マンション 築50年
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築50年のマンションはいつまで住める?建て替え費用や売れないときの対応策も解説

執筆者プロフィール

亀梨奈美

株式会社realwave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ジャーナリストとして独立。
2020年には「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに、不動産を“伝える”ことに特化した株式会社realwaveを設立。
住宅専門全国紙の記者として活動しながら、不動産会社や銀行、出版社メディアへ多数寄稿。不動産ジャンル書籍の執筆協力なども行う。

ざっくり要約!

  • 築50年以上のマンションは2021年末時点で20万戸以上。今後もどんどん増えていく
  • マンションの寿命は100年以上ともいわれているが、管理状態がよくない場合はこの限りではない
  • 築50年を超えるマンションは土地値で取引されることも少なくない

築後30、40、50年以上の分譲マンション戸数

(出典:国土交通省

築50年以上のマンションは、2021年末時点で20万戸以上存在しており、2026年末には60万戸以上、2031年には115万戸以上に増えると推測されています。築50年というと「古い」というイメージをお持ちの方も少なからずいらっしゃるでしょう。しかし、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造で建てられるマンションは、50年程度で住めなくなることはありません。ただし、安全、快適に住み続けるには、適切なメンテナンスや修繕が求められます。

本記事では、築50年のマンションの価値や購入するメリット、上手く売却する方法などを解説します。

築50年のマンションはいつまで住める?

マンションの寿命は、100年以上ともいわれています。とはいえ、どんなマンションであっても、適切に管理されていなければ長く住み続けることはできません。

マンションの寿命

鉄筋コンクリート造(RC)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC)の法定耐用年数は、47年です。しかし、この年数を過ぎたら住むことができなくなるというわけではありません。法定耐用年数とは、あくまで税務における固定資産の使用期間を指します。

コンクリートは、良好な条件であれば100年以上もつとされています。配管や建具、住宅設備を適切にメンテナンスすれば、RCやSRCで建てられるマンションには50年、100年……と住むことが可能だと考えられます。

「管理」の大切さ

50年や100年、マンションが住める状態を維持するには、適切な修繕やメンテナンスが求められます。修繕計画は、マンションの管理組合が立て、資金を調達し、実行するものです。管理組合がうまく機能しておらず、修繕計画やそれを実行するための積立金が不十分だと、適切な管理はできません。管理不全のマンションは、構造体が50年、100年もったとしても、一定の生活水準や安全性を維持するのが難しくなっていくものと推測されます。

築50年のマンションの資産価値

縦軸:新築時の価格に対する査定価格の割合(%) 横軸:経過年数(年)
(出典:国土交通省

築50年前後のマンションを売買するにあたり、その「資産価値」も気になるところなのではないでしょうか?
マンションは、基本的に経年によって価値を落としていくものです。あくまで目安ですが、築25年程度で新築の価値の半分に、築35年には3割程度にまで下落します。従って、築50年のマンションはほとんど土地のみの価値になっていることも少なくありません。

とはいえ、適切にマンションが管理され、適宜、居住スペースもリフォームされていれば、十分、住むことは可能です。

マンションが建て替え・取り壊しになったらどうなる?

マンション建て替えの実施状況(2022年4月1日現在)

(出典:国土交通省

築50年前後のマンションでは、建て替えや取り壊しの話が議題に上がることは少なくありません。とはいえ、国土交通省の調査によれば、2022年4月までに建て替えを実施したマンションは全国で165棟と決して多くなく、実施されるとは限りません。

建て替えや敷地売却の規制が緩和

2022年、老朽化したマンションの増加をうけ、マンションの建て替え等の円滑化に関する法律(マンション建替法)が改正されました。この改正によって大きく変わったのは、次の2つです。

マンション敷地売却制度の創設

従来までマンションの居住者全員の同意が必要だったマンションの敷地売却が、区分所有者集会における4/5以上の賛成で可能になりました。これにより、マンションの住人は、建て替えや売却後の転居といった選択肢が取りやすくなったと考えられます。

容積率の緩和

建て替え時に、これまでの規模を超える大きさのマンションにできるかどうかは、建て替え実施の可否を分けます。法改正により、一定要件を満たし、特定行政庁が許可したマンションは、容積率の緩和を受けられるようになりました。容積率とは、敷地面積に対する延べ床面積の割合を指します。容積率が緩和されれば現状より大きな建物を建築できるため、余剰区分は販売し、建て替え費用に充当することも可能です。

建て替えや敷地売却は前向きな選択でもある

築50年ほどのマンションを購入するにあたって、建て替えや取り壊し、敷地売却の不安があることと思いますが、中には、あえて建て替え前のマンションを取得して投資する方もいます。建て替えには資産価値を高める効果があり、敷地売却には自分の土地の持分だけ資金が入ってくるという利点があるからです。

