ざっくり要約!
- 空き家の売却は、相続登記や不動産会社への査定依頼から始まり、媒介契約、販売活動、売買契約の締結、決済・引き渡しという流れが一般的です。
- 空き家の売却方法には、現状のまま売る、リフォームして価値を高める、解体して更地にする、不動産会社に直接買い取ってもらうなどの選択肢があります。
- 空き家の売却には仲介手数料や税金などの費用がかかりますが、助成金や特別控除を活用することで負担を抑えられる場合があります。
相続などによって空き家を所有することになったものの、活用する予定がなく、売却を検討している方もいるでしょう。しかし、一般的な住宅の売却とは異なる点もあり、どのような流れで進めればよいのか、費用はどのくらいかかるのかなど、不安や疑問を感じるかもしれません。
この記事では、空き家を売却する際の流れや、物件の状態に応じた売却方法を解説します。また、売却にかかる費用や税金、負担を抑えるコツ、注意点などもあわせて紹介します。
納得のいく条件でスムーズに売却を進められるよう、ぜひ参考にしてください。
空き家を売却する流れ
空き家の売却をスムーズに進めるためには、まず全体の流れを把握しておくことが大切です。ここでは、空き家を売却する際の基本的な6つのステップを解説します。
- 相続登記
- 査定
- 媒介契約
- 販売活動
- 売買契約
- 決済・引き渡し
1.相続登記
相続によって取得した空き家を売却する場合、まず必要になるのが「相続登記」です。相続登記とは、不動産の名義を亡くなった方(被相続人)から、財産を受け継ぐ相続人に変更する手続きを指します。この手続きを済ませないと、法的に所有者として認められないため、空き家を売却できません。
なお、2024年4月1日より相続登記が義務化されました。正当な理由なく申請を怠った場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。
相続登記の手続きは複雑なため、司法書士に依頼するのが一般的です。売却活動と並行して進めることもできますが、売却を決めたら早めに着手しましょう。
| ・「相続登記」に関する記事はこちら 相続登記にかかる費用や相場、書類作成についてわかりやすく解説 相続登記の義務化はどのような影響がある?いつから始まるのかについても解説 |
2.査定
相続登記の準備と並行して、不動産会社に空き家の査定を依頼します。査定価格は、売出価格を決める際の重要な判断材料になります。
査定には、物件情報をもとに算出する「机上査定」と、実際に現地を訪問して建物の状態や周辺環境などを確認する「訪問査定」の2種類があります。より正確な価格を知るためには、訪問査定を依頼しましょう。
不動産会社によって査定価格は異なるため、複数の会社に依頼して比較検討することが重要です。
| ・「査定」に関する記事はこちら 家の売却査定はどこに依頼するといい?事前準備や注意点などを解説 不動産売却査定とは?種類や査定の流れなど基礎知識を解説 |

3.媒介契約
査定内容や担当者の対応などを比較し、売却を依頼する不動産会社が決まったら、「媒介契約」を締結します。媒介契約とは、不動産の売却活動(仲介)を正式に依頼するための契約です。
媒介契約には、「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があります。それぞれ、複数の不動産会社に同時に依頼できるか、自分で見つけた買主と直接契約できるか、不動産会社の売主への報告義務などに違いがあります。
どの契約形態が適しているかは、物件の状況や売主の希望によって異なります。それぞれのメリット・デメリットについて不動産会社から説明を受け、納得したうえで契約を結びましょう。
| ・「媒介契約」に関する記事はこちら 専属専任媒介契約とは?専任媒介・一般媒介との違いやメリットを解説 一般媒介契約とは?メリットと知っておくべき注意点をわかりやすく解説 |
4.販売活動
媒介契約を締結すると、不動産会社による販売活動が始まります。主な活動内容は、不動産ポータルサイトへの物件情報掲載や、チラシの配布、購入希望者の案内などです。
購入希望者から内覧の申し込みがあった場合は、売主も立ち会い、物件の状況を説明したり質問に答えたりします。空き家の場合、室内が片付いていないことも少なくありませんが、内覧前に清掃や換気を行い、良い印象を与えられるように準備しておくことが大切です。
媒介契約の種類によっては、不動産会社から定期的に活動状況の報告を受けます。購入希望者の反応が薄い場合は、売出価格の見直しなどを検討することもあります。
