サブリース契約の落とし穴とは? メリットとリスクを解説
ざっくり要約!
- サブリース契約には空室リスクを軽減しながら安定収入を得られるメリットがある
- トラブルを避けるためには契約内容を事前に細かくチェックすることが重要
サブリース契約は、空室リスクを避けて安定収入を得られるというイメージから、特に不動産投資の初心者や相続で物件を引き継いだ方などに選ばれています。
しかし、その一方で「保証家賃を下げられた」「解約できない」などのトラブルも多く、リスクを知らずに契約して後悔するケースも後を絶ちません。この記事では、サブリース契約の仕組みとともに、実際のメリットと注意すべき落とし穴について分かりやすく解説します。
サブリースとは? 仕組みを解説
サブリース契約は、賃貸経営における空室リスクや管理の手間を軽減できる手法として広く利用されています。しかし、その構造や契約関係は一般的な賃貸管理と異なるため、内容を正しく理解しておくことが重要です。サブリースの基本的な仕組みと、オーナー・業者・入居者の間で結ばれる契約の違いについて整理します。
マスターリースと転貸借契約の違いとは?
サブリース契約は、主に「マスターリース契約」と「転貸借契約(サブリース契約)」の二重構造によって成り立っています。
オーナーとサブリース会社の間で結ばれるのがマスターリース契約で、これは不動産会社がオーナーから物件を一括して借り上げる契約です。一方、サブリース会社がその物件を一般の入居者に再び貸し出すのが転貸借契約(サブリース契約)です。
この二重構造により、入居者との直接契約がないオーナーは、日常の管理業務から解放される反面、契約上の立場が「貸主」ではなく「元貸主」となります。不動産投資における通常の賃貸借契約とは、法律上の制限や権利関係に違いが生じる点に注意が必要です。
家賃保証があるサブリースの特徴と注意点
サブリースの最大の特徴は「空室があっても家賃が保証される」という点です。サブリース会社が毎月一定額の賃料をオーナーに支払うため、満室時の概ね80~90%の範囲で安定した収入を得られる仕組みになっています。投資家にとって、空室リスクや家賃滞納のリスクを回避できるのは大きなメリットです。
ただし、「保証」とはいえ永続的に同額が支払われるとは限りません。数年ごとに保証額が見直されたり、減額されたりといったケースも多いものです。また、新築時や空室発生後に免責期間が設定されているため、最初の一定期間は家賃が支払われないこともあります。家賃保証の仕組みを過信せず、契約書の条件を正確に把握しておくことが、トラブル回避のポイントです。
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サブリースとは? メリット・デメリットや注意点をわかりやすく解説
サブリースのメリットは安定収入
サブリース契約が注目される最大の理由は、家賃収入が安定することです。しかし、サブリースのメリットは安定収入だけではありません。
空室リスクの軽減や管理の手間削減、さらには相続や資産運用の観点でも多くの利点があります。サブリース契約によって得られる代表的なメリットを具体的にご紹介します。
安定収入の仕組みと“満室でなくても安心”な理由
サブリース契約が持つ魅力のひとつは、満室かどうかに関係なく、毎月一定の家賃収入を得られる点です。サブリース業者は物件全体を借り上げ、オーナーに対して家賃を保証します。そして、サブリース業者は入居者に対して物件を転貸するというのが、サブリースの基本的な仕組みです。
例え空室が発生しても、その分の家賃収入の変動を気にすることなく、オーナーは決まった金額を受け取れます。サブリース会社に保証される金額は、多くの場合、満室時想定家賃の80~90%程度です。
自主管理や通常の管理委託では、空室が直接的な収入減につながりますが、サブリースであればリスクが抑えられるため、家賃収入のブレが少なく、安定した経営が可能になります。
空室リスクの軽減と家賃滞納の回避
サブリース契約では、空室リスクだけでなく、家賃滞納による損失も回避できます。一般的な賃貸経営では、入居者が決まらない期間や家賃の未払いが課題になりますが、サブリースではそのようなリスクを業者が引き受けてくれます。
オーナーにとっては、物件の入居率や入金確認に一喜一憂する必要がなくなり、安心して経営を続けることが可能です。特にローンを組んでいる場合や副業として物件を保有している人にとって、この「安定性」は大きな強みとなります。
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管理業務の外注で手間を大幅削減できる
サブリース契約では、日常的な物件管理のほとんどを業者に任せられます。入居者の募集から契約手続き、クレーム対応、退去時の清掃や原状回復までを一括で対応してくれるため、賃貸経営の負担を大幅に軽減可能です。
サブリースを利用すれば、不動産投資に不慣れな方や本業が忙しい方でも、手間暇をかけることなく賃貸経営を行えます。「家賃を受け取るだけ」の仕組みが整うことで、実質的に不労所得のような運用スタイルを実現できるのも、サブリースが持つ大きな魅力の一つです。
相続税対策や長期運用にも向くケースとは?
