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等価交換方式のメリット・デメリットは?ディベロッパー選びのポイントも紹介

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • 等価交換とは「『建物の建築主』と『地主』との間で、竣工した建物と土地を等価で交換しあう」開発手法
  • 等価交換なら借入金返済リスクや金利負担がない状態で土地活用できる

土地活用を検討している人の中には、「等価交換」という言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。
地主が建物の建築資金を負担することなく事業を始められることを指します。では、実際に等価交換とは、一体どのような手法なのでしょうか。この記事では等価交換の詳細について解説します。

不動産における「等価交換方式」とは?

等価交換とは、「『建物の建築主』と『地主』との間で、竣工した建物と土地を等価で交換しあう」開発手法です。

一般的に、建物の建築は「不動産ディベロッパー(分譲マンションなどの開発業者)」が担い、地主は「個人もしくは不動産開発のノウハウがない法人」となります。

等価交換では、不動産の開発ノウハウを持ったディベロッパーが建物を建て、完成した建物と土地を等価で交換することで、最終的にディベロッパーと地主が不動産を持ち合います。

建物を建てるのはディベロッパーですが、最終的に地主は土地と交換して「土地の一部と建物の一部」を所有するという点が特徴です。

イメージしやすいように、賃貸マンションを例に考えてみましょう。

仮にディベロッパーが建物を建てたあと等価交換をせずに終わったら、建物所有者はディベロッパー、土地所有者は地主のままとなります。つまり、事業形態としては「借地事業」です。借地事業の場合、地主はディベロッパーから地代収入を得ることになります。

しかし等価交換の場合、地主が賃貸マンションの一部を所有し、そこから家賃収入を得ます。地代収入ではなく家賃収入となり、事業形態も「借家事業」となるのです。

等価交換の場合、地主は最終的に建物の所有者にもなるため、広い意味では地主が建物を建てる土地活用と同じになります。

ただし、土地も建物も地主の完全所有(単独所有)ではなく、ディベロッパーと持ち合うという点が、単独で行う土地活用と異なるところです。

等価交換の基本的な仕組み

等価交換の基本的な仕組みについて解説します。

地主とディベロッパーで等価交換に合意する

等価交換は、まず更地の状態からスタートします。一般的には、ディベロッパーから地主に対して等価交換の打診があることがほとんどです。

地主とディベロッパーが等価交換に合意したら、ディベロッパーが地主の土地に建物を建築します。

建物発注者はディベロッパーとなるため、地主が施工会社に発注したり、銀行からお金を借り入れたりする必要はありません。ディベロッパーは開発のプロであり、建物の企画や施工会社に対する価格交渉力などを有しています。

建築に関することはディベロッパーにすべて任せられるので、地主は建物が竣工するまで、じっと待っているだけで大丈夫です。

地主が土地を売却し、建物を購入する

通常、建物“所有者”は建物“発注者”となるため、このまま終わるとディベロッパーが建物を100%所有する借地事業となってしまいます。等価交換は「建物竣工後に土地と建物を等価で交換する」というステップがある点が最大の特徴です。

例えば、地主が所有していた土地の価格が4億円、ディベロッパーが建築にかかった費用が6億円だとします。当該物件の竣工時の資産価値は、10億円(=4億円+6億円)です。

地主は10億円のうち4億円の価値を有しているため、全体資産のうち40%(=4億円÷10億円)を有する権利を持っています。一方で、ディベロッパーは10億円のうち6億円の価値を有しているため、全体資産のうち60%(=6億円÷10億円)を有する権利を持ちます。

等価交換によって、最終的に地主は全体資産の40%、ディベロッパーは60%を持ち合う形となるのです。

例えば土地面積が500平方メートル、建物面積が6,000平方メートルの物件の場合、地主は土地を200平方メートル(=500平方メートル×40%)、建物を2,400平方メートル(=6,000平方メートル×40%)有することになります。

建物は、ディベロッパーと共有または区分所有のいずれかで持ち合います。土地は、ディベロッパーと共有することが多いです。最終的にどのように持ち合うかは、ディベロッパーとの協議次第となります。

