戸建て投資のメリット・デメリットとは? アパート投資との違いと成功のコツ
ざっくり要約!
- 戸建て投資では少額からでも「土地」という価値が残る資産を所有できる。
- 空室や修繕に関する特有のリスクがある。
- 成功の鍵は、エリア選定や出口戦略など物件購入の前から始まる戦略にある。
戸建てへの投資に可能性を感じて情報収集をしたものの、以下のような疑問・不安を拭えない人もいるのではないでしょうか。
- 一世帯しか入居できないから、空室になったら収入がゼロになるのが不安。
- そもそも、どんな物件を選べば失敗しないのか、判断基準がわからない。
- 中古の戸建ては修繕費が高くなりそうで怖い。
インターネットには多くの情報がありますが、メリットばかりが強調されていたり、逆にリスクが過度に煽られていたりと、どの情報を信じれば良いか分からなくなることもあるでしょう。
本記事では、戸建て投資のメリットをただ紹介するだけでなく、デメリットとして挙げられるリスクに対して、どのような対策が可能かを具体的に解説します。
戸建て投資とは? アパート・マンション投資との違い
戸建て投資を検討する上では、基本的な特徴や、他の代表的な不動産投資であるアパート・マンション投資と何が違うのかを正確に理解しておくことが重要です。戸建て投資の基本から、どのような方がこの投資手法に適しているのかを解説します。
戸建て投資の特徴
戸建て投資とは、その名の通り「一戸建ての住宅」を購入し、賃貸物件として貸し出すことで家賃収入を得る投資手法です。
最大の特徴は、「建物」とそれが建っている「土地」をワンセットで所有する点にあります。これは、建物の「一室」のみを所有する区分マンション投資とは根本的に異なる点です。
そのため、戸建て投資は、単に部屋を貸すというよりは、土地を含めた不動産全体を一つの事業として経営するイメージに近いと言えるでしょう。
また、マンションはワンルームが単身者向け、1LDK~2LDKがDINKS向けといった傾向が強い一方で、戸建て物件は大半がファミリー向けの物件となります。
中古物件を割安で購入して再生させる手法も人気があり、エリアも都心から郊外まで、選択肢は多岐にわたります。
アパート・マンション投資との違い
戸建て投資の位置づけを明確にするために、他の不動産投資と比較してみましょう。特に個人の投資家に人気のある「区分マンション投資」と「一棟アパート投資」との違いを以下の表にまとめました。
| 比較項目 | 戸建て投資 | 区分マンション投資 | 一棟アパート投資 |
|---|---|---|---|
| 物件価格 | 数百万~数千万円 | 数百万~数千万円 | 数千万~数億円 |
| 土地の所有権 | あり 資産価値が残る | なし 敷地権または共有持分のみ | あり |
| 管理費・修繕積立金 | なし 自分で計画・積立 | あり 毎月支払い義務あり | なし 自分で計画・積立 |
| 修繕の自由度 | 非常に高い 全て自己判断 | 低い 規約による制限がある | 高い |
| 収益リスク | 空室になると収入ゼロ | 一室空いても他でカバー可能 | 複数戸のためリスク分散が可能 |
| 主な入居者層 | ファミリー層 | 単身者・カップル | 単身者・カップル |
他の手法と比較すると、戸建て投資は「自由度の高さ」と「自己責任の大きさ」が際立つ手法であると言えます。
マンションのように管理組合や修繕積立金の仕組みがないため、外壁の塗装やリフォームなどを自分の好きなタイミングで、自分の裁量で行えます。また、土地も所有することになるので、建物が古くなっても土地の資産価値が残りやすい点はメリットです。
その一方で、建物の維持管理に関する責任は全て自分にある上に、将来の修繕に備えて計画的に資金を準備しておく必要がある点に要注意です。また、一世帯しか入居できないため、空室になると収入が完全に途絶える点もリスクと言えます。
・「マンション経営」に関する記事はこちら
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ワンルームマンション投資のメリットとは! やめとけと言われるのはなぜ?
