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マンションを売却して住み替える際の費用や損しない手順を徹底解説!

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • マンションを売却して住み替える場合、築年数による売りどきの正解はない
  • マンションを売却して住み替える方法には「売り先行」と「買い先行」がある

マイホームの売却では、単純に売却だけで終わることは少なく、購入も同時に行う住み替え(買換え)となることが多いです。

住み替えは売却と購入を同時並行で行わなければいけないことから、手間が多く難易度も高いといえます。住み替えに成功するには、どのような手順で進めていけば良いのでしょうか。

この記事ではマンション売却の住み替えで損をしないためのコツや具体的な手順などを解説します。

マンション売却時の住み替えで損しないためには?

マンション売却時の住み替えで損しないために実施することを解説します。

住み替えにかかる諸費用の準備

まずは住み替えにかかる諸費用をあらかじめ準備しておきます。住み替えにかかる主な諸費用としては、以下が挙げられます(各種税金については2023年2月時点で適用できる軽減措置を前提とした数値を採用しています)。

【住み替えに要する費用】

売買費目費用相場
売却仲介手数料売却 仲介手数料 売買代金が400万円超なら「(売買代金×3%)+6万円」
印紙税金額が1,000万円超5,000万円以下なら売買契約書に1万円
登録免許税抵当権抹の登録免許税
不動産1個につき1,000円、土地と建物で2,000円となることが多い
司法書士手数料抵当権抹消のための司法書士手数料
1.5~2.5万円程度
一括返済手数料窓口申し込みなら3万円程度
税金譲渡所得が発生した場合に生じる
売却した年の1月1日において所有期間が5年超なら税率は譲渡所得に対して20.315%
引っ越し代距離や人数、繁忙期か否かによる
500km未満の移動で家族3人なら通常期は15万円~20万円程度
購入仲介手数料中古物件を購入するときに発生
計算方法は売却と同じ
印紙税金額が1,000万円超5,000万円以下なら売買契約書に1万円、住宅ローンの契約書に2万円
登録免許税所有権移転登記で軽減措置の適用要件を満たしている場合
土地:固定資産税評価額×1.5%
建物:固定資産税評価額×0.3%
抵当権:債権額×0.1%
司法書士手数料所有権移転登記と抵当権設定登記を合わせて10万円前後
不動産取得税軽減措置が適用されると発生しないことも多い
火災保険料マンションなら5年契約で3.5~4.5万円程度
住宅ローン事務手数料「5~10万円」程度または「借入額の2.2%」
住宅ローン保証料「60~120万円程度」または「金利に0.2%上乗せ」

売却では税金は発生しないことも多いため、税金を考慮しない場合、売却の諸費用は売却代金の概ね4%弱となります。

購入の諸費用は新築マンションなら物件価格の4%程度、中古マンションなら物件価格の7~8%程度です。

借り過ぎ回避のためローン残高を把握

購入物件で借り過ぎを回避するには、売却物件で得られる手取りを購入物件の頭金に回すことが適切です。
売却物件で得られる手取りを想定するには、まずは売却物件のローン残高を把握することが必要となります。

住み替え先マンションの管理費を把握

住み替え先のマンションでは、管理費および修繕積立金が発生します。新しい住宅ローンに加え、管理費および修繕積立金も合わせて無理なく支払っていけるかを検証することも必要です。

マンションを売却して住み替えるタイミングは?

