複数物件を持つとどうなる?不動産投資の拡大戦略とリスク管理
ざっくり要約!
- 複数物件の保有には、様々なメリットがある一方で、管理や税務の負担も増える。
- 1件目と2件目以降では投資戦略が大きく変わる。
- 複数所有には計画性と戦略性が不可欠。
不動産投資で1件目の物件を所有すると、「次は2件目、3件目を持つべきか?」という疑問が湧いてくる方も多いのではないでしょうか。複数の物件を保有して運用すれば、収益の拡大や節税効果、リスク分散といった多くのメリットが期待できます。一方で、管理の手間や税務処理の複雑化、資金繰りの難しさといった問題も避けて通れません。
この記事では、不動産投資における複数物件保有のメリットとデメリットを整理し、1件目と2件目以降で戦略がどう変わるのか、投資規模拡大のポイントと注意点をわかりやすく解説します。
複数物件で不動産投資するメリット
不動産投資において複数物件を保有するメリットは、単に家賃収入が増えるだけではありません。税制上の恩恵やリスク分散、将来の資産形成につながることなども大きな利点です。複数物件を持つことで得られる主なメリットを4つの視点から解説します。
1.利益が増える|レバレッジ効果とスケールメリット
物件を複数所有すれば、単純に家賃収入が増えるだけでなく、投資効率も向上するのです。例えば、1件目の物件で得られた家賃収入を基に2件目を購入し、2件目で得られた家賃収入も合わせて3件目をさらに購入……と収益を再投資することで、複利的に投資規模を拡大しより大きな収益を目指すことができます。
また、金融機関からの融資を活用すれば、少ない自己資金でも多くの物件を保有でき、いわゆる「レバレッジ効果」によって資金効率を高めることが可能です。加えて、複数物件を管理する過程で運営ノウハウが蓄積されるため、スケールメリットによる管理の効率化や、業者との交渉力の向上といった副次的な利点も得られます。
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2.税金対策になる|青色申告や減価償却の活用
不動産を事業的規模で運用すれば、税制面での優遇を受けられるようになります。例えば、青色申告を活用すれば最大65万円の控除が可能です。控除を受けられれば、所得税や住民税の節税効果を期待できます。また、複数物件を所有することで減価償却費を多く計上できるため、所得全体を圧縮することも可能です。
さらに、専従者給与制度を活用すれば、家族に支払う給与も経費として認められるため、家計全体での税負担を軽減する仕組みも作れます。物件数が増えるほど、こうした制度の活用幅が広がる点は大きな魅力です。
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3.リスクを分散できる|空室・災害・地域依存を回避
1件のみの物件保有では、空室や災害などのトラブルが発生した際に収入がゼロになるリスクがあります。しかし複数の物件を異なるエリアで保有し、入居者のターゲットも変えて運用することで、リスクを効果的に分散できます。
例えば、ある物件で空室が出たとしても、他の物件で満室状態が続いていれば、収益を安定させることができます。また、購入する物件のエリアを分けておくことで、地震や洪水など災害による物理的な損害を最小限にとどめることもできるでしょう。このようにリスクヘッジできることも複数の物件を所有する大きなメリットの一つです。
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4.資産価値の増加と相続対策にもつながる
複数の不動産を保有することは、将来的な資産形成にも直結します。不動産は現物資産であり、長期的に保有することで資産価値の上昇が期待できるケースも少なくありません。さらに、複数物件の所有は相続対策としても有効です。
相続税評価額は不動産としての実勢価格より低くなることが多いため、不動産を保有していれば、現金で保有するよりも相続税を抑えられます。また、複数の物件を保有していれば相続人の数に応じて分けることもしやすく、遺産分割トラブルを避ける手段にもなります。
複数物件で不動産投資するデメリット
複数の物件を保有することで得られるメリットは多い一方で、リスクや負担も増えていくのも事実です。収益性や節税効果だけを見て安易に拡大すると、思わぬ落とし穴に陥ることもあるでしょう。ここでは、複数の物件を保有することで生じる代表的なデメリットについて解説します。
1.管理が煩雑になる|修繕・対応・管理会社との関係