| ・「内覧対応」に関する記事はこちら 家を売るときに内覧希望者を迎えるポイント!早期売却への道を徹底ガイド |
5.売買契約
購入希望者が見つかり、価格や引き渡し時期などの条件交渉がまとまると、「売買契約」を締結します。
契約時には、宅地建物取引士から物件に関する重要事項説明が行われ、その後、売買契約書への署名・捺印、買主からの手付金の受領といった流れで進みます。契約内容を十分に確認し、不明な点があればその場で質問して解消しておくことが重要です。
また、雨漏りやシロアリ被害といった契約書に記載のない欠陥(契約不適合)が引き渡し後に見つかった場合、売主は買主から修補や代金減額などを求められる可能性があります。契約条件については、事前に十分に理解することが大切です。
| ・「売買契約」に関する記事はこちら 不動産の売買契約とは?簡単にわかりやすく解説! ・「契約不適合責任」に関する記事はこちら 契約不適合責任とは?不動産取引で買主ができる4つの請求と売主がとるべき対策を解説 |
6.決済・引き渡し
売買契約から約1~3ヶ月後、金融機関などで売買代金の残金の受領(決済)を行います。決済日には、売主・買主・不動産会社・司法書士が集まります。買主から売買代金の残金を受け取ると同時に、司法書士が所有権移転登記の手続きを進めます。
登記手続きが完了したら、買主に物件の鍵を渡して引き渡しを行い、すべての手続きが完了です。
空き家を売却する5つの方法
空き家を売却する方法は、様々な選択肢が考えられます。費用をかけずに現状のまま売るのか、付加価値をつけて高く売ることを目指すのかなど、状況に合った方法を選ぶことが大切です。ここでは、代表的な5つの売却方法を紹介します。
- そのまま売却する
- リフォームして売却する
- 解体して売却する
- 「更地渡し」で売却する
- 不動産業者に買い取ってもらう
1.そのまま売却する
空き家を、リフォームや解体をせずに現状のままで売却する方法です。売主にとっては、費用や手間をかけずに済むという大きなメリットがあります。特に、築年数が浅く建物の状態が良い場合や、買主が自分でリフォームしたいと考えている場合に適した方法です。
ただし、建物が古い、あるいは傷みが激しい場合は、買主が見つかりにくい可能性があります。その場合は、建物には価値がないものとして「古家付き土地」として売り出すのが一般的です。土地としての魅力を前面に出して販売活動を行うことで、新築用の土地を探している層にアピールできます。

2.リフォームして売却する
建物の内装や設備などをリフォームし、物件の価値を高めてから売却する方法です。見た目がきれいになり、設備が新しくなることで、購入希望者への印象が良くなり、より高い価格で、かつ早期に売却できる可能性があります。
特に、キッチンや浴室、トイレといった水回りのリフォームは、買主の購入意欲に大きく影響します。また、壁紙の張り替えや床の補修など、比較的費用を抑えられるリフォームでも、物件の印象を大きく変えることが可能です。
ただし、リフォームにはまとまった費用がかかります。かけた費用を売却価格にすべて上乗せできるとは限らないため、費用対効果を慎重に見極める必要があります。不動産会社に相談し、どのようなリフォームが効果的かアドバイスをもらうとよいでしょう。
3.解体して売却する
空き家を解体し、更地(建物がない土地)の状態にしてから売却する方法です。建物が老朽化している場合や、買主が土地として購入して新築を建てたいと考えている場合に有効な手段といえます。
買主にとっては、解体の手間や費用がかからず、土地の状態を確認しやすいというメリットがあります。そのため、建物を残したまま売るよりも、スムーズに買い手が見つかる可能性があります。一方で、売主は数百万円単位の解体費用を負担しなければなりません。
また、住宅が建っている土地に適用される固定資産税の軽減措置(住宅用地の特例)の対象外となるため、税額が本来の額に戻ります。その結果、課税標準額が最大で6倍になる可能性もあるため、売却が長引く場合は注意が必要です。
4.「更地渡し」で売却する
建物を残したまま販売活動を行い、売買契約が成立した後に、売主の負担で建物を解体して更地の状態で買主に引き渡す方法です。売却が決まってから解体するため、売主にとっては解体費用を売却代金から捻出できるメリットがあります。
また、買主にとっては、購入前に建物の状態を確認できるほか、解体の手間と費用を省けるため、魅力的に映る場合があります。
