「区分所有」と「一棟買い」どちらが得か? 投資スタイル別の比較解説
ざっくり要約!
- 区分所有は少額から始められるうえに管理しやすいが、収益性や自由度には制限がある。
- 一棟買いは利回りや運用の自由度が高いが、初期費用や管理の負担が大きい。
- 初心者はまず1件目で失敗しないことを優先する。
不動産投資を始めるにあたって、「区分所有」と「一棟買い」のどちらを選ぶべきか迷う方は少なくありません。初期費用や収益性、管理の手間、リスクの違いなど、それぞれにメリットとデメリットがあり、投資スタイルや目的によって最適な選択肢は変わります。
この記事では、両者の特徴をわかりやすく比較し、投資経験の有無や資金力に応じたおすすめタイプも解説します。
目次
【比較表】区分所有と一棟買いの違い
不動産投資を検討する際に、「区分所有」と「一棟買い」は代表的な選択肢です。どちらも賃貸収入を目的とした投資方法ですが、物件所有の形態や運用の自由度、かかるコストやリスクの大きさなどに大きな違いがあります。まずはそれぞれの特徴を整理した上で、主要な比較ポイントを一覧表で確認していきましょう。
そもそも「区分所有」「一棟買い」とは?
「区分所有」とは、マンションなどの建物の中で、1室単位で所有する投資スタイルです。主にワンルームや1Kなどが対象となり、比較的少額から始められる点が大きな特徴と言えます。
その一方で、「一棟買い」は、アパートやマンションを建物全体として購入し、土地も含めて一括で所有する方法です。より多くの資金や融資が必要となりますが、複数の部屋から家賃収入を得られるため、キャッシュフローが大きくなる傾向があります。
比較表|初期費用・管理・収益性などの違い
| 比較項目 | 区分所有 | 一棟買い |
|---|---|---|
| 初期費用 | 数百万円程度、自己資金が少なくても可 | 数千万円、物件によっては億単位の資金が必要 |
| 管理の手間 | 比較的手間は少なく、管理会社に任せるケースが多い | 部屋数などの規模に応じて管理の手間は増える |
| 収益性 | 利回りは低めで収入は1室のみ | 利回りは高め、複数戸から収入を得られる |
| 担保評価 | 比較的低めで金融機関によっては評価が分かれる | 建物・土地含めて評価されるため高評価になりやすい |
| リスク分散 | 複数戸所有すればリスク分散できるが、一戸では難しい | 一棟の中でリスク分散が可能 |
| 売却のしやすさ | 流動性が高く、個人投資家も購入しやすい | 売却金額が高額になるため流動性は低い |
このように、「少額・低リスク・低収益」の区分所有と、「高額・高リスク・高収益」の一棟買いとでは、投資の性質が大きく異なります。
「区分所有」の不動産投資のメリット・デメリット
不動産投資の中でも、比較的少ない資金で始めやすいとされるのが「区分所有」です。ワンルームマンションなどを1室単位で購入するスタイルで、不動産投資の初心者や副業として投資を始めたい人に人気があります。
しかし、メリットだけでなく注意すべきデメリットもあります。区分所有投資の特徴をメリット・デメリットに分けて解説します。
区分所有のメリット
少額から投資を始められる
区分所有は、1室単位での購入が基本になるため、数百万円~数千万円で物件を取得できます。自己資金が少なくても始めやすく、フルローンが通るケースもあるため、投資初心者でもハードルが低いのが特徴です。
管理の手間が少ない
建物全体の維持管理はマンションの管理組合が担っており、オーナー自身は専有部分の管理に集中できます。また、賃貸管理会社に委託すれば、家賃の入金確認や入居者対応なども任せられるため、手間を大幅に削減可能です。
流通性が高く売却しやすい
区分所有の物件は需要が高く、実需層と投資家の両方が買い手候補になるため、売却しやすいという強みがあります。価格帯も手頃なため、比較的短期間で物件を現金化できるでしょう。
リスクを分散しやすい
複数エリアに1室ずつ物件を保有することで、地域特有のリスク(空室の発生や地価の下落など)を分散可能です。特定の建物や地域に依存しないため、投資リスクを抑えたい人に適しています。
・「不動産投資のリスク」に関する記事はこちら
不動産投資の6大リスク一覧!未然に防ぐ方法とは?
