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ペアローンはデメリットが多い?後悔しないために知っておきたいこと

執筆者プロフィール

海老原政子
ファイナンシャル・プランナー/住宅ローンアドバイザー

国内の生命保険会社にて生命保険募集人業務に携わるなかでライフプランの重要性に目覚め、生活者視点を活かしたFP業務を開始。千葉で、家計相談や執筆業務、個人・企業向けマネープランセミナーをおこなう。生命保険見直しや住宅ローンの借り換え、貯蓄ができない家計の体質改善アドバイスなど、わかりやすい情報提供が好評。

ざっくり要約!

  • ペアローンでは、購入物件に対して夫と妻それぞれが契約者として住宅ローンを組み、かつ互いに連帯保証人となり、団体信用生命保険にも夫婦それぞれ加入する
  • 単独ローンより借入可能額が大きくなる一方で、世帯収入が減少した場合、返済が困難になることもある

共働き世帯が住宅購入する場合、選択肢の一つに「ペアローン」があります。ペアローンとは、夫婦または親子がそれぞれで住宅ローンを組み、ローンを返済していくスタイルのことです。今回の記事では、ペアローンと収入合算の違いや、ペアローンのメリット・デメリットなどを解説します。

「ペアローン」と「収入合算」の違い

「当初の予算をオーバーするが、どうしてもこの物件を買いたい!」――夫婦や親子で家を探しているとき、そんなシーンでよく検討されるのが「ペアローン」や「収入合算」です。

ペアローンや収入合算は、一人が単独で住宅ローンを組む場合に比べて、借入可能額を上げることができます。

では、ペアローンと収入合算では何が違うのでしょうか?

簡単にまとめると、購入物件に対して、ペアローンの場合は複数人(二人)が契約者となります。一方、収入合算の場合は契約者が一人です。ここが大きな違いと言えるでしょう。

それぞれで住宅ローンを組む「ペアローン」

前述のとおり、一つの物件を購入するために、複数人がそれぞれ住宅ローンを組むのが「ペアローン」です。ここではわかりやすいように、夫婦でペアローンを組むケースを基に解説します。

ペアローンの場合、購入物件に対して夫と妻それぞれが契約者として住宅ローンを組み、かつ、互いに連帯保証人となり、団体信用生命保険にも夫婦それぞれ加入します。住宅ローン契約が2本の扱いになるので、借入額や金利タイプ、借入期間などは、契約者ごとに変えることが可能です。

たとえば4,500万円の物件の場合、夫婦で半分ずつの額(夫2,250万円、妻2,250万円)を借り入れたり、収入に応じて割合を変え、夫が35年ローンで3,000万円、妻が20年ローンで1,500万円を借り入れたりと、その家庭に適したローンの組み方を検討できます。

親族の収入を合算する「収入合算」

「収入合算」は、住宅ローン審査にあたり、申込者(主契約者)の配偶者や親族などで一定の収入がある人の収入も合算して審査を受けます。

収入合算によるローン契約では、合算者は連帯保証人または連帯債務者となり、債務責任を負うことになります。また、連帯債務型のローンの場合は土地建物の名義を申込者と合算者の共有名義が可能ですが、連帯保証型の場合は単独名義となります。
さらに、収入合算には連帯「保証」型と連帯「債務」型があり、取り扱いに少し差があります。

詳細は省きますが、
「(夫婦で収入合算する場合)『夫婦連生団体信用生命保険(デュエット)』に加入できるか?」
「住宅ローン控除はどうなるのか?」
「合算者の債務責任とはどのようなものか?」
など、しっかり理解をした上で契約を進めるようにしましょう。

ペアローンのメリット

夫婦でペアローンを利用する際のメリットについてみていきましょう。

借入可能額が大きくなる

ペアローンのメリットは、単独ローンより借入可能額が大きくなることです。夫婦の収入が拮抗している世帯であれば、物件の選択肢が大きく拡がります。

住宅ローン控除の節税効果が大きくなる

ペアローンは夫婦それぞれが住宅ローン契約を結びます。そのため所得に応じた借入額にすれば、年末の住宅ローン残高に応じて受けられる「住宅ローン控除」を夫婦でフル活用できます。世帯収入が高い場合、高い節税効果が期待できるでしょう。

返済方法・期間を夫婦でそれぞれ設定できる

先述のとおり、ペアローンは独立した住宅ローン契約なので、借入額や金利タイプ、借入期間に融通が利きます。

将来の育児や介護を見越して、夫婦どちらかの借入額を少なくする、あるいは、借入額を変えずに借入期間を短く設定する、繰り上げ返済も一方のローンを優先させるなど、ライフプランに応じた調整が可能です。