ただし、解体工事の期間を考慮して引き渡し時期を設定する必要があります。また、解体してみないと地中の状態がわからないため、予期せぬ障害物が見つかった場合の費用負担などについて、契約時に明確に取り決めておくことが重要です。
5.不動産業者に買い取ってもらう
不動産会社に、買主として直接空き家を買い取ってもらう方法です。一般的な仲介とは異なり、購入希望者を探す販売活動を行わないため、早期に売却できるのが最大のメリットです。
買取の場合、仲介手数料はかかりません。また、売却後の契約不適合責任については免責の特約が付くケースが多く、売主は将来的なリスクが少ない状態で安心して売却できます。ただし、全ての取引で必ず免除されるわけではないため、契約内容を確認しましょう。
また、売却価格は、仲介で売る場合の市場価格の7〜8割程度になるのが一般的です。不動産会社は、買い取った物件をリフォームするなどして再販売するための費用や利益を見込む必要があるためです。
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空き家の売却にかかる費用
空き家を売却する際には、様々な費用がかかります。売却によって得られる金額からこれらの費用を差し引いたものが、最終的に手元に残る金額です。ここでは、売却時にかかる主な費用について解説します。
- 仲介手数料
- 印紙税
- 譲渡所得税
仲介手数料
仲介手数料は、売却の仲介を依頼した不動産会社に支払う成功報酬です。売買契約が成立した際に支払う義務が発生し、一般的には売買契約時と決済・引き渡し時に半額ずつ支払います。
仲介手数料の上限額は、宅地建物取引業法で定められており、売買価格が400万円を超える場合は、以下の計算式で算出できます。
・仲介手数料の上限額=(売買価格 × 3% + 6万円) + 消費税
例えば、空き家が2,000万円で売れた場合の仲介手数料の上限は72万6,000円(税込)です。
また、2024年7月1日からの特例により、売買価格が800万円以下の「低廉な空家等」については、上限が33万円(税込)となる場合があります。
| ・「仲介手数料」に関する記事はこちら 不動産売買の仲介手数料の相場や上限は?計算シミュレーション付き |

印紙税
印紙税は、不動産売買契約書といった課税文書を作成する際に課される税金です。契約書に記載された金額に応じた収入印紙を貼り付け、消印することで納税します。
印紙税額は契約金額によって異なり、例えば、契約金額が1,000万円超5,000万円以下の場合は2万円です。2027年3月31日までに作成される契約書については軽減措置が適用され、税額は1万円となります。
通常、売買契約書は売主用と買主用に2通作成するため、売主と買主がそれぞれ1通分の印紙税を負担するのが一般的です。
| ・「印紙税」に関する記事はこちら 不動産売買の印紙代(印紙税)の金額は?軽減税率も解説 |
譲渡所得税
空き家を売却して利益(譲渡所得)が出た場合に、その利益に対して課されるのが譲渡所得税です。譲渡所得は、売却価格からその不動産の取得にかかった費用(取得費)と、売却にかかった費用(譲渡費用)を差し引いて計算します。
譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間によって異なります。所有期間は売却した年の1月1日時点で判断され、5年以下の場合は「短期譲渡所得」として税率39.63%、5年を超える場合は「長期譲渡所得」として税率20.315%が適用されます。
親から相続した空き家の場合、親が所有していた期間も引き継ぐことが可能です。
計算の結果、譲渡所得がマイナスの場合は原則として譲渡所得税はかからず申告も不要です。ただし、後述する特例を適用して譲渡所得がゼロになる場合は、その適用を受けるために確定申告が必要です。
| ・「譲渡所得税」に関する記事はこちら 短期譲渡所得・長期譲渡所得の基礎知識!不動産売却で気をつけるべき点も 譲渡所得の確定申告はいくらからするべき? 計算方法も詳しく解説 |
空き家の売却にかかる可能性のある費用
空き家の状態や売却方法によっては、先に解説した税金や手数料のほかに、追加で費用がかかる場合があります。この費用は必ずしも発生するわけではありませんが、必要になる可能性を考慮して、あらかじめ予算に含めておくと安心です。
- ハウスクリーニング費用
- リフォーム・修繕費用
- インスペクション費用
- 残置物撤去費用
- 解体費用
ハウスクリーニング費用
ハウスクリーニング費用は、専門業者に依頼して家全体を清掃してもらうための費用です。特に、長年放置されていた空き家は、汚れやほこりが溜まっていることが多く、内覧時の印象を大きく左右します。