サブリース契約は、相続税対策としても有効な手段です。相続時に不動産が満室で稼働していれば、資産評価額が下がるため相続税を抑えられます。サブリースを利用すれば入居率が安定するため、満室状態を維持しやすくなります。
また、長期的に運用することを前提とした不動産投資にもサブリースは有効です。管理の手間が少なく、経営リスクが限定的であることから、老後の安定収入源として活用されるケースも増えています。
将来的に不動産を子や孫に引き継ぐことを考える方にとっても、安心して任せられる運用方法と言えるでしょう。
サブリースのトラブル事例と注意点
サブリース契約は一見するとメリットの多い仕組みですが、契約後にトラブルに発展した事例は後を絶ちません。特に注意が必要な家賃減額や契約解除、高額なリフォーム費用などに関する実際の問題点と、過去の失敗事例をもとに、契約前に確認すべきポイントを解説します。
家賃減額トラブル:「保証」の言葉に潜む落とし穴
「家賃保証」と聞くと、一定額の収入がずっと続くような安心感を抱きがちです。しかし、サブリース契約における家賃保証は、永久的なものではありません。
大半のサブリース契約には2年ごとの見直し条項が定められており、賃貸市場の状況や物件の稼働状況などに応じて、家賃が減額される可能性があります。
実際に「30年間家賃を保証する」と説明を受けて契約したものの、数年で家賃減額を求められたというトラブルも起きています。契約書に「減額の可能性」が明記されている場合は、オーナー側が減額を拒否できないケースも多いため、事前の確認が重要です。
一方的な契約解除・更新拒否に注意すべき理由
サブリースを利用すると、借地借家法が適用されるため、オーナーよりも借主であるサブリース業者の権利が強く保護されることがあります。そのため、オーナー側から契約の解除を申し出ても、「正当事由」が無い限り、応じてもらえないのが一般的です。
一方で、業者側からは「家賃減額に応じなければ契約を打ち切る」といった圧力がかけられるケースもあり、不公平な契約内容に悩まされるオーナーも少なくありません。契約解除や更新の条件は必ず事前に書面で確認し、オーナーにとって不利な特約がないかチェックしましょう。
倒産・免責期間・高額リフォーム費用のリスク
注意すべきもう一つのリスクはサブリース業者の倒産です。サブリース業者が倒産すれば、家賃保証は打ち切られ、未払い分の回収も困難になります。さらに、入居者との契約が宙に浮き、管理対応もオーナーの負担となる可能性があります。
また、契約開始直後や入居者退去後に「保証家賃支払いの免責期間」が設けられている場合、この期間は家賃が支払われません。さらに、入居者募集の対策を理由として、業者主導で高額なリフォーム工事が提案され、大きな費用負担を強いられるケースも多いものです。
実際の失敗事例に学ぶ:後悔しないために知っておきたいこと
よく聞く失敗事例として、「安心・安定」との言葉にひかれて契約を結んだものの、実際には10年を過ぎた頃に家賃が一方的に減額され、収支が赤字に転落してしまったというものがあります。
このようなケースでは、契約を解除したくても高額な違約金がかかるため、物件を売りたくても売れない状況に陥ったという事例も少なくありません。
そのほか、倒産した業者に敷金を預けていた入居者との間でトラブルが発生し、オーナーが法的対応に追われた例もあります。このような事態を防ぐには、契約内容の精査と、信頼できる業者選びが欠かせません。
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「サブリース新法」とは?
