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所有権移転登記は自分でできるのか?費用、必要書類や手続きの流れを解説

不動産を購入する場合、必ず所有権移転登記を行うことになります。なぜなら、所有権移転登記をしていないと、自分の所有権を主張できないためです。

そこで、不動産取引で所有権移転登記をされる方に向けて、所有権移転登記とはなにか、所有権移転登記の手続きの流れや準備すべき書類について詳しく解説します。

所有権移転登記とは

所有権移転登記とは、不動産の所有者が変わったときに、新たな所有者に関する情報を不動産登記に登録する手続きです。

所有権移転登記の手続き完了までにかかる期間としては、登記申請から最短で1~2週間です。

ただし、繁忙期には通常よりも時間がかかることがありますので、余裕を見て申請から登記完了まで1ヶ月と考えておくとよいでしょう。

登記をすればその土地や建物の所有者の情報が記録される

不動産登記がされると、「どこの土地や建物が、誰のものなのか」という情報を誰でも法務局で閲覧できるようになります。

また、民法上、不動産の所有権は登記をしなければ、取引の当事者をのぞく第三者に主張ができないルールになっています。

例えば、不動産の売主が、複数の買主との間で、特定の不動産を売却する旨の契約を締結する二重譲渡と呼ばれるケースでは、登記を先に備えた買主が所有権を確定的に取得します。

つまり、先に不動産売買契約を締結した場合であっても、後から契約した方が先に登記を備えてしまえば、不動産の所有権を得ることができません。

法務局で登記の手続きができる

法務局とは、法務省の地方での出先機関であり、不動産登記や商業登記、供託などの民事行政や、人権擁護などを担当しています。

全国に地方法務局や支局がありますので、不動産の所有権移転登記は不動産があるエリアを管轄する法務局で手続きをします。

所有権移転登記に期限はある?

不動産取引により所有者が変更となったときに行う所有権移転登記には、実は期限が定められていません。

したがって、不動産を購入した後に登記をしないまま放置していても、罰則などはありません。

ただし、前述のように不動産の所有者になったにもかかわらずその旨の登記をしないと、二重譲渡が発生した場合に所有権を失うリスクがあります。このため、実務上は不動産の引渡しと同時に登記申請をするのが一般的です。

なお、相続による所有権移転登記は、不動産登記法の改正により手続きの期限が定められることとなりました。この改正法は、公布日である2021年4月28日から3年以内に施行される予定です。

改正法の施行後は、相続人は相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記をすることが義務となります。

所有権移転登記が必要なとき

所有権移転登記は、不動産の所有者が変更になる場面で行われます。代表的な場面を次に説明します。

売買:不動産を売却・購入したとき

不動産売買では、売主と買主が共同で所有権移転登記を行うこととされています。

ただし、実務上は司法書士に手続きを依頼して、司法書士が単独で登記申請をすることが多いでしょう。

不動産会社が指定する司法書士が、売主と買主の双方の代理人として登記申請をすることもしばしば見受けられます。

不動産売買契約では、契約締結日からおおむね1ヶ月後に不動産の引渡し日が設定されます。この不動産の引渡し日に、所有権移転登記の申請を行うことが一般的です。

贈与:親などから不動産を贈与されたとき

親や祖父母などから不動産を生前贈与された場合にも、所有権移転登記が必要となります。親族からの生前贈与の場合には、所有権移転登記をしないままになっているケースがあります。

しかし、生前贈与を受けたのに所有権移転登記をしないままにしておくと、贈与した親や祖父母などが死亡したとき、ほかの相続人とトラブルになる可能性がありますので、注意が必要です。

なお、親族間の贈与は口約束で行われることもよくありますが、書面によらない贈与は履行の終わった部分をのぞき、当事者が自由に解除できます。

その意味でも、確実に不動産の贈与を受けるためには、贈与契約書を作成した上で、その旨の所有権移転登記をするのがよいでしょう。

相続:親が死亡して不動産を相続したとき

親が死亡して不動産を相続する場合には、不動産の所有者が相続人に変わります。このため、所有権移転登記が必要です。相続に伴う所有権移転登記を「相続登記」と呼ぶことがあります。

