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相続した家を売却するときにかかる税金は?種類と計算式、節税について解説

執筆者プロフィール

藤川ゆきえ
FP技能士2級、相続診断士

相続・終活を専門に執筆するライター。実家の相続や遺品整理を経験したことにより終活の必要性を実感。お金や制度に関する情報を、高齢世代にもわかりやすく伝えることを信念に活動中。

ざっくり要約!

  • 相続した家を売却するには、印紙税・登録免許税・譲渡所得税の3つの税金がかかる
  • 相続後3年以内を目安に売却すれば、控除特例の適用により譲渡所得税を軽減できる可能性がある

親が亡くなって実家を相続したとき、維持するべきか手放すべきか、多くの方が悩むものです。相続したものの空き家になった実家は、適切に管理しなければ傷んでしまいます。しかし、売却するにしても、税金がどのくらいかかるのかが心配だという方も多いはず。実は相続した家は3年以内を目安に売却すると、税金を抑えられる特例措置が適用となる可能性があります。

本記事では、相続した家を売却するときにかかる税金について解説します。

相続した家の売却にかかる3つの税金

相続した家を売却するときは、3つの税金がかかります。家屋や土地を売却する契約金額や固定資産税評価額によって、支払うべき税金の総額も変わってきます。

印紙税

印紙税とは、家を売却するときに取り交わす売買契約書の作成に課せられる税金です。家が高く売れると、その分印紙税も高額になります。不動産を売買する際の印紙税は以下の通りです。
なお、2024年3月31日までに作成される契約書は、軽減税率の対象となります。

契約金額印紙税額軽減措置後の税額
10万円以下200円0円
10万超~50万円以下400円200円
50万超~100万円以下1,000円500円
100万円超~500万円以下2,000円1,000円
500万円超~1,000万円以下1万円5,000円
1,000万円超~5,000万円以下2万円1万円
5,000万円超~1億円以下6万円3万円
1億円超~5億円以下10万円6万円

たとえば、2023年8月31日に実家を5,000万円で売却する契約をしたときは、売買契約書には1万円の印紙を貼る必要があります。

登録免許税

登録免許税とは、不動産の登記に課せられる税金です。不動産の売却とともにローンを完済する場合は、不動産に設定されている「抵当権」を抹消する登記をしなければなりません。

抵当権抹消の登録免許税は、不動産1つにつき1,000円です。土地1筆と建物であれば、2,000円が課税されます。

また、故人名義の不動産を売却することはできないため、相続した家を売る場合は、事前に故人から相続人へ名義を変更する必要があります。

相続登記にかかる税額の算出方法は、以下の通りです。

登録免許税額=固定資産税評価額 × 0.4%

たとえば、売却予定の実家の固定資産税評価額が5,000万円だった場合、登録免許税額は20万円になります。
ただし、固定資産税評価額が100万円以下の土地を名義変更する際は、登録免許税はかかりません。

なお、抵当権抹消登記相続登記、いずれも司法書士に登記を依頼する場合は、別途、数万円程度の司法書士報酬がかかります。

譲渡所得税

譲渡所得税とは、不動産を売却したことによる譲渡所得(≒売却益)に対して課される税金です。譲渡所得税は、土地や建物といった不動産だけでなく、株式やゴルフ会員権などの売却益にもかかります。

譲渡所得税を計算する際は、先に譲渡所得を求めます。

譲渡所得 = 収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 )

収入金額とは、不動産を実際に売ったときに手元に入ったお金です。取得費は、売却した不動産の購入代金とその諸費用を合算した金額を指します。そして、譲渡費用は売却するために支払った仲介手数料、印紙税などが該当します。

売却価格から、不動産の取得費と譲渡費用を差し引いた金額が譲渡所得です。譲渡所得に対し、以下の税率で譲渡所得税が課されます。

それぞれの税率は、次の通りです。

短期譲渡所得
(所有期間5年以下)
長期譲渡所得
(所有期間5年超)
所得税30%15%
復興特別所得税0.63%0.315%
住民税9%5%

所有期間には、被相続人の所有期間も含まれます。このため、実家を売却する際はほとんどの場合、長期譲渡所得になると考えてよいでしょう。なお、上記表の「所有期間」は売却した年の1月1日時点の所有期間を指すためご注意ください。

たとえば、1,000万円の譲渡所得が出たとしましょう。所有期間が5年を超えていたとすると、税率は合計20.315%です。よって、納税額は203.15万円になります。

