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不動産売却の基礎知識を完全ガイド!売却の流れや必要書類、売却方法を解説

執筆者プロフィール

亀梨奈美

株式会社realwave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ジャーナリストとして独立。
2020年には「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに、不動産を“伝える”ことに特化した株式会社realwaveを設立。
住宅専門全国紙の記者として活動しながら、不動産会社や銀行、出版社メディアへ多数寄稿。不動産ジャンル書籍の執筆協力なども行う。

ざっくり要約!

  • 不動産売却の基礎知識を知っておくことで、自分にあった売却方法を選択でき、心の余裕にもつながる
  • 満足のいく不動産売却をするために最も大切なのは、不動産会社選び

不動産という高額な資産を満足のいく形で売却するには、売主も一定の知識をつけておくことが求められます。あらかじめ売却方法や売却の流れ、必要な書類や費用がわかっていくことで、心構えもできるものです。

本記事では、不動産を売るなら知っておきたい基礎知識を解説します。

「仲介」による不動産売却の流れと期間

まずは、不動産会社の「仲介」によって不動産を売却する流れと期間を見ていきます。仲介とは、不動産の取引形態の1つ。不動産会社が売主と買主の間に入って契約を成立させることを指します。

STEP.1売却査定

まずは、不動産会社が物件を査定し、売却見込み額を算出します。査定方法は、次の3つに大別されます。

AI査定周辺相場データや取引事例を元にAIが自動で市場価格を算出
机上査定(簡易査定)実際に不動産を見ずに、概要とデータをもとに簡易的に査定する方法
訪問査定机上査定で使用した書類やデータを使用するのに加え、現地の状況も加味した上で査定価格を算出する方法

STEP.2媒介契約の締結

続いて、不動産会社と媒介契約を締結します。媒介契約には、次の3つの種類があります。

  • 一般媒介契約
  • 専任媒介契約
  • 専属専任媒介契約

それぞれの特徴を知ったうえで、売主様の意向と物件に合った媒介契約を締結しましょう。

STEP.3売却活動

不動産会社と媒介契約を締結次第、売却活動が始まります。不動産を売るために行われる売却活動は、次のようなものです。

  • 販売図面の作成
  • 不動産ポータルサイトへの登録
  • レインズへの登録
  • 新聞折込チラシ
  • ポスティングチラシ
  • 顧客への紹介
  • 内覧のサポート

STEP.4売買契約

売主様・買主様が売買条件に納得したら、売買契約を締結します。不動産売買では、売買契約から1〜2ヶ月後にあらためて残代金決済・物件引き渡しの日取りを設けるのが一般的です。買主様には、この間にローンの本審査を通していただきます。

売買契約では、重要事項説明の読み合わせや契約書への署名・捺印、手付金の授受が行われます。

STEP.5決済・引き渡し

決済・引き渡しで行われるのは、次のようなことです。

  • 手付金を除いた残代金の授受
  • 所有権移転登記
  • 売主様の抵当権抹消登記(住宅ローンの完済)
  • 鍵の引き渡し
  • 固定資産税の精算
  • 管理費等の精算
  • 引き渡し完了証の交付

この日をもって、不動産の所有権は買主様に移行します。

売却にかかる期間はどれくらい?

売却にかかる時間は、売り出し価格や需要、市況などによって異なりますが、急リバブルでは、全体の70%が3ヶ月以内に成約しているようです。1ヶ月以内に成約にいたった割合も、44%と半数近く。ただ、あくまでこれは統計上の数値のため、必ずしも3ヶ月以内で売れるというわけではありませんのでご注意ください。

「早く売りたい」「1ヶ月以内にどうしても売りたい」と急いでいる場合は、後述する不動産買取を検討してみましょう。

不動産売却時にかかる費用

不動産売却には、次のような諸費用がかかります。仲介による売却で必ずかかる費用は、次のうち仲介手数料と印紙税のみ。その他は、状況によってかかる可能性のある費用です。

仲介手数料

仲介手数料は、仲介をする不動産会社に支払う成功報酬です。売買代金400万円以上の不動産の仲介手数料上限額は、次の計算式で求められます。

売買代金×3%+6万円(+税)

