。
さらに、2016年1月にはマイナス金利政策が導入され、より深化した「金利のない世界」が続いたといえます。
コロナ禍後、日本経済にようやく回復の兆しが見え始め、政策金利は段階的に上昇しました。2024年3月にはマイナス金利が解除され0.1%となり、同年7月に0.25%へ、2025年1月に0.5%へ、そして12月には0.75%まで引き上げられました。これにより、約2年弱で1995年以来、約30年ぶりの高水準に達しています。
一方、2013年から続いた「金利のない世界」は、不動産投資の金利負担を最小限に抑え、レバレッジ効果を最大限に享受できる時代でした。銀行融資の基準となる短期プライムレートも長らく底を這っていましたが、今回の利上げにより状況は大きく変わりつつあります。今、投資家や事業会社は「金利コスト」を織り込んだ真の収益力が試される局面に立たされています。
出典:日本銀行「長・短期プライムレート(主要行)の推移 2001年以降」より作成
※2026年は、1月・3月・4月・6月・7月・9月・10月・12月の計8回開催される予定で、日程も公表されています。
1.2. 長期金利の推移
「金利のある世界」への回帰は、企業活動における資本コストの増大を意味する一方、預金や運用収益の改善という側面も併せ持ちます。
失われた30年ともいわれる日本経済の低迷期を、不動産投資のベンチマークとなる長期金利の推移から確認することも重要です。下図は、長期金利の目安とされる10年国債利回りの推移です。
出典:財務省「国債金利情報」より作成
バブル崩壊後、金利は急低下しました。2000年代中盤に一時的な回復を見せたものの2009年のリーマンショックを機に再び下落し、2016年以降はマイナス金利政策の下、安定資産である国債を保有しても収益がほとんど得られない異例の市場環境が続いていたのです。
2021年以降は上昇基調となり、2025年末には10年国債利回りが2%を上回る局面も見られました。ここで注意すべきは、長期金利の上昇が不動産投資の「イールドギャップ(物件利回りと借入金利の差)」を押しつぶすという点です。特に、金利上昇分を賃料へ転嫁できない場合、支払利息が収益を上回る「逆ザヤ」の状態に陥るリスクも現実味を帯びてきました。
長期金利は為替や景気に左右され、「適正水準」を一概に定めるのは容易ではありません。しかし、もはや超低金利を前提とした投資判断が通用するフェーズではないため、「金利のある世界」を前提とした、新たな不動産戦略の構築が求められています。
最近の金利上昇は、30年間のデフレ局面からの転換を示す兆しとも捉えられます。その結果、今後の投資戦略や企業経営において「金利」はより重要な要素となります。
1.3. 今後の金利推移の見通し
金利上昇が今後も続くか否かについては、投資戦略において重要なポイントです。現在の政策金利0.75%はなお低水準と見られており、発表時も為替の反応は小さく、円安方向に振れる場面も見られました。
円安は、現在国内の大きな課題である「物価高」の一要因ともされており、追加利上げは当然という見方もあります。一方で、積極的な財政政策に基づく各分野での投資拡大において、利上げはコスト負担増となる弊害もあります。
政策金利の決定は日銀が行いますが、同時に政府の経済政策との整合性を図る必要もあります。そこで、今後の利上げについての見通しは、以下2つのシナリオが考えられます。
- 企業収益の改善と賃金上昇が継続する局面で実施される、景気拡大を前提としたポジティブな利上げ
- 財政運営への懸念から円安が進行し物価上昇圧力が強まる局面で実施される、物価・為替対策を意図した防衛的な利上げ
望ましいのは前者のシナリオであり、強い経済の実現には、より一層企業収益を改善させる経営判断と投資戦略が求められるでしょう。
1.4. 金利上昇と不動産投資動向
金利上昇下で、不動産投資の動向は今後どのように変化するのでしょうか。
2025年1月に金利が上昇した要因の一つは、コロナ禍を脱した2024年のGDPが600兆円を超え、実質成長率は4年連続でプラスとなるなど、日本経済が回復基調となったことです。
不動産分野では、2002年施行の「都市再生特別措置法」以来、日本各地で実施された都心部の再開発による経済波及効果が表れるようになり、大都市をはじめ地方の主要都市においても賑わいが戻っています。
活発な都市再開発には、量的・質的金融緩和による低金利の後押し効果もありましたが、今後も継続する再開発事業には、金利上昇の影響が及ぶ可能性があります。そのため、多様な資金調達を可能にする仕組みが必要です。
先行指標である「東証REIT指数」等の先行指標の動きを概観すると、足元では堅調な推移を見せています。
一方で、金利上昇や建設コスト上昇などが懸念事項です。今後は「市場全体の堅調さ」に頼るのではなく、コスト上昇を賃料へ転嫁できる力を持つ、個別アセットの選別がより一層進むと考えられます。
