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マンション売却時の引っ越しはいつ?必要となる準備も解説

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • マンション売却時の引っ越しのタイミングは、買主に所有権が移転する引渡日前に行うことが原則
  • マンション売却時の引っ越しは、売却前、売却日当日、売却後に行うパターンがある

住みながらマンションを売却して行う買換えで悩ましいのが、引っ越しの問題です。
引っ越しのタイミングは、原則として売買契約から引渡までの間になりますが、事情によっては、引渡後に引っ越したいと思っている人もいるのではないでしょうか。

引っ越しのタイミングは、例外的に売却物件の購入者が同意すれば引渡日以降に調整できることもあります。
この記事では、マンション売却の引っ越しのパターンや必要な準備などについて解説します。

マンション売却時の引っ越しのパターン3つ

マンションの売却では、売買契約日と引渡日との間を1カ月程度空けるのが特徴となります。売買契約日とは、端的にいうと「いつ、いくらで売却するか」について書面で約束をする日です。買主に所有権が移転するのは、あくまでも引渡日になります。

引っ越しのタイミングは、買主に所有権が移転する引渡日前に行うことが原則です。
この章では、「引渡日前」に行う原則的なパターンと、「引渡日」または「引渡日以降」に行う例外的なパターンについて解説します。

マンション売却前に引っ越す

マンションの所有権は、売買契約日ではなく引渡日に買主へ移転します。そのため、引渡日までは所有権は売主にありますので、売主が自由に使う権利があります。

理屈の上では、引渡の前日まで住み続けることはできます。ただし、マンションの売却では引渡前に買主の立会いの下、物件の最終確認をすることが一般的です。

具体的には、引っ越し後に空き家の状態にして、設備の有無や動作確認、不具合の状況等について確認を行います。売主は付帯設備表と呼ばれる書面にて、設備の不具合を事前に買主に告知していますので、物件が付帯設備表の内容と相違がないかを確認します。

また、最終確認の段階で告知していなかったキズ等があった場合、買主から引渡までに修繕を求められることも多いです。そのため、最終確認はある程度余裕を持って引渡日の1~2週間前に行えると望ましいといえます。

仮に売買契約日から引渡日の間を1カ月とし、最終確認日を引渡日の10日前にセットすると、引っ越しは売買契約日から20日以内を目安として行うことになります。

マンション売却当日に引っ越す

概念上は引渡日当日に引っ越すということも考えられます。例えば、午前中に売却物件の引渡を行い、午後に購入物件の引渡を行って、夕方には引っ越せる状態であれば、当日引っ越すということが理論上できます。

引渡日の当日に引っ越す場合には、買主の了解を得て物件の最終確認を引渡前に住みながらの状態で行うといった対応も必要です。

また、午前中に売却物件の引渡を終えれば、厳密にはマンションの所有権は午前中に買主に移転します。夕方の引っ越しまで売主はマンションを不法占拠する状態となるため、買主と引渡猶予特約を締結しておくことが適切です。引渡猶予特約とは、実際の引渡日を数日ずらしてもらう特約になります。

ただし、万が一、午後の購入物件の引渡でトラブルが発生し、作業が遅延してその日のうちに引っ越しができないことも考えられます。当日の引っ越しは綱渡り的な作業となるため、取引の安全を確保するという意味では、あまりおすすめできない方法です。

マンション売却後に引っ越す

引渡後に引っ越したい場合には、売却物件の売買契約書において買主の了解を取って引渡猶予特約を締結することが必要です。引渡猶予特約で引渡を猶予できる日数は3~10日程度とされています。

引渡猶予特約を付けたとしても、買主に所有権の移転する日は引渡日です。売主は占有権限のない人になりますが、引渡猶予特約により買主の善意で数日間、元自宅に泊めさせてもらうことができます。

引渡猶予特約は、買主からすると買ったマンションが自分のものになったのにも関わらず、数日間、利用することができないという特約となります。買主にとって何のメリットもないため、引渡猶予特約は必ずしも常に応諾してもらえるとは限りません。