戸建て投資に向いている人
上記の特徴を踏まえると、戸建て投資は特に以下のような方に適していると考えられます。
自分の裁量で物事を進めたい方
管理組合のルールなどに縛られず、リフォームの計画などを自分でコントロールしたいという経営者マインドを持つ方には、戸建て投資の自由度の高さが魅力的に映るでしょう。
長期的な視点で資産を築きたい方
土地という価値が下がりにくい資産を持つことで、短期的な売却益を狙うよりも、安定した家賃収入を長期にわたって得たいと考える方には戸建て投資が向いています。なお、ファミリー層の入居者は一度入居すると長く住む傾向があるため、比較的安定した運用を期待できます。
物件に手を加えることを楽しめる方
DIYで物件の価値を高めたり、自分のアイデアで内装をリノベーションしたりすることに面白みを感じる方にとって、戸建て投資は趣味と実益を兼ねた最適な選択肢となり得ます。中古物件を自分好みの賃貸住宅に再生させていくプロセスそのものが、大きなやりがいになるでしょう。
戸建て投資のメリット

戸建て投資には、他の手法にはない独自の魅力が複数あります。戸建て投資に関する4つの主要なメリットを解説していきます。
比較的少額から始められる
不動産投資と聞くと、多額の自己資金が必要なイメージを持つかもしれません。しかし、戸建て投資、特に中古物件に視野を広げると、数百万円台から購入可能な物件も多いものです。
都心部の新築マンションなどと比較すると、戸建て物件の選択肢は、価格帯においてもエリアにおいても幅広いためです。地方都市や郊外であれば、手頃な価格の物件を見つけることも難しくありません。
「まずは最初の一件」として、比較的少ない初期費用で始められることは、投資初心者にとって大きなメリットです。まとまった資金が貯まるのを待つことなく、早いうちから家賃収入を得て投資規模の拡大を狙えます。
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土地の価値はゼロになりにくい
建物は経年によって劣化するため、価値が少しずつ減少していきます。これは不動産である以上避けられません。しかし、戸建て投資の大きな強みは、建物の価値が下がっても「土地」の価値は残るという点にあります。
土地は建物と異なり、物理的に消耗するものではないため、そのものの価値がゼロになることはありません。立地によっては、むしろ周辺環境の発展に伴い価値が上昇することさえあるでしょう。
この「土地が資産として残る」という事実は、長期的な投資を行う上での強力な安心材料となります。万が一、建物が老朽化して賃貸経営が難しくなったとしても、土地を売却する、更地にして駐車場として活用する、あるいは自宅を新築するなど、様々な選択肢を取れるでしょう。
競合との差別化を図りやすい
マンション(区分所有物件)の場合、リフォームできるのは専有部分に限られており、窓や玄関ドアの交換、大幅な間取り変更などは管理規約によって制限されることがほとんどです。
その一方で、戸建ては建物全体が自分の所有物であるため、法令の範囲内であれば内外装ともに自由なリフォームやリノベーションが可能です。この自由度の高さは、競合する他の賃貸物件との「差別化」を図る上で絶大な武器となります。
例えば、アイデア次第で以下のような付加価値を生み出せます。
- ペットと快適に暮らせるよう、床材を変更しドッグランを設置する
- リモートワーカー向けに、防音性の高い書斎スペースを新設する
- 広い庭を整備して、家庭菜園やBBQが楽しめる空間にする
こうした「ここにしかない魅力」を持つ物件は、相場より高い家賃でも入居者が見つかりやすく、結果として高い収益性と安定した入居率を確保可能です。自分の手で物件の価値を能動的に高めていける点は、戸建て投資の強みと言えるでしょう。
長期安定経営を実現しやすい
戸建て住宅を賃貸で探す主な層は、子育て世代のファミリー層です。ファミリー層が集合住宅ではなく戸建てを選ぶ背景には、「子供の足音など、集合住宅での騒音トラブルを気にせずのびのび暮らしたい」「広い収納や駐車スペースが欲しい」といったニーズがあります。
ファミリー層は、子どもの学校や地域コミュニティとの関係から、一度入居すると短期間で引っ越すケースは比較的少なく、長期にわたって住み続けてくれる傾向が強いのが特徴です。入居者の入居期間が長くなることは、オーナーにとって以下のようなメリットがあります。
収入の安定
空室期間が発生しにくく、毎月の家賃収入が途絶えるリスクを低減できる。
コストの削減
退去時の原状回復費用や、次の入居者を募集するための広告費などを頻繁に支払う必要がなくなる。
一度優良な入居者が見つかれば、手間やコストを抑えながら安定した経営が実現しやすい点は、戸建て投資の非常に大きな魅力です。
戸建て投資のデメリットと対応策