等価交換は、資産を交換しているように見えますが、実際には土地の一部をディベロッパーに売り、その代金でディベロッパーから建物の一部を購入するという流れです。

等価交換の過程で「土地をディベロッパーに売る」というステップが入るため、土地売却時には税金が発生する恐れがあります。

しかしながら、等価交換では「資産の買換え特例」を利用すれば、売却時の税金の一部を繰り延べることができます。「繰り延べ」とは、交換した時点で生じるはずの税金を先送りにすることです。そのため、地主は過剰な税を負担せず等価交換できます。

資産の交換方法は2種類ある

等価交換における資産の交換方法には、「全部譲渡」と「部分譲渡」の2種類があります。

「全部譲渡」とは、地主が一旦土地をディベロッパーにすべて売却し、取得割合に応じて再び土地の共有持分と建物を買い戻す方法です。地主が買い戻す際に再び不動産取得税や登録免許税が発生するため、全部譲渡方式は地主にほとんどメリットがないと言われています。

ただし、いったんディベロッパーがすべての土地を買い取るため、途中で土地所有者に事情変更(相続や破産など)があったとしても、安定して事業を推進できます。よって、土地の所有者が複数人いるようなケースでは、全部譲渡方式が用いられることが多いです。

「部分譲渡」とは、土地の一部のみを譲渡して、その対価に見合う建物の一部を購入する方法です。地主は土地を再び買い戻す必要がないため、土地にかかる余計な不動産取得税や登録免許税を支払わずに済みます。地主が一人しかおらず、途中で地主に事情変更が生じる可能性が低い場合は、部分譲渡方式が採用されることがほとんどです。

「全部譲渡」と「部分譲渡」は交換のプロセスが違うだけで、最終的な持分割合が異なるわけではありません。土地の所権者の数や事業期間の長さなどを鑑みて、適切な方法を選ぶことになるでしょう。

賃貸兼分譲マンションを建てた例

等価交換の典型的な例としては、ディベロッパーと共同して「賃貸兼分譲マンション」を建てるケースが挙げられます。

地主が所有する部分は賃貸マンションとなり、ディベロッパーが所有する部分は分譲マンションとして売却されます。

等価交換の基本的な考え方としては出資比率で所有割合を決めますが、分譲マンションを含む場合は「売価還元方式」と呼ばれる方法で交換比率を決めることが多いです。

売価還元方式とは、出資した事業費の総額と適正利益の回収に必要な売上高を算定し、その売上高を確保できるだけの専有面積をディベロッパーが取得して、残りの部分を地主に配分する方法になります。

売価還元方式の例を示すと以下のとおりです。

(条件)

建物総専有面積:2,000平方メートル
建築費:4億円
マンションの分譲単価(専有面積): 50万円/平方メートル
ディベロッパーの利益率:売上高の20%

(計算)

ディベロッパーの必要売上高=建築費÷(1-利益率)
             =4億円÷(1-20%)
             =5億円
ディベロッパーが取得する面積=必要売上高÷分譲単価
              =5億円÷50万円/平方メートル
              =1,000平方メートル
地主が取得する専有面積=建物総専有面積-ディベロッパーが取得する面積
           =2,000平方メートル-1,000平方メートル
           =1,000平方メートル

以上のことから、地主は最終的に土地と建物の50%(=1,000平方メートル÷2,000平方メートル)を取得することになります。

等価交換方式のメリット

等価交換のメリットについて解説します。

借入金が発生しない

等価交換は、土地の一部を売って建物の一部を買う事業であるため、地主に借入金が生じません。借入金返済リスクや金利負担がない状態で土地活用できる点がメリットです。

ディベロッパーにすべてゆだねられる

等価交換は、建物建築をすべてディベロッパーにゆだねることができます。

大きな投資を伴う建物建築は、建物の企画能力や施工会社に対する交渉力などが必要です。個人の場合、経験値が少ないことから、企画や施工会社の選定などで失敗するリスクがあります。

等価交換であれば、地主は何もせずにプロのノウハウを最大限に生かした建物を得られる点が魅力です。

賃貸物件を所有することで相続税対策となる

賃貸物件として土地と建物を所有することで相続税対策になります。土地は「貸家建付地による評価減」、建物は「借家権割合による評価減」が適用されるため、更地で持っているよりも相続税を節税できます。