サブリース契約に関するトラブルが全国的に増加したことを受けて、国はオーナーを保護するため新たな法整備に乗り出しました。2020年に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(略称:賃貸住宅管理業法)」が制定されています。この法律の概要と、実際にどのような形でオーナーが守られるようになったのかを解説します。
2020年施行の「賃貸住宅管理業法」のポイント
「賃貸住宅管理業法」は、サブリースを含む賃貸管理業界の適正化を目的として、2020年12月に施行されました。この法律により、一定の規模で賃貸管理業を営む事業者には「登録義務」が課されているほか、オーナーに対する説明責任や業務体制の整備が求められています。
具体的には、賃貸管理戸数が200戸以上ある業者は国への登録が義務付けられました。また、事業所ごとに「業務管理者」の設置が必要です。業務管理者は宅地建物取引士や所定の実務経験・講習を経た有資格者であり、オーナーに対する説明などの役割を担います。オーナーから見ると、従来よりも透明性と信頼性が確保されたと言えるでしょう。
説明義務・勧誘規制・契約書交付など5つの保護ルール
賃貸住宅管理業法では、サブリース契約によって物件のオーナーが不利益を被らないよう、事業者に対して以下のような「5つの保護ルール」が定められています。
重要事項説明の義務化
契約前に「家賃減額の可能性」や「解約条件」などのリスクを含む重要事項を、書面で説明することが義務付けられました。
契約書の交付義務
契約締結時には、契約条件を明記した契約書を必ず交付しなければならず、口頭契約や曖昧な合意を防ぐ仕組みが整備されています。
勧誘時の誇大広告や不当表示の禁止
「30年保証」「家賃固定」など、誤解を招く表現や根拠のない宣伝は厳しく規制されるようになりました。
不実告知や重要情報の隠蔽の禁止
契約に不利となる情報(例:将来の家賃減額条件)を故意に説明しない、あるいは虚偽の説明をする行為は禁止されています。
申出制度の創設
オーナーが契約内容に不備や違法性を感じた場合、国土交通省に申し出て調査・是正を求めることを可能とする制度も設けられました。
これらのルールは、オーナーの知識不足や営業トークによる契約を原因としたトラブルを未然に防ぐために設けられており、今後サブリース契約を検討する際の大きな指標となります。
サブリース契約時に確認すべきポイント

サブリース契約は、あらかじめ契約内容を十分に理解してから契約に進むことが重要です。契約前に必ず確認しておくべき7つの重要なチェックポイントを紹介します。
家賃保証率と減額条件の確認
まず確認すべきは、サブリース契約によって保証される「家賃保証率」です。相場は満室想定家賃の80〜90%ですが、正確には物件の立地や築年数、入居実績によって変動します。
また、契約時の保証額がずっと維持されるわけではなく、2年ごとの見直しで減額されるケースも少なくありません。
契約書には必ず「見直しのタイミング」「減額の上限・下限」「再交渉のルール」などが明記されています。提示された保証率が妥当かどうか、将来的な収支への影響も含めて慎重に確認しましょう。
解約条件・違約金・契約期間の明記
契約を途中で終了したいと思っても、オーナー側から簡単に解約できないケースは多いものです。サブリースには「借地借家法」が適用されるため、貸主であるオーナー側からの一方的な解約には正当な理由が必要とされます。
サブリースの契約書には、契約期間、解約通知の期限、違約金の有無と金額などが定められています。「解約は○ヶ月前通知」や「違約金として家賃の○ヶ月分」など、具体的な条項がトラブルの原因になることもあるため、必ず文面を確認しておきましょう。
費用分担(修繕費・原状回復費・広告費)の明示
見落としがちなポイントとして、入退去時にかかる費用の分担があります。入居者の募集に必要な広告費、退去後の原状回復費や設備の修繕費などが、オーナー負担となるか、業者が対応するのかは契約内容によって異なります。
たとえば、「通常の修繕はオーナー負担」「原状回復費用はサブリース会社が一部負担」など、費用の項目ごとに細かく負担者が分かれているケースも多いものです。細かい部分まで確認し、思わぬ出費が発生しないようにしましょう。
入居者の選定方法と免責期間の有無
サブリース契約では、入居者の選定は基本的にサブリース業者が行います。そのため、オーナーが希望しない入居者が入居する可能性もあります。入居者トラブルが物件の価値に影響することもあるため、「入居者審査にオーナーが関われるか」も確認のポイントです。
また、新築時や退去後には「免責期間」として家賃保証がされない期間が設けられているケースがあります。免責期間が何ヶ月あるのか、どういう場合に適用されるのか、しっかり確認しておきましょう。
業者の信頼性:登録・実績・倒産リスクの確認
サブリース契約を結ぶ際に最も重要とも言えるのが、契約相手となる業者の信頼性です。まずは、国土交通省への「賃貸住宅管理業者登録」がされているかどうかを確認しましょう。登録の有無は、業者が適切に業務を進めているかを確認するための指標になります。
また、過去の経営実績や契約件数、倒産リスクなども確認しておくと安心です。過去にトラブルの多かった業者や、経営状態が不安定な企業との契約は、後々大きな問題に発展する恐れがあります。
契約内容の重要事項説明を誰が行うか?