しかし、相続した家を売却する際は多くの税控除制度があります。次項では、相続した家の売却で使える税控除制度を紹介します。

相続した不動産の売却で利用できる税控除制度

実家など相続した不動産を売却する際は、次の3つの税控除制度を利用できます。それぞれ要件が異なり、重複しての利用はできません。どの制度が最もお得なのかを考えて選択しましょう。

相続空き家の3000万円特別控除

被相続人が一人暮らししていた家を相続し、空き家になっている家を売却するときに利用できるのが「相続空き家の3000万円特別控除」です。空き家になった家を相続開始から約3年以内に売却したときに、3,000万円の特別控除を受けられます。

この制度を利用するには、次のような要件を満たしている必要があります。

  1. 相続開始の直前まで故人が一人暮らししていた住宅
  2. 相続開始から売却までの間、事業や貸付に使われていなかった
  3. 耐震基準を満たしている住宅、もしくは家屋を撤去したあとの土地を売却している
  4. 昭和56年(1981年)5月31日以前に建設された
  5. 区分所有建物登記がされていない家屋
  6. 故人が亡くなった日から3年経過する年の12月31日までに売却している
  7. 売却金額が1億円以下

なお、「3」の要件については、2024年1月1日から、売却した翌年の2月15日までに買主が耐震リフォーム、あるいは家屋の撤去をすれば満たすこととなります。

相続空き家の3000万円特別控除は、基本的に相続開始の直前まで故人が一人暮らしをしていた住宅が対象ですが、亡くなる前に老人ホームなどに入居していた場合にも、一定の要件を満たせば使うことができます。

取得費加算の特例

相続した土地や建物を一定期間内に譲渡した場合に、すでに納めている相続税の一部を取得費用に加算できます。取得費が増えるということは、譲渡所得が下がるということ。その分、譲渡所得税が抑えられるというわけです。

取得費加算の特例を利用するには、次のような要件を満たしている必要があります。

  • 相続や遺贈によって取得した財産
  • 取得した本人に相続税が課せられている
  • 相続開始から3年10ヵ月以内に売却が完了している

3000万円特別控除(マイホーム特例)

先に紹介した相続空き家の3000万円特別控除は、故人が一人暮らししていたときでないと基本的には適用されません。しかし、親と同居していた実家を売却したいケースもあるでしょう。

親と暮らしていた実家を相続し、売却したときは「マイホーム特例」と呼ばれる「居住用財産の譲渡に関する特例措置」という特例が適用できます。この特例では、所有期間の長さを問わず最高3,000万円まで控除可能です。

ただし、次のような要件を満たしている必要があります。

  • 土地だけを売却するときは、家を取り壊した日から1年以内の契約締結であり、住まなくなった日から3年経過する年の12月31日までに売却している
  • 家を取り壊してから土地を売却するまでの間に、敷地を貸駐車場などとして使っていない
  • 実家を売却する2年前からマイホームの買換えや交換に関する特例を受けていない
  • 売り手と買い手が親子や夫婦といった特別な関係ではない

この特例は、別荘などレジャー用の家には適用されません。あくまでもマイホームを売却するときに使える制度となっています。なお、10年以上所有していたマイホームで特例を適用しても譲渡所得が控除しきれない場合には、以下のような軽減税率の特例が適用となります。

課税譲渡所得金額(=A)税額
6000万円以下A×10%
6000万円超(A−6000万円)×15%+600万円

【シミュレーション】相続した家の売却にかかる税金はいくら?

相続した家の売却時に実際にどのくらいの税金がかかるのか、シミュレーションをしてみましょう。相続した家は以下のような条件だと仮定して、税金の計算をしてみます。

  • 父親亡き後、母親が一人暮らししていた実家(現在空き家)
  • 竣工:1980年
  • 取得費:3,000万円
  • 譲渡金額:5,000万円
  • 家屋の撤去費用:200万円
  • 仲介手数料:150万円

相続空き家の3000万円特別控除を使わなかった場合

相続した家の処遇をずっと悩んでいて売却を決断できないという人もいるでしょう。相続空き家の3000万円特別控除の適用期間を過ぎてしまうと、控除を受けることはできません。
特別控除なしの場合にかかる税金は、次の通りです。

譲渡所得は次のような計算で求めます。

譲渡金額5,000万円-(取得費3,000万円+家を売るためにかかった費用350万円)=1,650万円

このケースでは、所有期間が5年を超えるため長期譲渡所得として計算できます。

所得税:247.5万円(譲渡所得の15%)
復興特別所得税:5.2万円(譲渡所得の0.315%)
住民税:82.5万円(譲渡所得の5%)

