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再建築不可物件は売却が難しい?詳細とメリット・デメリットを解説

執筆者プロフィール

桜木 理恵
資格情報: Webライター、宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、管理業務主任者

大学在学中に宅地建物取引士に合格。新卒で大手不動産会社に入社し、売買仲介営業担当として約8年勤務。結婚・出産を機に大手ハウスメーカーのリフォームアドバイザーに転身し約5年勤務。その他信託銀行にて不動産事務として勤務経験あり。現在は不動産の知識と経験を活かし、フリーランスのWebライターとして活動。不動産や建築にまつわる記事を多数執筆。「宅地建物取引士」「2級ファイナンシャル・プランニング技能士」「管理業務主任者」所持。

不動産物件の中には「再建築不可」という建築に関して制限がある物件が存在します。相場よりかなり価格が安いなどメリットがありますが、購入する場合はデメリットをしっかり理解しておくことが重要です。

この記事ではそもそも再建築不可物件とはどういうもので、どんなメリットやデメリットがあるのか解説します。また再建築を可能にする方法や、有効的な活用方法も紹介しますのでぜひ参考にしてください。

再建築不可物件とは

再建築不可物件とは、文字通り再建築ができない物件です。現在建物が建っていたとしても、解体した後に新しく家を建てることができません。よって通常建物が建っている状態で売りに出ています。

建築基準法には「建築物の敷地は道路に2m以上接しなければならない」というルールがあります。ここでいう道路とは「4m以上の公道」を指します。公道にもかかわらず幅員が4mに満たない道路や、この規定をさらに厳しく6m以上としている地域もありますが、基本的にはこの接道義務を満たしていない場合には再建築不可物件となります。

既存の建物があるのに、建て替えができないというのは不思議に思われるかもしれません。「4m以上の道路(公道)に2m以上接する」ことにより、災害時に緊急車両が救助活動をスムーズに行えるようにするためのルールです。厳しいようにも思いますが、この接道義務はその家に住む人や近隣エリアの安全を考えて作られたものなのです。

ここで注意すべきポイントは、前面道路が4m以上であっても、公道ではない可能性があるということです。アスファルト舗装されていても、私道や通路である場合もあります。道路の種類は市区町村の役所等で確認することができますので、心配な方や興味がある方は一度調査してみるとよいでしょう。

建築基準法 | e-Gov法令検索

再建築不可物件が売れない理由

再建築不可物件を建て替えすることはできませんが、売買することに制限はありません。ここで「売れない」というのは、売却が難しいという意味です。

建て替えができない物件をわざわざ購入したいと考える人は極めて稀なため、買い手がつかない可能性があります。マイホームを建てたいと考える人はまず購入しないでしょう。資産価値を考えても一般的な相場で売却することはできず、条件にもよりますが相場の3割から7割で取引されているケースが多いのが現状です。なかには売主の事情により1割~2割で売りに出ていることもあります。

買い手は建て替えができないため、基本的には既存の建物を利用します。よって建物の状態や敷地の条件によってはさらに売却が難しく、想定した金額で売れない可能性もあります。

再建築不可物件はリフォームできる?

再建築不可物件は建て替えをすることはできませんが、既存の建物を活かしたリフォームやリノベーションは可能です。例えば浴室やキッチンを交換、クロスやフローリングの張り替えは問題なく行うことができます。

しかし確認申請が必要になるような大規模な改修はできませんので注意が必要です。詳しくは後半で解説します。

再建築不可物件のメリット

再建築不可物件は一見のメリットがないように思えますが、いくつかのメリットが考えられます。

価格や税金が安い

再建築不可物件の一番のメリットは価格が安いことです。前述の通り近隣相場の3割程度で購入することができれば、建物が古くてもリフォームに費用を充てることができます。
なかなか手を出せないような地域でも、再建築不可物件であれば格安で購入することができるかもしれません。

また、再建築不可物件が購入時だけでなく、その後の税金面も安く済むというメリットがあります。固定資産税は「課税標準額×1.4%」、都市計画税は「課税標準額×0.3%(23区内)」で算出されますが、そもそも再建築不可物件は不動産としての評価が低いため、課税標準額も安くなります。

その他にも不動産を購入した時に課税される登録免許税や不動産取得税も、不動産の評価額を元に算出するため必然的に安くなります。

出典:固定資産税・都市計画税(土地・家屋)| 東京都主税局

敷地を拡げることにより再建築可能になる

例えば再建築不可物件を所有している場合、隣接する不動産を購入することにより道路と接する部分を広げることができます。その結果接道義務を果たすことになり、再建築が可能になります。

隣接する物件が売りに出ないとそもそもこのメリットは享受できませんが、もし購入することができれば、再建築不可であった不動産の価値を高めることができ、もちろん建て替えも可能になります。

もし再建築不可物件の売却を検討する場合は、隣接する不動産の所有者に話をもちかけると案外早く売却できるかもしれません。

再建築不可物件のデメリット

再建築不可物件は再建築ができないこと以外にも、注意すべき点がいくつかあります。考えられるデメリットについて紹介します。

大規模なリフォームができない

前述の通り簡単なリフォームはできますが、建築確認申請が必要になるような大規模なリフォームはできません。

増改築や主要構造部(壁・柱・床・梁・屋根・階段など)のうち半分以上の範囲を改修する場合には建築確認申請が必要になります。

つまり壁や柱など主要な構造部分を半分以上残せば、建築確認申請は必要ありませんので、再建築不可物件であってもリフォームすることができます。

またキッチンや浴室などは主要な構造部分ではありませんので、水回りのリフォームは問題なく行うことができます。

住宅ローンが組みにくくなる

住宅ローンは不動産を担保に融資をします。再建築不可物件は資産価値が低くいため、基本的には銀行で住宅ローンを組むことは難しいでしょう。

例えばリフォームをする場合はリフォームローンを借りられる可能性があります。他には使用用途を問わないフリーローンや、ノンバンク(カードローン会社)からの融資は住宅ローンに比べて審査が甘い可能性があります。

