ざっくり要約!
- 老後に住み替えにはさまざまな罠が潜んでいるため、事前に対策することが重要
- 老後の住み替えに不安がある場合は不動産会社やファイナンシャルプランナーに相談するのがおすすめ
子どもの独立や定年後など、老後に住み替えを検討している方は多いことでしょう。しかし老後の住み替えにはさまざまな罠が潜むため、回避する術を知らずに住み替えを進めてしまうと、後悔することになりかねません。
今回は、老後の住み替えにおける罠ともいえるリスクと、メリットについて解説します。また罠を回避するコツも合わせて紹介しますので、「罠なんて大げさだ」などと軽視せず、ぜひ参考にして住み替えを成功させてください。
記事サマリー
老後の住み替えに潜む恐ろしい罠5つ

老後に住み替えには、さまざまな罠が潜んでいるため注意が必要です。ここでは、とくに注意したい罠を5つ紹介します。
1.賃貸に住み替えを希望しても借りにくいという罠
老後に賃貸物件への住み替えを検討している場合、オーナーの貸し渋りにあうリスクがあり、希望する物件に住めないことがあります。
オーナーが貸し渋りする理由としては、高齢者は病気や介護によって支払い能力が不足する可能性や、将来1人暮らしになった際の孤独死など、次に誰かに貸すときに人の死を告知しなければならず、借り手がつかなくなるリスクを懸念するためです。
子どもが近くに住んでいる場合は比較的借りやすいことがあり、高齢者専用の物件であれば問題ないこともあります。
しかし保証人がいない場合は、借りること自体難しいことが多く、老後の賃貸物件への住み替えは注意が必要です。
2.介護問題が生じる可能性がある罠
住み替え時は元気でも、その後に介護問題が生じる可能性があります。
住み替え後の生活費以外に、介護費用が必要になることを想定していなかった場合、家計を圧迫することになりかねません。
状況により、介護施設を思うように利用できない場合は、基本的には家族に介護を頼むことになります。老後に住み替えする場合は、介護が必要になるケースも想定し、家族や子どもとよく相談しておきましょう。
3.老後資金が不足する罠
定年退職後は収入が減少するため、住み替え後に老後資金が不足するリスクも想定しておかなければなりません。
生命保険文化センターが公表している「2022(令和4年)度生活保障に関する調査」によるアンケート結果によれば、「老後夫婦2人で暮らす場合に日常生活費として最低必要な金額」は、平均で月23.3万円でした。
仮に老後生活を20年だとして試算すると、5,000万円以上必要になります。
老後資金に余裕があると思っていても、長生きすることで医療費や介護費などの支出が増える傾向があり、持ち家に長く住めば、メンテナンス費用もかかります。
家の購入に資金を使い過ぎないように注意し、老後の生活費を確保しましょう。
出典:2022(令和4)年度生活保障に関する調査|(公財)生命保険文化センター
・「老後のマンション購入」に関する記事はこちら
老後にマンション購入は後悔する?メリット・デメリットを詳しく解説
4.ローンが通りにくい罠
家を購入して住み替えをしようとしても、高齢になってからのローン審査は通りにくく、年齢や収入によっては希望する金額を借入できない可能性があります。また健康状態によっては、ローンの借入自体が難しくなることも少なくありません。
金融機関は住宅ローンの借り入れ条件として、「満18歳以上70歳未満」「完済時の年齢は80歳まで」を挙げていることが一般的です。
定年退職すると支払い能力が現役時に比べて低下するため、金融機関は定年を迎える65歳ぐらいまでに完済することを推奨しています。
住宅ローンの借入期間が短くなると、収入に対する返済比率が高くなってしまうため、老後の住み替えはなるべく早くから計画しましょう。
・「住宅ローンの審査が通らない人」に関する記事はこちら
住宅ローンの審査が通らない人の特徴は?通らない場合の対策も紹介
5.環境の変化についていけない罠
高齢になってから住み替えをすると、環境の変化になじめず、孤立感が強くなるリスクがあります。とくに都心部から田舎に住み替えると、交通や買い物が不便になるため、日常生活を送ることが困難になる可能性もあります。
住み替えによって老後の環境が大きく変わる場合は、複数回下見を重ねるなどして引っ越し後の生活をシミュレーションし、よく吟味してから購入するようにしましょう。
老後の住み替えの主なメリット

老後の住み替えにはさまざまな注意点がある一方で、メリットもあります。ここでは、老後に住み替えることで得られる、主なメリットを解説します。
利便性の良い環境で暮らせる
たとえば子どもと暮らしているときは郊外の一戸建てだった場合、老後に駅や病院が近くにあるような立地の家を購入することで、利便性の良い環境へ住み替えることができます。
また室内に段差が少ないマンションや、バリアフリー設計の住まいを選択すれば、老後でも安心して住むことができます。
老後に日常生活の利便性が良くなることで、住み替えしたことへの満足度が高まるでしょう。
家族構成に合った家に住める
子どもの独立後に、夫婦で暮らすのにちょうどよい大きさの住まいに住み替えることで、家族構成に合った住まいを選択できます。
コンパクトな家に住み替えれば、光熱費や生活にかかる費用を節約できます。
たとえば木造の一戸建てから断熱性の高い鉄筋コンクリート造のマンションに引っ越すことで、冷暖房費を抑えることができるでしょう。
資産を所有できる
老後に家を購入することで、不動産資産を所有することになります。もし将来的にまとまった資金が必要になったとしても、家を売却することで老後の資金として活用できます。
たとえば介護施設に入居することになった場合も、家を売却して現金化すれば、介護施設に入居するための一時金として充てることも可能です。
・「老後資金」に関する記事はこちら
老後資金はいくら必要?不足額やお金の貯め方を知って老後に備えよう!
老後の住み替えに潜む恐ろしい罠を回避する5つのコツ