その点では、ペアローンは共働き世帯向きのローンと言えるかもしれません。

ペアローンのデメリット

続いて、ペアローンのデメリットについて考えてみましょう。

夫婦どちらかの退職後に返済が難しくなる可能性がある

ペアローンを組むことは「夫婦それぞれに大きな債務を抱えること」という言い方ができます。債務はいずれ返済すべきものですが、夫婦二馬力の収入を前提としているため、どちらか一方の退職により世帯収入が減少した場合、住宅ローンの返済に充てるお金が少なくなり、返済が困難になることが考えられます。

これは退職だけの話ではありません。夫婦どちらかが失職・転職したことにより年収が下がった場合も似たような状況に陥る可能性があります。

だからこそ、ペアローンを組む前に、夫婦双方が将来の働き方(キャリアプラン)について、真剣に考えることが大切です。

とくに、住宅ローンの完済年齢が夫婦どちらかの定年年齢を超えている場合は要注意です! 定年までに繰り上げ返済をすべきかどうか、退職後はどのようにローンを返済していくのか、二人でしっかり話し合うことをおすすめします。

結婚してすぐにペアローンを組む若夫婦の場合も同様に注意が要ります。今後の世帯年収やライフスタイルの変動幅が大きいため、将来の家族計画や妻や夫の育休の取りやすさ、職場復帰のタイミングや復帰後の働き方などを考え、余裕のないギリギリのローン返済とならないよう十分気を付けてください。

離婚後のローンの取扱いが難しい

ペアローンは、何度もお伝えしたように「夫婦の共同責任で」返済する住宅ローンです。住み替え前にあまり考えたくはないことですが、親子とは違い、夫婦は元々「他人」です。離婚する可能性もゼロではないでしょう。

そうなった場合、単独名義の住宅ローンと比べて、ペアローンの取扱いはなかなか複雑です。

なぜなら、離婚後の不動産について、売却して他の資産と合わせて夫婦それぞれで振り分けするのか、ペアローンをそのまま返済していくのか、あるいは、住み続けるほうが新たな住宅ローン契約を結んで返済していくのかなど、いろいろとやっかいな問題が発生しやすいからです。

また、離婚に伴い住宅ローンを一本化しようとした場合、夫婦の意向に加え金融機関の意向も無視できません。年収要件などで思うとおりに条件変更できないケースがあることも覚えておきましょう。

離婚の際には、お子様の親権や財産分与のことから、生命保険の死亡保険金受取人の変更、住民票移動など細々したことまで、解決すべき問題が数多くあります。

なかでも住居は生活の場であるため、離婚によって夫婦それぞれ状況が一変します。夫婦が円満に離婚を進めるためにも、離婚後のペアローンの取扱いを早めに決めることが重要です。

片方が死亡すると負担が大きくなることも

ペアローンのもう一つのデメリットは、夫婦のどちらか片方が死亡した場合に、残された配偶者の返済負担が大きくなることです。

夫婦がそれぞれの住宅ローン債務者となるため、夫婦のどちらかが死亡した場合、ペアローン全体の債務が団体信用生命保険により弁済されることは一般的にありません。死亡した方の残債が弁済されるにとどまります。

遺族は引き続き、自身の住宅ローン返済をしながら暮らしを切り盛りすることになるため、夫婦二馬力での生活からすると家計にゆとりがなくなってしまうかもしれません。

このように、ペアローンの契約に際しては遺族保障がより重要になってきます。夫婦の一方が亡くなった場合、生活費や住宅ローンの返済に対する負担が残された方に過大にかからないように、夫婦それぞれの死亡や病気、けがなどで働けなくなるリスクに対して、適切な保障の生命保険を検討する必要があります。

住宅ローンを契約する金融機関によっては、『がん団信』と呼ばれる、保障対象のより広い団体信用生命保険が選択可能なケースもあります。ペアローンを組む金融機関を選ぶ場合は、金利プランだけでなく、団体信用生命保険の内容にも目を向けましょう。

途中で止めるのが難しい

ペアローンに限らず、住宅ローンの多くは、完済まで何十年もの時間をかけて返済を行うことが求められます。もし返済期間中にご家庭の状況が変化した場合でも、ペアローンは当初の計画の通り、毎月きちんと返済していく必要があります。ローン契約には法的な拘束力があり途中で止めることはできないのです。

一度契約を結んでしまうと、条件変更や借り換えが一般の住宅ローンより手のかかるペアローン。夫婦の働き方が変わり収入が減少する可能性や離婚・死別等すべての「もしも」に備えることは難しいことと思いますが、だからこそ、ローン契約の前に、ご夫婦の将来の変化に対応できるよう、ある程度状況変化を見越した返済計画を立てる必要があります。

最初からペアローンありきではなく、借入金額・頭金の再検討、双方の親からの住宅資金の贈与の可否、違う形態の住宅ローンを組んだ場合の返済シミュレーションも行うなど視野を広げて柔軟に検討していきましょう。