等価交換方式のデメリット

等価交換のデメリットについて解説します。

権利が複雑化する

等価交換は、土地と建物をディベロッパーと持ち合うことになります。共有で持てば、将来、売却するときに共有者全員の同意が必要です。

仮に建物を区分所有で持っていたとしても、建て替えには区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成決議が必要となります。議決権とは、各区分所有者の共有部分の持分割合のことです。

権利が複雑化すれば、売却や建て替えに一定の制約が生じ、自由度が低くなるという点はデメリットといえます。

交換比率を決めるのが難しい

等価交換は、ディベロッパーとの間で交換比率を決めていく必要がありますが、この調整も手間がかかります。

土地は第三者に売るわけではないため、実際のところいくらなのかはわかりません。建物もマンションのように区分にすると、上層階や下層階、角部屋など部屋の条件で価値が異なってきます。

土地も建物も机上で出す価格には裁量部分があり、納得感が得られないこともあります。そのため、等価交換はディベロッパーとの間の交換比率で揉めることが多く、合意に時間がかかるケースも珍しくありません。

単独物件よりも収益が低くなる

等価交換は条件の良い土地で行われることが多いため、地主が単独で事業をしたとしても成功する可能性は高いです。

ですが等価交換の手法をとると、地主の持分割合が最終的に100%よりも減ってしまいます。良い土地にわざわざ持分を減らして建物を建てることとなり、単独所有よりも収益が低くなる点がデメリットといえます。

等価交換のディベロッパーを選ぶ際の注意点

等価交換のディベロッパーを選ぶ際の注意点を解説します。

これまでの実績を調べておく

等価交換を行う場合、パートナーとなるディベロッパーの実績を調べておくことが望ましいです。

具体的には、オフィスビルが得意な会社なのか、分譲マンションが得意な会社なのか等の得意分野の実績を調べておくことが適切となります。

例えば、等価交換後の建物がオフィスビルであるにもかかわらず、分譲マンションが得意な会社と組むのは得策とは言い難いです。

等価交換は、ディベロッパーのノウハウを最大限活用できる点に地主としての旨みがあります。
計画建物の用途に強みを持っているディベロッパーと組むことが、ディベロッパー選びの重要なポイントです。

また、その地域に強い不動産会社と組むことも適切な判断とえます。
不動産会社には、例えば「渋谷といえば東急不動産」のようにエリアに強みを持ったディベロッパーが存在します。

エリアに強みを持つディベロッパーは、その地域のマーケットに精通しており、テナント(借主)の獲得能力も高いです。
特に等価交換でオフィスビルを建てる場合には、その地域に強い不動産会社と組むと等価交換のメリットがさらに増します。

事前に土地の鑑定評価を行っておく

等価交換の話が来たら、事前に土地の鑑定評価を取得しておくことをおすすめします。
鑑定評価とは、不動産鑑定士と呼ばれる国家資格者による適正価格の評価のことです。

等価交換では、ディベロッパーと最も揉める部分は土地価格になります。
ディベロッパーの提示してくる土地価格が時価よりも安い場合、地主としては等価交換をやる意味が乏しいといえます。
等価交換を了承するには、土地価格は少なくとも時価以上であることが望ましいです。

ディベロッパーと等価交換の話を進めていくには、地主も時価をあらかじめ把握しておく必要があります。

ただし売却予定がない場合、いわゆる不動産会社の無料査定を利用して時価の把握することはできません。不動産会社の無料査定は、売却の意思がある人のみが利用できるサービスです。

不動産鑑定士による鑑定評価であれば有料となってしまいますが、売却予定がない人でも利用することができます。
等価交換をするかしないかの重要な判断材料となりますので、不動産鑑定士による客観的な価格を知っておくことをおすすめします。

複数地権者の場合は足並みを揃えておく

都市部の等価交換では、地権者が複数人となるケースがあります。
地権者が複数人となる場合には、地権者同士で足並みを揃えておくことも重要なポイントです。

地権者が同様に納得していない場合、1人の地権者が勝手に建物を新たに建て替えたり、売却したりしてしまうことがあります。
1人の地権者が勝手な行動を取ると、等価交換の話が頓挫してしまいます。

