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長期譲渡所得とは?短期との違いや計算方法、特別控除、軽減税率などをわかりやすく解説!

長期譲渡所得とは、所有期間が5年を超えるマイホームや土地を売ったときの利益をいいます。長期・短期譲渡所得のどちらに当てはまるかで所得税・住民税の額が変わるため、売るタイミングが重要です。

この記事では、短期譲渡所得との違いや計算方法、軽減税率、特別控除などについてわかりやすく説明します。不動産の売却を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

長期譲渡所得とは所有期間が5年を超えた不動産を売ったときに発生した利益

マイホームや土地を売ったときの利益を譲渡所得といいます。そのうち、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年超の土地や建物を売ったときの利益が長期譲渡所得です。

譲渡所得には短期譲渡所得もあります。

長期譲渡所得について知るためには、まず短期譲渡所得との違いを知ることが必要です。

1月1日時点の所有期間で判断

長期譲渡所得と短期譲渡所得のどちらに当てはまるかは、売った年の1月1日時点の所有期間で判断します。

つまり、実際の所有期間が5年を超えていても、1月1日時点で5年を超えていない場合は短期譲渡所得になります。

例えば、以下のケースの場合、売却日時点の実際の所有期間は5年超です。

取得日:2017年3月1日
売却日:2022年3月15日

しかし、2022年1月1日時点では所有期間が5年以下なので、長期譲渡所得ではなく短期譲渡所得になります。

長期譲渡所得と短期譲渡所得の違い

長期譲渡所得と短期譲渡所得の大きな違いは、税額を計算する際の税率です。

それぞれの税率をみてみましょう。なお、所得税には、復興特別所得税として2.1%相当が上乗せされています。

  • 長期譲渡所得:20.315%(所得税15.315%、住民税5%)
  • 短期譲渡所得:39.63%(所得税30.63%、住民税9%)

上記のとおり、長期譲渡所得か短期譲渡所得かによって支払う所得税、住民税の額に大きな差が生じます。

不動産を売却するタイミングがいかに重要であるかがわかるでしょう。

長期譲渡所得の税額の計算方法

次に、長期譲渡所得の税額の計算方法についてみていきましょう。

長期譲渡所得は「分離課税」です。事業所得や給与所得といったほかの所得とは分離して計算を行います。

支払う税金の額は、課税長期譲渡所得金額に税率をかけて算出したものです。

税額=課税長期譲渡所得金額×税率

では、課税長期譲渡所得金額はどのように算出するのでしょうか。

計算方法は以下のとおりです。

課税長期譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除

売った金額から取得費・譲渡費用・特別控除を差し引いたものが課税長期譲渡所得金額になります。

取得費

取得費とは、土地や建物を取得するためにかかった費用のことです。土地や建物の購入価格、仲介手数料などの合計をいいます。

ただし、建物の場合は年数が経つにつれて価値が下がるため、購入価格から減価償却費相当額を差し引かなければなりません。

減価償却費相当額の計算方法は以下のとおりです。

減価償却費相当額=建物を取得したときの価額×0.9×償却率× 経過年数

償却率については、木造であれば0.031、鉄筋コンクリートは0.015といったように建物の造りにより定められています。

なお、取得費がわからない場合や譲渡価額の5%に満たない場合は、5%相当額を取得費として計算することが可能です。

譲渡費用

譲渡費用は、不動産を売ったときにかかった費用のことです。具体的には、仲介手数料、印紙代、測量費、立退料、取り壊し費用などが含まれます。

特別控除

特別控除が適用される場合は、課税長期譲渡所得金額から差し引いて税額を計算します。

不動産を売った場合に適用される特別控除の例は、以下のとおりです。

  • 居住用財産の3,000万円の特別控除の特例
  • 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例

マイホームを売った場合、一定の要件を満たせば最高3,000万円の控除が受けられます。自分が居住している家屋を売った、売り手と買い手が特別な関係でないなどの条件を満たすことが必要です。

また、相続により取得した不動産を売った場合も、最高3,000万円の控除を受けられます。ただし、被相続人が居住していたなどの要件を満たすことが必要です。

なお、特別控除の適用を受けたいのであれば、確定申告が必要となるので注意しましょう。

長期譲渡所得の税額計算シミュレーション

長期譲渡所得の税額計算をシミュレーションしてみましょう。

取得日:2016年12月1日
売却日:2022年3月31日
譲渡価額:3,500万円
取得費:3,000万円
譲渡費用:300万円

ケース①:特別控除3,000万円あり
ケース②:特別控除なし

まず、売却した年の1月1日(2022年1月1日)時点で所有期間が5年を超えているため、長期譲渡所得になります。

ケース①(特別控除3,000万円)の計算式は以下のとおりです。

課税長期譲渡所得金額=3,500万円-(3,000万円+300万円)-3,000万円

この場合、課税長期譲渡所得金額は0となり税金は発生しません。

ケース②(特別控除なし)の計算式をみてみましょう。

3,500万円-(3,000万円+300万円)=200万円
200万円×20.315%=40.63万円

ケース②では、課税長期譲渡所得金額が200万円となり40.63万円の税金が発生します。

特例が利用できるケース

長期譲渡所得の税率や計算方法をみてきましたが、特例が適用されれば税金の負担がさらに軽くなります。

  • 10年超所有軽減税率の特例
  • 特定居住用財産の買換え特例

詳しくみていきましょう。

10年超所有軽減税率の特例とは

「10年超所有軽減税率の特例」とは、所有期間が10年超の不動産を売ったときに、一定の要件を満たすことで長期譲渡所得の税額を通常より低い税率で計算できるというものです。

課税長期譲渡所得金額6,000万円までの部分について軽減税率が適用され、所得税・住民税が14.21%まで下がります。

項目所得税住民税合計
通常の税率15.315%5%20.315%
軽減税率10.21%4%14.21%
※復興特別所得税として所得税に2.1%相当が上乗せされています。

参考:国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」

特定居住用財産の買換え特例とは

「特定居住用財産の買換え特例」とは、特定のマイホームを売って代わりのマイホームに買い換えた場合に、売ったときの利益に対する課税を将来に繰り延べられるというものです。

通常であればマイホームを売却した利益に対して課税されますが、特例の対象となれば新たに買ったマイホームを売るときまで課税の先延ばしが可能になります。ただし、非課税になるわけではないので注意しましょう。

参考:国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例

状況を見極めて適切な判断をしましょう

マイホームや土地を売ったときの利益が長期譲渡所得と短期譲渡所得のどちらの対象になるかで、支払わなければいけない税金に大きな差が出てきます。売るタイミングはとても重要なので、冷静に状況を見極めることが大切なポイントです。

売りたい土地やマイホームがある場合は、一人で動かずに信頼できる不動産会社へ相談するのが安心です。また、そのほかにも必要に応じて、司法書士、税理士、弁護士への相談も考えてみましょう。

この記事の監修

松崎 観月
資格情報: CFP認定、FP2級、日商簿記2級

大学卒業後、金融機関にて個人営業を担当。資産運用の相談・保険販売などを経験する。退社後CFP認定を取得し、フリーのFPライターとして活動を行う。

この記事のポイント

特別控除とは?

特別控除とは、マイホームや土地を売ったときに譲渡所得から差し引ける控除のことです。

詳しくは「特別控除」の項目をご確認ください。

軽減税率とは?

「10年超所有軽減税率の特例」とは、所有期間10年超の不動産を売ったときに、一定の要件を満たすことで通常より低い税率で税金を計算できるというものです。

詳しくは「10年超所有軽減税率の特例とは」をご確認ください。

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