不動産小口投資とは?仕組みやその他の少額投資との違いを解説
ざっくり要約!
- 不動産小口投資は借入を避けたい人や初心者に向いている。
- 資産運用や相続対策、ポートフォリオ分散を考える人にとっても有効な選択肢
- 利回りが低めで投資対象の自由度が低い点には要注意
不動産投資に興味はあるけれど、「いきなり大きな資金を投資するのは不安」「いそがしくて物件の管理や運営に時間を割けない」と感じていませんか? そんな方に注目されているのが不動産小口投資です。
不動産小口投資とは、1つの不動産を小口化し、複数の投資家で資金を出し合って運用する仕組みです。少額から始められるため、一般的な不動産投資に比べてハードルが低く、相続対策やリスク分散にも活用できます。
しかし、不動産小口投資にはメリットだけでなく、注意すべきデメリットもあります。本記事では、不動産小口投資の仕組みや種類、メリット・デメリット、向いている人の特徴まで詳しく解説します。
不動産小口投資の仕組みとは?
不動産小口投資とは、1つの不動産を小口化し、複数の投資家が共同で所有・運用する投資手法です。不動産特定共同事業法に基づき運営されるため、投資家は一定のルールのもとで資金を出し合い、賃料収入や売却益を受け取る形になります。
通常の不動産投資とは違って少額から始められるのが特徴で、投資対象の不動産は事業者が選定し、管理・運営も事業者に委託するため、投資家が直接運営に関与する必要はありません。
不動産小口投資が一般的な不動産投資とどのような点で共通しているのか、またどのように異なるのか解説します。
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一般的な不動産投資との共通点
不動産小口投資と一般的な不動産投資は、どちらも実際の不動産を対象とした投資です。不動産の価値が上昇すれば売却益を得ることができて、賃貸運営による家賃収入を目的とする点も同じです。
不動産価格の変動や賃貸市場の動向によって収益が変わる点も共通しています。例えば、景気が良くなれば不動産価格が上がり、賃料も増加する傾向がありますが、逆に景気後退時には賃貸需要が低下するリスクもあります。
また、どちらの投資方法も基本的には長期保有を前提としています。不動産は短期間で価格が大きく変動するものではなく、数年から十年以上のスパンで資産形成を考える投資対象です。
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不動産投資初心者が知っておきたい基本知識と始め方のポイント
一般的な不動産投資と異なること
一般的な不動産投資では、物件の購入には数百万円から数千万円の資金が必要です。しかし、不動産小口投資は1口数万円~100万円程度から投資できるため、大きな資金を用意しなくても始められるという特徴があります。
また、通常の不動産投資では、物件の管理や修繕、賃貸募集などをオーナー自身が行うか、賃貸管理会社に依頼する必要があります。その一方で、不動産小口投資では事業者が管理・運用を代行するため、投資家は運用の手間をかけずに不動産収益を得られる点が異なります。
なお、一般的な不動産投資では物件を売却すれば資金を回収できますが、不動産小口投資には途中解約が難しい商品も多く、資金の流動性が低いケースも少なくありません。事業者によっては中途売却のサポートを行っている場合もありますが、投資前に流動性を確認することが重要です。
そのほか、一般的な不動産投資では物件の所有権を取得できますが、不動産小口投資では「匿名組合型」や「任意組合型」などの契約形態により、直接的な所有権を取得できない場合もあります。
その他の少額不動産投資との違い
不動産小口投資は、少額から始められる点で「REIT(不動産投資信託)」や「不動産クラウドファンディング」と共通点がありますが、それぞれ異なる特徴を持っています。
REITとの違い
REITは証券市場で取引されるため、流動性が高く売買しやすいのが特徴です。また、不動産小口投資は基本的に1つの物件に投資するのに対し、REITは複数の不動産に分散投資されています。そのほか、REITの分配金は市場の影響を受けやすく、不動産小口投資は安定した賃料収入を得られる点などが主な違いです。
不動産クラウドファンディングとの違い
不動産クラウドファンディングは、インターネット上で募集が行われ、案件ごとに短期間で資金を回収できるものも多くなっています。一方で、不動産小口投資は基本的に長期運用を前提としており、より安定的な収益を狙うのに適しています。