マンションを売却して住み替えるタイミングについて解説します。

一般的に5年超~10年以内

一部では、築5年超~10年以内が住み替え時期と考えられているケースもあるようです。住宅ローンを組んでいなければ、このような考え方もあるでしょう。

しかしながら、住宅ローンの返済は元利均等返済が一般的であるため、短期間で売ると元本の返済がほとんど進んでいないことから手取りが少なくなってしまうこともあります。 そのため、例えば築20~25年になって売っても、その段階では住宅ローンの返済がかなり進んでいることから、築5~10年で売るときよりも手取りが多くなることはあります。

築年数による売りどきの判断に、絶対的な正解はありません。それなりに売りやすく、かつ住宅ローンの返済が十分に進んでいる築20~25年あたりが売りどきという考えもあります。

築年数によるマンション価格の変動時期

首都圏における中古マンションの築年数別の平均価格(成約価格)は、下表の通りです。価格が変動するタイミングに合わせて売却を検討するという方法もあります。

築年数価格(万円)平米単価(万円/平米)
築0~5年6,13694.63
築6~10年5,53882.83
築11~15年4,88669.41
築16~20年4,68564.35
築21~25年3,74654.10
築26~30年2,27537.15
築31年~2,04035.61

引用:築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2021年)|公益財団法人 東日本不動産流通機構

修繕積立金が増えるタイミング

修繕積立金の増額は、マンションの理事会で協議されるため、理事会の議事録を見ていると上昇する気配がわかります。
修繕積立金が増えるからといって、必ずしも売る必要はありませんが、一つのきっかけにはなるでしょう。

マンションを売却して住み替える方法とは?

マンションを売却して住み替える具体的な方法や手順について解説します。

「売り先行」と「買い先行」の違い

「売り先行」とは、売却を先に行い、購入を後に行う住み替え方法です。住宅ローンが残っていて住み替えを行うには、基本的に売り先行を選択します。

売り先行のメリットは「住宅ローンが残っている人でも住み替えができる」「資金繰りが楽になる」等です。
デメリットとしては「仮住まいが発生することが多い」「住みながらの売却のため売りにくい」等の点が挙げられます。

「買い先行」とは、購入を先に行い、売却を後に行う住み替え方法です。住宅ローンが完済している場合におすすめの方法となります。

買い先行のメリットは「引っ越しが1回で済む」「空き家の状態で売りやすい」等です。
一方、デメリットは「維持費が売却物件と購入物件で二重に発生する」「資金的な余裕がないと選択しにくい」等があります。

売り先行の場合の手順

売り先行と聞くと、先行して売却を行うイメージがありますが、実際には売却と購入を同時並行で進めます。基本的には同時に進めていくものの、購入物件の引渡より先に売却物件の引渡を行うことが特徴です。

売り先行の売却は
「価格査定」→「媒介契約の締結」→「販売活動の開始」→「売買契約」→「引っ越し」→「引渡」
という順番で行います。

「販売活動の開始」から「売買契約」までの期間は、一般的に3カ月程度です。この間に、購入に際して「物件情報の収集」「物件見学」「売買契約の締結」を行っていきます。

購入は
「売買契約の締結」→「住宅ローンの本審査」→「引渡」→「引っ越し」
という流れです。
売却物件と購入物件の引っ越しのタイミングが合わない場合には、いったん仮住まいに引っ越す必要があり、結果として引っ越しを2回行うことになります。

買い先行の場合の手順

買い先行は、購入と売却の手順を切り離して行うことができる点が特徴です。
買い先行の購入は
「物件情報の収集」→「物件見学」→「売買契約の締結」→「住宅ローンの本審査」→「引渡」→「引っ越し」
の流れで進めていきます。
売却は新居に引っ越した後に着手しても構いません。

売却の流れは
「価格査定」→「媒介契約の締結」→「販売活動の開始」→「売買契約」→「引渡」
です。
買い先行では引っ越しが1回で済みます。空き家にしてから売るため、購入希望者に家の中を見せる内覧を不動産会社に任せることができます。
なお、買い先行の場合、売却物件の資金を利用できないため、購入物件の頭金や引っ越し費用等に充てる目的の資金を別途確保する必要がある点に注意しましょう。

マンション売却時の住み替えに使える税金控除

売却時の住み替えに使える税金控除について解説します。

マイホームが居住用財産と認められるには?

