ローン中の家を売る場合の注意点とは？オーバーローンの場合の対処法など解説

急な転勤や家族構成の変化、住み替えなど、家を売る理由はさまざまでしょう。しかし、長いローン返済が必要な住宅の場合、家を売ろうにもローンが残っているというケースも多いものです。

ローン返済中でも家を売却することは可能ですが、ローンの残額や自己資金の条件によっては売却できないことがあります。

本記事では、ローン中の家を売る際の注意点についてわかりやすく解説します。

ローン中の家を売るならまずは現状を把握しよう

ローン返済中の家を売却することは可能です。しかし、売却するにはローンを完済できなければなりません。

家をローンで購入した場合、その家に「抵当権」が設定されています。

抵当権とは、金融機関が設定する担保のことです。抵当権があることで、金融機関は万が一ローンが返済できない状況になった場合でも、家を強制的に売却して売却額でローンを回収できます。

家を売るには、この抵当権を抹消している必要があるのです。

抵当権が付いたままの家では、ローンの返済を怠ると家が差し押さえられてしまうため、ローンを完済し抵当権を抹消しなければ、家の売却ができないようになっています。

家が売れるのかどうかを判断するためにも、まずは次の事項を調べるようにしましょう。

• ローン残債を調べる
• 家がいくらで売れるか調べる
• アンダーローンかオーバーローンかを調べる

ローン残債を調べる

まずやるべきことは、ローンがいくら残っているのかを把握することです。ローン残債は以下の方法で調べられます。

• 返済予定表
• 残高証明書

ローン契約時に、金融機関から返済予定表が発行されます。

返済予定表には、借入内容や返済予定日、元金や利息の内訳など、ローンに関する内容が記載されています。繰り上げ返済時には内容が更新されるため、基本的には新しい返済予定表が発行されます。

また、年末に送付される残高証明書でも、ローン残債を確認できます。

ただし、ローン残高証明書は年末時点のローン残高なので、年の途中の正確な金額は把握できず、あくまで目安となります。

ローンがわかる書類がなく、正確な金額が必要な場合は金融機関に問い合わせることで把握できます。

家がいくらで売れるか調べる

ローンが完済できるかは、ローン残債と売却予定額で目安を立てられます。そのため、家がいくらで売れるかの確認も必要です。不動産会社に査定依頼し、家の売却額の目安を把握しましょう。

基本的には、複数の不動産会社に査定依頼することをおすすめします。

不動産査定は、不動産会社によって価格が異なります。複数の会社に依頼することで、大まかな相場も見えてきて売却額も把握しやすいでしょう。

アンダーローンかオーバーローンかを調べる

ローン残債と家の売却予定額で、アンダーローンかオーバーローンかを判断しましょう。

• アンダーローン：ローン残債＜売却額

• オーバーローン：ローン残債＞売却額

家の売却額でローンを完済できる場合をアンダーローン、家を売却してもローンが残る状態をオーバーローンといいます。

例えば、ローン残高が1,500万円あり、2,000万円で家を売れる場合はアンダーローン、反対に、1,000万円でしか売れない場合はオーバーローンとなります。

アンダーローンとオーバーローンではこのあとに取るべき対応が異なるため、正確に把握しましょう。

それぞれの場合の対応を、以下で詳しく紹介します。

アンダーローンの場合

家の売却額でローンを完済できる場合は、家の売却を進めて問題ありません。売却額でローンを完済することで抵当権を抹消でき、売却も可能です。

ただし、売却時には仲介業者への支払いなどの諸経費がかかる点には注意が必要です。ローンの返済に加えて諸経費も賄える額で売却できれば問題ありませんが、ローン残債ギリギリの額で売却となった場合は諸経費に充てる費用を別途用意しなければなりません。

物件の決済、ローン完済、抹消手続きは同時に行うため、必要書類には不備がないように念入りに準備しましょう。

また、家の売却で利益が出た場合は、利益に対して課税される可能性があります。家の売却価格から購入費用、売却にかかった経費を差し引いた利益は「譲渡所得」となり、譲渡所得税の対象です。

売却した物件をマイホームとして利用していた場合は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を適用できますが、それ以外のケースでは課税金額にも留意しましょう。

売却で得た利益は確定申告が必要となり、計算や控除の適用可否などの判断が必要なため、税理士に相談すると良いでしょう。

オーバーローンの場合

売却額でローンを完済できない場合、抵当権が抹消できないため基本的には売却できません。しかし、売却を可能にする手段もいくつかあります。

オーバーローンで家を売却するには、次の方法を検討すると良いでしょう。

• 差額を手持ちの資金で完済する
• 住み替えローンを利用する
• 任意売却する

差額を手持ちの資金で完済する

売却額だけでローンを完済できなくても、手持ちの資金で完済できれば問題なく売却を進められます。

ただし、売却には仲介手数料などの経費も発生し、新しい住居獲得のための資金も必要です。そのため、自身の資産状況をふまえて慎重に判断することが大切です。

また、査定額と実際の売却額が異なるケースもあります。

査定額は、あくまで不動産会社が判断した「一定期間内で売れる金額」であって、実際に売却した金額ではありません。最終的な売却額は売主と買主の合意で決まります。

買主によっては、値下げ交渉を持ちかけてくることもあるでしょう。売却がなかなか決まらなければ、売却希望額を下げる必要もあります。

査定額がローン完済の必要額ギリギリの場合、売却してみるとオーバーローンという可能性もあるため注意しなければなりません。

住み替えローンを利用する

ローン残債を手持ちの資金で完済できない場合に取れる対応として、住み替えローンを利用する方法があります。

住み替えローンとは、新しい住居のローンに既存のローン残債を上乗せして借入れるローンです。住み替えローンを利用することで、ローン残債を完済できます。

ただし、住み替えローンは担保（新しい住居）の価値以上の借り入れをするため、ローン審査が厳しいという特徴があります。

また、金利も高い傾向があるため毎月の返済が厳しくなる可能性が高く、返済計画は慎重に立てることが大切です。

任意売却する

ローンの完済ができず住み替えローンも利用できない場合で、どうしても売却しなければならないのであれば、「任意売却」を検討する必要があります。

任意売却とは、金融機関の許可を得たうえで売却を進める方法です。一般的には、ローン返済が難しくなり家を手放す場合などに、「競売」を避けるために取られる手段です。

任意売却であれば市場価格で売却でき、金融機関の許可を得られれば売却相手の選択や引っ越し費用の捻出もできます。

競売の場合、市場価格の7割程度での売却となり、売却相手も選択できないなど厳しい条件での売却となるのに比べ、比較的柔軟な対応ができるといえるでしょう。

ただし、任意売却でもローン完済できない場合は、分割などで返済していく必要はあります。基本的には、ローン返済が難しいなど、どうしても売却しなければならない場合にとる、最終手段ともいえます。

売却しなければならない理由がないのであれば、ローンを返済しながら貯蓄して、売却できるまで待つことをおすすめします。

ローン中の家を売るならまずは現状を把握しよう

ローン中の家を売る方法をお伝えしました。

ローン中の家でも売却は可能ですが、売却価格でローンを完済できるかできないかが大きな判断ポイントとなります。

そのため、売却を検討する際には、まず「ローン残債」「売却額」の現状を把握することが大切です。

売却額でもローンが完済できないオーバーローンの場合は、売却できないケースがあるため注意しましょう。また、アンダーローンであっても、査定額と実際の売却額には差が出る可能性があるので気をつけなければなりません。

本記事を参考に、ローン中の家を売る方法を理解し、まずは家の現状を把握したうえで売却するかを検討してみてはいかがでしょうか。

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