不動産クラウドファンディングは事業者が運営するプロジェクトに出資する形であるのに対し、不動産小口投資は投資家がより直接的に不動産収益を享受する形になっている点などが主な違いです。
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不動産小口投資の種類
不動産小口投資には、大きく分けて賃貸型・匿名組合型・任意組合型の3種類があります。それぞれの特徴を理解し、自分に合った投資方法を選ぶことが重要です。
賃貸型
賃貸型は、投資家が不動産の持分を購入し、その不動産を事業者に貸し出す形の投資方法です。事業者が運営を担当し、投資家は賃料収入を受け取る仕組みになっています。
〇賃貸型の特徴
- 不動産の所有権を取得可能で資産として登記される
- 10年以上など長期的な運用期間が一般的
- 事業者が管理・運営するため、投資家は手間をかけずに収益を得られる
〇賃貸型のメリット
- 所有権を取得できるため相続対策として活用可能
- 安定した賃料収入を期待できる
- 投資家が直接管理する必要がない
〇デメリット
- 事業者が倒産すると運営が不安定になる可能性がある
- 運用期間が長いため、途中解約は難しいことが多い
- 流動性が低く、すぐに売却できない場合がある
賃貸型は、不動産を資産として持ちつつ、管理の手間をかけたくない人に向いている投資方法です。
匿名組合型
匿名組合型は、投資家が事業者と匿名組合契約を結んで出資を行う投資手法です。不動産の所有権は事業者にあり、投資家は出資額に応じて分配された利益を受け取ります。
〇匿名組合型の特徴
- 1万円~100万円程度の少額から投資を始められる
- 事業者が不動産を所有・運営するため投資家に管理の負担がない
- 1年~5年など運用期間が短い案件もある
〇デメリット
- 不動産の所有権がないため、相続税対策には向かない
- 元本保証がなく、賃料収入や売却益が不安定な場合がある
- 中途解約できない商品が多い
匿名組合型は、少額で手軽に不動産投資を試したい人や、分散投資を考えている人に適しています。
任意組合型
任意組合型は、投資家が共同で不動産を所有し、事業を運営する投資手法です。出資者全員が「組合員」となり、所有権を共有する形で運用します。
〇任意組合型の特徴
- 投資家が不動産の持分を所有するため資産として扱われる
- 10年以上など長期の運用が一般的
- 相続税評価額を下げられるため節税対策として活用可能
〇メリット
- 不動産を所有できるため、相続税対策に有効
- 長期的に安定した収益を見込める
- 資産形成の手段として活用しやすい
〇デメリット
- 100万円以上などまとまった資金を要するケースが多い
- 流動性が低く、途中で売却するのが難しい
- 組合員としての権利や義務が発生するため、意思決定の負担がある
任意組合型は、相続対策や長期的な資産形成を考えている人向けの投資方法です。ただし、所有権を持つことによる責任の大きさや、流動性の低さには要注意です。
不動産小口投資のメリット

従来の不動産投資と比較して、不動産小口投資は資金面や管理面での負担が少なく、手軽に始められるのが主な特徴です。不動産小口投資の主なメリットを解説します。
安定性のある不動産に少額から投資できる
一般的な不動産投資では、マンションやアパートを一戸・一棟単位で購入するため、多額の初期投資が必要です。しかし、不動産小口投資なら1口数万円~100万円程度から投資が可能で、個人投資家でも参入しやすいのが魅力となっています。
さらに、運用対象の不動産は、安定した収益を見込める物件を事業者が厳選しているため、個人で物件を選ぶよりもリスクを抑えられます。不動産投資に興味はあるものの、多額の資金を用意するのが難しい方にとって、不動産小口投資は少額で不動産投資の市場に参入できる有効な手段です。
管理の手間がかからない
不動産投資を行う上で大きな負担となるのが、物件の管理・運用業務です。通常の不動産投資では、賃貸管理会社を入れないと、賃貸物件の入居者募集・家賃管理・修繕・クレーム対応など多くの手間がかかります。
しかし、不動産小口投資では事業者が最初からすべての管理業務を担当するため、投資家は入居者対応や修繕対応などの負担を負うことなく収益を得られます。特に、サラリーマンや副業として不動産投資を考えている方にとって、管理の手間がかからない点は大きなメリットです。
リスク分散できる
