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空き家問題とは?政府の対策や税金、空き家バンクや購入方法も解説

誰も住まないまま老朽化した空き家の問題が全国的に増加しています。空き家が増加すると、不動産が有効活用されないだけでなく、地域の景観を損なったり、治安が悪化したりするという問題も生じます。

そこで、政府は空き家問題への対策に乗り出しました。以下では、空き家が増加した背景や税制上の問題点、政府による空き家対策について解説します。

空き家が増える原因

近年、空き家が増えて社会問題化しています。空き家がここまで増加するようになった理由には複雑な背景があります。

以下では、空き家が増えた主な原因について詳しく説明します。

晩年まで自宅を手放さない

高齢化社会の進展により、自宅を所有する高齢者が老人ホームなどの高齢者住宅や子どもの自宅などに転居することも増えています。

もっとも、今は施設に入っているが、いつか自宅へ帰りたいとか、最期は自宅で迎えたいと思う高齢者もいます。

自宅には高齢者にとってたくさんの思い出が詰まっていることから、晩年まで家の売却に踏み切れず、結果として誰も住まないまま長期にわたり空き家となるケースがあります。

相続後に空き家の処分が難しい

家の所有者の死亡後に空き家を相続人が処分しようと思っても、相続争いや相続人との連絡不能によってなかなか売却できないこともあります。

民法上、相続人が複数いる場合には、遺言があるケースをのぞき、相続人全員の同意がないと空き家を売却すること自体ができないためです。

また、過疎化が進む地方の空き家だと、相続後に相続人全員の同意に基づき売却しようとしても買い手がつかないケースもあります。

この結果、誰も利用しない空き家が放置されることにつながります。

空き家が増えると発生する問題

空き家が社会問題と言われるのはなぜでしょうか。実は、空き家が放置されることによって、数多くのデメリットがあります。

以下では代表的な空き家の問題点を3つ説明します。

景観を損なう

空き家が荒れ果てたまま放置されると、そのエリアの景観を損ないます。

とくに、住宅街であれば荒廃した空き家の存在によって近隣の不動産の資産価値が下落する可能性もあります。

放火などのリスク

空き家による現実的な被害として見逃せないのは、空き家に放火されて近隣に延焼するリスクです。

また、空き家には不法侵入者などが入り込みやすいため、放火以外にもゴミの不法投棄や、空き家への落書きをされる可能性もあります。

倒壊の危険性

家に誰も住まないまま長期間放置されると、家の老朽化が急速に進行します。このため、空き家には倒壊のリスクがあります。

空き家を日常的に管理する人がいない状態だと、老朽化して危険な状態になっていることに誰も気づかないこともあります。

このような老朽化した空き家が、地震などをきっかけに全壊又は半壊して近隣住民が下敷きになる危険性もあります。

空き家と税金について

ここまで空き家が増えた背景として、固定資産税・都市計画税における減免措置の影響も指摘されています。

このため、空き家の対策の一環として、「特定空家等」に指定された空き家は固定資産税及び都市計画税の減免措置が適用されないこととする改正がありました。

固定資産税の減免

土地の固定資産税に関しては、従来から、土地上に居住用の建物が建っている場合には、税額が最大6分の1(都市計画税は3分の1)に減額されるという制度がありました。

このため、土地の所有者からすると、土地をすぐに売却する予定がないのであれば更地にするよりも、空き家でも建物を残しておいたほうが固定資産税の負担は軽くなります。

このため、土地所有者が税負担の軽減を目的に、意図的に空き家を解体せずに老朽化したまま残すケースがありました。

特定空家等とは

固定資産税の減免措置が、結果的に空き家の問題発生の一因となっているとの指摘を受けて制度が改正されました。

具体的には、2015年5月26日施行の空家等対策特別措置法で、「特定空家等」に指定されると上記の固定資産税の減免措置が受けられないという制度が新設されたのです。

「特定空家等」とは、倒壊等の危険性、衛生上の有害性、景観を著しく損なう等の状態で、放置することが不適切と認められた空き家をいいます。

「特定空家等」に指定されると、行政から助言や指導が入ります。空き家の所有者が行政からの助言や指導に応じて、問題点を改善すれば「特定空家等」の指定が解除されるという仕組みです。

政府による空き家対策

空き家の問題が社会問題となっていることを踏まえ、固定資産税の制度のほかにも政府は空家等対策特別措置法によって、以下で説明する空き家の対策に乗り出しました。

市町村による空家等対策計画の策定

空家等対策特別措置法によれば、市町村は国の基本指針に即して、空家等対策計画を策定することになっています。国は市町村の対策計画を支援するための財政支援等を行います。