相続に伴う所有権移転は原因ごとに、遺言書によるもの、遺産分割協議によるもの、法定相続によるものの3種類があり、それぞれ必要書類が異なります。

財産分与:離婚で不動産を分与するとき

離婚時の財産分与においては、共有持分だった自宅を片方の単独所有とすることがよくあります。離婚の財産分与でも不動産の名義人が変わる以上、所有権移転登記が必要です。

離婚が円満であることは少ないため、離婚から時間が経ってから登記をしようとしても相手が手続きに協力してくれないリスクがあります。このため、離婚の成立時にすぐ所有権移転登記の手続きを行うべきでしょう。

所有権移転登記は一般の人でもできる

所有権移転登記の申請は、司法書士に依頼せず本人が行うこともできます。自分で所有権移転登記をすれば司法書士に報酬を支払う必要がないというメリットがあります。

登記を行う際の注意点

所有権移転登記は不動産登記法をはじめとする法令に基づき行う必要があるため、一定の専門知識が必要です。

また、自分で登記手続きを行う場合には、必要書類を作成したり取り寄せたりする手間がかかります。

このため、不動産取引における所有権移転登記の手続きは、司法書士に依頼することが一般的です。

所有権移転登記の流れ

不動産の所有権移転登記手続きの流れは、次のとおりです。

  1. 法務局のウェブサイトで申請書の様式を入手
  2. 必要書類を作成
  3. 法務局に書類を提出し申請
  4. 登記完了証と登記識別情報通知書を受け取る

とくに複雑にはなっておりませんので、おおまかに覚えておくとよいでしょう。

所有権移転登記に必要な書類

所有権移転登記をするためには、決められた書類を用意して法務局に提出する必要があります。以下では、所有権移転の原因ごとに必要な書類を紹介します。

なお、登記手続きを司法書士に依頼する場合は、司法書士から指示された書類だけで足りますので、すべて自分で一から用意する必要はありません。

すべての場合に共通して必要な書類

不動産の所有権移転の原因にかかわらず、すべての場合に共通して必要となる書類は次のとおりです。

本人確認書類

運転免許証やマイナンバーカードの使用が一般的です。

なお、司法書士に登記手続きを依頼する場合には、司法書士が当事者の本人確認をします。

印鑑証明書および実印

印鑑証明書は、市町村役場の窓口で発行できます。

従前の登記済権利証または登記識別情報

登記識別情報とは、従来の登記済権利証に代わるもので、アラビア数字とそのほかの符号の組合せからなる12桁の符号です。前回の所有権移転登記の完了時に、登記所から送付された登記識別情報通知書に記載されています。

平成17年3月7日の改正不動産登記法の施行日から順次、登記済権利証は登記識別情報に切り替わっています。

ただし、切り替えの時期は法務局によって異なります。登記識別情報への切り替え前に前回の所有権移転登記が行われている場合には、登記識別情報ではなく登記済権利証を用意します。