引渡猶予特約は、買主の善意に基づく特約であることから、締結するには売買契約時点で買主を納得させるだけの材料が必要となります。具体的には、売却物件の売買契約時点ですでに購入物件の売買契約を締結しており、引っ越し日が売却物件の引き渡しの数日後に設定できることが明らかであると望ましいです。

例)
3月1日: 売却物件決済(所有権移転)の場合
3月3日 :引っ越し
3月7日 :売却物件引き渡し・買主の居住開始可能

引渡猶予特約は、あえて猶予している期間中の賃料は発生させないものとしています。理由としては、賃料を発生させず無償で貸すことで、占有者(売主)の権利を「使用貸借」と呼ばれる弱いものにするためです。使用貸借とすることで、貸主(買主)はいつでも借主(売主)を退去させることができます。

また、引渡猶予特約を設定し、猶予期間中に万が一天災等で物件が滅失した場合、そのリスクは売主が負うこととするのが一般的です。

マンション売却時の引っ越しまでに必要な準備

住宅ローンを抱えている人がマンションを売る場合、売買代金によって住宅ローン残債を一括返済することが必要です。住宅ローンは原則として1人1本しか組めないため、購入物件で住宅ローンを組む場合は、売却してからでないと次の物件を購入できないことになります。
つまり、住宅ローンが残っている人の買換えは、引渡日が「売却が先、購入が後」となります。

この章では、売却物件で住宅ローン残債が残っている場合のマンション売却の引っ越しまでの流れについて解説します。

①マンション売却のための情報収集

準備段階では、マンションの相場やマンション売却が得意な不動産会社、住宅ローン残債等の調査を行います。
依頼したいと思える不動産会社が見つかったら、まずは査定を依頼します。候補となる不動産会社は、得意分野や提供している無料サービス等も調べた上で数社に絞り込むのが適切です。

・「不動産売却 どこがいい」に関する記事はこちら
不動産売却や査定はどこがいい?迷ったときの選び方

②不動産会社との媒介契約締結

売却を依頼する不動産会社が決まったら、不動産会社と媒介契約を締結します。媒介契約とは、仲介の契約のことです。

③マンション売却活動を行う

媒介契約を終えたら、売却活動が開始されます。マンションは、売りに出してから売買契約が決まるまでの期間が一般的に3カ月弱程度です。

売却物件の売買契約書に引渡猶予特約を付けて引渡後に引っ越しをしたい人は、売却活動期間中に購入物件の売買契約書を締結しておくことが望ましいといえます。

ただし、購入物件の引渡日は売却物件の引渡日と同日もしくは数日後に設定することが適切です。売却物件の売買契約時点で、購入物件の引渡日が売却物件の引渡日と同日もしくは数日後に設定されていれば、売却物件の買主に引渡猶予特約を応諾してもらいやすくなります。

引渡猶予特約は、買主にとって売主が約束を破っていつまでも居座ってしまう可能性がある点がリスクです。売主の引っ越し先が具体的に決まっていない場合には、引渡猶予特約を締結することは難しいといえます。

・東急リバブルの売却活動はこちらから

④買い手との不動産売買契約締結

売却活動の結果、買主が決まったら売却物件の売買契約を締結します。この時点で購入物件が具体的に決まっていない場合は、引渡猶予特約を利用することは現実的に難しいです。

引渡猶予特約を利用しない場合には、引っ越しのタイミングは原則通り売買契約から引渡までの間となります。

・「マンション 売買契約」に関する記事はこちら
マンション売却時の売買契約の流れとは?売買契約書の内容も解説

⑤マンション引渡しと引っ越しの準備

不動産の売却は、空き家の状態で引き渡すことが原則であることから、引っ越しは引渡しの前に行うことが原則です。

売買契約から引渡までの間には、手付解除およびローン特約による解除の期限が定められています。手付解除期間やローン特約による解除の期限は、一般的には売買契約から2週間後程度です。

