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マンションの管理組合とは?理事長や役員、理事会や総会の役割を解説

執筆者プロフィール

亀梨奈美

株式会社realwave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ジャーナリストとして独立。
2020年には「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに、不動産を“伝える”ことに特化した株式会社realwaveを設立。
住宅専門全国紙の記者として活動しながら、不動産会社や銀行、出版社メディアへ多数寄稿。不動産ジャンル書籍の執筆協力なども行う。

ざっくり要約!

  • マンションの管理組合は区分所有法に基づき、すべての区分所有者で構成される
  • マンションストックが増え、高経年化が進む今、マンション管理の重要性は増している

マンションは複数の世帯が共同住宅のため、共用部分を適切に維持・管理するため管理組合が形成されます。管理組合は理事(役員)を選任し、理事の中から理事長が選任されます。理事と理事長で形成される組織を「理事会」といいます。理事会は組合員の代表として業務にあたりますが、マンションの維持・管理に関することを決めていくのは「総会」です。

本記事では、マンションの管理組合の概要とともに理事長や役員、理事会や総会の役割を解説します。

マンションの管理組合とは?

マンションの管理組合とは、すべての区分所有者で構成される組織です。区分所有者は、マンションの専有部分(=各住宅)を所有している人を指します。

区分所有法に基づき、管理組合は自動的に形成されます。つまり、分譲マンションを購入し、所有者になった時点で自動的に管理組合の組合員となります。投資用として購入し、自身は住まないとしても「所有者」であれば管理組合の一員です。賃貸借契約を締結した借主が組合員になることはありません。管理組合の組合員であることは、マンションの所有権を手放すときまで継続します。

管理組合の役割はマンションの維持・管理

区分所有法では、管理組合について次のように定められています。

第三条 区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。

上記のとおり、マンションの管理組合の目的は「建物とその敷地、附属施設の管理を行うこと」にあります。

管理組合と管理会社の違い

マンションの管理組合は、区分所有者全員が組合員となり、マンションの維持・管理をしていく団体です。一方で、マンションの管理組合に委託される「管理会社」は、マンション管理の高い専門性を持ち、管理組合とともにマンションの適切な維持・管理をサポートしていく企業です。

多くのマンションは、管理会社に業務の大部分を委託しています。しかし、管理会社に業務を委託したとしても、マンションを維持・管理していく当事者は管理組合であることに変わりありません。管理会社の役割は、あくまで管理組合のサポートに留まります。

管理組合と自治会の違い

自治会・町内会などの活動イメージ

(出典:総務省

管理組合と似た団体に「自治会」が挙げられます。しかし、両者は別物です。

自治会は、地方自治法に基づき、一定の区域に住む人たちで形成された団体です。自治会の目的は、地域コミュニティの充実を図り、防災や防犯、共助につなげていくことにあります。管理組合は、どちらかというと建物や設備などマンションのハード面の管理を重視する団体ですが、自治会は地域住人のつながりなどソフト面を重視する団体です。

ただ、大規模マンションなどでは、管理組合とは別に独自に自治会を形成しているケースも見られます。この場合は、管理組合と自治会が協力しながら、マンションのハード面・ソフト面の管理や充実を図っているようです。

管理組合の理事(役員)や理事長の役割

マンション管理組合の全体図

(出典:総務省

マンションの管理組合は、執行機関として「理事(役員)」を選出し、その中から「理事長」を選任します。理事と理事長で構成された組織が「理事会」です。マンションの共用部分の維持・管理に関することは「総会」で決定します。

理事(役員)の業務内容

理事の役割は、簡単にいえば管理組合員の代表者としてマンションの管理・維持に関わる業務にあたることです。国土交通省の定める「マンション標準管理規約」では、管理組合に次のような役員を置くこととしています。

  • 理事長
  • 副理事長
  • 会計担当理事
  • 理事
  • 監事

ただし、標準管理規約はあくまでマンションの管理に関するガイドラインですので、この通りに役員を配置する必要はありません。マンションの規模や方針によっては、防災担当や長期修繕計画担当などの理事を置くケースも見られます。

たとえば、会計担当理事は、管理費の収納や保管、運用、支出などの会計業務を行いますが、これも各々のマンションの管理規約によって定められるものであるため、一概にはいえません。

理事の中から選任された理事長は、区分所有法上の「管理者」となります。その役割は、管理規約や総会決議に基づき、管理事務を執行することにあります。

理事会と総会の違い

理事会は、理事と理事長で構成された組織である一方、総会はすべての組合員で構成されています。理事会はあくまで業務を遂行していくための組織であり、マンションの維持・管理に関する決定ができるわけではありません。総会で決められたことを、滞りなく進めていくための組織が理事会です。

総会の議長を務めるのは、原則的に理事長です。区分所有法では、理事長は少なくとも年1回以上、総会を招集しなければならないと定められています。総会は「通常総会」と「臨時総会」に分かれます。通常総会は定期的に開かれる総会、臨時総会は必要に応じて開かれる総会です。

いずれも、区分所有法に則り、会計や管理の方針を決める「普通決議」は、区分所有者の過半数および議決権の過半数の賛成で可決します。一方、次の8つの「特別決議」は、区分所有法により、特別多数の賛成により可決されます。

