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空き家の売却について解説!解体して更地にする、そのまま売る以外の方法も紹介

空き家の売却を検討しているものの、何から手をつけるべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

空き家はそのままの状態で売れるのか、解体してから売却したほうがいいのか、と迷うことも多くあります。また、売り方によって費用も異なるため、正しい知識を身につけなければいけません。

そこで本記事では、空き家の売却方法やかかる費用、売却時の注意点を解説します。本記事を読んでいただければ、空き家売却の流れやポイントが明確になり、正しい手順で売却できます。

空き家の売却を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

使う予定のない空き家は早めに売却を検討するべき理由

空き家の売却はあと回しにしがちですが、なるべく早い段階での売却を検討しましょう。

不動産は所有しているだけでコストがかかるためです。例えば、不動産の所有者が毎年納めなければならない固定資産税や都市計画税が代表的です。

また、空き家の状態で長く放置していると近隣トラブルが発生するおそれもあります。さらには、第三者に損害を与えた場合、その損害に対する賠償請求を受ける可能性もあります。

  • 火災や倒壊
  • 不法侵入
  • 景観の悪化

場合によっては「特定空家」に指定され「固定資産税の優遇が受けられなくなる」「最大50万円以下の過料が科される」といったおそれもあります。

このような事態になる前に、早い段階で売却する必要があります。

空き家を売却する3つの方法

空き家を売却する方法は以下の3つに大別されます。

  • 空き家のまま売却する
  • 更地にして売却する
  • 不動産会社に買い取ってもらう

それぞれに特徴があるため、所有している不動産に合った売却方法を考えてみましょう。

空き家のまま売却する

空き家のまま売却する方法は2つあります。

  • 「中古一戸建て」として売却
  • 「古家付き土地」として売却

「中古一戸建て」は、建物を利用したい方に向けて売却する方法です。買主が購入後にリフォームをして住む需要もあるため、築年数が経過した建物でも売却できる可能性があります。

しかし、建物の状態が良くなければなかなか買い手が見つからないこともあります。

一方「古家付き土地」は、土地を利用したい方に向けて売却する方法です。建物の解体費用は、原則、買主負担となるため、その場合、売主が解体費用を支払う必要はありません。しかし、その分価格交渉が多い傾向にあります。

更地にして売却する

更地にして売却するメリットは以下のとおりです。

  • 買い手が見つかりやすい
  • 「古家付き土地」よりも高く売れる傾向にある
  • 建物の不具合によるトラブルを避けられる

建物を解体して更地にすることで、土地の状態を確認しやすいことに加え、買主は解体費用を負担せずに済みます。結果として多くの方が検討しやすくなり「古家付き土地」よりも高値での売却が期待できます。

また、建物や設備の不具合を気にせずに取引できるのも売主にとって安心です。

不動産取引では、引き渡し後一定期間内に、建物や設備に事前に告知していた以外の不具合が見つかった場合は売主が責任を負わなければいけません。建物が古いとリスクも大きくなりますが、解体してから引き渡すことでリスクを下げられます。

しかし、更地にすると固定資産税や都市計画税の優遇措置が適用されなくなるため、売却の時期や期間には注意しましょう。

不動産会社に買い取ってもらう

不動産会社が購入する取引を「買取」といいます。

買取のメリットは以下のとおりです。

  • 契約不適合責任が免責になる
  • 現金化までが早い

不動産のプロである不動産会社が買主となる取引では、本来売主が負うべき「契約不適合責任」が免責になります。引き渡し後に雨漏りや設備の故障が見つかったとしても売主が責任を負う必要はないため、安心して取引できるでしょう。

また、不動産会社は基本的に現金で購入するため、金融機関のローン手続きなどが不要になり、引き渡しまでの期間が短縮されます。売買契約から1ヶ月以内に現金化できるケースも少なくありません。

しかし、売主にとって良い条件で取引できる分、一般市場で売却する場合よりも価格が安くなる傾向にあります。

空き家の売却にかかる費用や税金

空き家の売却にはさまざまな費用や税金がかかります。また、ここまで解説した3つの売却方法によっても売却価格は異なるため、手残り金額を踏まえて売却を検討する必要があります。

空き家の売却にかかる費用や税金は主に以下のとおりです。

  • 仲介手数料
  • 解体費用
  • 測量費用
  • 印紙税
  • 登記費用(登録免許税)
  • 譲渡所得税

各種費用の概要や計算方法を理解して、かかる費用を明確にしましょう。

仲介手数料

仲介手数料とは、不動産取引が成立した際に不動産会社へ支払う報酬です。

仲介手数料は上限が定まっており、計算式は以下のとおりです。

  • (売買価格×3%+6万円)×1.1(消費税)

つまり、3,000万円の不動産を売却した際の仲介手数料は、最大で1,056,000円です。仲介手数料は諸費用のなかでも大きな割合を占めます。

解体費用

更地にして売却する場合、解体費用がかかります。

解体費用の目安は以下のとおりです。

建物構造1坪あたりの費用
木造約60,000円
鉄骨造約80,000円
鉄筋コンクリート造約100,000円
浄化槽50〜80万円(1個あたり)