投資にはリターンだけでなくリスクも伴うものです。戸建て投資も例外ではありません。戸建て投資を始める前に必ず知っておくべき3つのデメリットと、それらに対する具体的な対策について解説します。
空室になると家賃収入がゼロになる
複数戸あるアパートやマンションであれば、一室が空室になっても他の部屋の家賃収入でカバー可能です。しかし、一世帯しか入居できない戸建て投資では、入居者が退去すると家賃収入は完全にゼロになります。
収入が途絶えても、ローンの返済や固定資産税などの支出は変わらず発生するため、空室期間が長引けば資金計画に大きな影響を及ぼす可能性があります。
空室リスクの原因は、そのエリアの賃貸需要と物件の魅力が釣り合っていないことにあります。対策の鍵となるのは、購入前の徹底した調査と、入居者に選ばれる物件作りです。
対策①:賃貸需要を見極める
購入を検討するエリアの人口動態(特にファミリー層の増減)や、近隣の競合物件の家賃相場、空室状況などを自治体のデータや賃貸情報サイトで必ず確認しましょう。「そもそも、その場所で戸建てを借りたい人はいるのか?」という視点が不可欠です。
対策②:入居者ターゲットを明確化する
「どんな人に住んでほしいか」を具体的にイメージし、そのターゲットに響く物件とすることが重要です。例えば、子育て世代向けなら学校や公園までの距離、駐車場の有無などが重要な判断材料になります。
・「空室対策」に関する記事はこちら
空室リスクを減らす!賃貸需要の高い立地・物件の見分け方
建物の修繕費用が高額になる可能性がある
戸建て投資では、マンションのように管理組合が主導して大規模修繕を計画してくれることはありません。屋根、外壁、給排水管、各種設備など、建物の維持管理に関するすべての判断と責任はオーナー自身が負います。
特に要注意なのは中古物件です。購入時には分からなかった雨漏りやシロアリ被害、構造上の欠陥などが後から発覚し、数百万円単位の想定外の修繕費用が発生するケースは少なくありません。
対策①:専門家による住宅診断(インスペクション)を活用する
費用はかかりますが、建築士などの専門家が第三者の視点で建物の状態を診断してくれるインスペクションは、隠れた欠陥を見抜くための最も確実な方法です。将来の修繕リスクを考えれば、非常に有効な投資と言えます。
対策②:修繕費を計画的に積み立てる
突発的な修繕に備えるためには、毎月の家賃収入の一部を「将来の修繕費」として、使わずに確保しておくのがおすすめです。家賃収入の5%〜10%程度を目安に、専用の口座などで管理すると良いでしょう。
・「築古物件への投資」に関する記事はこちら
築古物件への不動産投資はあり?メリット・リスク・再生術を解説
マンションと比べて売却しにくい
一般的に、戸建てはマンションに比べて「流動性が低い」と言われます。流動性とは、資産を現金化しやすいかどうかを示す指標です。
マンションは同じ建物内に似たような部屋が複数あり、過去の取引事例も豊富なため、価格の相場が分かりやすく、買い手を見つけやすい傾向があります。
その一方で、戸建ては立地、築年数、間取り、デザインなどが一つひとつ異なるため個別性が強く、買い手を選ぶ傾向があります。そのため、急に資金が必要になった際に、希望する価格やタイミングで売却できない可能性がある点に要注意です。
対策①:土地の価値を重視する
建物の価値は時間の経過と共に下がりますが、土地の価値は比較的安定しています。将来の売却を見据えるなら、建物が古くなってもなお「この土地が欲しい」と思われるような、立地の良い物件を選ぶことが流動性リスクに対する最大の対策となります。
対策②:複数の売却方法を知っておく
一般的な「仲介」による売却のほか、不動産会社に直接買い取ってもらう「買取」という方法もあります。買取は仲介に比べて価格が安くなりますが、スピーディーに現金化できる点がメリットです。
時間的に余裕を持って売り出すのが一番ではあるものの、急な現金化が必要な場合には、買取も選択肢としておくと良いでしょう。
戸建て投資で成功するためのポイント
ここまで戸建て投資のメリット・デメリットを見てきましたが、最終的に成功を収めるためには、リスクを管理し、物件の価値を最大化するための戦略的な視点が必要です。戸建て投資を成功させるために重要な4つのポイントについて、具体的な実践方法と共に解説していきます。
最も重要なのはエリア選定
土地の資産価値を維持することも考慮すると、「どこに物件を持つか」というエリア選定が、戸建て投資の成否を分けると言っても過言ではありません。
人口が減り続けるエリアで賃貸需要を見込むのは非常に困難です。戸建て投資を成功させるための第一歩は、将来にわたって人が集まり、住み続けたいと思える場所を見極めることにあります。
「マクロ」と「ミクロ」の視点
