中古マンション市場は好調も地域差は大きい
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が9月11日に発表した2023年8月度首都圏(1都3県)不動産市場の動向によれば、中古マンションの成約価格は40ヶ月連続で上昇しました。上昇率は、前年同月比10%を超えました。その一方、中古戸建は前年同月比1.4%の下落で、成約数も20ヶ月連続で減少しています。
首都圏中古マンション
項目 | 2023年8月成約物件の平均 | 対前年同月 |
---|---|---|
平米単価 | 74.08万円/㎡ | +10.1% |
件数 | 2,367件 | +0.9% |
価格 | 4,704万円 | +9.9% |
専有面積 | 63.05㎡ | -0.2% |
築年数 | 24.19年 | +0.32年 |
在庫件数 | 45,961件 | +19.9% |
(参考:東日本不動産流通機構)
2023年8月に成約した首都圏中古マンションの平均平米単価は、前年同月比+10.1%の「74.08万円/㎡」でした。成約平米単価の上昇は、40ヶ月連続です。成約件数も、ほぼ横ばいで推移しており、堅調だったといえるでしょう。ただし、下記表のように、成約件数の増減には地域差があるようです。在庫件数は同約2割増ですが、ここ数ヶ月は横ばいで推移しています。
エリア | 2023年8月成約㎡単価前年同月比 | 2023年8月成約件数前年同月比 |
---|---|---|
東京都区部 | +5.4% | +11.7% |
東京都多摩 | +0.4% | -12.7% |
横浜・川崎市 | +7.0% | -1.5% |
上記除く 神奈川県 |
+13.3% | -5.9% |
埼玉県 | +5.1% | -5.0% |
千葉県 | +4.2% | -12.2% |
(参考:東日本不動産流通機構)
前年同月比成約件数は一都三県全体で見ればプラスですが、エリア別では東京区部を除いてマイナス。東京都多摩および千葉県は、-10%を超えています。一方で、成約価格は全てのエリアで上昇しているものの、やはりこちらも地域差が大きく、横浜・川崎市を除く神奈川県以外のエリアは一桁の上昇に留まります。
首都圏中古戸建
項目 | 2023年8月成約物件の平均 | 対前年同月 |
---|---|---|
価格 | 3,725万円 | -1.4% |
件数 | 837件 | −4.6% |
土地面積 | 138.36㎡ | -9.1% |
建物面積 | 102.68㎡ | -2.4% |
築年数 | 22.62年 | +1.12年 |
在庫件数 | 18,279件 | +36.7% |
(参考:東日本不動産流通機構)
2023年8月に成約した首都圏中古戸建の平均価格は、前年同月比-4.6%の「3,725万円」でした。好調な中古マンション市場とは対照的に、価格・成約件数ともに減少傾向にあります。ここ数ヶ月、成約件数が1,000件前後であるのに対し、新規登録件数は5,000件前後で推移しており、在庫は増える一方です。
エリア | 2023年8月成約㎡単価前年同月比 | 2023年8月成約件数前年同月比 |
---|---|---|
東京都区部 | -1.9% | -10.7% |
東京都多摩 | +7.6% | +1.8% |
横浜・川崎市 | -4.6% | -13.1% |
上記除く 神奈川県 |
+3.0% | -28.3% |
埼玉県 | -0.2% | +16.3% |
千葉県 | +6.8% | -1.1% |
(参考:東日本不動産流通機構)
ここ数ヶ月の成約価格をエリア別に見ると、東京都区部や横浜・川崎市は横ばいからマイナスで推移していますが、比較的、郊外エリアは好調なようです。東京都多摩は、5ヶ月連続で前年同月を上回っています。一方、成約件数については、どのエリアもここ数ヶ月、減少傾向にあります。8月はとくに、神奈川県の減少が目立ちます。
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省エネ基準適合義務化と「4号特例」縮小
2025年4月より、全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合が義務付けられます。これと時を同じくして「4号特例」が縮小することとなりました。
4号特例とは
4号特例とは、建築基準法第6条の4に基づき、建築確認の対象となる木造住宅等の小規模建築物において、建築士が設計を行う場合に構造関係規定等の審査が省略される制度です。しかし、2025年度からのこの4号特例は縮小し、これまで審査対象から除外されていた一般的な住宅などの小規模木造建築物も審査の対象となります。加えて、同時に開始される省エネ基準適合への義務化になることから、原則として全ての建築物が確認申請の際に構造・省エネ関連の提出が必須となります。留意しなければならないのは、「新築」のみならず、大規模な修繕や模様替えに伴う建築確認も審査の対象となるということです。
省エネ基準適合の義務化は中古住宅の価値にも影響するか
確認申請が煩雑化することもさることながら、中古住宅の所有者は、新築住宅の省エネ基準適合化に伴い、「住まいの選び方」が変わっていく可能性があることも考慮しておかなければなりません。政府は、2030年度には省エネ基準をZEH基準の水準にまで引き上げるとしています。省エネ基準適合義務化を前にした昨今、すでに省エネ性能の高い住宅が多数出てきており、中古住宅選びにおいても「省エネ性能」に着目する人が増えていくものと推測されます。これまで多くの方が気にしていた耐震性に加え、断熱性や気密性の高さ、エネルギー創出や蓄電などの仕組みの有無などが住宅の価値に直結するようになっていくことでしょう。