空き家の所有者等の調査

空き家の対策を講じるためには、そもそも空き家の所有者が誰かを特定しなければなりません。

不動産の所有者は、不動産登記簿に記載されているのですが、登記簿上の名義や住所の変更をせずに放置されている不動産も数多くあります。

このことが、空き家に関して問題が生じた場合の対応を困難にさせていました。

そこで、空家等対策特別措置法の制定によって、市町村内部で固定資産税等に関する情報を活用できるようになりました。

つまり、不動産登記簿上は所有者が明らかでない不動産であっても、固定資産税の支払い情報から実際の所有者を特定できるようになったのです。

市区町村内部で情報共有できることで、これまでよりも空き家の所有者等の調査が容易になることが期待されます。

空き家・跡地の有効活用

空家等対策特別措置法は、空き家やその跡地の有効活用の促進も目的としています。例えば、市町村において実施される空き家バンク事業などはその典型例です。

空き家バンクを活用することで、その地域にある空き家を探しやすくなり、購入も可能です。

空き家を購入する方法

空き家を購入する方法は、前述の空き家バンクの利用や不動産会社への相談などがあります。ここでは、空き家を購入する方法をまとめてご紹介します。

不動産会社に相談

都市部や住宅街の空き家であれば、不動産会社に相談したほうが見つかりやすいでしょう。

不動産会社に相談すれば、どのような空き家を購入すればいいかなどプロの目で助言を受けることができます。

また、不動産売買契約書なども不動産会社が作成してくれるため、購入手続きに手間がかからないということも、不動産会社に相談するメリットといえます。

空き家バンクの利用

不動産会社があまり取り扱っていない地域の空き家を購入したい場合は、市町村が運営する空き家バンクの利用もおすすめです。

空き家バンクでは仲介手数料が発生しないので、費用をおさえて購入できるメリットがあります。

ただし、契約条件などについて所有者と直接交渉する必要があるほか、不動産売買契約書など必要書類の作成も自分で行わないといけません。

空き家情報サイトで検索

空き家対策の一環として、国土交通省が「全国地方公共団体空き家・空き地情報サイトリンク集 」をサイト上に掲載しています。

このサイトは、各市町村の運営する空き家バンクのリンク集なので、空き家バンクを利用したい方はまずここにアクセスするとよいでしょう。

空き家を購入するメリット

長い間放置されており管理されていない空き家の場合は、安い価格で購入できることがあります。

また、空き家によっては、価格の割に駅や街の中心地に近いなど、立地が良い場合もあります。

そのほか、自治体によっては、条件を満たすことで補助金を受けられ、空き家に住むために必要な費用に充てることができます。

空き家を購入する際の注意点

売ることを前提としている中古物件とは違い、空き家のなかには家屋が適切に管理されていない場合があります。カビや雨漏りが発生していたり、壁や床が破損していたりするケースもあります。

その場合、住むためには大規模な修理やリフォームが必要になります。購入する前に、家屋の状態がどうなっているのか、よく確認しましょう。

空き家は今後ますます購入しやすくなる

政府が空き家対策に乗り出したことで、中古物件が流通しやすくなる可能性があります。

不動産価格が上昇するなかで、比較的安価な空き家を購入したい人にはチャンス到来ともいえるでしょう。

空き家の購入を検討する際は、事前に情報収集をしっかりと行いましょう。

この記事のポイント

空き家が増加したのは税制のせい?

土地の固定資産税に関しては、土地上に居住用の建物が建っている場合に税金が減額されるという制度がありました。

このため、土地所有者が税負担の軽減を目的として空き家を残すケースがありました。したがって、税制が空き家増加の原因になっていた可能性は否定できません。

詳しくは、「空き家と税金について」をご覧ください。

倒壊しそうな空き家への対策は今後どうなる?

2015年5月26日施行の空家等対策特別措置法で、「特定空家等」に指定されると上記の固定資産税の減免措置が受けられないという制度が新設されました。

「特定空家等」とは、倒壊等の危険性、衛生上の有害性、景観を著しく損なう等の状態で、放置することが不適切と認められた空き家をいいます。

詳しくは、「特定空家等とは」をご覧ください。

この記事の監修

松浦 絢子
資格情報: 弁護士、宅地建物取引士

松浦綜合法律事務所代表。
京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。宅地建物取引士の資格も有している。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産・建築、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。

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