印紙税

不動産の売買契約書は、印紙税が課税される文書です。下記のように、売買代金に応じた税額が課されます。

売買代金本則税率軽減税率
10万円超50万円以下400円200円
50万円超100万円以下1,000円500円
100万円超500万円以下2,000円1,000円
500万円超1,000万円以下1万円5,000円
1,000万円超5,000万円以下2万円1万円
5,000万円超1億円以下6万円3万円
1億円超5億円以下10万円6万円
5億円超10億円以下20万円16万円
10億円超50億円以下40万円32万円
50億円超60万円48万円

2024年3月31日までに作成される売買契約書は、表右の軽減税率が適用となります。

抵当権抹消費用

売買代金を充てて住宅ローンを完済する場合は、抵当権を抹消するための費用がかかります。抵当権とは、ローンを組んでいる金融機関が不動産に対して設定している権利です。抵当権抹消費用の内訳は、次のとおりです。

登録免許税

抵当権抹消には、登録免許税が課されます。税額は、不動産1つにつき1,000円。土地一筆と建物の場合は2,000円が課されます。

司法書士手数料

抵当権抹消登記は、司法書士に依頼するのが一般的です。司法書士報酬の相場は、2万円前後です。

住宅ローン完済手数料

住宅ローンを完済する際に手数料がかかる金融機関も少なくありません。金額は金融機関次第ですが、3万円程度であることが多いようです。

譲渡所得税(所得税・住民税)

不動産を売却して譲渡所得(売却益)がでた場合、所得税と住民税が課されます。これらを総称して譲渡所得税といいます。

譲渡所得税の税率は、不動産を所有していた期間によって次のように異なります。

所有期間税率
5年以下(短期譲渡所得)20.315%(所得税15.315%・住民税5%)
5年超(長期譲渡所得)39.63%(所得税30.63%・住民税9%)

なお、所有期間は、不動産を売却した年の1月1日時点のものを指しますのでご注意ください。

譲渡所得が生じた場合と控除特例の適用を受ける場合は、売却した年の翌年の確定申告をする必要があります。

不動産売却の必要書類

不動産の売却には、さまざまな書類が必要です。とはいえ、必ずしも売却相談や査定依頼時に必要というわけではありません。まずはできる範囲で各種書類を用意し、不動産会社の指示に沿って、順次、不足するものを揃えていきましょう。

登記識別情報(権利証)

不動産の所有権を確認するために必要な書類です。再発行はできないため、紛失には十分ご注意ください。万一、紛失してしまった場合は、登記識別情報による本人確認に代わって登記所から事前通知による本人確認をするなどの代替措置があります。

印鑑証明書

売買契約書には実印で押印するため、発行3ヶ月以内の印鑑証明書の提出が求められます。印鑑証明書は、役所で取得できます。また、マイナンバーカードがあれば、コンビニエンスストアなどの端末から取得できる場合があります。

本人確認書類

本人確認書類として、次のような書類のうちいずれかが必要になります。

  • 運転免許証
  • パスポート
  • マイナンバーカード
  • 障がい者手帳
  • 療育手帳
  • 在留カード+パスポート
  • 保険証+公共料金の領収書や官公庁発行の印刷物、住民票の原本

住宅ローン残高証明書

売却代金でローンが完済できるか確認するため、査定時に住宅ローン残高証明書を用意されることをおすすめします。見当たらない場合、ローンを借り入れている金融機関に問い合わせてみましょう。

測量図(土地・戸建)

測量図とは、土地の面積や形状がわかる書類です。お手元になければ法務局で取得できますが、測量されていない土地も一定数、存在します。その場合は、売買前に確定測量や仮測量を求められることがあります。

公図(土地・戸建)

公図は、地番や接道状況などがわかる書類です。お手元になければ法務局で取得できます。

検査済証(戸建)

検査済みの建物であることを証明するのが、検査済証です。再発行できないため、紛失にはご注意ください。

建物図面(戸建)

建物図面は、建物の面積や間取りがわかる書類です。建築時や購入時に施工会社や不動産会社からもらっているはずのものですが、見当たらなければ新規に作成することになります。

管理規約・使用細則(マンション)

マンションの場合は、管理規約や使用細則をご用意ください。マンションのあらゆるルールが明記された書類です。見当たらない場合は、管理会社に確認してみましょう。

管理費・修繕積立金(マンション)

管理費や修繕積立金は、買主様が今度支払っていく費用の1つです。いくらであるかは購入検討時に気にされる方も多いため、売却活動開始までに費用がわかる書類を用意しておきましょう。

不動産売却方法は「仲介」だけじゃない?