諸費用が二人分かかる

前述のとおり、ペアローンは金融機関と複数の住宅ローン契約を結びます。そのため、融資事務手数料や契約書に使う印紙代、(契約者負担が発生する場合)団体信用生命保険の保険料などの諸費用が、夫婦それぞれに発生します。

融資事務手数料が定率でかかる住宅ローンの場合、一人分か二人分かでイニシャルコストが大きく変わってきますので、資金計画を入念に確認することが大切です。

団体信用生命保険の効果が限定される

物件一つに住宅ローン契約が1本であれば、万一、契約者が死亡した場合は、団体信用生命保険によってその後の住宅ローン返済が一切なくなります。しかし、夫婦それぞれが団体信用生命保険に加入するペアローンでは、団体信用生命保険でカバーされるのは夫もしくは妻の住宅ローン残債分のみとなります。

仮に、夫婦で2,000万円ずつ(世帯合計4,000万円)借り入れてペアローンを結んだ後に夫が亡くなったとします。

これが借入額4,000万円の夫単独ローンであれば、団体信用生命保険の効果でその後の住宅ローン返済はなくなりますが、ペアローンの場合は妻が借り入れた住宅ローンの返済が残ります。妻は引き続き、自分が借り入れた分の住宅ローンを返済し続けなくてはいけません。

このように、ペアローンでは団体信用生命保険の効果が限定されるため、夫婦それぞれの遺族保障をしっかり設計する必要があります。

ペアローンに適する・適さない夫婦

ペアローンは共働き世帯向きと伝えましたが、具体的にどのような夫婦に向いているのでしょうか。

夫婦で安定的に収入を得ている

住宅ローンは、おおむね数十年単位の借り入れとなります。それだけの期間、安心して住宅ローンを返済していくことを考えるならば、やはり夫婦が正規雇用で安定した仕事に就いていることがペアローンの前提となるでしょう。

収入に差がある夫婦は「収入合算」か「単独契約」

夫婦の収入割合にも考慮が必要です。なぜなら、ペアローンの場合、借り入れにかかる諸費用が2倍になるからです。

世帯収入のほとんどを夫が占め、妻は扶養内でパート勤務というように、夫婦の収入に差がある場合、ペアローンのメリットは小さくなります。「収入合算」で夫を契約者として住宅ローンを組む、または、夫一人を住宅ローンの契約者とする「単独契約」がおすすめです。

ペアローンを組む際の注意点

ペアローンでは、どのような点に注意をしていけばよいのでしょうか。

「共働き」ができなくなってしまったら?

住宅ローン契約時点では夫婦ともに正社員であっても、返済中に夫または妻がフリーランスになったり、夫婦どちらかが退職(転職)したりして、収入状況が大きく変わる事態が起きないとは限りません。

夫婦どちらかの収入が大幅に減少しても、毎月の住宅ローン返済は「待ったなし」です。

ペアローンの場合は、こうした世帯収入の激変期を乗り越えるため、半年から1年分の生活資金を確保した上で契約を進めるなど、対抗策を準備しておきましょう。

単独では家の売却ができない?

ペアローンにより購入した土地・建物は、契約に応じた夫婦持ち分での共有名義となります。そして、共有名義の土地・建物を譲渡する場合は、共有者全員の同意が必要です。

住み続けるのに不都合はありませんが、夫もしくは妻の意向だけで不動産の処分を決められないことは覚えておきましょう。

離婚した場合はどうなる?

夫婦関係に起因するトラブルが起きるケースもあります。

たとえば、ペアローンで共有名義の家を手に入れたあとに協議離婚する場合、財産分与のために家の清算が必要です。

家を売却せず一方が住み続けるケースでは、出ていく側の名義持ち分を残る側に移すとともに、住宅ローン債務を整理・一本化する必要があります。

ですが、話がまとまらないまま別居する事態になれば、互いに住宅ローンを返済しつつ、別居した人は別居先の家賃も負担しなければなりません。

家に住み続ける側も、相手がきちんと住宅ローンを返済し続けてくれるかどうか、不安を強いられることになります。

さらに、住宅ローン債務の一本化も簡単ではありません。ペアローンに限らず、住宅ローンの契約者を変えるには金融機関の承諾が必要です。必ずしも思いどおりにならないことも考えられので、この点も注意が必要です。

この記事のポイント

ペアローンのメリットは?

借入可能額が大きくなる、住宅ローン控除の節税効果が大きくなる、返済方法・期間を夫婦でそれぞれ設定できるといったメリットがあります。

詳しくは「ペアローンのメリット」をご覧ください。

ペアローンのデメリットは?

夫婦どちらかの退職後に返済が難しくなる可能性がある、離婚後のローンの取扱いが難しい、片方が死亡すると負担が大きくなることがある、途中で止めるのが難しいなどのデメリットがあります。ペアローンを検討する際には、こうしたデメリットも把握しておきましょう。

詳しくは「ペアローンのデメリット」をご覧ください。

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