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ニーズ拡大するデータセンター事業。
注目の背景と国内の動向は?

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ニーズ拡大するデータセンター事業。注目の背景と国内の動向は?

インターネットが私たちの生活に不可欠なものとなり、情報や資料を紙ではなくデータとしてやり取りすること、保管することが一般的になってきました。それに伴い、データセンター事業が注目を集めるようになってきています。
データセンター事業とは、デジタルデータの集積や管理にかかわる事業のことです。データセンター事業がなぜ注目されているのか、また、日本国内ではどのような動向が見られているのかについてまとめました。データセンター事業の具体的なビジネスモデルも紹介するので、ぜひご覧ください。

目次

  1. データセンター事業とニーズ拡大の背景
  2. データセンター事業における国内の動向
    1. 時代に応じて変化するデータセンター事業のビジネスモデル
  3. データセンター事業の概要を知り今後の動向にも注目しよう

データセンター事業とは、データセンターを通してデータの集積や管理をする事業です。デジタル化が進むにつれてデータセンター事業も拡大し、日本では年に10万平方メートル、実に東京ドーム2個分の面積に相当するデータセンターが作られているといわれています。

そもそもデータセンターとは、インターネットサーバーやデータ通信などに関わる装置の運用に特化した施設を指します。データセンターの主なメリットとしては、次のものが挙げられます。

  • 安定した電力と通信を供給できる
  • 24時間365日体制の運営が可能
  • 自社でデータを管理するよりもコストを抑えやすい
  • 高度なセキュリティ対策が実施されている
  • 災害時でもデータを守りやすい

また、データセンターは、不動産の新たな活用方法としても注目を集めています。サーバーを稼働させる十分量の電気供給さえあればどこでも設置できるため、人口が少ない地域や公共交通機関が発達していない利便性が低い土地などもデータセンターの候補地となります。

データセンターの候補地には政治的に安定していることや、データ管理に対応できる高度な人材を確保できることなどの条件が求められますが、日本はこれらのすべての条件を満たす国として、世界からも注目を集めています。また、地政学的にも、アジア圏、太平洋圏におけるデータセンターの適地として高く評価されています。

実際のところ、データセンターは、災害時に大切なデータを守るためにも必要な設備です。ニーズが高まっている今、不動産の有効活用や投資先の1つとしてデータセンター事業を検討できるでしょう。

IDC Japanの調査によれば、日本におけるデータセンターサービス事業の市場規模は増加の一途をたどっています。実際に、1年に約10.0%程度の成長率を示し、2021年には2兆円を超える売上高にまで成長しました。なお、2018年時点では関東に約6割のデータセンターが集中しています。データセンターを利用する企業やデータセンター事業にかかわる人材が主要都市に集中していることを考えれば、当然の流れといえるでしょう。

しかし、首都直下型地震への対策の観点からは、首都圏にデータセンターが集中していることは望ましいとはいえません。また、特定の地域にデータセンターが集中すると、IoTの全国展開が遅れることにもつながります。

総務省では、首都圏に集中しているデータセンターを分散すべく、地方でのデータセンター整備事業を進めています。例えば、データセンターを設置する電気通信事業者に対して、東京圏以外に建設することや地域経済に貢献するように事業を進めることなどを条件として、助成金の支給を実施してきました。

また、金融機関から融資を受けて東京圏以外にデータセンターを整備する際の債務保証も提供しています。国(国立研究開発法人情報通信研究機構)による債務保証を利用することで、融資が受けやすくなるだけでなく、貸付条件が有利になることも期待できるでしょう。

他にも、データセンターに対する固定資産税の特例措置なども実施されています。なお、いずれの制度、措置も利用できる期限・条件が決まっているので、総務省ホームページなどで最新の情報を入手するようにしましょう。

データセンター事業の推進に取り組む企業も増えてきています。例えば、ある不動産会社では、データセンター用地の売買や賃貸仲介だけでなく、データセンター事業のアドバイザリーサービスや既設データセンターの鑑定サービスなども提供しています。

また、BCP対策としてデータセンター事業を手掛ける企業もあります。BCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)とは、災害などが起こったときでも損害を最小限に抑えて事業を継続していくために、システムを最適化することや連絡体制の構築などを指します。

詳しくは次の記事をご覧ください。

関連記事:今こそ、BCP(事業継続計画)を考える〜BCPの基本情報と策定の手順を徹底解説!〜

参考:総務省「地域データセンターの整備促進」
参考:総務省「令和4年 情報通信に関する現状報告の概要」

2.1. 時代に応じて変化するデータセンター事業のビジネスモデル

従来のデータセンター事業とは、データセンターを所有し、ユーザーにデータセンターの処理能力を提供して利用料を受け取るスタイルでした。ユーザーがつけばコンスタントな利益を得られるビジネスモデルですが、多額の初期投資額がかかるため、個人の参入は容易ではありません。

近年、運営会社が投資家にデータサーバを提供し、運営会社が投資家からデータサーバを預かるという形で運用するビジネスモデルも誕生しています。新しいビジネスモデルは初期投資額が低く、また運営会社がデータサーバのユーザー獲得も行うため、事業開始と同時に収益を得られるというメリットがあります。

データセンターを活用した不動産投資は、一般的な不動産投資(賃貸による家賃収入)と比べて利回りが高く、投資家にとっても魅力です。また、ニーズに比べてデータセンターの供給は少なく、ユーザー獲得が簡単であることも、高い収益性の実現につながっています。

デジタル化が進む現代において、データセンターに対するニーズは今後も高まっていくと考えられます。すでに首都圏では多数のデータセンターが設置されていますが、ニーズの増加に応えるため、そして、首都直下型地震などの災害への対策のためにも、地方部でのデータセンターの設立は急務です。

また、データセンター事業はデータセンターを所有してユーザーから利用料を受け取る従来型のビジネスモデル以外に、運営会社にデータセンターを貸し出すビジネスモデルも出てきています。

不動産を取り巻く状況は常に変化し続けています。現在はニーズの高いデータセンター事業ですが、以後どのように変化するか予測するのは容易ではありません。今後も国内外の動向に注目していきましょう。

弁護士、宅地建物取引士、松浦綜合法律事務所代表
松浦 絢子 氏
Ayako Matsuura

京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。宅地建物取引士の資格も有している。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産・建築、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。