キッチンや浴室、トイレなどの水回りを中心に清掃してもらうだけでも、物件の清潔感は格段に向上し、購入希望者に良い印象を与えることが可能です。費用は清掃範囲や物件の広さによって異なりますが、数万円から十数万円程度が目安となります。
売却前に自分たちで清掃する時間がない場合や、専門的な清掃で物件の魅力を高めたい場合に検討するとよいでしょう。
| ・「ハウスクリーニング」に関する記事はこちら ハウスクリーニングの相場はいくら?水回りから一戸建てにかかる費用まで紹介 |
リフォーム・修繕費用
リフォーム・修繕費用は、壁紙の張り替えや床の補修、古くなった設備の交換などを行うための費用です。建物の状態を改善し、資産価値を高めることで、より有利な条件での売却が期待できます。
ただし、大規模なリフォームには高額な費用がかかり、その費用を売却価格に上乗せできるとは限りません。買主の好みに合わないリフォームを行ってしまうと、かえって売れにくくなるリスクもあります。
リフォームを検討する際は、どの程度の修繕が必要か、費用対効果は見込めるかを、不動産会社の担当者とよく相談して慎重に判断することが重要です。
| ・「リフォーム費用」に関する記事はこちら トイレリフォームの費用相場は?依頼先や予算を抑えるコツを解説 マンションのリフォーム費用はどのくらい?注意点や補助金も紹介 |
インスペクション費用
インスペクション(建物状況調査)とは、建築士などの専門家が、建物の基礎や外壁のひび割れ、雨漏りといった劣化状況や欠陥の有無を診断することです。この診断にかかる費用がインスペクション費用です。
インスペクションを実施し、その結果を購入希望者に提示することで、物件の状態を客観的に示すことができます。買主は安心して物件を購入できるため、売却がスムーズに進みやすくなるでしょう。
費用は5〜10万円程度が目安ですが、売主・買主双方にとってメリットのある手続きです。特に築年数が古い空き家を売却する際には、実施を検討する価値があります。
| ・「インスペクション」に関する記事はこちら インスペクションとは?メリットや費用、注意点、自治体の補助金を解説 |
残置物撤去費用
残置物とは、空き家に残された家具や家電、衣類などの私物のことです。不動産売却では、原則として家の中を空にした状態で買主に引き渡すため、これらの残置物を処分する必要があります。
自分で処分するのが難しい場合や、量が多くて手間がかかる場合は、専門の不用品回収業者に依頼することになります。その際にかかるのが残置物撤去費用です。費用は残置物の量や種類によって大きく変動し、数万円から数十万円になることもあります。
相続した空き家の場合、誰の所有物かわからないものも多く、処分に時間がかかるケースもあるため、早めに整理を始めましょう。
解体費用
建物を解体して更地として売却する場合にかかるのが、解体費用です。建物の構造や広さ、立地条件などによって費用は異なります。
1坪あたりの金額は、木造住宅の場合は4万円程度、鉄骨造(S造)なら6万円程度、鉄筋コンクリート造(RC造)なら7万円程度が目安とされています。
例えば、30坪の木造住宅であれば、120万程度の解体費用がかかる計算です。このほか、敷地内の樹木やブロック塀の撤去が必要な場合は、追加で費用が発生します。
解体費用は高額になるため、複数の解体業者から見積もりを取り、比較検討することが大切です。また、自治体によっては解体費用の助成金制度を設けている場合があるため、事前に確認してみましょう。
| ・「解体費用」に関する記事はこちら 空き家の解体費用はどれくらい?費用を抑えるコツや払えない場合の対処法を解説 |
空き家の売却にかかる費用や税金を抑える方法
空き家の売却には様々な費用がかかりますが、国や自治体の制度を上手に活用したり、売却方法を工夫したりすることで、手元に残る金額を増やせる可能性があります。
ここでは、空き家の売却にかかる費用や税金を抑える方法を3つ紹介します。
- 自治体の助成金を利用する
- 現状のまま売却する
- 控除特例を適用する
自治体の助成金を利用する
空き家の解体やリフォームを行う場合、自治体によっては助成金や補助金制度を利用できることがあります。これは、増加する空き家問題への対策として、多くの自治体が空き家の適正な管理や活用を促進するために設けている制度です。
助成金の対象となる工事や金額、申請条件は自治体によって様々です。例えば、耐震基準を満たさない古い空き家を解体する場合や、地域の景観を改善するためのリフォームを行う場合に、費用の一部が助成されるケースがあります。