マイホームの売却では、極力税金が発生しないようにいくつかの特例が用意されています。税金の特例を利用できるマイホームは「居住用財産」と呼ばれ、居住用財産として認められるには、一定の要件を満たすことが必要です。

マンションが居住用財産と認められるには、主に以下の2つの要件のうち、いずれかに該当する必要があります。

【居住用財産と認められる要件】

  • 売主が現に居住しているマンションであること
  • 売主が転居してから3年後の12月31日までに売るマンションであること(その間に賃貸に出していても構いません)

なお、上記の条件を満たしていても、買主が配偶者等の特定の親族や同族会社である場合は居住用財産の特例は利用できないことになっています。また、特例を利用できるのは、3年に1度だけであるため、過去3年のうちに特例を使っている場合には適用外です。

譲渡所得について

マンション売却では譲渡所得がマイナス(譲渡損失)となることも多いです。譲渡損失が発生する場合には、税金は生じません。ただし、譲渡所得が発生したときには所得税および住民税、復興特別所得税の税金を支払う必要があります。

譲渡所得とは、以下の計算式で求められる利益のことです。

譲渡所得=譲渡価額-取得費-譲渡費用

譲渡所得がプラスの場合、一定の要件を満たせば以下の節税特例を利用できます。

【節税特例】

  • 3,000万円特別控除
  • 所有期間10年超の軽減税率の特例
  • 特定の居住用財産の買換え特例

例えば「3,000万円特別控除」という特例を使えば、以下のように譲渡所得から3,000万円を控除できます。

譲渡所得=譲渡価額-取得費-譲渡費用-3,000万円

3,000万円特別控除を適用した結果、譲渡所得がゼロ円(マイナスもゼロ円とみなされます)となった場合には、税金は発生しません。

ただし、上記の3つの節税特例はいずれも住宅ローン控除とは同時に利用できません。住み替えでは、購入物件で住宅ローン控除を利用することもよくありますが、購入物件で住宅ローン控除を利用する場合には、売却物件で節税特例を利用できないということです。

「購入物件の住宅ローン控除」と「売却物件の節税特例」は、いずれか一方のうち節税効果の高い方を選択することになります。

出典:
No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁
No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例|国税庁
No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例|国税庁

その他のお得な特例について

住み替えでは、譲渡損失が発生した場合、一定の要件を満たすと税金の還付を受けられる特例を利用できます。「買換えにかかる譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」と呼ばれるものです。

例えば、給与所得が800万円の人が、譲渡所得で▲1,000万円の譲渡損失を出した場合、損益通算と呼ばれる手続きによって、その年の所得を▲200万円とみなすことができます。

この例では、給与所得者は会社で所得が800万円であることを前提に源泉徴収がなされている状態です。しかしながら、所得は▲200万円であることから、会社が源泉徴収していた税金は払い過ぎていたことになります。そのため、会社が源泉徴収で払い過ぎていた税金を取り戻せるというのがこの特例の仕組みです。

買換えにかかる譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例を利用するには、売却物件で「売却年の1月1日時点において所有期間が5年超」といった要件を満たす必要があります。

また、購入物件でも「面積が50平米以上であること」や「10年以上の住宅ローンを組むことが必要」等の要件があります。特例には細かい要件が設定されているので、利用する前は十分に確認しておきましょう。

出典:No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例) |国税庁

この記事のポイント

マンション売却時の住み替えで損しないためにはどうすればいいですか?

住み替えにかかる諸費用や売却物件のローン残高を把握しておくことが重要です。

併せて、新しい住宅ローンに加え、管理費および修繕積立金を無理なく支払っていけるかを確認しておきましょう。

詳しくは「マンション売却時の住み替えで損しないためには?」をご覧ください。

マンション売却時の住み替えに使える税金控除はありますか?

マンション売却では、譲渡所得が発生したときに所得税および住民税、復興特別所得税の税金が生じます。

この場合、一定の要件を満たせば3,000万円特別控除、所有期間10年超の軽減税率の特例、特定の居住用財産の買換え特例といった節税特例を利用できます。

詳しくは「マンション売却時の住み替えに使える税金控除」をご覧ください。

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