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共有名義の不動産はどう売却する?方法とよくあるトラブル事例

執筆者プロフィール

亀梨奈美

株式会社realwave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ジャーナリストとして独立。
2020年には「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに、不動産を“伝える”ことに特化した株式会社realwaveを設立。
住宅専門全国紙の記者として活動しながら、不動産会社や銀行、出版社メディアへ多数寄稿。不動産ジャンル書籍の執筆協力なども行う。

ざっくり要約!

  • 共有名義の不動産はすべての共有者の同意がなければ売却できないが、自分の持分だけなら自由に売却可能
  • 共有名義の不動産は相続や離婚時にトラブルになりやすい

共有名義の不動産も売却は可能です。ただし、売却手続きではすべての共有者の署名・捺印が必要になることから、手続きが煩雑になる傾向にあります。

本記事では、共有名義の不動産の売却方法や代理人の立て方、共有不動産に起こりがちなトラブル事例を解説します。

不動産の「共有名義」とは?

不動産は、個人が単独で所有することもできますが、複数人が共有することもできます。共有名義とは、1つの不動産を複数人が登記している状態。複数人で相続するケースや夫婦が親子が協力してマイホームなどを買う場合に共有名義となります。

共有持分割合とは?

複数人が共有するとしても、持分は全ての共有者が同等とは限りません。たとえば、3000万円の不動産を購入するにあたって、Aが2000万円を出資し、Bが1000万円出資したとすれば、持分の割合はA:B=2:1となります。この割合を「共有持分割合」といいます。

共有者の権利

共有持分の所有者は保存行為や使用はできても、単独で賃貸に出したり売却したりすることはできません。

賃貸借契約を含む管理行為は共有者の過半数の同意が、売却や抵当権を設定する処分・変更行為はすべての共有者の同意が必要です。

共有名義の不動産を売却する3つの方法

共有名義の不動産を売る方法は、次の3つです。

1.すべての共有者の同意を得て第三者に売却

先で述べた通り、共有名義の不動産を売るには、すべての共有者の同意が必要です。たとえば、A・B・Cの3人が共有している不動産の売却にAだけが反対している状態では、不動産を売ることができません。

不動産会社と締結する媒介契約書や買主と締結する売買契約書には、すべての共有者の署名・捺印と本人確認が必要です。それ以外は、一般的な不動産売却と同様の手続きで売却できます。

2.自分の持分だけを売却

どんなに共有持分割合が少なくても、誰か1人が「売りたくない」といえばその不動産の”全部”を売ることはできません。しかし“全部”ではなく“自分の持分のみ”であれば、共有者の同意を得ず、自由に売却できます。

とはいえ、不動産の持分は形があるものではありません。「家の1階部分だけ」「特定の部屋だけ」「土地の一角だけ」など部分的に売却できるのではなく、あくまで自分が持っている持分だけの売却となります。持分売買の場合、基本的に売却価格は大幅に安くなる傾向にあります。

3.共有者に売却

自分の持分を売る相手は、共有者であっても問題ありません。たとえば、A・B2人が共有する不動産のうちAの持分をBに売却すれば、その不動産はBの単独名義となります。

共有名義の不動産を売却するときの流れ

共有名義の不動産も、売却の流れ自体は単独名義の不動産と同様、次の5ステップです。

  1. 事前準備
  2. 不動産会社への査定依頼
  3. 不動産会社と媒介契約を締結
  4. 売却活動の開始
  5. 売却代金の受け取り、物件の引き渡し

不動産会社と締結する媒介契約の締結やその更新契約、不動産の価格変更、売買契約、物件引き渡しに際しては、すべての共有者の署名・捺印が必要です。

必要書類

不動産売却に必要な書類も、単独名義の不動産と同様で次の通りです。

  • 権利証または登記識別情報
  • 実印および印鑑証明書
  • 本人確認書類
  • 固定資産税・都市計画税納税通知書
  • 管理規約・使用細則(マンションの場合)
  • 建築確認通知書・検査済証・建物図面など(一戸建ての場合)
  • 測量図(一戸建てや土地の場合)
  • 境界確認書

ただし、本人確認書類や実印、印鑑証明書はすべての共有者の分が必要になりますのでご注意ください。

委任状があれば代理人が売却手続きできる

共有者が多いと、売却手続きがスムーズに進みにくくなります。とくに、共有者の住んでいる地域がバラバラであったり、高齢の方がいらっしゃったりすると、すべての共有者の署名・捺印をもらうのも一苦労です。媒介契約やその更新契約、価格変更など、意思決定の遅れは、機会損失にもつながりかねません。

そこで、共有不動産をスムーズに売却するために「委任」という方法も検討してみましょう。

委任とは?