区分所有のデメリット
空室リスクの影響が大きい
一室のみ所有している場合は、その部屋が空室になると家賃収入はゼロになります。ローン返済や管理費、修繕積立金などの出費は空室でも発生するため、キャッシュフローの悪化に要注意です。
管理や修繕の自由度が低い
共有部分の修繕やリノベーションを行う際には、管理組合の合意が必要なので、区分所有物件のオーナーの判断だけでは実施できません。市場ニーズに応じた柔軟な対応が難しくなる点はデメリットです。
収益性が低い傾向にある
区分所有物件の利回りは一棟物件と比べると低く、家賃収入からローン返済・管理費・修繕費を差し引くと、手残りがごくわずかというケースも少なくありません。キャッシュフロー重視の投資スタイルには、区分所有物件は不向きです。
担保評価が低く融資が通りにくいことも
金融機関によっては区分所有物件に対する担保評価が低く、追加融資や買い増しが難しくなる場合があります。投資規模を拡大したい場合には、融資戦略を慎重に立てる必要があるでしょう。
「一棟買い」の不動産投資のメリット・デメリット
「一棟買い」は、アパートやマンションを建物単位でまるごと購入する投資スタイルです。初期投資額は高額ですが、複数戸からの賃料収入があったり、自由度の高い運用が可能だったりするため、本格的に不動産投資を行いたい方に向いています。一棟買いの投資メリットと注意すべきデメリットについて解説します。
一棟買いのメリット
複数戸の家賃収入によって利回りが高くなる
一棟物件の投資では複数の部屋から家賃収入を得られるため、区分所有物件と比べると収益性が高くなる傾向があります。満室に近い状態であれば、キャッシュフローにゆとりが生まれ、投資効率の面でも有利です。
空室リスクの分散が可能
たとえ一部の部屋が空室になったとしても、他の部屋から収益があれば全体の損失を抑えられます。一室しか所有しない区分所有物件とは異なり、「収入ゼロ」の状態を避けやすいのが一棟買いの大きな利点です。
運営の自由度が高い
物件を丸ごと所有するため、リフォームや家賃設定、設備導入といった運用面において、自身の判断で柔軟な対応が可能です。市場ニーズに応じた差別化戦略を取りやすく、物件の魅力を高める工夫ができます。
土地を含めた資産価値の維持が期待できる
一棟物件は建物だけでなく土地も所有するため、地価の上昇による資産価値の増加も見込めるでしょう。また、土地付き物件は金融機関からの評価も高く、担保としての活用幅が広がる傾向にあります。
節税対策がしやすい
部屋数が多い一棟物件は税務上「事業的規模」に該当しやすく、青色申告の特別控除や減価償却などの税務上のメリットを活かしやすい点も魅力です。
一棟買いのデメリット
初期費用が高額
一棟買いには数千万円〜1億円超の資金が必要であり、自己資金だけでの購入は難しいケースが大半です。融資を活用するとしても、頭金や諸経費を含めた資金の準備は不可欠になります。
空室が増えると損失が大きくなる
一部屋や数部屋の空室であればリスク分散ができますが、空室率が上昇すると毎月の収入が落ち込みます。ローン返済・管理費・修繕費は固定で発生するため、空室リスクへの対策が重要です。
管理・修繕の手間と費用がかかる
建物全体の管理責任を負うため、定期的な修繕計画の立案や、入居者トラブルの対応などに時間と労力が必要です。委託管理を利用する場合でも、それにかかるコストを含めた運用計画が求められます。
流動性が低く、売却に時間がかかることも
一棟物件は購入金額が高いため、売却時に買い手が限られやすく、希望条件での売却が難航する可能性があります。特に築古物件や地方物件は、値引き交渉が発生しやすい点にも要注意です。
災害リスクによる影響が大きい
火災や地震などの災害が起きた場合、物件全体がダメージを受けてしまうため、損失規模が非常に大きくなります。保険加入や立地選定を通じたリスク管理が欠かせません。
投資スタイル別のおすすめタイプは?
