ざっくり要約!
- 一戸建ての買い替え手順は、現在の家を先に売る「売り先行」、新居を先に買う「買い先行」、売却と購入を同時に進める方法の3つです。
- 買い替えでは、売却時に仲介手数料や印紙税、購入時には物件価格に加えて登記費用やローン手数料、各種税金などの諸費用がかかります。
- 家の買い替えで利用できる税金の特例には、売却益が出た場合の「3,000万円特別控除」や、損失が出た場合の「損益通算」などがあります。
子どもの成長や家の老朽化といったライフスタイルの変化を機に、一戸建てから新しい一戸建てへの買い替えを検討する方は少なくありません。しかし、現在の住まいの売却と新しい家の購入を同時に進めるため、何から手をつければよいのか、費用はどのくらいかかるのかなど、不安に感じることもあるでしょう。
この記事では、一戸建てから一戸建てへ買い替える際の具体的な手順や流れ、売却と購入にかかる費用の内訳、利用できる税金の特例について詳しく解説します。買い替えの全体像を把握し、計画的に準備を進めるために、ぜひ参考にしてください。
記事サマリー
一戸建てから一戸建てに買い替える理由
住み慣れた一戸建てを手放し、新しい一戸建てへ買い替える背景には、様々な状況があります。ここでは、主な4つの理由について解説します。
- 家族構成の変化
- 親との近居・同居
- 転勤・転職・退職
- 家の老朽化
家族構成の変化
子どもの誕生や成長、独立など、家族構成の変化は、買い替えの大きなきっかけとなります。 たとえば、子どもが増えて部屋数が足りなくなったり、成長に伴いそれぞれの個室が必要になったりして、現在の住まいが手狭に感じることがあります。
また、子どもが独立して夫婦二人の生活になると、部屋数が多すぎて管理が大変になることも考えられます。こうしたライフステージの変化に合わせて、家族の人数やライフスタイルに適した間取りや広さの一戸建てを求めるケースは多いです。
親との近居・同居
親の高齢化に伴い、介護やサポートのために実家の近くに住む「近居」や、同じ家で暮らす「同居」を選択するのも、買い替えの理由のひとつです。二世帯が暮らすためには、より広い家や部屋数の多い家が必要になります。
特に同居の場合は、お互いのプライバシーを確保できる間取りが求められるため、二世帯住宅への買い替えを検討するケースも少なくありません。親世帯にとっても、子世帯の近くで暮らすことで、いざという時に頼れる安心感が得られます。
| ・「二世帯住宅」に関する記事はこちら 二世帯住宅のメリットは間取りの種類で変わる!費用を抑える5つのポイントも解説 二世帯住宅の完全分離型の費用や間取り、特徴は? |
転勤・転職・退職
転勤や転職といった仕事の変化も、一戸建てを買い替えるきっかけとなります。 新しい勤務地が遠方の場合、通勤の負担を軽減するために、職場の近くに新しい住まいを探す必要があります。特に急な転勤では、短期間で売却と購入の手続きを進めなければならない場合もあります。
また、定年退職を機に、夫婦二人の時間を豊かに過ごせるよう、趣味を楽しめる庭付きの家に移り住んだり、より気候の温暖な地域へ移住したりと、セカンドライフを見据えて住環境を変える方もいます。
家の老朽化
建物の老朽化も、買い替えを検討する重要な理由です。 築年数が経過すると、雨漏りやシロアリ被害、耐震性の低下といった問題が発生する可能性があります。
大規模なリフォームで対応することも可能ですが、費用が高額になる場合や、建て替えを検討したほうがよいケースもあります。将来的なメンテナンスコストや安全性を考慮し、新しく機能性の高い一戸建てへの買い替えを選択する方も少なくありません。
一戸建てから一戸建てに買い替える3つの手順

一戸建ての買い替えは、現在の家の「売却」と新しい家の「購入」をどのタイミングで行うかによって、主に3つの手順に分けられます。
- 売り先行
- 買い先行
- 同時進行
それぞれのメリット・デメリットを理解し、ご自身の状況に合った方法を選びましょう。
売り先行
「売り先行」は、現在住んでいる一戸建ての売却を先に行い、その後に新しい一戸建てを購入する方法です。 買い替えの手順として、堅実な方法といえます。
■メリット
- 資金計画が立てやすい
- 売却を急ぐ必要がなく、交渉を有利に進めやすい
- 二重ローンになるリスクを避けられる
■デメリット
- 仮住まいが必要になる場合がある
- 引っ越しが2回になり、手間と費用がかかる
- 希望の購入物件が見つかるまで時間がかかる可能性がある
売り先行の大きな利点は、売却価格が確定してから新居を探せるため、資金計画を明確に立てやすいことです。 売却で得た資金を購入費用に充てられるため、自己資金が少ない場合でも計画を進めやすくなります。