不動産投資では、物件の価値下落や空室リスクが大きな課題です。1つの物件に資金を集中して投資すると、空室が発生した際の収益減少や、売却時の価格下落による損失リスクが高まります。
しかし、不動産小口投資では少額で複数の物件に投資できるため、リスクを分散しやすいのが特徴です。例えば、1,000万円の資金がある場合、1つの物件を購入するのではなく、複数の不動産小口化商品に分散投資することで、特定の物件に依存しない収益を目指せます。
そのほか、異なるエリアや不動産タイプへ投資することによるリスク分散も可能です。株式投資など金融資産の投資と組み合わせれば、よりバランスの取れた資産運用ができます。
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相続対策としても効果的
不動産小口投資は相続対策の手段としても有効です。特に「任意組合型」の不動産小口化商品は不動産を所有する形となるため、相続税評価額が現金よりも低くなり、節税効果が期待できます。
また、通常の不動産投資では、1つの物件を複数の相続人に分けるのは難しいですが、不動産小口投資なら持分単位で分割できるため、相続時の分配がスムーズになります。
不動産小口投資のデメリット
不動産小口投資には多くのメリットがある一方で、要注意のデメリットも存在します。不動産小口投資を検討する際は、利回りや資金面、流動性などのデメリットを理解し、自分の投資スタイルに合っているか慎重に判断することが重要です。不動産小口投資のデメリットを詳しく解説します。
利回りが低め
不動産小口投資は、一般的な不動産投資と比較すると利回りが低い傾向にあります。その理由として、以下の点が挙げられます。
管理費や手数料が差し引かれる
不動産小口投資では、運営を事業者が代行するため、管理費や運営手数料の支払いが必要です。手数料などを支払った分だけ投資家の手取り収益が減少し、結果的に利回りが低くなる点に要注意です。
レバレッジを活用できない
通常の不動産投資では、ローンを活用することで自己資金を大きく超える金額の物件を購入し、高い投資効率(レバレッジ効果)を狙えます。一方で、不動産小口投資は自己資金のみで投資する仕組みなので、資金効率が低くなる傾向があります。
分配金が安定していても、高利回りではない
不動産小口投資は安定した賃料収入を期待できる一方で、リスクが低い分、リターンも抑えられるケースが少なくありません。年間利回りは2~5%程度が一般的で、物件次第ですが、通常の不動産投資と比較すると低めの水準になります。総じて不動産小口投資は「投資で高利回りを狙いたい人」には不向きです。
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不動産投資の理想的な利回りは?計算方法と物件選びのポイントを紹介
希望する物件が購入できるとは限らない
不動産小口投資は、投資家が自由に物件を選べるわけではなく、事業者が提供する商品(投資対象の不動産)に出資する形になります。そのため、「自分が目をつけた優良物件に直接投資したい」と考えている人には、不動産小口投資は向いていません。
人気のある案件はすぐに募集枠が埋まる
例えば、都心の優良物件や商業施設など、収益性の高い物件は投資希望者が多く、すぐに募集枠が埋まることがあります。申し込みのタイミングを逃すと、希望する物件に投資できないのが難点です。
一定の自己資金が必要
不動産小口投資は少額から始められる投資手法ですが、それでも最低限の自己資金は必要です。匿名組合型なら1万円~数十万円の投資も可能ですが、例えば年利3%の案件に10万円を投資しても、年間のリターンは3,000円程度であり、差し引かれる手数料なども考慮すると大きな利益を得るのは難しいでしょう。
また、任意組合型や賃貸型では100万円以上の投資が求められることも多く、資金がないと参入しにくいのが実態です。
融資を利用できないため、自己資金が必須
通常の不動産投資では、物件を担保に融資を受けられるため、少ない自己資金で大きな投資ができます。しかし、不動産小口投資は物件を個人所有するわけではないため、金融機関の融資を受けられません。つまり、投資額はすべて自己資金で賄う必要があるという点がデメリットになります。
投資額によっては長期間資金が拘束される
一度投資すると、運用期間中は資金を引き出せないケースが多いため、短期的に現金が必要になる可能性がある人には向いていません。流動性の低さを考慮し、不動産小口投資は余裕資金で投資することが重要です。
不動産小口投資に向いているのはどんな人?