手付解除とは、買主が手付金を放棄することで売買契約を解除することを指します。ローン特約とは、買主が住宅ローンの本審査に通らなかったときに契約を解除できるという特約のことです。

手付解除やローン特約にある解除の期限内は、売買契約が解除される可能性があるため、引っ越さない方が無難といえます。引っ越しは、解除期限が過ぎたらすみやかに行うことが理想です。

⑥マンション引渡し完了

引渡は、原則として引っ越し済みの状態で迎えます。引渡猶予特約を利用する場合には、例外的に引渡の数日後に引っ越しを行うことも可能です。

・「マンション売却 引渡し」に関する記事はこちら
マンション売却から引き渡しまでの流れとは?必要な書類も紹介

マンション売却時の引っ越しにまつわる注意点

マンション売却時の引っ越しにまつわる注意点について解説します。

引っ越し先が見つからない場合はどうする?

「引っ越し先が見つからないから、引っ越すことができない」というのは理由になりません。引渡猶予特約を利用しない場合、引渡日に引き渡せないのは契約違反です。

引渡猶予特約を利用する場合でも、売買契約時には引っ越し先と引っ越し時期は原則として確定していることが必要です。購入物件が決まっていない場合には、早急に賃貸物件を探すか、いったん実家などに引っ越すかといった対応を行います。売買契約から引渡までの間は1カ月程度ありますので、それまでに引っ越し先を見つけるようにしましょう。

引っ越し時に忘れがちな手続きとは?

引っ越し時に忘れがちな手続きとしては「マンションの管理組合の脱会手続をする」「水道、ガス、電気、電話等の閉栓手続き」等があります。
「住民票の移動の手続き」も必要になるので忘れないようにしましょう。

新たに物件を購入した場合は?

売却物件で住宅ローンが残っており、購入物件でも新たに住宅ローンを組む場合には、引渡の順番は「売却が先、購入が後」となります。理由としては、住宅ローンは原則として1人1本しか組めないからです。
売却物件を売った後でないと購入物件を買えないことから、購入物件に先行入居をさせてもらえない限り、売却前に引っ越すことはできません。

そのため、「いったん仮住まいに引き渡し前に引っ越す」か、もしくは「引渡猶予特約を利用して引渡後に引っ越す」かのいずれかの方法を取ることになります。

一方で、売却物件で住宅ローンを完済している人は、先に購入物件を買うこともできます。住宅ローンは原則として1人1本であることから、住宅ローンを組んで先に購入物件を買うことも可能です。「購入が先、売却が後」にできる場合には、引渡前に購入物件へ引っ越すことができます。

引っ越し後に賃貸物件に住む場合は?

「売却が先、購入が後」となる場合において、引渡猶予特約を利用できない場合は、賃貸物件や実家などに引っ越すこととなります。賃貸物件や実家に引っ越す場合、引っ越し代が2回発生することが注意点です。

また、賃貸物件に引っ越す場合には、賃貸物件を決める際の仲介手数料(家賃の1ヶ月分)や敷金、入居期間中の家賃も発生します。賃貸物件に引っ越す予定の方は、仮住まいの費用も見込んでおくことが望ましいです。

・東急リバブルの「マンション売却・査定」はこちらから

この記事のポイント

マンション売却時の引っ越しのパターンにはどんなものがありますか?

引っ越しのタイミングは、買主に所有権が移転する引渡日前に行うことが原則です。

ただし、場合によっては「引渡日」または「引渡日以降」に行う例外的なパターンがあります。

詳しくは「マンション売却時の引っ越しのパターン3つ」をご覧ください。

マンション売却時に新たに物件を購入した場合、引っ越しはいつになりますか?

売却物件で住宅ローンが残っており、購入物件でも新たに住宅ローンを組む場合には、引渡の順番は「売却が先、購入が後」となります。

住宅ローンは原則として1人1本しか組めず、売却物件を売った後でないと購入物件を買えないことから、購入物件に先行入居をさせてもらえない限り、売却前に引っ越すことはできません。

詳しくは「マンション売却時の引っ越しにまつわる注意点」をご覧ください。

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