ただし、家の引き渡し日までに新居が見つからない場合は、一時的に賃貸物件などで仮住まいをする必要があります。 その場合、敷金・礼金といった初期費用や仮住まい期間中の家賃、2回分の引っ越し費用など、追加のコストがかかる点には注意が必要です。
| ・「仮住まい」に関する記事はこちら 仮住まいとは? 建て替え・住み替え・リフォーム中の住まいはどうする? |

買い先行
「買い先行」は、新しい一戸建ての購入を決めてから、現在住んでいる家の売却を進める方法です。希望の物件を逃したくない場合に適しています。
■メリット
- 気に入った物件を逃さず、じっくりと探せる
- 仮住まいの必要がなく、引っ越しが1回で済む
- 新居へ移ってから売却活動ができる
■デメリット
- 現在の家が売れるまで住宅ローンが二重になる可能性がある
- 売却価格が未定なため、資金計画が立てにくい
- 売却を急ぐあまり、希望価格より安くなることがある
買い先行では、新居探しに時間をかけられるため、立地や間取りなど、条件に合った物件を妥協せずに選べるのが大きなメリットです。 また、新居への引っ越しを済ませてから売却活動を行えるため、内覧の際に居住中であることへの気遣いが不要になります。
一方で、現在の家の住宅ローンが残っている場合、新居のローンと合わせて一時的に二重で返済(ダブルローン)が必要になる可能性があります。 売却が長引くと、その分経済的な負担が大きくなります。また、購入資金を現在の家の売却代金でまかなう予定の場合、想定より低い価格でしか売れないと資金計画が崩れてしまうリスクも考慮しなければなりません。
| ・「ダブルローン」に関する記事はこちら ダブルローンとは?デメリットはある?住み替え時の注意点を解説 |
同時進行
「同時進行」は、現在の家の売却活動と、新しい家の購入活動を並行して進める方法です。売却と購入のタイミングを合わせる必要があり、不動産会社のサポートが重要になります。
■メリット
- 売却から購入までの流れがスムーズ
- 仮住まいの費用や手間を省ける
- 二重ローンになる期間を短縮できる
■デメリット
- 売却と購入のタイミングを合わせるのが難しい
- どちらかのスケジュールに遅れが出ると、もう一方に影響が出る
- 契約の際に「買い替え特約」などの特約 が付く場合がある
売却と購入の決済・引き渡し日を同日に設定できれば、仮住まいや二重ローンの問題を回避でき、最も効率的に買い替えを進められます。売却で得た資金をスムーズに購入資金へ充当できるのも利点です。
しかし、売却の買主と購入先の売主、双方との交渉やスケジュール調整が必要になるため、タイミングを合わせる難易度は極めて高くなります。
一戸建てから一戸建てに買い替える費用
一戸建ての買い替えでは、現在の家を売却するときと、新しい家を購入するときの両方で諸費用がかかります。ここでは、以下の3つのケースでかかる費用を解説します。
- 一戸建ての売却にかかる費用
- 新築一戸建ての購入にかかる費用
- 中古一戸建ての購入にかかる費用
一戸建ての売却にかかる費用
現在住んでいる一戸建てを売却する際には、主に仲介手数料や税金、登記費用などが発生します。主な費用の種類と金額の目安は、以下のとおりです。
| 費用の種類 | 概要 | 金額の目安 |
| 仲介手数料 | 不動産会社に支払う成功報酬 | 売却価格が400万円を超える場合: (売却価格 × 3% + 6万円) + 消費税 |
| 印紙税 | 売買契約書に貼付する印紙代 | 約1万~3万円(売却価格による) |
| 登記費用 | 住宅ローン完済に伴う抵当権抹消登記など | 1万~5万円程度 |
| 住宅ローン一括返済手数料 | ローンを繰り上げ返済する際の手数料 | 0円~3万円程度 |
| その他 | 測量費、解体費、ハウスクリーニング代など | 数十万~数百万円(必要に応じて) |
上記のほか、売却によって利益(譲渡所得)が出た場合は、所得税・住民税がかかることがあります。
仲介手数料は諸費用の中で大きな割合を占めますが、法律で上限が定められています。 また、住宅ローンが残っている場合は、売却代金で完済するための手続きが必要です。土地の境界が確定していない場合は測量が必要になったり、古い家屋を解体して更地で売却したりする場合は、別途費用がかかります。
| ・「仲介手数料」に関する記事はこちら 不動産売買にかかる仲介手数料はいくら?上限や支払うタイミングも解説 ・「印紙税」に関する記事はこちら 不動産売買の印紙代(印紙税)の金額は?軽減税率も解説 ・「登録免許税」に関する記事はこちら 登録免許税の計算方法と支払時期を解説!軽減措置や事例もあわせて紹介 ・「抵当権抹消」に関する記事はこちら 抵当権をわかりやすく解説!設定・抹消手続きの流れと不動産の売却方法 ・「戸建て売却の費用」に関する記事はこちら 一戸建てを売却するまでの流れと費用を解説!取引を成功させるポイントも紹介 |