不動産小口投資は全ての投資家に適しているわけではなく、特定の条件や目的を持つ人に向いています。不動産小口投資が適している4つのタイプの投資家について解説します。
借り入れしたくない人
一般的な不動産投資では、金融機関から融資を受けて物件を購入するケースが大半です。しかし、融資を利用することで金利負担が発生し、さらに毎月のローン返済が必要です。そのため、借入に抵抗がある人にとっては、不動産投資のハードルが高くなってしまいます。
一方、不動産小口投資は、融資を利用せず自己資金のみで投資が可能なため、ローンを組みたくない人に適しています。
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管理・運用の手間をかけたくない人
通常の不動産投資では、物件の管理や運営が必要です。具体的には、以下のような業務が発生します。
- 入居者募集(広告掲載や契約手続き)
- 家賃の回収と未納対応
- 修繕・リフォームの手配
- 退去時の原状回復や新規入居者の手配
これらの業務は不動産管理会社に委託できますが、賃貸管理費が発生するうえに、お金がかかる対応などの意思決定は、オーナー自らの判断が必要です。不動産小口投資なら、事業者がすべての管理・運営を担当するため、投資家は運用の手間をかけることなく分配金を受け取るだけで済みます。
ポートフォリオを分散したい人
投資においてリスクを分散することは非常に重要です。一般的な不動産投資では、1つの物件に数百万円~数千万円の資金を投じるため、投資件数が少ないとリスクが集中してしまいます。例えば、1つの物件で空室が発生すると、家賃収入が大幅に減少する点に要注意です。
しかし、不動産小口投資を活用すれば、1口数万円~100万円程度で投資ができるため、複数の物件に資産・リスクを分散することが可能です。
相続・贈与対策したい人
不動産小口投資は、相続税・贈与税対策としても活用できる投資手法です。特に「任意組合型」の不動産小口投資では、不動産を所有している扱いとなるため、現金資産よりも相続税評価額を抑えられる可能性があります。
また、通常の不動産投資では、1つの物件を複数の相続人に分けるのが難しいため、相続時にトラブルになることもあるでしょう。しかし、不動産小口投資なら、1口単位で相続や贈与が可能なため、スムーズな資産承継ができるのがメリットです。
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まとめ
不動産小口投資は、少額から始められるうえに、管理の手間がかからない不動産投資の手法です。従来の不動産投資と比べて、ローンを組まずに自己資金のみで投資できるため、借入を避けたい人にも向いています。また、事業者が管理・運用を行うため、投資家は手間をかけずに賃料収入や売却益を得ることが可能です。
一方で、利回りが低めであることや、投資物件を選べない点には注意が必要です。希望する物件に必ず投資できるわけではなく、途中解約が難しい商品もあります。そのため、あらかじめ資金計画を立てて長期的な視点で運用することが大切です。
不動産小口投資は、資産運用や相続対策を考える人、ポートフォリオを分散したい人にとって有効な選択肢であると言えます。

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ワンポイントアドバイス
記事中でも解説していますが、投資効率などを考慮すると、不動産小口投資は少額の自己資金で大きな利益を狙える投資手法ではありません。少なめの資金から始めたいという人にとっては、REITやボロ戸建て投資などの方が有効なケースも多くなっています。そのほか、相続対策など特定の目的がある場合は特に有効です。
どの手法が効率的に稼げるかよりは、不動産投資をする最終的な目標を決めてから、目標に合った投資手法を選ぶのが良いでしょう。
この記事のポイント
Q. 不動産小口投資とはどのような仕組みですか?
A. 不動産小口投資とは、1つの不動産を小口化し、複数の投資家が共同で所有・運用する投資手法です。詳しくは「不動産小口投資の仕組みとは?」をご覧ください。
Q. 不動産小口投資にはどのような種類がありますか?
A. 不動産小口投資には、大きく分けて賃貸型・匿名組合型・任意組合型の3種類があります。それぞれの特徴を理解し、自分に合った投資方法を選ぶことが重要です。詳しくは「不動産小口投資の種類」をご覧ください。
Q. 不動産小口投資のメリット・デメリットを教えてください。
A. 不動産小口投資は資金面や管理面での負担が少なく、手軽に始められるのが主な特徴です。ただし、不動産小口投資を検討する際は、利回りや資金面、流動性などのデメリットを理解し、自分の投資スタイルに合っているか慎重に判断することが重要です。詳しくは「不動産小口投資のメリット」「不動産小口投資のデメリット」をご覧ください。