物件数が増えると、それぞれの物件で発生する修繕や清掃、入居者対応、トラブル処理などの管理業務も比例して増加します。業務を管理会社に一任していたとしても、複数社とやり取りが必要になれば情報の一元管理は難しくなり、連絡ミスや対応の遅れが生じる可能性もあります。
また、大規模修繕や設備交換のタイミングが重なれば、手間だけでなく費用の負担も一気に増すため、事前の計画と分散管理が不可欠です。管理の煩雑化は精神的な負担にもつながりかねません。
2.税金・確定申告の手間が増える|制度理解が必須
物件が複数になると、収支や経費の記帳が複雑になり、確定申告の作業負担が大幅に増します。青色申告を活用して節税するためには、複式簿記での帳簿作成や損益計算書・貸借対照表の提出が求められ、制度や税法の理解が不十分だと申告ミスのリスクも高まります。
減価償却の取り扱いや事業規模の判定、専従者給与の適用条件など、細かなルールを押さえておかないと損をしてしまう可能性もあるため、税理士への依頼やクラウド会計ソフトの導入など対策が必要です。
3.融資が通りづらくなる|財務体質の悪化に注意
1件目の購入後、順調に返済と運用が進んでいても、2件目以降の物件を追加で購入する際には金融機関からの融資審査が一段と厳しくなります。すでに借入残高が多い状態では、年収や自己資金が同じでも「借入過多」と判断され、融資が下りにくくなるケースもあるでしょう。
また、投資規模の拡大を急ぎすぎて自己資金を使い果たしたり、収益性の低い物件に手を出したりしてしまうと、ポートフォリオ全体の財務バランスが悪化し、以後の拡大戦略に支障が出る恐れがあります。継続的な投資規模の拡大を見据えるなら、1件目から「次を見越した堅実な財務戦略」が必要です。
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1件目と2件目以降で投資戦略はどう変わるのか

不動産投資は1件目と2件目以降で戦略の立て方が大きく変わります。最初の1件でつまずくと、金融機関からの評価が下がって次の物件取得が難しくなるため、「投資規模を拡大し続けること」を前提とした投資判断が必要です。5つの重要な視点から戦略の違いを解説します。
借り入れ:1件目の与信が2件目以降に影響
不動産投資の規模を拡大するためには、金融機関から融資を引き出すことが重要です。特に1件目の運用実績は、金融機関が2件目以降の融資を判断する際の重要な指標となります。
家賃収入の安定性、ローン返済の遅延がないか、収支が健全かといった実績をもとに「与信枠」が評価されるため、1件目から堅実な経営と記録の整備が必要です。また、金融機関ごとに審査基準や得意なローン商品が異なるため、2件目以降の拡大を見据えて、早い段階から複数行との関係を築いておくことも有効です。
キャッシュフロー:満室前提ではなく「余力」を残す発想
複数の物件を同時に運用するうえでは「満室前提の収支計画」を立てるのはおすすめできません。空室リスクや突発的な修繕費、税負担の増加などを見越して、キャッシュフローに“余白”を持たせた計画を立てることが重要です。
また、複数物件で収入と支出が交錯する中では、収支の管理精度も問われます。日頃から物件ごとの家賃収入・経費・修繕予備費を明確に仕分けて、資金繰りを可視化することで、健全な投資規模の拡大が可能になります。
立地:分散によるリスクヘッジと管理のしやすさ
複数の物件を保有する場合は、立地も慎重に選ぶことが必要です。1件目では「需要が高い駅近」など王道エリアを選ぶのが良いでしょう。2件目以降はエリアを分散することで、災害・地域ニーズの変動といったリスクを抑えるのがおすすめです。
ただし、物件同士の距離が離れすぎると現地対応の効率が落ちるため、リスク分散と管理のしやすさのバランスを考慮したエリア戦略が重要です。将来的に物件の売却も視野に入れるなら、流動性のある立地を中心として選ぶと良いでしょう。
物件種別:ポートフォリオで築年・間取りを分散
2件目以降の投資では、物件種別の「組み合わせ」が戦略的な意味を持つようになります。例えば1件目がワンルームマンションであれば、2件目はファミリー向けアパートとすることで、異なる入居者層をターゲットにできるため、空室や賃料下落のリスクを分散可能です。
また、築年数が異なる物件を保有することで、修繕費が発生するタイミングをずらし、キャッシュフローを安定させる効果も期待できます。自分の投資スタイルに合ったポートフォリオを構築することが、長期的な成功の鍵です。