解体費用は時期や立地によっても異なります。2022年4月1日からのアスベスト事前調査の義務化に伴い、アスベスト除去費用など追加費用が発生する場合もあります。さらに、台風シーズンや降雪シーズンは費用が高くなります。また、周辺が住宅で囲まれている、道路が狭く重機を入れられないといった立地の場合も費用が高くなるため、まずは見積もりを依頼しましょう。

測量費用

測量図がない土地や境界が不明確な土地を売却する際には、事前に測量を実施しなければならない場合があります。

とくに市街地は土地の価格が高く、隣地との境界トラブルも起こりやすいため、正確な面積を算出したうえで取引するケースが一般的です。

測量方法は大きく分けて2つあります。

測量の種類概要費用(100坪あたり)
現況測量(仮測量)隣地所有者の立ち会いをせずに実施する簡易的な測量10〜20万円程度
確定測量隣地所有者や道路管理者の立ち会いのもと実施する測量60〜80万円程度

通常の不動産売買では確定測量を実施します。費用は売主負担となるため、測量費用を踏まえて資金計画を立てましょう。

印紙税

印紙税とは契約書に貼付する印紙代です。

不動産の売買契約書は印紙税法に定める課税文書に該当するため、所定の印紙を貼付しなければいけません。売買価格ごとの印紙代は以下のとおりです(2022年8月現在)。

記載金額不動産売買契約書
1万円未満非課税
50万円以下200円
100万円以下500円
500万円以下1,000円
1,000万円以下5,000円
5,000万円以下10,000円
1億円以下30,000円
5億円以下60,000円
10億円以下160,000円
50億円以下320,000円
50億円超480,000円
記載金額のないもの200円

印紙を貼付しなかった場合、本来納付すべき印紙税の3倍の過怠税(かたいぜい)が課されるため注意しましょう。

登記費用(登録免許税)

登記費用(登録免許税)とは所有権移転登記や住所変更登記などをする際にかかる税金です。不動産を売却する際にかかる登記費用は以下のとおりです。

  • 抵当権抹消登記(ローンを組んでいる場合)
  • 住所変更登記(購入時と住所が変わっている場合)
  • 相続登記(不動産を相続した場合)

なお、登記は司法書士に依頼するのが一般的です。司法書士に依頼する場合は別途司法書士報酬を支払う必要があります。

司法書士報酬の目安】

  • 抵当権抹消登記:1〜2万円
  • 住所変更登記:1万円
  • 相続登記:6〜7万円

司法書士によっても費用は異なるため、まずは見積もりを取ってみましょう。

譲渡所得税

譲渡所得税とは不動産を売却して利益が出た際に課される税金です。

  • 譲渡所得=総収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
  • 譲渡所得税=譲渡所得×税率

譲渡所得税を求める際の税率は所有期間によって異なるため注意しましょう。

  • 短期譲渡所得(所有期間5年以下):39.63%
  • 長期譲渡所得(所有期間5年超え):20.315%

不動産を相続した場合は、所有期間が引き継がれます

空き家の売却費用や税金を抑える方法

前章までで空き家の売却には多くの費用や税金がかかることがわかりました。しかし、空き家の売却にかかる費用や税金は特例や控除、補助金を活用することで抑えられます。

具体的には以下のような制度があります。

  • 居住用財産の3,000万円特別控除の特例
  • 相続空き家の3,000万円特別控除の特例
  • 所有期間10年超え軽減税率の特例
  • 自治体の補助金

制度を利用すれば手残り金額を増やせるため、それぞれの内容を把握しておきましょう。

居住用財産の3,000万円特別控除

居住用財産の3,000万円特別控除とは、マイホームを売却した際に最高3,000万円まで控除を受けられる制度です。

この制度を利用すれば、売却益3,000万円までは非課税扱いになるため、多くの方が非課税で不動産を売却できるでしょう。しかし、適用にはいくつかの要件を満たす必要があります。

  • 自分が住んでいた家屋を売ること
  • 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
  • 売った年の前年および前々年に同じ特例の適用を受けていないこと
  • 売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと

など

制度を利用できるかどうかで手残り金額が大きく異なるため、要件に該当しているか確認してみましょう。

相続空き家の3,000万円特別控除

相続空き家の3,000万円特別控除とは、相続した空き家を売却した際に最高3,000万円まで控除を受けられる制度です。

先述した居住用財産の3,000万円特別控除はマイホームが対象でしたが、こちらは相続した空き家が対象となります。

控除の適用を受けるための主な要件は以下のとおりです。

  • 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
  • 相続直前に被相続人が1人で居住していたものであること
  • 相続時から売却時まで、事業、貸付、居住の用に供されていないこと
  • 空家を新耐震基準に適合するようにリフォームして敷地とともに譲渡すること、もしくは空家を取り壊し、敷地のみを譲渡すること
  • 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
  • 売却代金が1億円以下であること 

など

建物や期間の要件が細かく設定されているため、まずは制度を利用できるか確認してみましょう。

所有期間10年超え軽減税率の特例

所有期間10年超え軽減税率の特例とは、所有期間が10年を超えたマイホームを売却した際に長期譲渡所得よりも税率が軽減される特例です。

譲渡所得税額
6,000万円以下14.21%
6,000万円超え20.315%

ほかの特例同様に「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること」などの要件があるため注意しましょう。