新築一戸建ての購入にかかる費用
新築一戸建てを購入する場合、物件価格に加えて、税金や住宅ローン関連の費用などが必要になります。主な費用の内訳は以下の表のとおりです。
| 費用の種類 | 概要 | 金額の目安 |
| 印紙税 | 売買契約書やローン契約書に貼付する印紙代 | 約1万~3万円(契約金額による) |
| 登記費用 | 所有権保存登記、抵当権設定登記など | 20万~50万円程度 |
| 不動産取得税 | 不動産を取得した際に一度だけかかる税金 | 固定資産税評価額 × 3%(軽減措置あり) |
| 住宅ローン関連費用 | 事務手数料、保証料など | 金融機関や借入額による |
| 火災保険料・地震保険料 | 火災や地震に備えるための保険料 | 10万~40万円程度(契約内容による) |
新築一戸建ての場合、諸費用の総額は物件価格の3%~7%程度が目安です。 たとえば4,000万円の物件であれば、120万~280万円程度の諸費用がかかると考えておくとよいでしょう。
不動産会社が売主となっている新築の建売住宅などでは、仲介手数料がかからないケースが多いです。 住宅ローンを利用する際は、金融機関に支払う事務手数料や保証料が必要になりますが、金額は金融機関や商品によって大きく異なります。
| ・「不動産取得税」に関する記事はこちら 不動産取得税はいくらかかる?計算方法や軽減措置についても解説! ・「住宅ローンの手数料」に関する記事はこちら 住宅ローンの手数料とは?費用の相場や保証料との違いもあわせて解説 ・「火災保険」に関する記事はこちら 火災保険はいくらかけるべき?保険料の決まり方や補償内容など解説 |
中古一戸建ての購入にかかる費用
中古一戸建てを購入する場合も新築と同様に諸費用がかかりますが、仲介手数料が必要になる点が大きな違いです。 主な費用は、以下のとおりです。
| 費用の種類 | 概要 | 金額の目安 |
| 仲介手数料 | 不動産会社に支払う成功報酬 | 購入価格が400万円を超える場合: (購入価格 × 3% + 6万円) + 消費税 |
| 印紙税 | 売買契約書やローン契約書に貼付する印紙代 | 約1万~3万円(契約金額による) |
| 登記費用 | 所有権移転登記、抵当権設定登記など | 20万~50万円程度 |
| 不動産取得税 | 不動産を取得した際に一度だけかかる税金 | 固定資産税評価額 × 3%(軽減措置あり) |
| 住宅ローン関連費用 | 事務手数料、保証料など | 金融機関や借入額による |
| 固定資産税・都市計画税清算金 | 売主が納めた税金の日割り分 | 数万~十数万円 |
| インスペクション費用 | 専門家による建物状況調査 | 5万~10万円程度(必要に応じて) |
中古一戸建ての諸費用は、物件価格の6%~10%程度が目安とされています。 新築に比べて割合が高くなるのは、仲介手数料がかかるためです。
また、売主がその年の固定資産税・都市計画税をすでに納めている場合、物件の引き渡し日以降の分を日割りで計算し、売主に支払うのが一般的です。建物の状態を確認するためにインスペクション(建物状況調査)を依頼する場合は、その費用もかかります。
| ・「インスペクション」に関する記事はこちら インスペクションとは?メリットや費用、注意点、自治体の補助金を解説 |
一戸建ての買い替えで利用できる控除特例
一戸建ての買い替えでは、税金の負担を軽減できる特例制度が設けられています。売却によって利益が出た場合と、損失が出た場合で利用できる制度が異なります。ここでは代表的な4つの特例を紹介します。
- 3,000万円特別控除
- 軽減税率の特例
- 買換え特例
- 譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
3,000万円特別控除
マイホーム(居住用財産)を売却した際に得られる利益(譲渡所得)から、最大3,000万円までを控除できる制度です。譲渡所得が3,000万円以下であれば、所得税や住民税はかかりません。
この特例を利用するには、主に以下のような条件を満たす必要があります。
- 自分が住んでいる家屋、または家屋とともにその敷地を売却すること
- 売却した年の前々年、前年にこの特例や他の特例を利用していないこと
- 売主と買主が親子や夫婦など特別な関係でないこと
所有期間の長短にかかわらず適用できるのが特徴で、買い替えで利益が出た場合に大きな節税効果が期待できます。
| ・「3000万円の特別控除」に関する記事はこちら マンション売却で活用可能! 3,000万円特別控除とは? |
軽減税率の特例
マイホームを売却した年の1月1日時点で、所有期間が10年を超えている場合に利用できる可能性がある制度です。「3,000万円特別控除」と併用でき、控除を適用した後の譲渡所得に対して、通常より低い税率が適用されます。
