2月は引き続き価格上昇も在庫件数が大幅増
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が3月10日に発表した2023年2月度首都圏(1都3県)不動産市場の動向によれば、ほぼ全てのエリア・物件種別で価格が上昇しています。一方、成約件数については、中古マンション・中古戸建ともに減少傾向がみられました。
首都圏中古マンション
項目 | 2023年2月成約物件の平均 | 対前年同月 |
---|---|---|
平米単価 | 68.71万円/㎡ | +9.9% |
件数 | 3,240件 | +3.0% |
価格 | 4,359万円 | +8.3% |
専有面積 | 63.43㎡ | −1.4% |
築年数 | 23.71年 | +0.44年 |
在庫件数 | 44,760件 | +20.1% |
(参考:東日本不動産流通機構)
2023年2月に成約した首都圏中古マンションの平均平米単価は、前年同月比+9.9%の「68.71万円/㎡」でした。成約平米単価の上昇は、2020年5月から34ヶ月連続。成約件数は7ヶ月ぶりにプラスに転じましたが、在庫件数は同+20.1%と大幅に増加しています。
エリア | 2023年2月成約㎡単価前年同月比 | 2023年2月成約件数前年同月比 |
---|---|---|
東京都区部 | +6.3% | +9.5% |
東京都多摩 | +13.6% | -14.0% |
横浜・川崎市 | +5.2% | -9.9% |
上記除く 神奈川県 |
+20.9% | -0.9% |
埼玉県 | +8.1% | -12.8% |
千葉県 | +12.6% | +6.2% |
(参考:東日本不動産流通機構)
エリア別でみても、全てのエリアで成約平米単価は上昇しました。しかし、東京都多摩や横浜・川崎市を除く神奈川県、埼玉県は価格の上昇率が高いものの、成約数は大幅減。条件の良い物件を中心に成約にいたったものと考えられます。
首都圏中古戸建
項目 | 2023年2月成約物件の平均 | 対前年同月 |
---|---|---|
価格 | 3,863万円 | +2.5% |
件数 | 1,057件 | -13.4% |
土地面積 | 150.14㎡ | +4.8% |
建物面積 | 104.20㎡ | +1.1% |
築年数 | 21.357年 | +0.67年 |
在庫件数 | 15,991件 | +18.8% |
(参考:東日本不動産流通機構)
2023年2月に成約した首都圏中古戸建の平均価格は、前年同月比+2.5%の3,863万円。2020年11月から28ヶ月連続で上昇しています。一方で、成約件数は同−13.4%と大幅減。在庫件数は同+18.8%と大幅に増えている中での、成約件数の減少。これは、需要に落ち着きがみられ始めている兆候とも捉えられます。
エリア | 2023年2月成約㎡単価前年同月比 | 2023年2月成約件数前年同月比 |
---|---|---|
東京都区部 | -6.6% | -9.2% |
東京都多摩 | +4.7% | −22.4% |
横浜・川崎市 | +3.4% | −4.5% |
上記除く 神奈川県 |
+15.4% | -25.3% |
埼玉県 | +3.2% | −9.9% |
千葉県 | +4.1% | -12.9% |
(参考:東日本不動産流通機構)
エリア別に見ると、成約価格は東京都区部を除いた全エリアが上昇しています。特に横浜・川崎市を除く神奈川県の上昇率が15.4%と高いものの、前年同月比成約件数は同エリアが-25.3%と最も減少幅が大きくなりました。東京都多摩の成約件数も同−22.4%と大きいながらも、成約価格は上昇。中古戸建も中古マンションと同様に、条件の良い物件を中心に成約にいたったものと考えられます。
植田日銀、4月発足
2月に提示された、日本銀行黒田総裁の後任案。経済学者という異例の経歴を持つ植田和男氏の名前が挙がったことから「サプライズ人事」ともいわれていました。3月10日には、植田氏を起用する人事案が可決し、初の学者出身の日銀総裁が誕生します。植田氏が率いる新体制は、4月9日に発足する予定です。
金融政策はノーサプライズ
3月10日には、金融政策決定会合も行われました。黒田総裁にとって最後となる同会で、今後の道筋を示すための利上げが見られるかと注目されましたが、大規模緩和の維持が決定。10日の株式市場は、これを受け一時500円以上値下がりしました。長期金利も一時0.385%と、1月下旬以来、最も低い水準に急低下しました。
10年にわたる任期中、一貫して大規模金融緩和を続けた黒田総裁。同氏が同会で述べたように雇用の増加は見られたものの、当初から目標としていた上昇率「2%」の物価安定は達成できませんでした。加えて、膨れ上がった国債発行やインフレ懸念など深刻な“副作用”を残したまま、4月には植田氏に引き継がれます。
住宅ローン金利は史上最低水準が続いている
22年末に長期金利の変動幅が引き上げられたことで、金利上昇が懸念されていた住宅ローン。しかし、7割以上の人が選択するとされる変動金利は、上昇どころか低金利競争が激化しています。
4月から日銀総裁に就く植田氏は、当面の間、2%の物価安定目標を目指し、大規模緩和を継続する姿勢を見せています。植田氏の所信聴取では「積年の課題であった物価安定の達成というミッションの総仕上げを行う5年間としたい」との発言もみられました。変動金利にも大きく影響する、金融政策。4月からの植田氏率いる新体制に注目です。