不動産を売却する方法は、不動産会社に仲介してもらうだけではありません。状況や意向に応じて、次のような売却方法も併せて検討してみましょう。

不動産買取

「仲介」による売却は、不動産会社が売主様のパートナーとして、販売活動や買主様探し、契約のサポートなどを行います。一方、不動産会社自らが買主となるケースも。これを「不動産買取」といいます。

不動産買取は「不動産会社が買い取る」ということが決まっているため、販売活動や買主様探しをする必要がありません。そのため、多くの場合、仲介で売却するより早く、手間をかけずに売却できます。また、仲介にはあたらないため仲介手数料は不要です。

一方、不動産買取にはデメリットもあります。それは、買取価格が相場を下回ってしまうケースが多いことです。不動産会社は、買い取った不動産を修繕やリノベーションし、再販することで利益を出す目的で不動産を買い取ります。つまり、不動産会社にとって、買取は仕入れ。再販時に利益を出すため、相場価格で買い取ることは難しいといえるのです。

リースバック

不動産を売却すると、基本的に所有権は買主様に移行し、売主様は転居を余儀なくされます。しかし「リースバック」なら、売却後も自宅に住み続けることができます。

その仕組みは、売却後の賃貸借。売主様は売却後、所有者から借主に、買主が貸主になることで、自己所有物件から賃貸物件にはなるものの、転居なく住み続けられます。

任意売却

不動産は、基本的にローンを完済せずに売却することはできません。それは、ローンが残っている不動産には抵当権が設定されているからです。抵当権とは、債務者のローン返済が一定期間、滞った場合、差し押さえて競売にかけられる権利をさします。抵当権を抹消しなければ、差し押さえのリスクがある不動産を購入してくれる人はまずいません。

しかし「任意売却」という特別な売却方法であれば、ローンを完済せずとも金融機関は抵当権を抹消することを許可してくれるため、売却が可能となります。

不動産売却で成功するには不動産会社選びが最も重要

不動産の売却方法には、仲介や不動産買取、リースバック、任意売却などが挙げられますが、いずれも不動産会社によって査定額は異なります。よって、売却前には、必ず複数社に査定依頼をしましょう。

不動産会社によって得手不得手は異なる

不動産会社によって査定額が異なる理由は、得手不得手や比較対象とする過去の成約事例、物件の評価ポイントなどが違うからです。

そもそも査定額とは、各不動産会社が考える推測値。査定の精度が低いと、相場価格を下回る金額で売却してしまったり、逆に市場が求める金額よりはるかに高い金額で売り出してしまったりするおそれがあります。

サービス内容もさまざま

査定額のみならず、不動産会社のサービス内容も比較することが大切です。たとえば、相続や離婚に伴う不動産売却に際しては、売却だけでなく弁護士相談会を開催している不動産会社ならワンストップでサポートしてもらえるでしょう。

他にも、不動産会社の一部は次のような「売却+α」のサービスを提供しています。

  • 売却保証:一定期間、売れなかった場合に限り買取をしてくれる
  • ハウスクリーニング:汚れが気になる箇所をプロがクリーニング
  • 住宅設備保証:買主様が不安に感じる設備の不具合を一定期間、保証
  • CGリフォーム:リフォーム後の様子をCGで体験できる

基礎知識をつけて不動産売却に臨もう

不動産売却に際しては、売主も一定の知識をつけておくことが求められます。今回お伝えした基礎知識の他にも、売却理由や売却方法に応じたノウハウ、税金や節税方法、確定申告方法などもあらかじめ認識しておきましょう。「知る」ことは選択肢を増やすことであり、余裕を持った資金面・精神面の準備にもつながります。

この記事のポイント

不動産の売却にはどれくらいの期間がかかる?

東急リバブルでは約70%の方が3ヶ月以内に売却されています。(2019年度・首都圏)

詳しくは「『仲介』による不動産売却の流れと期間」をご覧ください。

不動産を売るにはどんな書類が必要?

登記識別情報や印鑑証明書などが必要です。

詳しくは「不動産売却の必要書類」をご覧ください。

「仲介」以外にどんな不動産の売り方がある?

「買取」や「リースバック」「任意売却」といった方法があります。

詳しくは「不動産売却方法は「仲介」だけじゃない?」をご覧ください。

今売ったらどのくらいの金額で売れるんだろう?

査定価格・市場価格とお客様のご状況を踏まえ、東急リバブルが最適なご売却プランをご提案させていただきます。

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