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増築の費用はどのくらい?確認申請やメリット・デメリットも解説

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • 増築をすると床面積が増えるため建ぺい率や容積率に注意が必要
  • 増築で使える補助金は基本的にはない

増築とは今の家の床面積を増やす工事のことで、今の家の不満な点を解消できるというメリットがあります。

一方で、増築といわれると「違法建築物の疑い」を持ってしまう不動産会社の営業担当者も多いです。そのため不動産の売買では、増築の事実を知ると不動産会社の営業担当者は慌てて面積を確認します。

これから増築をするのであれば、「本当に増築をできるのか?」、または「増築したことで違法状態にならないか?」ということをしっかり確認してから行うことが大切です。
この記事では「増築」について解説します。

増築とは?

最初に増築の概要について解説します。

既存の住宅に追加して床面積を増やすこと

増築とは、「既存の建物と一体になるように部屋などを増やすこと」です。
建築基準法では、敷地内に別棟を新しく建てることも増築に該当します。
いずれも「床面積が増える」という点がポイントです。

増築は、例えば広い敷地に家が建っている農家の住宅等でよく見かけます。
一方で、区画整然と開発された戸建て住宅街ではあまり見られません。
狭い敷地に建っている家では、増築は行われるケースがほとんどないです。

増築があまり行われていないのは、「そもそも増築ができないケースが多いから」というのが理由です。

建物の床面積は、建ぺい率と容積率という規定で建築できる面積の上限が決まっています。

建ぺい率:敷地面積に対する建築面積の割合
建築面積:大まかにいうと建物を上から見たときの面積
容積率:敷地面積に対する延床面積の割合
延床面積:各階の合計床面積

敷地面積が100平米で建ぺい率が50%、容積率が100%で指定されている場合、建築面積は50平米、延床面積は100平米までしか建てられないということです。

建ぺい率と容積率は土地の面積に対する割合であるため、例えば広い敷地に建っている農家住宅のような家の場合、建ぺい率や容積率を余らした状態で家が建っていることがよくあります。

つまり建ぺい率や容積率が余っている場合、まだ床面積を増やせる余地があるため、増築は可能ということです。

一方で、分譲された戸建て住宅街の家や、狭小地の家等では、新築時点で建ぺい率や容積率を消化しきっている物件が多いといえます。

建ぺい率や容積率が余っていない物件では、床面積を増やせないため、そもそも増築はできません。

冒頭で増築物件は「違法建築物の疑い」が持たれると記載しましたが、たまに増築によって建ぺい率や容積率がオーバーし、違法状態となっている物件を見かけます。

増築では、物件によっては元々合法的な建物であったものを、わざわざ違法建築物にしてしまうこともあるのです。

よって増築をする際は、まずは建ぺい率と容積率が余っているかどうかを確認する必要があります。
また、建ぺい率と容積率が余っている場合には、何平米までなら増築できるかをあわせて確認することも必要です。

改築との違い

改築とは一般的に「壊して作り直すこと」です。
建築基準法では、用途・構造・規模のいずれかに著しい変更があると改築とは認められないことになっています。
例えば、住宅を店舗に変えることは用途変更に該当するため、改築ではないということです。

増築と改築の大きな違いは、増築は床面積が増えることであるのに対し、改築は床面積が増えないという点になります。

改築は床面積が増えないことから、基本的に建ぺい率や容積率がオーバーすることはないということです。

建ぺい率や容積率が余っていない物件の場合、増築はできませんが、改築ならできるということになります。

なお、同様類似の言葉にリフォームやリノベーションがあります。

リフォームは日本語だと改装を指します。
内装や外装、設備等を刷新し、「新築と同等」の状態に戻すことをリフォームと呼び、基本的に床面積が増えません。

リノベーションとは、日本語だと大規模改修と呼びます。
内装や外装、設備等に付加価値を加え、「新築以上の価値」に改修していくことで、場合によっては増築を伴うこともあります。

また、大規模改修にはコンバージョンという言葉もあります。
リノベーションは住宅から住宅といった用途変更を伴わない大規模改修であるのに対し、コンバージョンは倉庫から店舗といった用途変更を伴う大規模改修である点が違いです。

増築の費用はどのくらい?

増築の費用について解説します。

相場は工事内容にもよるが50〜400万円

増築工事は、何を行うかによってもかなり異なります。
既存壁を壊して部屋を接続したり、水回りを設置したりする場合は割高となります。

部屋を増やす場合

部屋の増築は、1坪当たり100~130万円程度です。
6畳の部屋を増築する場合は、300~400万円程度かかります。

バルコニーやベランダを追加する場合

バルコニーやベランダの追加は、50~80万円程度です。
1階に増設する場合は補強工事が不要なため、20~40万円程度となります。

水回りを追加する場合

水まわりの追加は、200~400万円程度です。
床下の給排水管工事も必要となるため、単純に部屋を作るよりも割高となります。

増築のメリット・デメリット

増築のメリットとデメリットについて解説します。

メリットは既存建物の不満な点を解消できること

増築の最も大きなメリットは、既存建物の不満な点を解消できる点です。
部屋が狭い、収納が不足しているといった今の家に対する不満を、面積を広げることで解決できます。

メリットは建て替えよりコストを抑えられること

増築は、建て替えよりはコストを抑えられる点がメリットです。
今の生活を続けながら、住み心地の良い家に変えることができます。

ただし、増築は新築よりも総額は安いですが、単価は割高です。
増築では、例えば壁などを「いったん壊す」といった作業も発生します。
また、作業動線も既存建物に制約されるため、工事も行いにくく、工事期間も長いです。
よって、工事費の単価は新築よりも割高となります。