  1. 管理規約の設定・変更・廃止
  2. 管理組合法人の成立および解散
  3. 共用部分等の変更
  4. 大規模滅失における建物の復旧
  5. 建物の建替え
  6. 専有部分の使用禁止の請求
  7. 区分所有権の競売の請求
  8. 占有者に対する引渡し請求

上記の8種類のうち、「建物の建替え」を除く7種類については、特別決議を行なうための議決要件は「区分所有者数の4分の3以上」かつ「議決権の4分の3以上」の賛成です。ただし「共用部分等の変更」についてはこの議決要件を管理規約により「区分所有者数の過半数」かつ「議決権の4分の3以上」の賛成にまで緩和することができます。

また「建物の建替え」についての決議要件は「区分所有者数の5分の4以上」かつ「議決権の5分の4以上」の賛成が必要です。

管理組合のないマンションってあるの?

管理組合は、区分所有法に基づき、すべての区分所有者で構成されます。区分所有者がいないマンションを除き、管理組合のない区分マンションはありません。

オーナーがすべての区分を所有しているマンション

区分が分譲されているのではなく、オーナーが一棟すべての所有権を有しているマンションもあります。こうしたマンションは、オーナーにマンションの維持・管理の決定権があるため、管理組合はありません。

管理組合が機能していないマンションはある

管理組合があっても、うまく機能していないマンションはあるでしょう。標準管理規約などのガイドラインはあっても、必ずこれを遵守しなければならないわけではありません。とくに昨今では、マンションの高経年化と住人の高齢化の“2つの老い”により、管理不全に陥っているマンションは増加傾向にあります。

マンション管理の重要性

高経年マンションストックの増加(2021年現在)

※ 現在の築50年以上の分譲マンション戸数は、国土交通省が把握している築50年以上の公団・公社住宅の戸数を基に推計。
※ 5、10、20年後に築30、40、50年以上となる分譲マンション戸数は、建築着工統計及び国土交通省が把握している除却戸数等を基に推計した2021年末時点の分譲マンションストック戸数を基に推計。
(出典:国土交通省 今後のマンション政策のあり方に関する検討会 第1回 資料-3 マンションを取り巻く現状について

マンションストックが増え、高経年化が進む今、「マンションの適正な維持・管理」は喫緊の社会問題ともいえます。政府はこの課題に向き合い、近年、マンションの維持・管理に関する法改正を進めています。

2022年4月には「マンション管理計画認定制度」がスタートしました。同制度は、各自治体がマンションの管理計画を評価し、認定するものです。「マンションは管理を買え」とよくいわれていますが、これまではマンションの管理が資産価値に直結することはほとんどありませんでした。しかし、同制度の開始に加え、2021年にはマンションの長期修繕計画作成および修繕積立金のガイドラインが改訂され、基準となる修繕積立金の目安が大幅に引き上げられました。これらの動きにより、今後はマンションの管理が資産価値に大きく影響するようにもなっていくことでしょう。

適切に修繕・メンテナンスすることは、マンションの寿命にも大きく関わってきます。長く、安心・快適に住み続けるためにも、管理組合員は「自分ごと」と捉え、積極的にマンションの維持・管理に向き合っていかなければなりません。

また、マンションを購入するときには、立地や間取り、築年数などだけではなく、次のような点にも着目することをおすすめします。

  • 管理組合が機能しているか
  • これまで適切な時期に適切な内容の大規模修繕が実施されてきたか
  • 修繕計画が立てられているか
  • 修繕積立金は十分か
  • 区分所有者が徴収される管理費や修繕積立金は適正か
  • 共用部分の清掃状況はどうか

とくに管理組合が機能しているかどうかは、住宅ローン審査にも影響するものと考えられます。これらの点は、マンションの購入を仲介する不動産会社が調べたり、管理会社にヒアリングしてくれたりするものです。共用部分の様子は内見時にもチェックできます。区分所有スペース以外もしっかり見ておくようにしましょう。

まとめ

マンションの管理組合は、すべての区分所有者が構成員になります。総会によってマンションの維持・管理の方針を決め、理事や理事長で構成される理事会が業務を遂行していきます。この過程においては、マンションの管理会社のサポートを受けるのが一般的です。

マンションの管理は、すべての区分所有者の義務ともいえます。マンションの安全性や快適性、暮らしやすさを維持・向上し、資産価値を落とさないためにも、積極的に管理組合に参加することが求められます。また、購入を検討しているマンションがある場合には、必ず管理状況を確認しましょう。今後、ますますマンション管理の重要性は高まっていくものと考えられます。

この記事のポイント

マンションの管理組合はどんな組織?

マンションの管理組合とは、すべての区分所有者で構成される組織です。

詳しくは「マンションの管理組合とは?」をご覧ください。

管理組合の理事(役員)の役割は?

理事の役割は、簡単にいえば管理組合員の代表者としてマンションの管理・維持に関わる業務にあたることです。

詳しくは「管理組合の理事(役員)や理事長の役割」をご覧ください。

マンション管理の重要性は?

マンションストックが増え、高経年化が進む今、マンションの管理状況は資産価値に直結していくものと考えられます。長く、安心・快適に住み続けるためにも、適切な維持・管理が求められます。

詳しくは「マンション管理の重要性」をご覧ください。

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