しかし住宅ローンに比べて金利は高くなり、借入できる金額は低いでしょう。再建築不可物件は現金で購入できる範囲で購入を考えた方が無難かもしれません。

水道管などを工事する際に承諾書が必要になるケースがある

水道やガス管は通常道路に埋設されています。しかし公道に接道していない再建築不可物件の場合、水道管などが他人の敷地や私道に埋設されているケースがあり、その所有者によっては工事の際に承諾料を要求する場合があります。

再建築を可能にする方法はある?

基本的には再建築不可物件は建て替えできません。しかし皆無というわけではありません。ここでは再建築を可能にする方法を紹介します。

隣接地を買い足す

隣接地を買い足して、接道義務を果たすことです。この時大切なのは道路に2m以上接することなので、かならずしも隣接地をすべて購入する必要はありません。例えば2mに50㎝足りないのであれば、その分買い足せば接道義務を果たすことになります。

もちろん隣地の所有者と折り合いがつかなければ成立しません。また測量したうえで、境界を入れます。また後々のことも考えて契約書も交わしたほうがよいでしょう。個人間売買も可能ですが、費用がかかっても不動産会社に仲介を依頼することをお勧めします。

隣接地の購入代金や測量費、仲介手数料などがかかるので、一定の費用がかかると心得ましょう。

道路が4m未満の場合セットバックする

全面道路が公道で、4m未満であることが再建築不可の要因である場合は、セットバックすることによって接道義務を果たすことになり、再建築可能になります。

セットバックとは自分の土地を道路部分として提供し、前面道路を4mにすることです。例えば道路を挟んで向かい側の敷地がセットバックしていない場合は、道路の中心線から2mのところまでセットバックします。

この場合道路に提供した土地は建築面積に参入できませんのでご注意ください。

道路の「位置指定」を申請する

全面道路が私道であり、公道ではないことが再建築不可の要因である場合は、行政に対して位置指定を申請します。
以下のような条件がありますが、位置指定道路として認定された場合には再建築が可能になります。

位置指定道路の認定基準

  1. 申請する道路の両端が他の公道とつながっていること
  2. 道路と直角に交わっている部分を隅切りされていること(角を二等辺三角形状に切られていること)
  3. 砂利敷やアスファルト舗装されていて、道路がぬかるんでいないこと
  4. 道路の勾配が12%以下でなおかつ段差がないこと
  5. 側溝などで排水設備が完備されていること

43条但し書き申請をする

上記の位置指定の条件を満たすことができない場合は、建築審査会に許可を受けることで再建築可能になる場合あります。一定の基準でなく個々に判断されます。

例えば敷地の隣地が公園などになっていて、消防活動が問題なく行えると判断された場合は、その前面道路は但し書き道路となり再建築が可能になります。

同じ道路で過去に但し書き道路として認定され、再建築された事例がある場合は、認定される可能性が高くなります。一度建築指導課へ相談するのも一つの方法です。

再建築不可物件を有効活用する方法

再建築不可であっても立地や条件によっては有効的な活用方法があります。考えられる方法をいくつか紹介します。

貸家にする

実際一番多いのが貸家として貸し出す方法です。格安で購入できれば、家賃にもよりますが高い利回りを見込める可能性があります。しかし建物の維持費や設備の修理代が予想以上にかかる場合もあります。

当初から貸家目的で購入する場合は、建物の状態を確認することが重要です。

駐車場にする

例えば駐車場としての利用です。もちろん入庫できる広さが必要ですが、駐車場の需要があるエリアであれば、それなりの賃料が見込めます。地域性により月極とコインパーキングのどちらかを選択するとよいでしょう。

貸地にする

貸地として貸し出す方法です。その地域にあった貸出方法が考えられますが、商業地や店舗が多い地域であればトランクルームのような用途に需要があるかもしれません。人通りが多い地域であれば、キッチンカーに場所を提供・あっせんする企業へ登録するのも1つの選択肢になります。アイデア次第で貸地として活用することができます。

買い取り業者に売却する

上記のような有効活用ができず個人への売却が難しい場合は、再建築不可物件を得意とする業者に相談するのも1つの方法です。

再建築不可物件を購入するような顧客をかかえている業者や、自社で賃貸物件として保有する業者なども存在します。ご自身で見つけられない場合は不動産会社に相談してみましょう。

この記事のポイント

再建築不可物件とは具体的にどんな物件?

再建築不可物件とは、文字通り再建築ができない物件です。現在建物が建っていたとしても、解体した後に新しく家を建てることができません。

なぜ建てられないのかというと、建築基準法には「建築物の敷地は道路に2m以上接しなければならない」というルールのためです。 ここでいう道路とは「4m以上の公道」を指します。公道にもかかわらず幅員が4mに満たない道路や、この規定をさらに厳しく6m以上としている地域もありますが、基本的にはこの接道義務を満たしていない場合には再建築不可物件となります。

詳しくは「再建築不可物件とは」をご覧ください。

再建築不可物件を購入するメリットはあるの?

再建築不可物件の一番のメリットは価格が安いことです。
また、再建築不可物件が購入時だけでなく、その後の税金面も安く済むというメリットがあります。

詳しくは「再建築不可物件のメリット」をご覧ください。

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