制度の有無や詳細については、空き家が所在する市区町村のホームページで確認するか、窓口に問い合わせてみましょう。要件を満たす場合は、積極的に活用することをおすすめします。
現状のまま売却する
費用を抑える最も直接的な方法は、リフォームや解体をせずに、空き家を現状のままで売却することです。これにより、数百万円にのぼることもあるリフォーム費用や解体費用を一切かけずに済みます。
特に、買主が自分でリフォームやリノベーションをしたいと考えている場合、売主側で手を入れる必要はありません。また、建物が古くても立地条件が良ければ、「古家付き土地」として十分に売却できる可能性があります。
ただし、あまりにも状態が悪いと買い手が見つかりにくいこともあります。まずは不動産会社に査定を依頼し、現状のままで売却できそうか、どのくらいの価格が見込めるかなど、専門家の意見を聞いてから判断するとよいでしょう。
控除特例を適用する
空き家を売却して利益が出た場合、譲渡所得税がかかりますが、一定の要件を満たすことで税金の負担を軽減できる特例制度があります。代表的な特例は以下のとおりです。
| 特例 | 概要 | 主な適用条件 |
| 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 (取得費加算の特例) | 相続した財産を一定期間内に売却した場合、相続税額の一部を譲渡資産の取得費に加算できる | ・相続により財産を取得した者であること。 ・その財産を取得した人に相続税が課税されていること ・相続開始のあった日の翌日から3年10ヶ月以内に売却していること |
| 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 (相続空き家の3,000万円特別控除) | 相続した空き家を売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる | ・相続開始直前まで被相続人が一人で居住していた家屋であること ・昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること(耐震リフォームや取り壊しが必要) ・相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること ・売却代金が1億円以下であること ・買主が親子や夫婦など特別な関係でないこと |
参考:国税庁|No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
これらの特例を適用することで、譲渡所得税を大幅に節税できる可能性があります。例えば、「相続空き家の3,000万円特別控除」を使えば、譲渡所得が3,000万円以下であれば譲渡所得税はかかりません。
ただし、それぞれの特例には細かい適用要件が定められています。「取得費加算の特例」と「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」は選択適用のため、併用はできません。また、
どちらの特例を利用できるか、どちらが有利かについては、税務署や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
| ・「相続空き家の3,000万円特別控除」に関する記事はこちら 空き家の売却で適用される3000万円控除とは?適用条件を解説 |
空き家を売却するときの注意点
空き家の売却は、一般的な住宅の売却と比べて特有の注意点が存在します。事前に理解しておかないと、売却がスムーズに進まなかったり、思わぬ費用が発生して手残りが少なくなってしまったりする可能性があります。
空き家を売却する際に特に注意すべき点を見ていきましょう。
- 売り時を見定める
- 取得時の書類を探しておく
- 独断でクリーニングや修繕を実施しない
売り時を見定める
空き家を所有しているだけでも、固定資産税や都市計画税、管理費用などがかかり続けます。また、空き家を長期間放置すると建物が劣化し、資産価値が下がるだけでなく、倒壊の危険性や景観の悪化などにより、近隣トラブルに発展するリスクもあります。
さらに、2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家法)」(2023年改正)により、管理が不十分な「管理不全空き家」に指定され、指導に従わず勧告を受けると、固定資産税の優遇措置が解除される可能性があります。
