住宅購入 親からの支援
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住宅購入で親からの支援を受けたときの非課税措置は?各制度や注意点について解説

執筆者プロフィール

村田愛美
宅地建物取引士

上智大学外を卒業後、不動産調査会社在籍中に宅地建物取引士試験に合格。宅建士として事業用不動産の仲介営業職に従事し、退職後はレンタルオフィスの運営会社で入居者・契約管理をするかたわら、売買・賃貸・住宅ローンを中心とした不動産関連の専門性が高い記事を多数執筆。不動産初心者でもわかりやすい文章に定評がある。

ざっくり要約!

  • 住宅を購入する10人に1人が、親から住宅購入資金の援助を受けている。
  • 住宅購入を目的として親から受けた贈与にかかる贈与税は、基礎控除を含めて最大1,110万円までが非課税となり、相続時精算課税を利用した場合は最大2,500万円が非課税となる。
  • 親から住宅購入資金の支援を受ける場合、両親の双方から贈与を受けても贈与税の非課税枠は増えないこと、併用できない制度があること、相続時に揉める可能性があることに注意が必要。

人生で最も大きな買い物とも言える住宅の購入。早く購入したいと思う一方で、まとまった自己資金を用意できない、多額の住宅ローンを払い続けるのが不安などの理由で、親から支援を受けることを検討してる方も多いのではないでしょうか。

今回は、住宅購入時に親からの支援を受けた場合の、税金の優遇制度を中心に解説します。優遇制度のメリットを最大限得るためのポイントや、支援を受ける場合の注意点についても触れますので、最後までご覧ください。

住宅購入時に親から支援を受ける人は少なくない

本記事をご覧いただいている方の中には、親の支援を受けてマイホームを購入することに抵抗がある、という方もいることでしょう。しかし実際のところ、住宅購入時に親から支援を受ける人は少なくありません。

親から支援を受けた人の割合

2023年に実施された、一般社団法人不動産流通経営協会の調査によると、2022年に住宅を購入した人全体の約12.5%が、親からの贈与を受けています。

つまり10人に1~2人は、住宅資金の一部を親から支援してもらうことで、マイホームを購入しているという計算です。

支援額の平均

もうひとつ気になるのが親からの支援額です。

上記と同じ調査によると、 新築住宅購入者の場合、親からの支援額の平均は約916万円、既存住宅の場合で約734万円です。さらに、1,000万円を超える支援を受けた人の割合は全体の36.1%に上ります。

このデータからも、住宅購入時の親からの支援が、資金計画において重要な役割を担っていることがおわかりいただけるのではないでしょうか。

住宅購入で親からの支援を受けたときの非課税措置

住宅購入時に親から住宅資金の支援を受けるということは、「贈与」を受けることと同義です。

親からの贈与には「贈与税」という税金が課されますが、住宅購入時の贈与に関してはいくつかの優遇措置が用意されています。

住宅取得等資金にかかる贈与税の非課税措置

父母や祖父母といった直系尊属から、住宅の新築・取得・増改築のための資金を贈与された場合、一定額まで贈与税が非課税になる制度があります。

対象となるのは床面積50㎡以上の住宅で、省エネ等住宅の場合は1,000万円、一般の住宅の場合は500万円を上限に、贈与税が非課税になります。

省エネ等住宅というのは、断熱性や耐震性能など、一定の住宅性能を満たす住宅のことです。

この軽減措置は、2024年1月1日から2026年12月31日までに贈与を受けた分が適用対象となります。親から支援を受けて住宅を購入しようとしている方は注意しましょう。

暦年課税制度

贈与税には、暦年課税制度というものがあります。これは、1年間に受けた贈与の総額から税額を算出するという課税方式で、年間110万円までの贈与であれば贈与税は非課税となります。

暦年課税制度は、先述の住宅資金を贈与された場合の非課税措置と併用可能です。つまり、省エネ等住宅を購入する場合であれば、最大で1100万円までの贈与税が非課税になるということです。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は、父母や祖父母からの贈与を、2,500万円まで非課税で受け取ることができるというものです。