地権者は同じ立場の人間であり、いわゆる同志です。
ディベロッパーから等価交換の話が合った場合には、早い段階で他の地権者と腹を割って話合い、どう思っているかを確認することをおすすめします。

デメリットをしっかり聞きだす

等価交換を行う場合は、ディベロッパーからデメリットをしっかり聞きだすことも重要です。

土地活用における等価交換は、ディベロッパーから話が持ちかけられることが多いため、比較的メリットばかりを強調される傾向になります。

しかしながら、等価交換には権利関係が複雑になる等のデメリットがあり、これらのデメリットも説明してもらった上で信頼できるディベロッパーを選ぶ必要があります。

特に、権利関係が複雑になるというデメリットに関しては、ディベロッパーも同じです。
本来であれば、ディベロッパーも単独所有物件の方が良いはずです。

それにも関わらず等価交換を提案してくるということは、権利が複雑化するデメリットを上回るメリットがあると考えられます。
デメリットをしっかり聞きだし、それを上回るメリットが存在するのかを確認することもポイントです。

等価交換成功のためのディベロッパー選びのポイント

等価交換成功のためのディベロッパー選びのポイントを解説します。

土地価格に納得感がある

等価交換を行うには、ディベロッパーが提示してきた土地価格に納得感があることが最低条件となります。

提示された土地価格が時価よりも安い場合は、等価交換するよりも単純に売却した方が得ということです。
逆に土地価格が時価よりも高い場合には、等価交換を前向きに検討する価値が十分にあります。

土地価格が時価よりも安い場合には、すっぱり断ってしまっても良いと思います。

竣工後の所有形態について同意が得られる

竣工後の所有形態について、同意が得られることも重要な条件です。
竣工後の所有形態とは、具体的には建物を区分所有とするか、共有とするかの違いになります。

建物の用途がマンションの場合、基本的には区分所有となるはずですので、竣工後の所有形態についてディベロッパーと揉めることは少ないのです。

一方で、建物の用途がオフィスビルの場合、竣工後の所有形態でディベロッパーと揉めることがよくあります。オフィスビルの場合は建物を区分所有とすることも、共有とすることも可能です。

区分所有の場合、メリットはそれぞれの区分所有の部分は単独の判断で売却できる点が挙げられます。
一方で、デメリットは区分所有の部分によって賃料や空室率が異なってしまう懸念があるという点です。

共有の場合、メリットは賃料や空室率がディベロッパーとの間で差異が出ないという点が挙げられます。
一方で、デメリットは将来、売却する場合は共有者全員の同意が必要となるという点です。

所有形態によるメリットとデメリットを把握し、地主が納得できる所有形態に応諾してくれるディベロッパーが望ましいといえます。

竣工後の収益計画が明確となっている

早い段階から竣工後の収益計画が明確となっていることも重要です。
竣工後の収益計画をなかなか示さず、メリットがあるのかないのかわからないような計画は判断しようがないと思います。

ディベロッパーには、できれば等価交換で建て替えた場合と地主が単独で建て替えた場合のシミュレーションの2つを用意してもらうことが望ましいです。
2つのシミュレーションを比較検討し、等価交換にメリットがあれば話を前向きに進めていくのが良いでしょう。

等価交換をおすすめしたいケース

等価交換は、個人地主の場合、ディベロッパーから話が持ちかけられることがほとんどです。よって、「立地条件が良く、広い土地を持っている人」であれば等価交換できる可能性があります。次のような人は、等価交換を検討してみても良いでしょう。

  • 金融機関からお金を借り入れたくない
  • ディベロッパーにすべて任せたい
  • 最終的に共有や区分所有になっても構わない

この記事のポイント

等価交換方式のメリットは?

借入金が発生しない、ディベロッパーにすべてゆだねられる、賃貸物件を所有することで相続税対策となるといったメリットがあります。

詳しくは「等価交換方式のメリット」をご覧ください。

等価交換方式のデメリットは?

権利が複雑化する、交換比率を決めるのが難しい、単独物件よりも収益が低くなるといったデメリットがあります。

詳しくは「等価交換方式のデメリット」をご覧ください。

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