より状態が悪い「特定き空家」に指定されると、市町村から改善命令が出され、従わない場合は50万円以下の過料が科されることもあります。このような維持コストやリスクを考えると、活用する予定がない空き家は、できるだけ早く売却に向けて動き出すのが賢明です。
| ・「空き家法改正」に関する記事はこちら 「空き家対策特別措置法(空き家法)」改正が決定!「管理不全空き家」も固定資産税減額解除の対象に |

取得時の書類を探しておく
空き家を売却して譲渡所得税を計算する際には、その不動産をいくらで取得したかを示す「取得費」が必要になります。この取得費を証明するために、購入時の売買契約書や領収書といった書類が重要です。
相続した空き家の場合は、親が購入したときの書類が見つからないケースも少なくありません。書類が見つからず取得費が不明な場合は、「みなし取得費」として売却価格の5%を取得費とすることができます。しかし、この場合、実際の取得費よりも大幅に低く計算されてしまい、結果として譲渡所得税が高額になる可能性が高いです。
売却を決めたら、できるだけ早く取得時の書類を探し始めましょう。見つからない場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
| ・「土地売却の必要書類」に関する記事はこちら 土地売却に必要な書類は? 取得方法・必要なタイミング・紛失時の対処法を紹介 |
独断でクリーニングや修繕を実施しない
空き家を少しでも高く売りたいという思いから、売却前にリフォームやハウスクリーニングを検討する方もいるでしょう。
しかし、買主によっては、自分の好みに合わせてリフォームしたいと考えている場合も多く、売主側で行った修繕が無駄になってしまう可能性もあります。また、かけた費用を売却価格に上乗せできるとは限りません。
まずは不動産会社に相談し、現状のまま売却できるか、どのような修繕が効果的かについてアドバイスをもらうことが重要です。専門家の意見を参考に、費用対効果を慎重に判断してから、クリーニングや修繕を実施するかどうかを決めましょう。
まとめ
空き家の売却は、相続登記から始まり、査定、販売活動、契約、引き渡しへと進めていきます。売却方法も、現状のまま売る場合やリフォームする場合、解体するケースなど様々です。物件の状態やご自身の希望に合わせて、最適な方法を選択する必要があります。
また、売却には仲介手数料や税金などの費用がかかりますが、助成金や控除を活用することで、負担を抑えることが可能です。特に「相続空き家の3,000万円特別控除」などの特例は、節税効果が大きいため、適用要件を確認しておきましょう。
空き家の売却は、専門的な知識が必要な場面も多くあります。信頼できる不動産会社をパートナーに選び、相談しながら進めることが大切です。東急リバブルでは、お客様の状況に合わせ、空き家の売却をサポートいたします。ぜひお気軽にご相談ください。
この記事のポイント
- 空き家売却の流れを教えてください。
空き家の売却をスムーズに進めるためには、まず全体の流れを把握しておくことが大切です。
「空き家を売却する流れ」では、空き家を売却する際の基本的な6つのステップを解説します。
- 空き家を売却するにはどのような方法がありますか?
空き家を売却する方法は、様々な選択肢が考えられます。費用をかけずに現状のまま売るのか、付加価値をつけて高く売ることを目指すのかなど、状況に合った方法を選ぶことが大切です。
詳しくは「空き家を売却する5つの方法」をご覧ください。
- 空き家を売却する際にかかる費用は?
空き家を売却する際には、様々な費用がかかります。売却によって得られる金額からこれらの費用を差し引いたものが、最終的に手元に残る金額です。
詳しくは「空き家の売却にかかる費用」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
相続した空き家を売却する場合、売主がその物件や地域について詳しくないケースが少なくありません。しかし、買主にとっては、住み心地や周辺環境に関する情報は、購入を判断するうえで重要なポイントです。可能であれば、親族に話を聞いたり、近隣住民の方に挨拶をして地域の様子を尋ねてみたりするなど、物件に関する情報を少しでも集めておくとよいでしょう。
また、固定資産税の納税通知書や過去の修繕履歴など、物件に関する書類を整理しておくことも大切です。こうした準備をしておくことで、不動産会社の担当者とのやり取りもスムーズになり、より的確な販売戦略を立てることが可能になります。

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