耐 水害 住宅
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水害に強い家の条件とは? 多発・激甚化する台風や豪雨に備えるには

執筆者プロフィール

高山みさと
インテリアコーディネーター

CADオペレーター・大手住宅設備メーカー勤務を経て、住宅ライターとして開業。インテリアコーディネーター資格保有。元キッチンスペシャリスト。家づくりやリフォームにおける難しい知識を分かりやすく伝えている。プライベートでは築20年の戸建て住まい。リフォームやDIYで家づくりを楽しんでいる。

ざっくり要約!

  • 水害は河川の近くで起きやすいと考えられてきたが、下水道の排水能力を上回る降雨による「内水氾濫」が急増している
  • 水害に強い「耐水害住宅」には、土地や基礎を高く造成することや排水機能が求められる。既存住宅では、止水板の設置や開口部のリフォームも有効

近年、台風や線状降水帯による水害が全国各地で多発し、その規模も激甚化しています。被害は河川の近くとは限らず、住宅が密集する都市部でも多く確認され、水害は誰にとっても大きな脅威となっています。

この記事では、水害に強い家や立地について解説。住まい選びにおける対策法や今のお住まいにできる対策法までご紹介します。

水害に強い立地の条件とは?

水害とは、洪水や高潮、集中豪雨などによって引き起こされる、冠水や浸水被害を指します。一般的には、河川の近くで起きやすいと考えられてきましたが、近年急増しているのがゲリラ豪雨や線状降水帯によって引き起こされる「内水氾濫」です。

海・川から一定の距離がある

水害といえば、河川の氾濫によるものをイメージする人が多いでしょう。これを「外水氾濫」といいます。平成20~29年の10年間の水害統計によると、外水氾濫による全国の被害額は約1.1兆円にのぼります。

やはり、水害の被害を免れるには、海や川から一定の距離があることが望ましいでしょう。

外水氾濫 被害額
出典:国土交通省「近年の降雨及び内水被害の状況、下水道整備の現状について」

近くに水辺がなくても安心できない

近くに海や川がないからといって安心できるとは限りません。水辺のない場所でも、下水道の排水能力を上回る降雨があった場合には浸水の可能性があります。それが「内水氾濫」と呼ばれるものです。

平成20~29年の10年間の水害統計によると、全国の浸水棟数は外水氾濫よりも、内水氾濫のほうが多く、全体の約7割(約22万棟)を占めています。

被害額では、全国で見ると外水氾濫のほうが多いものの、東京都に限っては内水氾濫のほうが多く、約7割を占める結果になっています。

内水氾濫 被害額
出典:国土交通省「近年の降雨及び内水被害の状況、下水道整備の現状について」

ハザードマップでリスクを確認しよう

ハザードマップとは、災害が発生した際に起こり得る被害を予測した地図のことです。地震や土砂災害を始め、津波・洪水・内水など、水害の被害予測も見ることができます。

ハザードマップで全ての被害を予測することはできませんが、水害リスクがどの程度あるのかを知る手掛かりになります。ご自宅の災害リスクをぜひ一度確認しておきましょう。

・国土交通省・国土地理院「ハザードマップポータルサイト
・「ハザードマップ」に関する記事はこちら
ハザードマップの見方を解説!種類や入手方法も確認して洪水や地震に備えよう

水害に強い家とは?

水害に強い家は、立地はもちろんのこと、建物の構造や設備を工夫する必要があります。

かさ上げした土地・高床

かさ上げ(盛り土)した土地は、本来の地表面より基礎を高く造れるので、水害の影響を受けにくくすることが可能です。しかし、地面に土を盛って造成するので、地盤が弱い可能性も否定できず、適切な処理がされていることが重要なポイントになります。

高床は、住宅の基礎部分を高くする方法です。駐車スペースを造るかはケースバイケースですが、生活空間が底上げされるので、水害に強い建築様式といえます。

地下室がない

地下室は水害時に浸水しやすく、一度浸水すると排水に時間と労力を要します。水害リスクのある立地においては、地下室は慎重に検討すべきでしょう。

マンションにおいても、地下に駐車場や受変電設備があるケースも見られます。地下設備がある物件は、水害リスクを確認しておいたほうが安心です。

電気設備が2階以上にある

建物が浸水すると、インフラへの影響も避けられません。中でも、二次災害を招く可能性がある電気設備がどこに配置されているのかは重要です。

戸建ての場合は、1階と2階で分電盤を分けておくことで、浸水が起きても2階の電力を確保できるようになります。1階はガレージとして、生活空間を2階以上にするのも有効な方法です。

マンションでは、地下や1階に電気室がある物件も見られますが、受変電設備といった重要な設備は2階以上にあるほうが望ましいでしょう。また、止水扉や止水板などの対策が施されていると安心です。

外構が強固

家への浸水を防ぐには、塀や門扉といった外構まわりの対策を強化し、水をせき止めることも重要です。

例えば、塀はハザードマップの洪水や内水の想定水位を超える高さがあると良いでしょう。開閉する門扉やガレージの入り口には、止水板が設置されていると、浸水を防ぐ効果を期待できます。

ピロティ構造

1階が柱で構成されている建物を「ピロティ構造」と呼びます。マンションやビルに多く見られ、1階は鉄筋コンクリート造になっていることが特徴です。

ピロティ構造は、壁がないことで水のエネルギーがダイレクトに伝わりにくく、水害に強いとされています。ただし、壁がない分構造的に弱く、地震には弱い場合もあるので耐震対策を万全にする必要があります。