贈与者が亡くなった際に、贈与財産の贈与時の価額と、相続財産の価額を合計した金額から算出した税額を、相続税としてまとめて納めます。

通常の贈与税は、贈与が発生したタイミングで納税義務が課せられますが、この制度を利用することで、手持ち資金を減らさずに住宅を購入することが可能になります。

親から住宅購入資金を支援してもらうときの注意点

住宅購入資金 支援 注意点

上記で解説した税金の優遇制度は、親から住宅資金の支援を受けやすくすることで、住宅の新築や取得を後押しするものです。ただし親からの支援を受ける際には、下記3つの注意点も頭に入れておく必要があります。

父・母それぞれから贈与を受ける場合

住宅取得等資金にかかる贈与税の非課税措置の限度額は、”受贈者1人”を基準にした金額です。つまり、父と母、それぞれから贈与を受けたとしても、限度額が2倍になるわけではありません。

一方で、夫婦がそれぞれ自身の両親から住宅資金の援助を受ける場合は、夫婦それぞれの非課税措置の限度額が適用されます。妻と夫が自身の両親から1,000万円の支援を受けた場合、2人併せて2,000万円まで贈与税がかからないということです。

制度を併用する場合

贈与財産と相続財産を合計して相続税を計算する「相続時精算課税制度」と、1年間の贈与額に対して贈与税を計算する「暦年贈与」の基礎控除110万円は併用できません。

相続時精算課税を利用する場合、贈与が発生した初年度に届出書を提出する必要があります。この届出書は一度提出すると取り消しができず、暦年課税への変更もできないため注意が必要です。

ただし、2023年度の税制改正により、相続時精算課税制度にも年間110万円の基礎控除が創設されています。この基礎控除は、すでにある2,500万円分の控除とは別物として扱われるため、相続発生時に相続財産に加算しなくていいとされています。

どちらの制度を利用するかは、将来の贈与や相続に関する計画を総合的に考慮して検討しましょう。

相続時に揉める可能性がある

生前に親から一定の資金を贈与してもらった場合、相続時に兄弟姉妹間で揉めることがあるため注意しなければなりません。

例えば、兄弟のうち一方だけが親から住宅購入資金を支援してもらった場合、もう一方が「自分は支援を受けていないのだから、自分の方が多く相続するべきだ」と主張することは珍しくありません。

このような状況を避けるためには、生前に親が子どもたちとしっかりと話し合い、贈与の意図や相続に関する考えを明確にしておくことが重要です。また、遺言書の作成を検討することも一つの解決策となり得ます。

まとめ

住宅の購入は非常に多くの資金が必要な一大イベントであり、住宅購入資金を親から支援してもらうことは決して珍しいことではありません。

税金の優遇措置を活用することで、贈与税の負担を最小限にしながらマイホームを取得することが可能になります。

この記事のポイント

住宅購入時に親から資金援助を受けている人はどれくらいいるのですか?

2022年に住宅を購入した人のうち、約12%が親から支援を受けたと回答した調査結果があります。

詳しくは「住宅購入時に親から支援を受ける人は少なくない」をご覧ください。

住宅購入時に親から支援を受けた場合に適用される、税金の優遇制度はありますか?

「住宅取得等資金にかかる贈与税の非課税措置」や「相続時精算課税」などがあります。

詳しくは「住宅購入で親からの支援を受けたときの非課税措置」をご覧ください。

住宅購入時に親から支援を受ける際、注意すべきことはありますか?

相続時精算課税と暦年課税は併用できない、相続時に揉める可能性があるなど、注意すべき点がいくつかあります。

詳しくは「親から住宅購入資金を支援してもらうときの注意点」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

親から住宅購入の支援が受けられるかどうかは、できるだけ早く聞いておくようにしましょう。期待していた支援が受けられなかったり、購入直前に支援してもらえることがわかったりすると、資金計画から見直さなければならないことにもなりかねません。また、経済的な支援のみならず、共働き世帯が急増した近年では、親との近居によって生活を支えてもらう世帯も増えています。住まいの購入を検討している場合は、一度、親と話し合う機会を持つことをおすすめします。

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