区分所有と一棟買いは、それぞれに異なる特性があるため、投資家の目的や資金力、ライフスタイルに応じて向き・不向きが分かれます。「どちらを選ぶべきか?」という悩みを抱える方に向けて、それぞれの投資スタイルに適した人物像を紹介します。
区分所有に向いている人
少額から手軽に投資を始めたい人
区分所有は自己資金が数百万円程度でもスタート可能なため、「いきなり大きな借入をしたくない」「まずは手元にある現金で試してみたい」という方に適しています。
本業が忙しく、手間をかけたくない人
建物全体の管理は管理組合が担うため、自分で物件の維持や修繕に関わる必要がほとんどありません。副業として不動産投資をしたい会社員や経営者などにも向いています。
流動性を重視したい人
区分所有物件は売却しやすい価格帯であることが多く、実需・投資の両方で需要があるため、将来的に物件の資金化を見越したい方には魅力的な選択肢です。
リスクを抑えながら不動産投資を試したい人
初めて不動産投資にチャレンジする方にとって、少額・低リスクで始められる点は大きな安心材料となります。「まずは不動産投資の経験を積みたい」という方に最適です。
一棟買いに向いている人
本格的に不動産投資で収益を上げたい人
家賃収入を主要な収入源としたい、もしくは将来的な資産の拡大を目指している人は、一棟買いのスケールメリットを活かした運用が向いています。
高い資金力または融資枠を確保できる人
一棟物件の取得には多額の資金が必要なため、頭金をしっかり準備できる人や、金融機関からの信用力がある人に適しています。
・「不動産投資ローン」に関する記事はこちら
不動産投資ローンの金利相場はどれくらい?金利タイプによる返済額を比較
不動産投資ローンの審査に落ちる理由とは?審査基準と対策を解説
経営に積極的に関わりたい人
空室対策、家賃設定、リノベーションなど、自分の裁量で物件を運営したいと考える方には、一棟投資の自由度が大きな魅力になります。
税務や法人化なども含めて長期戦略を描きたい人
節税や法人設立による税務の最適化などを視野に入れた戦略的な資産運用を考える方には、一棟買いが有効です。事業としての不動産経営を志す方には一棟買いが向いています。
初心者におすすめな不動産投資の始め方と拡大方法

不動産投資をこれから始める初心者にとって、最初の物件選びとその後の投資拡大の進め方は、長期的な成否を左右する重要なポイントです。失敗しない不動産投資のスタートを切るための物件選定のコツと、2件目以降で考慮すべき戦略について具体的に解説します。
最初の物件選びのポイントは?