不動産売却における「委任」とは、売却手続きを代理人に代わってもらうことを指します。共有不動産の売却にはすべての共有者の同意が必要になりますが、売却の手続きに関しては意思を示したうえで代理人に委任することも可能です。

たとえば、A・B・Cの3人が共有している不動産の売却で、B・CがAを代理人として委任すれば、Aが当事者かつB・Cの代理人となって1人で売却手続きを進めることができます。もちろん、共有者ではなく、第三者を代理人にすることも可能です。

委任の方法

不動産売却の手続きを代理人に委任するには、委任状を用意する必要があります。委任状に決まった書式はありません。不動産会社が用意してくれることもあるので、担当者に聞いてみましょう。

委任状に明記するものは、次の通りです。

  • 委任の内容
  • 本人の名前・住所・実印での捺印
  • 代理人の名前・住所・実印での捺印
  • 有効期限

委任の内容には、売却を委任する不動産の情報や委任したいことを記載します。たとえば、売買契約を委任したい場合はその旨を、媒介契約を委任したい場合はその旨を記載し、第三者が追記できないよう「以上」で締めると良いでしょう。

委任者、代理人ともに実印で捺印し、それを証明するため3ヶ月以内に取得した印鑑証明を添付します。

相続による共有不動産のトラブル例

相続によって不動産が共有名義になることは少なくありません。共有持分割合は細かく定めることができるため、公平に相続しやすいからです。相続資産が自宅しかないような場合はとくに、相続人の共有となるケースが多くなります。

しかし「公平」であることだけを考えて相続すると、相続後にトラブルが発生してしまうことも。共有者が兄弟姉妹であっても、それぞれに家庭があれば、不動産の売却や活用の方向性が合わず揉めてしまうこともあるでしょう。

また、兄弟姉妹の共有だった不動産も、時が立てばその次の世代に所有権が移行します。時間が経てば経つほど、共有者同士の関係性は希薄になり、ますます売却や活用などの方向性が合いづらくなるものと考えられます。

離婚による共有不動産のトラブル例

離婚時に持ち家があり、夫婦の共有となっている場合もトラブルが起きやすい傾向にあります。たとえば、夫は「売りたい」と主張し、妻が「住み続けたい」と主張すれば、話は平行線に。住宅ローンが残っていれば、名義変更も容易ではありません。

離婚後も共有の状態を維持したまま妻や子が住み続けることもできますが、その場合、元夫の住宅ローンの返済が滞ったら自宅が差し押さえられ、競売にかけられてしまうリスクがあります。元妻の持分は侵害されないとしても、元夫の持分が第三者に移行すれば、元妻は住み続けたり、処分したりすることができなくなってしまう恐れがあります。

共有名義の不動産売却はお早めに

不動産を共有名義にすることで、夫婦が協力してマイホームを購入できたり、相続時に公平に分けられたりするメリットがある反面、トラブルにつながりやすいという大きなデメリットもあります。

共有名義の不動産も、売却は可能です。場合によっては、自分の持分のみの売却や共有者に自分の持分を売却することも併せて検討しましょう。

この記事のポイント

不動産の「共有名義」とは?

共有名義とは、1つの不動産を複数人が登記している状態を指します。

詳しくは「不動産の『共有名義』とは?」をご覧ください。

共有名義の不動産を売却するには?

不動産の全部を売却するにはすべての共有者の同意が必要ですが、自分の持ち分だけなら自由に売却できます。

詳しくは「共有名義の不動産を売却する3つの方法」をご覧ください。

不動産売却を代理人に委任することはできる?

可能です。他の共有者にも、第三者にも委任することができます。

詳しくは「委任状があれば代理人が売却手続きできる」をご覧ください。

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