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税務と法人化の視野|青色申告・専従者給与・法人スキーム
複数物件を所有する段階に入ると、税務面での工夫が成果に直結します。青色申告による特別控除や専従者給与の活用はもちろん、物件数や所得が増えてきた段階で法人化を検討すれば、さらなる節税と資金調達の可能性も出てきます。
法人化すれば、所得分散による節税や赤字の繰越なども可能です。ただし、法人化には設立・運営コストや会計管理のハードルもあるため、収益規模や運用方針に応じた慎重な判断が求められます。税理士など専門家への相談も有効です。
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複数物件の所有に向いている人・向いていない人
複数物件を保有すれば、収益拡大や節税のチャンスが広がる一方で、管理・税務・資金繰りの難易度も大きく上がります。複数物件の所有に向いている人と向いていない人の特徴を、それぞれ解説します。
向いている人:計画的・戦略的に資産を増やせる人
複数物件の保有に向いているのは、長期的な視点で計画を立て、戦略的に行動できる人です。複数物件を効果的に運用するためには、物件ごとの収支をしっかり管理し、ローンの返済計画、税務対応、修繕費の積立などを事前に見通せる力が求められます。
また、数字に強く、Excelやクラウド会計ソフトなどを使いこなして資産状況を「見える化」できる人は、拡大の過程でも冷静な判断ができるでしょう。
さらに、不測のトラブルや空室にも柔軟に対応し、問題解決を前向きに乗り越えられるメンタルも重要です。金融機関や管理会社との信頼関係を丁寧に築ける人も、複数物件投資を成功させやすいタイプと言えます。
向いていない人:感覚的・場当たり的に判断してしまう人
一方、感覚的な判断で物件を購入したり、明確な資金計画や経営戦略がないまま拡大を進めてしまう人は、複数物件の保有に向いていません。
例えば、家賃収入があるからといって無理な借り入れを続けたり、空室や修繕の対策を場当たり的に処理していると、いずれキャッシュフローが破綻してしまいます。
また、税金や会計の知識が乏しい状態で確定申告を自己流で行うと、税務リスクが高まります。「なんとなく儲かりそう」「他人がやっているから自分も」といった動機で投資を始める人は、まず1件目を慎重に運用し、学びながら判断力を養うことが必要です。
まとめ
複数の物件を保有して運用するのは、不動産投資の収益性や安定性を高める大きなチャンスである一方、管理や税務の処理といった負担も増すため、慎重な判断が求められます。
特に1件目での実績がその後の拡大戦略に直結するため、最初から長期的な視点と戦略を持つことが重要です。物件選びや融資、税務の知識を深めながら、自身の投資スタイルやキャパシティに合った形で規模を拡大していくことが、成功のカギとなります。

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ワンポイントアドバイス
不動産投資による収益を拡大したいのであれば、複数物件の保有は必ず必要になります。1件目で慣れると、例えば現地まで見に行かないなど、2件目以降は物件選びが手抜きになってしまう人も少なくありません。しかし、2件目以降もこれまでと変わらず慎重に物件を選ぶことが、複数物件運用を成功させるためのポイントになります。また、全部を自分一人でやろうとせずに、任せられる部分は専門家の手を借りることも重要です。
この記事のポイント
Q. 不動産投資で複数の物件を持つメリットはありますか?
A. 不動産投資において複数物件を保有するメリットは、単に家賃収入が増えるだけではありません。税制上の恩恵やリスク分散、将来の資産形成につながることなども大きな利点です。詳しくは「複数物件で不動産投資するメリット」をご覧ください。
Q. 不動産投資で複数の物件を持つデメリットはありますか?
A. 複数の物件を保有することで得られるメリットは多い一方で、リスクや負担も増えていくのも事実です。収益性や節税効果だけを見て安易に拡大すると、思わぬ落とし穴に陥ることもあるでしょう。詳しくは「複数物件で不動産投資するデメリット」をご覧ください。
Q. 複数物件の所有に向いている人・いない人はどんな人ですか?
A. 複数物件を保有すれば、収益拡大や節税のチャンスが広がる一方で、管理・税務・資金繰りの難易度も大きく上がります。複数物件の所有に向いている人と向いていない人の特徴を、それぞれ「複数物件の所有に向いている人・向いていない人」にて解説します。