自治体の補助金を活用する

空き家の解体に補助金を出している自治体もあります。

例えば、東京都江東区の場合「除却に要する費用の1/2」もしくは「50万円」のどちらか低いほうの助成金を受け取れます。

また、神奈川県横浜市の場合、以下のうち最も低い額が補助されます。

  • 200,000円(課税世帯)、400,000円(非課税世帯)
  • 対象建築物の延べ面積(㎡)×13,500円に1/3を乗じた額
  • 対象建築物の除却工事に要する費用に1/3を乗じた額

補助金を活用するとコストを抑えられるため、対象不動産が所在する自治体の制度を調べてみましょう。

空き家売却の注意点

空き家を売却する際の費用について理解が深まったところで、空き家売却の注意点を解説します。

  • 不動産が自分の名義になっているかを確認する
  • 空き家をリフォームして売却する場合は慎重に判断する
  • 解体する場合はできる範囲で不用品を処分しておく
  • 1月1日に更地になっていると固定資産税があがる

これらの内容を理解していないと「売却を開始できない」「余計な費用がかかってしまう」といった事態にもなりかねません。

それぞれの内容を踏まえて売却の準備を進めましょう。

不動産が自分の名義になっているかを確認する

空き家を売却する際には不動産が自分の名義になっているかを確認しましょう。

不動産は所有者しか売れないため、自分名義でなかった場合には名義を変更する必要があります。なお、相続をした場合は名義変更が完了していなくとも、遺産分割協議書があれば売却を始められます。

共有者がいる場合などは全員の同意が必要になるため、前もって打ち合わせをしておきましょう。

空き家をリフォームして売却する場合は慎重に判断する

空き家のリフォームは慎重に判断しましょう。

リフォームをしたとしても、そのリフォームが買主の好みに合うかはわかりません。自分好みにリフォームをしたい買主からすると、リフォームをしない状態で安く購入できたほうが都合のいい場合もあります。

また、リフォームにかかったお金をすべて売却価格に上乗せできるわけではないため、金銭的に損をするおそれもあります。リフォームをするべきか迷った際には、不動産会社に相談しましょう。

解体する場合はできる範囲で不用品を処分しておく

空き家を解体する場合はできる範囲で不用品を処分しておきましょう。

解体業者に処分を依頼できますが、自分で処分した方が費用を抑えられます。

大型の家具や庭木の抜根を自分で行うのは困難ですが、小物やプランターなど一人で動かせるようなものは処分しましょう。

1月1日に更地になっていると固定資産税があがる

固定資産税の判定日である1月1日時点で更地になっていると固定資産税があがるため、時期を考慮して解体する必要があります。

更地になるとこれまで適用されていた軽減措置がなくなるため、納税額が増えてしまいます。極力1月2日以降に解体を実施して、翌年の1月1日までには売れるスケジュールを組みましょう。

空き家を売却する流れ

前章までの内容を踏まえて、空き家売却を進めていきましょう。

具体的な売却の流れは以下のとおりです。

  • 価格査定
  • 媒介契約の締結
  • 売却活動の開始
  • 売買契約の締結
  • 引き渡し
  • 確定申告

まずは不動産の相場価格を知ることから始まるため、不動産会社へ査定を依頼しましょう。

空き家売却のポイントを押さえて売却準備を始めましょう

本記事では、空き家の売却方法やかかる費用、売却時の注意点を解説しました。

不動産は所有しているだけでコストがかかるため、なるべく早めに売却するのがおすすめです。また、空き家の状態で放置すると、倒壊や景観の悪化などで近隣住民とトラブルになることも考えられます。

しかし、すぐに売却を始めるのではなく、まずは空き家売却にかかる費用や税金、空き家の売却方法を理解しましょう。いくらで売れるかではなく、いくら手元に残るかで考える必要があります。

より具体的な金額を算出するためにも、まずは不動産会社へ査定を依頼してみましょう。

この記事のポイント

空き家はそのままでも売れるの?

空き家はそのままでも売却できます。しかし、建物の築年数や管理状況によっては解体してからの売却が望ましい場合もあります。

詳しくは「空き家を売却する3つの方法」をご覧ください。

空き家の売却にはどんな費用がかかるの?

空き家の売却にかかる主な費用や税金は以下のとおりです。

  • 仲介手数料
  • 解体費用
  • 印紙税
  • 登記費用(登録免許税)
  • 譲渡所得税

詳しくは「空き家の売却にかかる費用や税金」をご覧ください。

執筆者プロフィール

岡﨑 渉
資格情報: 宅地建物取引士

国立大学卒業後新卒で大手不動産仲介会社に入社。約3年間勤務した後に独立。現在はフリーランスのWebライター・Webディレクターとして活動。不動産営業時代は、実需・投資用の幅広い物件を扱っていた経験から、Webライターとしては主に不動産・投資系の記事を扱う。さまざまなメディアにて多数の執筆実績あり。

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