サブリース契約では、契約前に「重要事項説明書」が交付され、その内容について説明を受けることになります。この説明は、業務管理者や宅地建物取引士など、一定の資格と経験を持つ従業員が行うのが理想です。
説明担当者が誰なのか、信頼できる立場の人物であるかを確認しましょう。また、説明内容が十分でなかったり、契約書と異なる内容が含まれている場合には、その場で必ず確認と修正を求めることが大切です。
収支シミュレーション:将来の赤字を避けるために
最後に、契約前に必ず確認しておきたいのが「収支シミュレーション」です。サブリース契約によって得られる家賃収入に対し、ローン返済、管理費、修繕費、税金などの支出を差し引いたうえで、継続的に黒字を維持できるか検証しましょう。
家賃の見直しが入った場合や、免責期間があった場合でも収支が成り立つかどうかを複数パターン試算することで、契約後の資金トラブルを未然に防げます。業者から提示されるシミュレーションが楽観的すぎないかも、必ず確認しておきましょう。
まとめ
サブリース契約は、空室や滞納といったリスクを回避しながら安定収入を得られる点で、特に不動産投資の初心者や、副業・相続で物件を所有する方にとって魅力的な仕組みです。しかし、「家賃保証」というポイントに安心しすぎると、後から家賃の減額や契約解除、高額なリフォーム費用の請求など、思わぬトラブルに直面する可能性もあります。
契約前には必ず、保証内容・費用負担・業者の信頼性などをしっかり確認し、必要に応じて専門家に相談することが後悔を避ける最大の防御策です。メリットとリスクを正しく理解したうえで、自分に合った契約かどうかを判断しましょう。

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ワンポイントアドバイス
サブリース契約の最大のリスクは、保証家賃の減額と早期の解約です。また、サブリースで問題になった物件の多くは、サブリースを利用してなお収支が赤字になるか、ギリギリ黒字になるといったバランスのものです。そもそもの収益性が高い物件であれば、サブリースを利用してもトラブルになる可能性は低いと言えます。運用の手間を減らしたいという観点で見ればサブリースは有効な手段なので、まずは物件選びの精度を高めることが重要です。
・「物件選び」に関する記事はこちら
不動産投資の相談はどこにすべき? 適切な相談窓口の見極め方
この記事のポイント
Q. サブリースとはどのような仕組みですか?
A. サブリース契約は、賃貸経営における空室リスクや管理の手間を軽減できる手法として広く利用されています。しかし、その構造や契約関係は一般的な賃貸管理と異なるため、内容を正しく理解しておくことが重要です。詳しくは「サブリースとは? 仕組みを解説」をご覧ください。
Q. サブリースのメリットはなんですか?
A. サブリース契約が注目される最大の理由は、家賃収入が安定することです。しかし、サブリースのメリットは安定収入だけではありません。詳しくは「サブリースのメリットは安定収入」をご覧ください。
Q. サブリースにはどんなトラブルがありますか?
A. サブリース契約は一見するとメリットの多い仕組みですが、契約後にトラブルに発展した事例は後を絶ちません。詳しくは「サブリースのトラブル事例と注意点」をご覧ください。