・「ピロティ構造」に関する記事はこちら
ピロティとは?住宅に取り入れるメリットや注意点を解説

排水機能が高い

家選びにおいて、排水機能を意識することは多くありませんが、耐水害住宅としては重要な機能といえます。

雨水の経路となる雨樋は、適切な修繕はもちろんのこと、落ち葉や苔を取り除くメンテナンスが必要です。

また、雨水が排水溝へと流れる勾配が確保されていることもポイントになります。特に、中庭がある家は雨水がたまりやすく、湿気やカビを防ぐためにも入念な排水計画が求められます。

住まい選びでは災害からの「回復力」にも着目しよう

近年、災害が頻発化・激甚化していることを背景に、住まいにも災害対応力が求められるようになりました。災害が起きても速やかに復旧し、在宅避難に対応できることがこれからの住まいには求められます。

断熱性能

断熱性能が高い住宅は、夏は外の熱気が伝わりにくく、冬は冷気が入りにくいというメリットがあります。停電で冷暖房が機能しなくても、一定の室温を維持できれば、自宅で過ごすことができます。

また、平時においても快適で過ごしやすく、気温の起伏が少ないことから、ヒートショック症候群を防ぐ効果も期待できます。

発電・蓄電設備

災害後も自宅で生活を継続するには「電力」が欠かせません。太陽光発電や蓄電池といった設備があれば、停電時にも最低限の家電を稼働することができます。

また、電力があれば家電だけでなく、スマートフォンの充電も可能です。通信手段を確保できれば、情報収集や大切な人との連絡が取れるようになります。

収納力

災害後の生活に備えるには、水や食料、日用品などの備蓄が不可欠です。防災備蓄は、最低でも家族全員の3日分、できれば1週間分を用意することが推奨されています。

防災備蓄は水や食料以外にも、非常用トイレや懐中電灯、カセットコンロ、電池など多岐に渡るため、これらを一括管理できる収納場所も求められます。

住まい選び以外にできる水害対策

住まい選び以外 水害 対策

住まい選びからの水害対策をご紹介してきましたが、今のお住まいに水害対策をすることも可能です。今からできる住まいの水害対策をご紹介します。

火災保険の水災補償をつける

火災保険に「水災」の補償をつけることで、洪水や高潮による被害が発生した際に、保険金を受けることができます。建物だけでなく、家財にも補償をつけることが可能です。

保険契約によって違いはありますが、一般的には以下のような場合は保険金支払いの対象になります。

  • 建物・家財の保険価額に対して、30%以上の損害が生じた場合
  • 床上浸水、または地盤面から45cmを超える浸水が生じた場合

また、地震による津波、建物老朽化による雨漏りなどは水災補償の対象外です。地震に備えるには、地震保険に加入する必要があります。

開口部などのリフォーム

水は、隙間があれば侵入するため、開口部の気密性を高めることが水害対策になります。

例えば、窓やドアを気密性の高い製品にリフォームしたり、門扉やガレージに止水板を設置したりすることで、建物内への浸水リスクを低減することができます。

マンションは防水設備や防災マニュアルもチェック

災害時にもマンションで生活を継続するには、電気・水道・通信などのライフラインを維持できることが重要です。ライフラインを守るための防災設備が整っているか確認しましょう。

具体的には、電気室やポンプ室への浸水を防ぐ止水扉や止水板の設置、電線貫通部の止水措置などが挙げられます。また、断水・停電時の対応はマンションによって異なるので、事前に防災マニュアルを確認しておくことも重要です。

まとめ

近年の気候変動により、台風や線状降水帯による水害は、いつ、どこで起きてもおかしくはありません。

水害に強い立地や家を選ぶためには、ハザードマップで地域の浸水リスクを確認することが重要です。加えて、建物の構造や排水機能に目を向けることも必要でしょう。

また、どのような住まいにおいても、災害時に在宅避難できる体制を整えておくことが今後は望まれます。今一度、自宅の防災対策を見直してみてはいかがでしょうか。

この記事のポイント

水害に強い立地というのはどういう立地ですか?

水害とは、洪水や高潮、集中豪雨などによって引き起こされる、冠水や浸水被害を指します。水害の被害を免れるには、海や川から一定の距離があることが望ましいでしょう。

詳しくは「水害に強い立地の条件とは?」をご覧ください。

水害に強い家とはどのような家でしょうか?

水害に強い家は、立地はもちろんのこと、建物の構造や設備を工夫する必要があります。

詳しくは「水害に強い家とは?」をご覧ください。

住まい選び以外の水害対策は何がありますか?

住まい選びからの水害対策をご紹介してきましたが、今のお住まいに水害対策をすることも可能です。

詳しくは「住まい選び以外にできる水害対策」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

災害対策の第一歩は、お住まいの地域の災害リスクを知ることから始まります。ハザードマップポータルサイトでは、水害だけでなく、土砂災害や津波のリスクを知ることも可能です。
また、独自のハザードマップを公開している自治体も多くあるので、お住まいの自治体のWEBサイトでより詳細な情報を得ておきましょう。リアルタイムの災害情報は、気象庁の「キキクル」で知ることができます。こちらもご活用ください。

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