老後の住み替えに潜む恐ろしい罠は、いくつかの点に注意して準備をしておくことで、回避することも可能です。
ここでは、回避するためのコツを5つ紹介します。
1.早いうちから計画を立てる
老後の住み替えは、なるべく早いうちから計画を立てましょう。
つまり体力に自信があり、資金にも余裕があるうちに、準備を始めることが大切です。
基本的に給与所得が安定している50代であれば、比較的審査が難しい住み替えローンも検討できます。
しかし60代になると借入できる期間が短くなり、収入に対する返済比率が高くなるため、ローン審査が通りにくくなる傾向があります。また60代になって年収が減少すれば、その分借入可能額も下がってしまうでしょう。
家の売買や引っ越しは、想像以上に体力を消費します。また病気になると借り入れが難しくなることが多いため、50代の元気なうちから計画しましょう。
2.資産を確認する
住み替えに使える資金が、どれくらいあるのか把握しておきましょう。貯金や退職金、年金のほか、持ち家の資産価値を確認します。不動産会社に持ち家の査定を依頼し、査定額を参考にするとよいでしょう。
ただし家の売却には仲介手数料や登記費用、印紙代など、諸費用がかかります。また家を売却する際は、住宅ローンを完済する必要があります。
家の査定額だけでなく、ローン残高や諸費用も試算し、手元に残る金額を想定しておきましょう。
3.資金計画を練る
持ち家を売却して手元に残る金額や貯金、受け取れる年金額などを確認できたら、資金計画を立てます。
住み替え後にかかる生活費や家の売買でかかる諸費用、リフォーム代、固定資産税、火災保険、車の維持費など実際の支出を想定しておくことが大切です。
病気や事故など、想定していなかった支出が発生する可能性もあるため、なるべく余裕をもって資金計画を立てるようにします。
具体的には、以下のように資産・収入・住み替え後にかかる諸費用・住み替え後の支出に分けて、整理しておくとよいでしょう。
資 産 | 預貯金・持ち家の資産価値 |
収 入 | 給与・退職金・年金 |
住み替えにかかる諸費用 | 新居購入費・売買にかかる諸経費・リフォーム費用・火災保険料・家財の買い替え費など |
住み替え後の支出 | 住み替え後の生活費・医療費・介護費・固定資産税・水道光熱費・家や車の維持費など |
4.住み替え先は十分に吟味する
住み替え先は、十分に吟味して選ぶようにしましょう。今は足や腰に不安を感じなくても、老後は段差が少ないバリアフリー対応の住宅が安心です。
自然が豊かな環境や田舎暮らしに憧れる方もいますが、交通の利便性や医療施設が充実しているか確認し、生活のしやすさを重視するようにしてください。
年齢を重ねるごとに、車の運転に不安を覚えるかもしれません。
自家用車がなくても生活できるのか、また移住者を受け入れる体制が整っているのかという視点で、下見をすることを忘れないようにしましょう。
5.専門家に相談する
老後の住み替えで、資金計画や生活設計に無理がないか自己判断することは難しいため、専門家に相談することをおすすめします。プロにアドバイスしてもらうことで、リスクヘッジになり、安心して老後を過ごすことができるでしょう。
住み替えは不動産会社へ、生活設計や資産管理はファイナンシャルプランナーに相談できます。
ちなみに不動産会社に住み替えを依頼した場合、成約時に仲介手数料を支払うことになります。ファイナンシャルプランナーへ支払う相談料は、1時間あたり5,000円~1万円が目安です。
まとめ
老後の住み替えはメリットがあるものの、リスクを伴うこともあるため注意が必要ですが、事前に準備することで恐ろしい罠も回避できます。
なるべく余裕をもって資金計画を立てるようにし、不安があれば不動産会社だけでなく、ファイナンシャルプランナーへ相談することをおすすめします。
この記事のポイント
- 老後の住み替えの主なメリットは?
老後の住み替えは、今よりも利便性の良い環境で暮らせることがメリットになります。
たとえば子どもと暮らしているときは郊外の一戸建てだった場合、老後に駅や病院が近くにあるような立地の家を購入することで、利便性の良い環境へ住み替えることができます。
また室内に段差が少ないマンションや、バリアフリー設計の住まいを選択すれば、老後でも安心して住むことができます。詳しくは「老後の住み替えの主なメリット」をご覧ください。
- 老後の住み替えに潜む恐ろしい罠を回避するコツは?
老後の住み替えは、なるべく早いうちから計画を立てましょう。つまり体力に自信があり、資金にも余裕があるうちに、準備を始めることが大切です。
ただ、老後の資金計画や生活設計に無理がないか自己判断することは難しいため、専門家に相談することをおすすめします。プロにアドバイスしてもらうことで、リスクヘッジになり、安心して老後を過ごすことができるでしょう。詳しくは「老後の住み替えに潜む恐ろしい罠を回避する5つのコツ」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
老後の住み替えは、想像以上に体力を消費します。自宅の売却や新居探し、引越し準備などは、人によっては精神的にも負担を感じるかもしれません。体力面だけでなく、資金面でも余裕がある50代から計画しましょう。
不動産会社によっては住み替えだけでなく、ライフプランの相談を受け付けていることがあります。無料で相談できることも多いため、ファイナンシャルプランナーに相談する前に、まずは不動産会社に相談してみましょう。
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