民間調査会社の試算では、調査対象企業の1.6%が金利上昇により赤字転落するとの結果を公表しています。一方、国土交通省が公表している不動産価格指数は、商業用不動産のすべてが2021年以降上昇しており、特にオフィスは2025年第2四半期で179.8(2010年=100)に達しており、物件価格の高止まりが鮮明となっています。
こうした状況下で、上昇するコストを吸収できる投資ボリュームと、運用面における高い収益性が、今後の不動産投資の成否に関わるといえるでしょう。
2. 金利上昇に備える不動産戦略|確認すべき3つの視点
ここからは、今後の金利上昇に対する不動産戦略について、「収益性」「借入比率」「市場環境」の3つの視点から重要なポイントを解説します。
2.1. 収益性のチェック
金利上昇局面では、事業の収益性をセグメント別・物件別に確認することが重要です。収益改善の見込みが立たない物件を早期に売却し、成長余力の高い物件へと資本を再配分する「資産入替」は財務体質を強化する上で、有効な選択肢です。
物件が変われば、賃料水準やテナントの属性も変わります。空室率やテナント回転率などにより収益性は変化するため、ポートフォリオ全体のキャッシュフローの質を改善させることが可能になります。
また、資産入替の強力な後押しとなるのが、「特定の資産の買換え特例」による圧縮記帳です。要件を満たせば、譲渡益に対する法人税を将来へ繰り延べることができ、再投資の原資を最大化できます。現行制度では2026年3月末が期限ですが、「令和8年度税制改正大綱」において3年間の延長が盛り込まれました。改正案が成立すれば、今後3年間は「攻めの資産入替」を断行する絶好の好機となるでしょう。
なお、効果的な入れ替えを実施するには、アセットマネジメントの観点で物件選定を支援できる専門会社に相談し、取引を進めることが重要です。
関連記事:キャッシュフローとは?計算方法から改善の仕方、企業不動産の経営戦略まで解説
2.2. 借入比率のチェック
低金利下では借入金利の負担は小さかった一方、金利が上昇すると収益性への影響は無視できません。LTV(借入比率)が高い物件ほど、わずかな利上げがキャッシュフローを悪化させ、場合によっては逆ザヤを招くリスクを孕んでいます。
下表は価格30億円の不動産を購入する場合、借入比率を45%・55%・65%の3パターンとし、借入金利を1.5%・3.0%・5.0%の3パターンとした場合の、初年度の利息負担を試算しました。LTVと借入金利の変動がNOIに対してどの程度インパクトを与えるかを可視化しています。(計算を簡単にするため、元本返済は考慮せず、利息のみを年1回払いとして試算)
| 借入比率 | 借入金 | 1.5% | 3.0% | 5.0% |
|---|---|---|---|---|
| 45% | 13億5,000万円 | 2,025万円 | 4,050万円 | 6,750万円 |
| 55% | 16億5,000万円 | 2,475万円 | 4,950万円 | 8,250万円 |
| 65% | 19億5,000万円 | 2,925万円 | 5,850万円 | 9,750万円 |
借入比率が大きいほど金利が上昇した場合の金利負担は大きく、表の最小ケース(借入比率45%・金利1.5%)と最大ケース(借入比率65%・金利5.0%)を比べると、利息額は約4.8倍になります。
低金利下では、レバレッジを効かせることで収益を最大化できましたが、金利上昇下ではその戦術がリスクに直結します。金利コストが物件のキャップレートを上回る逆ザヤに陥れば、投資価値は著しく毀損されます。今後は、自社の資金調達余力と物件の収益力を照らし合わせ、LTVの最適解を再定義することが、不動産戦略の成否を分けるでしょう。
2.3. 市場環境のチェック
不動産市場はさまざまな要因の影響を受け、不動産価格や取引量が変化します。ここでは、金融機関の貸出金利の変動と不動産価格の関係について見ていきます。
不動産投資の採算性を示す指標の一つに「イールドギャップ(実質利回り - 借入金利)」があります。例えば、実質利回りが5%の物件で借入金利が2%から3%に上昇すると、イールドギャップは3%から2%へ縮小します。
元のイールドギャップ3%を維持するには、実質利回りを高める必要があり、結果として物件価格を下げなければなりません。このように、金利が上がるとキャップレート(期待利回り)が上昇し、不動産価格に下押し圧力がかかる傾向があります。
ここまでは、一般的な整理です。ただし、金利のある世界では、従来とは異なる動きが生じる可能性もあります。
まず、金利以外にも不動産価格の変動要因があります。例えば、インフレ局面では、賃料改定が進み、NOI(純収益)が増加することで、金利上昇分を補填して余りある収益改善が期待できます。また、経済成長が続く局面や、人口増加が進む地域では、不動産価格が上昇しやすいです。
近年の調査では、NOIの増加率が不動産価格の上昇率を上回る場合、価格が上昇しながらキャップレートも上昇するという、従来の常識とは異なるシナリオも示唆されています。