なお、登記識別情報通知書を紛失した場合には、再発行されません。この場合、司法書士や公証人に、本人確認情報という書類を作成してもらう必要があります。

固定資産評価証明書

登記を行う不動産の固定資産税評価証明書を用意します。不動産の所在する市区町村役場などで取得ができます。

住民票の写し

不動産登記には、所有者の住所が記載されます。このため、当事者の住民票が必要となります。

なお、不動産のもとの所有者が複数回引っ越しをしたにもかかわらず、その際に所有権移転登記の住所変更をしていない場合には、その経緯を改めて登記する必要があります。

住民票の写しは、現住所の前の住所までしかわかりません。このため、もとの所有者が複数回の引っ越しをしている場合には、戸籍の附票が必要となることがあります。

戸籍の附票は、住民票がある市町村ではなく本籍地の役所で取得するため、本籍地が遠方の場合には早めに手配するとよいでしょう。

司法書士に依頼する場合は、司法書士への委任状

司法書士への委任状は、司法書士に手続きを依頼する場合に必要となります。登記申請をすべき当事者全員の委任状の作成が必要となります。

売買に必要な書類

 
所有権移転の原因が不動産の売買である場合には、売買契約書を用意する必要があります。

売買契約書をもとに、登記原因証明情報と呼ばれる書類を作成します。
 

贈与に必要な書類

所有権移転の原因が生前贈与などの贈与契約である場合、所有権移転登記のため贈与契約書を用意する必要があります。

相続に必要な書類

相続を原因とする所有権移転登記について必要となる書類は次のとおりです。

すべての相続に共通する必要書類

相続の経緯としては、遺言、遺産分割協議、裁判所の調停など複数あります。

すべての相続に共通して必要となる書類は、被相続人(故人)の戸籍謄本または被相続人(故人)の除籍謄本、相続人の戸籍謄抄本、家系図です。

相続の経緯ごとに必要となる書類

上記の必要書類に加えて、相続の経緯ごとに次の書類が必要となります。

遺言による場合:公正証書遺言、自筆証書遺言など
遺産分割協議による場合:遺産分割協議書
遺産分割調停や審判による場合:調停や審判の調書

財産分与に必要な書類

財産分与を原因として所有権移転登記をする場合には、離婚協議書、調書、判決書、離婚日が記載された戸籍謄本が必要です。

所有権移転登記にかかる費用

所有権移転登記の手続きに要する費用としては、登記のために国に支払う税金である登録免許税、戸籍謄本など必要書類の取得にかかる費用があります。

不動産の所有権移転登記にかかる登録免許税は、売買によるときは土地建物それぞれ固定資産税評価額の2%が原則です。相続によるときは固定資産税評価額の0.4%であり、贈与と財産分与によるときは固定資産税評価額の2%が登録免許税です。

また、戸籍謄本等の取得費用は当事者の人数など個別の事情によって大きく異なりますが、おおむね合計5,000円程度みておくとよいでしょう。

このほか、司法書士に登記手続きを依頼する場合には、司法書士報酬が必要となります。報酬額は司法書士によって異なりますが、所有権移転登記の申請は50,000〜100,000円程度が相場となります。

ただし、不動産の個数などによって報酬が加算されることがあるため、依頼を検討している司法書士に事前に費用の見積もりを依頼するとよいでしょう。

所有権移転登記の準備は早めに

相続登記をのぞき、所有権移転登記をしないからといってペナルティはありませんが、不動産の所有権を奪われるリスクがあることには注意が必要です。

このため、不動産を取得したら所有権移転登記は早めに行うべきです。

不動産売買では、引渡し日に登記申請をすることが通常です。契約日から引渡し日まではあまり時間がありませんので、不動産売買契約を締結したら早めに必要書類の準備に取り掛かることが大切です。

この記事の監修

松浦 絢子
資格情報: 弁護士、宅地建物取引士

松浦綜合法律事務所代表。
京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。宅地建物取引士の資格も有している。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産・建築、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。

この記事のポイント

所有権移転登記が必要なのはどんな時?

所有権移転登記は、下記の場合に必要になります。

  • 不動産を売却・購入したとき
  • 親などから不動産を贈与されたとき
  • 親が死亡して不動産を相続したとき
  • 離婚で不動産を分与するとき
など、売買、贈与、相続、財産分与といった不動産の所有者が変更になる場面で行われます。

詳しくは「所有権移転登記が必要なとき」をご確認ください。

所有権移転登記にかかる費用は?

所有権移転登記にかかる費用としては、登記のために国に支払う税金の登録免許税のほか、戸籍謄本などの必要書類の取得にかかる費用が挙げられます。また、司法書士に登記手続きを依頼する場合には司法書士報酬を支払う必要があります。

詳しくは「所有権移転登記にかかる費用」をご確認ください。

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