具体的な税率は、課税譲渡所得の金額に応じて以下のようになります。
- 6,000万円以下の部分:14.21%(所得税10.21% + 住民税4%)
- 6,000万円超の部分:20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)
3,000万円の特別控除を使ってもなお課税対象となる利益が出る場合に、税負担をさらに抑えることができます。
買換え特例
マイホームを売却し、代わりのマイホームに買い替えた場合に、譲渡所得への課税を将来に繰り延べられる制度です。この特例は、売却した金額よりも買い替えた家の購入金額のほうが大きい場合に適用されます。
あくまで課税を先送りにする制度であり、非課税になるわけではありません。買い替えた家を将来売却する際に、繰り延べた分の利益と合わせて課税されることになります。適用には、売却した家の所有期間や居住期間が10年以上であることなど、細かい条件が定められています。
| ・「買換え特例」に関する記事はこちら 居住用財産の買換え特例とは?併用できない特例と適用要件をわかりやすく解説 |
譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
マイホームの売却によって損失(譲渡損失)が出た場合に、その損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得と相殺(損益通算)できる制度です。損益通算をしてもなお控除しきれない損失額は、翌年以降最大3年間にわたって繰り越して控除できます。
この特例を利用することで、所得税や住民税の還付を受けられる可能性があります。適用には、売却した年の1月1日時点での所有期間が5年を超えていることや、買い替え先の住宅で住宅ローンを利用することなどの条件があります。
| ・「損益通算」に関する記事はこちら 不動産売却時の節税方法とは?譲渡損失が出た場合の特例活用法も解説 ・「家の売却にかかる税金と控除特例」に関する記事はこちら 家の売却に税金はかかる?控除特例や計算方法を解説! |
まとめ
一戸建ての買い替えは、家族構成の変化や家の老朽化など、ライフステージの変化に合わせて住環境を整えるための選択肢です。買い替えをスムーズに進めるには、「売り先行」「買い先行」の特徴を理解し、ご自身の状況に合った方法を選ぶことが重要になります。
また、売却と購入の両方で仲介手数料や税金などの諸費用がかかるため、事前に全体像を把握し、無理のない資金計画を立てることが不可欠です。売却によって利益や損失が出た場合には、税負担を軽減できる特例制度も用意されているため、適用できるものがないか確認しましょう。
一戸建ての買い替えは、専門的な知識が求められる場面も少なくありません。不安な点がある場合には、不動産会社に相談することをおすすめします。東急リバブルでは、お客様のご事情に合わせ、スムーズな買い替えをサポートいたします。ぜひお気軽にご相談ください。
この記事のポイント
- 一戸建てから一戸建てへの買い替え理由はどんなものがありますか?
住み慣れた一戸建てを手放し、新しい一戸建てへ買い替える背景には、様々な状況があります。
詳しくは「一戸建てから一戸建てに買い替える理由」をご覧ください。
- 一戸建てから一戸建てへ住み替える手順は?
一戸建ての買い替えは、現在の家の「売却」と新しい家の「購入」をどのタイミングで行うかによって、主に3つの手順に分けられます。
詳しくは「一戸建てから一戸建てに買い替える3つの手順」をご覧ください。
- 一戸建ての買い替えで使える控除はありますか?
一戸建ての買い替えでは、税金の負担を軽減できる特例制度が設けられています。売却によって利益が出た場合と、損失が出た場合で利用できる制度が異なります。
詳しくは「一戸建ての買い替えで利用できる控除特例」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
一戸建ての買い替えを検討する際、現在の家の住宅ローンが残っている方も多いでしょう。その場合、「住み替えローン」を利用するのもひとつの方法です。住み替えローンとは、新居の購入費用と、現在の住宅ローンの残債をまとめて借り入れできる金融商品です。現在の家を売却した資金でローンを完済できなくても、自己資金を用意することなく買い替えが可能になる点がメリットです。特に「買い先行」で、売却より先に新居の購入資金が必要になる場合に役立ちます。
ただし、借入額が大きくなるため、通常の住宅ローンに比べて審査が厳しくなる傾向があり、金利も高めに設定されるのが一般的です。金融機関や不動産会社に相談し、ご自身の返済能力を考慮したうえで慎重に判断しましょう。