デメリットは固定資産税が増加すること

増築は建物の床面積が増えるため、建物の固定資産税が上がります。
固定資産税は、毎年1月1日時点の航空写真を撮って判定されるため、未登記であっても増築がなされていることは課税当局にわかります。

増築部分を登記しない場合、建物の登記簿の面積と固定資産税納税通知書の面積が異なるようになります。
登記をしなければ、固定資産税がかからないというわけではないのです。

デメリットは違法建築物になると価値が著しく下がること

増築で最も注意しなければならない点が、面積オーバーとなって違法建築物となるということです。
違法建築物になると、仮に将来売却しようとしたときに売却しにくくなります。

よくある事例が、ベランダや屋上にサンルームを付けたことで容積率オーバーとなっているケースです。
サンルームは透明か否かに関わらず、屋根と壁に囲まれた空間であることから、基本的に床面積に算入されます。

銀行の中には違法建築物に融資をしない銀行も多いため、買主が住宅ローンを受けられずに購入できなくなるという事態も発生する可能性があります。

価値を上げるつもりで増築したものが、実は価値を大きく落としてしまうこともあるのです。

増築の確認申請とは?

建築確認申請とは、着工前に行う図面審査のことです。
図面が合法的なものとして認識されると、建築確認済証が下り、工事に着工することができます。

工事が竣工すると、図面通りに工事が行われたかの検査が行われます。
工事が問題なく行われていると、検査済証をもらうことができます。

確認申請と確認済証、検査済証の3つはワンセットです。
確認申請は、合法的な建物を建てるための手続きといえます。

床面積の増加が10㎡(約3坪)超の場合に必要な申請

増築の場合、原則として増築面積が10平米超の場合は建築確認申請が必要です。
例外として、防火地域と準防火地域内では、面積に関わらず確認申請が必要となります。

防火地域や準防火地域は、ともに市街地の防火対策のために指定される地域のことであり、防火地域の方がより厳しい規制が課されている地域です。

確認申請とは合法的な建物を建てるための手続きです。
そのため、増築面積が10平米超の場合、合法性を確認するプロセスが入るため、基本的に面積オーバーとなる心配はありません。

一方で、増築面積が10平米以内の場合、建築確認申請が不要となることから、合法性を確認するプロセスがなくなります。
例えば10平米以内のサンルームは確認申請が不要で増築できることから、知らない間に面積オーバーを犯してしまうリスクがあります。
確認申請が不要な規模の増築は、面積オーバーしないことを意識することが必要です。

増築の確認申請の手順

確認申請は、基本的に建築士が代理で行ってくれます。
必要書類である確認申請書や委任状、図面等も建築士が用意してくれます。
確認申請の建築士への依頼費用は15~25万円程度(設計料に含まれている場合もあり)です。
自治体に支払う費用は検査を含めて小規模なものなら1.5~2.0万円程度です。

増築に使える補助金・減税制度

増築に使える補助金・減税制度について解説します。

補助金

「増築」に利用できる補助金というものは、ほとんどありません。
最近では八王子市に「ワークスペース設置改修工事」の補助金というものがありましたが、2022年10月末で受付期限は既に終了しています。

ほとんどの補助金は、増築ではなく「リフォーム」の補助金です。
増築部分がリフォーム補助金の要件を満たしていれば、補助金を受けられる可能性はあります。

リフォームの補助金には「断熱リフォーム支援事業」や「長期優良住宅化リフォーム推進事業」、「こどもみらい住宅支援事業」等があります。
各補助金は要件や申請方法が異なりますので、各補助金のサイトでご確認ください。

減税制度

増築に関しては、以下の減税制度が利用できる可能性があります。

制度名申請方法
住宅ローン控除増改築等の請負工事契約書の写し、登記事項証明書、住宅ローンの年末残高等証明書を添付して確定申告
住宅の投資型減税増改築等工事証明書、登記事項証明書を添付して確定申告

この記事のポイント

増築とは?改築との違いは?

増築とは、「既存の建物と一体になるように部屋などを増やすこと」を指し、「床面積が増える」という点がポイントです。

一方、改築とは一般的に「壊して作り直すこと」を指します。
増築と改築の大きな違いは、増築は床面積が増えることであるのに対し、改築は床面積が増えない点です。

詳しくは「増築とは?」をご覧ください。

増築することにメリットはある?

増築の最も大きなメリットは、既存建物の不満な点を解消できる点です。
部屋が狭い、収納が不足しているといった今の家に対する不満を、面積を広げることで解決できます。

また、増築は建て替えよりコストを抑えられる点もメリットです。
今の生活を続けながら住み心地の良い家に変えることができます。

詳しくは「増築のメリット・デメリット」をご覧ください。

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