まずはマクロ視点でエリアを選ぶべく、市区町村単位の人口動態を確認します。自治体のウェブサイトで公開されている「人口ビジョン」や統計データを見て、「生産年齢人口」や「年少人口」が極端に減少していないか、あるいは増加傾向にあるかを確認しましょう。
つづいて、ミクロの視点では物件周辺の具体的な住みやすさを歩いて確認します。最寄り駅からの距離や道のりの安全性(街灯の有無、歩道の広さ)、スーパーや病院、学校、公園といった生活利便施設の充実度は、入居者が最も気にするポイントです。
入居者ニーズを把握する
大学が近いエリアなら学生、都心へのアクセスが良い郊外ならファミリー層といったように、エリアの特性からメインターゲットを具体的に設定します。
例えば、メインターゲットを「30代の共働き夫婦と小学生の子供一人の三人家族」とまで具体化できれば、必要な間取り(できれば2LDK以上)や設備(食洗機や浴室乾燥機つきが望ましい)、周辺環境(小学校までの距離が重要)などが自ずと見えてきます。
なお、入居者層を特定するために最も確実な方法は、そのエリアで長く営業している賃貸仲介会社にヒアリングすることです。
例えば「このあたりで戸建てを探している方は、どんな条件を重視しますか?」「駐車スペースは2台分必要ですか?」などの具体的な質問を投げかければ、インターネットだけでは得られない生きた情報を入手できます。
リフォーム・リノベーション戦略
中古戸建て投資の醍醐味は、リフォームによって物件価値を大きく向上させられる点にあります。しかし、闇雲にお金をかければ良いというものではありません。投下した費用を、家賃としてきちんと回収できるかという「費用対効果」の視点が非常に重要です。
例えば、水回り(キッチン、浴室、トイレ)の設備交換は、内見時の印象を大きく左右するため費用対効果が高い傾向にあります。一方で、こだわりが強すぎる高級なシステムキッチンや、間取りを大きく変更するような大がかりなリノベーションは、多額の費用がかかるものです。
コストが大きすぎると家賃に転嫁しづらくなるので、まずは清潔感と機能性を確保することを最優先しましょう。
出口戦略
不動産投資は、物件を購入した「入口」の時点で、将来どのように物件を手放すかという「出口」まで見据えておくことが成功の鉄則です。出口のシナリオを複数準備しておくことで、失敗の確率を下げられます。
例えば、投資家へ売却するのであれば、安定した家賃収入の実績を作ることが重要になります。一方で、 一般のマイホームを探している層に売却するのであれば、立地の良さや間取り、デザイン性など、住まいとしての魅力を持った物件を選ぶことが重要です。その他には、 更地にして土地として売る、将来的に自分が住むなどの選択肢があります。
・「出口戦略」に関する記事はこちら
不動産投資の出口戦略とは? 売却・相続・法人化、適切な出口を見極めるポイント
投資用物件を売却するベストタイミングは? 出口戦略の考え方
まとめ
戸建て投資は、少額から始められる一方で、土地という資産価値が残る魅力的な投資手法です。しかし、空室や修繕といった特有のリスクも存在します。リスクを正しく理解して事前に対策を講じることが重要です。戸建て投資を成功させる鍵は以下の4点に集約されます。
- 将来性のあるエリアを見極めること
- 入居者のニーズを的確に捉えること
- 費用対効果の高いリフォームを施すこと
- 購入時から「出口戦略」を描いておくこと

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ワンポイントアドバイス
情報収集を経て知識が深まるほど「完璧な物件」を求めてしまいがちです。しかし、リスクがゼロで誰もが欲しがるような100点の物件は、市場にはまず存在しません。
大切なのは自分が許容できるリスクの範囲を見極めることです。また、80点の物件を、リフォームや運営の工夫で90点~100点に育てていくという視点も重要です。戸建ては自由度が高いため、マンションと比較すると工夫しやすくなっています。
この記事のポイント
Q. 戸建て投資はアパート・マンション投資とどう違うのですか?
A. 戸建て投資を検討する上では、基本的な特徴や、他の代表的な不動産投資であるアパート・マンション投資と何が違うのかを正確に理解しておくことが重要です。戸建て投資の基本から、どのような方がこの投資手法に適しているのか「戸建て投資とは? アパート・マンション投資との違い」にて解説します。
Q. 戸建て投資のメリットは?
A. 戸建て投資には、他の手法にはない独自の魅力が複数あります。戸建て投資に関する4つの主要なメリットを「戸建て投資のメリット」にて解説していきます。
Q. 戸建て投資のデメリットは?
A. 投資にはリターンだけでなくリスクも伴うものです。戸建て投資も例外ではありません。戸建て投資を始める前に必ず知っておくべき3つのデメリットと、その具体的な対策について「戸建て投資のデメリット」にて解説します。