「金利のある世界」では、「金利上昇=不動産価格の下落」という固定観念を捨て、今後は金利動向に加え、対象物件の賃料転嫁力やNOIの成長性を緻密に点検することが不可欠です。
3. 金利上昇リスクに強い不動産ポートフォリオの作り方
2013年のアベノミクス始動以来の金融緩和政策が終焉し、金利のあるノーマルな経済環境では不動産戦略の見直しが必要です。ここでは、金利上昇分を転嫁しやすいアセットの種類と、金利の上昇というリスクに対応できるポートフォリオ構築について解説します。
3.1. 賃料転嫁しやすいアセットの選定
金利が上昇すると利息負担が増え、その分を賃料に転嫁できない場合、直接的な収益悪化を招きます。そのため、賃貸物件について賃料改定の余地があるかという検討が必要です。
例えば、以下の特徴を持つ物件はインフレ耐性が高く、利上げ分を転嫁しやすい優良なアセットといえます。
- 入居者の所得水準が比較的高いマンション
- 業況が堅調な企業が多く入居するオフィス
次に、金利上昇局面での不動産投資として、入居率が低く十分に活用されていない社宅やマンションなどの「遊休不動産」に着目する考え方もあります。空室率が極端に高い物件は収益性が低いため、低価格で売却されるケースがあります。
なお、既存のままでは賃貸物件としての利用が難しい場合も多く、一定のリフォームが必要です。リフォーム・リノベーションで再生し、バリューアップして収益化することで、収益性の改善を図る取り組みも利上げ局面における投資戦略の一つといえるでしょう。
また、金利の変動に対応しやすいアセットもあります。固定賃料のオフィス等と異なり、ホテルなどの宿泊施設は1日単位でADR(客室単価)の設定が可能です。短期間で金利が変動し得る環境では、固定賃料型の賃貸事業に加えて、変動賃料型アセットの比率を高めるなど、多角化によるリスク分散が有効と考えられます。
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3.2. 分散・オフバランスを考慮したポートフォリオの構築
前述の通り、レジデンス・オフィス・ホテル・店舗など多様なアセットへ投資を分散させる手法は、金利上昇に備える基本的な考え方です。
また、利上げの影響を直接受けることがないよう資産を関連会社に売却し、セール・アンド・リースバックで利用を継続する「オフバランス」の手法も大きな選択肢です。そのほか、不動産を取得し運用する「現物投資」のみではなく、保有不動産の一部を私募REITやJ-REITへ売却するなど、不動産の証券化手法を活用して投資リスクを分散させる方法も有効です。
金利上昇が予想される今日、以上の観点からポートフォリオを点検・再設計することが重要といえるでしょう。
加えて、収益性が低下し、上昇する資本コストに見合わない不動産については、早期売却も視野に入れるべきです。あらかじめ自社の「ハードルレート(最低許容利回り)」を定めておきましょう。
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4. 金利のある時代を勝ち抜く、新しい不動産戦略の第一歩
いわゆる「失われた30年」の後半、日本は超低金利の環境が続きました。主要先進国の中では、2025年6月にスイスがゼロ金利となった例を除けば、日本の超低金利は長期にわたり突出しており、特殊な金融環境にありました。
2023年4月に日銀総裁が交代し、金融政策の見直しが予想されていましたが、実際に2024年3月、日銀はマイナス金利政策を解除し、金融政策の枠組みを見直しました。
現在の政策金利0.75%は過渡期であり、今後は2.0%前後が「中立金利」であるといわれています。不動産投資戦略においても、政策金利2.0%を意識した事業計画が必要です。
また、金利上昇局面では、アセットの特性に応じて、賃料改定・売却・オフバランス・物件の入れ替えなどを組み合わせ、不動産戦略の抜本的な見直しが必要になります。
「金利のない世界」から「金利のある世界」への転換は、不動産戦略を大きく転換させる契機と位置づけましょう。
一級建築士、宅地建物取引士
弘中 純一 氏
Junichi Hironaka
国立大学建築工学科卒業後、一部上場企業にてコンクリート系工業化住宅システムの研究開発に従事、その後工業化技術開発を主体とした建築士事務所に勤務。資格取得後独立自営により建築士事務所を立ち上げ、住宅の設計・施工・アフターと一連の業務に従事し、不動産流通事業にも携わり多数のクライアントに対するコンサルティングサービスを提供。現在は不動産購入・投資を検討する顧客へのコンサルティングと、各種Webサイトにおいて不動産関連の執筆実績を持つ。
東急リバブル ソリューション事業本部では、最新の市場データを独自の視点で分析したレポート「不動産マーケットトレンド」を公開しています。
各方面への調査に基づいた本資料を、今後の不動産取引における判断材料としてぜひご活用ください。
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