無理のない資金計画からスタート
初心者が最初に選ぶ物件は、手元資金や借入可能額に見合った範囲で、収支が安定しやすいものを選ぶことが大切です。返済が苦しくならない価格帯で、表面利回りだけに惑わされず、実質利回りや空室リスクまで含めて判断しましょう。
立地・需要・築年数を重視する
駅から徒歩10分圏内、大学やオフィス街などの賃貸需要が見込めるエリアは、空室になりにくく安定した賃料収入を期待できます。また、築年数が古すぎる物件は修繕コストや融資条件で不利になることもあるため、築20年以内を目安にするとリスクを低減しやすいでしょう。
区分マンションなら管理状況を要チェック
区分所有物件を選ぶ場合は、マンション全体の管理状況が良好かどうかを確認しましょう。共用部分の清掃状態、修繕積立金の残高、過去の大規模修繕履歴などは将来の資産価値に大きく影響します。
拡大戦略の考え方(1件目と2件目以降で変わる)
1件目は「失敗しない」ことが最優先
最初の物件で収支が悪化したり、空室が続いたりすると、次の物件購入時の融資に悪影響を与える可能性があります。拡大を目指すのであれば、まずは満室経営や安定収益を実現して、金融機関からの信頼を得ることが重要です。
2件目以降はポートフォリオ戦略へ
2件目以降は、すでに保有している物件とのバランスを見ながら購入を進めます。例えば、1件目が都心の区分マンションであれば、次は郊外の一棟アパートで利回りを補うなど、収益・立地・築年数・借入条件を考慮してリスクを分散していくことが拡大のコツです。
融資・税務も戦略的に設計する
運用する物件数が増えると、青色申告の特別控除や法人化による節税効果も見込めます。個人名義のまま拡大するか、どこかの段階で法人化するかは、キャッシュフローや所得額によって判断しましょう。信頼できる税理士や専門家に相談するのも一つの手です。
・「不動産投資 法人化」に関する記事はこちら
不動産投資で法人化するメリット・デメリット! 適切なタイミングは?
中長期で「売却」も見据えた視点を
投資規模の拡大=物件の買い増しと考えがちですが、資産の入れ替えによる利回り改善や資産整理も大切です。収益性が落ちた物件を早めに売却し、次の物件の購入資金に充てることで投資効率を上げられます。
・「不動産投資の出口戦略」に関する記事はこちら
不動産投資の出口戦略とは? 売却・相続・法人化、適切な出口を見極めるポイント
まとめ
不動産投資における「区分所有」と「一棟買い」には、それぞれに明確な特徴とメリット・デメリットがあります。少額から始めやすく管理の手間が少ない区分所有は、初心者や副業志向の方に向いており、高利回りと運用の自由度の高さを求めるなら一棟買いが選択肢となります。
大切なのは、自分の資金力・投資目的・リスク許容度に応じて適切なスタイルを選ぶことです。まずは堅実に1件目の投資を成功させ、その後の投資規模拡大に向けた戦略を立てていくことが、不動産投資で着実に成果を上げるための鍵となります。

不動産投資用物件なら東急リバブルにお任せ下さい。
投資用マンション・投資用アパート・ビル購入など、最新の投資用不動産情報をお届けします。
ワンポイントアドバイス
入居者が入るかどうかを重視すると、区分所有物件の方が有利なのではと思う人もいるかもしれません。しかし、区分所有物件を買い増していくと、いずれ信用いっぱいまでローンを利用することになるなど、行き詰まる可能性が高くなります。投資規模の拡大を目指すのであれば、どこかの段階で一棟物件に投資することが必要です。物件を入れ替えることも視野に入れつつ、計画を立てることをおすすめします。
この記事のポイント
Q. 区分所有と一棟買いにはどういう違いがありますか?
A. 不動産投資を検討する際に、「区分所有」と「一棟買い」は代表的な選択肢です。どちらも賃貸収入を目的とした投資方法ですが、物件所有の形態や運用の自由度、かかるコストやリスクの大きさなどに大きな違いがあります。詳しくは「【比較表】区分所有と一棟買いの違い」をご覧ください。
Q. 区分所有のメリット・デメリットはありますか?
A. 不動産投資の中でも、比較的少ない資金で始めやすいとされるのが「区分所有」です。ワンルームマンションなどを1室単位で購入するスタイルで、不動産投資の初心者や副業として投資を始めたい人に人気があります。詳しくは「「区分所有」の不動産投資のメリット・デメリット」をご覧ください。
Q. 不動産投資にはどのような特徴がありますか?
A. 「一棟買い」は、アパートやマンションを建物単位でまるごと購入する投資スタイルです。初期投資額は高額ですが、複数戸からの賃料収入があったり、自由度の高い運用が可能だったりするため、本格的に不動産投資を行いたい方に向いています。詳しくは「「一棟買い」の不動産投資のメリット・デメリット」をご覧ください