すべての金額を合計すると、相続した家の売却にかかる税金は335.2万円となります。

相続空き家の3000万円特別控除を使った場合

続いて、相続空き家の3000万円特別控除を使った場合の税額も計算してみましょう。
譲渡所得は、上記と同じく1,650万円です。

特別控除を使うと、譲渡所得から最大3,000万円を差し引くことができます。

1,650万円-3,000万円=△1,350万円

譲渡所得がマイナスになるため、譲渡所得税はゼロ。このため、特別控除を利用すると、相続した家の売却で譲渡所得税は課せられません。

相続不動産の売却方法

親が所有していた家や土地を相続するとき、実家にかかわる不動産すべてを1人が承継するパターンと、実家を売却したお金を相続人で分けるパターンの2種類があります。多少の違いはあるものの、相続不動産の売却方法や手続きの流れは同じです。

STEP1:該当の不動産を誰が相続するのかを確認する

最初に確認しなければならないのは、親が所有していた土地や建物などを誰が相続するのかということです。故人が生前に遺言を作成していた場合、基本的に遺言に書かれている内容の通りに相続しなければなりません。

遺言がない場合には、故人の配偶者や子などといった相続人が不動産の相続をすることになります。相続人が複数名いる場合には、故人が残した財産をどのように分けるのかを決める「遺産分割協議」を行います。

STEP2:相続税の申告を行う

相続人の間で遺産の分け方が決まったら、相続税の申告を行います。相続税の申告は、故人が亡くなった日の翌日から10ヵ月以内に行わなければなりません。相続財産が基礎控除よりも少ない場合には申告は必要ありませんが、特例などを使う場合には必ず相続税の申告が必要です。

相続税の基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)」で計算します。法定相続人が4人の場合、基礎控除額は5,400万円です。

STEP3:不動産の名義を故人から相続人に変更する

不動産の名義が故人のままになっていると、売却ができません。このため、不動産の名義を故人から相続人に変更する手続きが必要です。

不動産を1人が相続する場合には、その人の名義に登記を変更します。不動産を売却したお金を複数の相続人に分けることになったときは、便宜上、相続人のうち1人を代表に決めて登記することも可能です。

STEP4:不動産売却の仲介業者に相談・依頼する

不動産を売却する前に複数の仲介業者に相談し、査定を依頼しましょう。査定額は各社異なるため、複数社に査定依頼することをおすすめします。

STEP5:不動産の売却

不動産の購入希望者が現れ、売買金額や引渡し時期などに合意ができれば、売買契約を結ぶことになります。不動産会社主導のもと、売主と買主が売買契約書に署名や捺印をしたあと、実際に不動産の引渡しを行います。

相続した家の売却に確定申告は不要?

相続した家を売却して、譲渡所得がプラスになったときは確定申告が必要です。また、相続空き家の3000万円特別控除などの控除特例は、確定申告をしなければ適用されません。

特例を適用した結果、譲渡所得税がゼロになるとしても、確定申告は必須です。確定申告は、不動産を売却した翌年の2月16日から3月15日に住所地の税務署で行います。

相続した家を売るときの税金は特別控除の適用で節税できる

相続した家を売却するとき使える特別控除はいくつかあります。特別控除を使うか否かで税額は大きく変わってくる可能性があるので、要件を確認して売却時期なども検討しましょう。

特別控除を使って売却時の税額を抑えたいなら、相続後3年以内を目安に家を売るのがポイントです。思い出がつまった実家を売るのは気が引けるかもしれませんが、早めに相続した家をどうするのか検討することをおすすめします。

この記事のポイント

相続した家を売るときにかかる税金とは?

売買契約書に必須の「印紙税」・相続登記に必要な「登録免許税」・売却した利益に対してかかる「譲渡所得税」という3種類の税金がかかります。

詳しくは「相続した家の売却にかかる3つの税金 」をご覧ください。

相続した不動産売却にかかる税金を抑えるポイントは?

相続した不動産に適用される特例措置を使えば、最大3,000万円の特別控除を受けられます。特例措置はいくつかあるので、要件を確認して適用できるものを確認しましょう。

詳しくは「相続した不動産の売却で利用できる税控除制度 」をご覧ください。

相続した家を売ったときに確定申告は必要?

売却益がなければ確定申告は不要です。ただし、確定申告をしなければ、特例措置は適用されません。

詳しくは「「相続した家の売却に確定申告は不要? 」をご覧ください。

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