マンションを建て替える際に取れる選択肢は、2つです。1つは、建て替え後のマンションに住む選択肢。もう1つは、所有権を譲渡して資金を得るという選択肢です。資産価値の高いマンションであれば、いずれにしても居住者のメリットとなるでしょう。

管理組合でよく話し合うことが大事

マンションの建て替えや取り壊しは、住人自身が決めることです。マンションを購入するということは管理組合の一任になることと同義ですので「取り壊しになったらどうしよう」「建て替えが心配……」と他人本意に考えるのではなく、マンションの資産価値や住みやすさを維持するにはどうするべきか、住人同士でよく話し合いましょう。

築50年のマンションを購入するメリット

築50年のマンションは、多少の劣化や古さが目立つのは致し方ありません。しかし、築古だからこその次のようなメリットもあります。

価格が安い

先のとおり、築50年前後のマンションは土地値で取引されることも少なくありません。まだまだ住むことができるマンションであれば、価格が安いという点は大きなメリットだといえるでしょう。

立地が良い傾向にある

ご存じのとおり、日本は土地が広い国ではありません。駅前や駅近、地方における幹線道路沿いなど好立地な土地から建築物が建って行った歴史を考えると、築年数が古いマンションの立地は総じて良い傾向にあるといえます。現に、昨今ではマンション用地が不足しており、新築マンションの建築数は減少傾向にあります。「先行者利益」である立地の良さを教授できるのは、築古のマンションならではです。

リフォームしやすい

築50年前後のマンションは安価であることから、リフォームやリノベーションに費用がかけやすいものです。リフォームやリノベーションによって設備や建具を一新し、新築のように生まれ変わらせることも可能です。また、この築年帯のマンションは、リフォーム済みのものも多く市場に出回っています。

築50年のマンションを購入する際の注意点

管理状態が良い 築50年以上のブランドマンション

築50年前後のマンションは、立地や管理状態の良し悪し、建て替えや取り壊しの予定の有無が資産価値に直結します。購入する前には、次のような点を必ず確認しましょう。

管理状態をチェック

築50年のマンションの見た目、住み心地、資産性を大きく左右するのは「管理」です。

  • 修繕計画
  • 修繕積立金
  • 管理費の滞納数
  • 総会や理事会の出席率

これらの数字が適正であるか、購入前に確認してください。とはいえ、どれ程が適正であるかの判断は難しいはずです。不動産会社の担当者であれば、これらの数字を見て、適正であるか判断できるため聞いてみましょう。

建て替えや取り壊しの計画を確認する

マンションの建て替えや取り壊しは、住人で話し合って決めていくものです。しかし、築50年前後のマンションは、購入時点ですでに建て替えや取り交わしが決まっていたり、議題に上がっていたりすることもあります。

建て替えや取り替えを前向きに捉えられるかどうかは、人それぞれです。中には、建て替え時の仮住まいへの転居が負担になる方もいらっしゃるでしょう。一方で、建て替え後の真新しいマンションに住みたいと考える方、あるいは資産価値の向上を見込んで築古物件を選ぶ方もいるのではないでしょうか。すでに建て替えや取り壊しの可能性があるマンションであるかどうかは購入前に把握できますので、購入の判断材料の1つとしましょう。

資産価値が維持できるか考える

築50年前後のマンションは、建て替えや取り壊しを視野に入れて購入を判断すべきでしょう。建て替えや取り壊しになったとしても、資産価値が維持できるかどうかは重要な判断基準です。資産価値が維持しやすいマンションの特徴は、次のとおりです。

  • 好立地
  • 管理体制が良い
  • ブランドマンション

築50年のマンションは賃貸に出すべき?売却すべき?

築50年前後のマンションをすでに所有している方は、所有したまま賃貸に出すべきか、売却すべきかお悩みなのではないでしょうか?賃貸に出したほうがいいマンションと売却したほうがいいマンションの特徴は異なるため、次の傾向を参考にしてみましょう。

売却すべきマンションの特徴

  • 資産価値の維持が難しいと考えられるマンション
  • 今後、住む予定のないマンション
  • 管理状態が良くないマンション

ご自身や家族が住む予定がなく、資産価値の維持に期待できないマンションは売却を視野に入れて検討してみましょう。賃貸に出すことで一時的に収入を得られたとしても、所有を続けることで今後ますます手放しづらくなることが想定されます。

賃貸に出すべきマンションの特徴

  • 好立地のマンション
  • ブランドマンション
  • 入居率が高く、管理状態も良いマンション

資産価値が維持、あるいは向上する見込みのあるマンションは、賃貸に出すことで賃料が得られるとともに、将来的に資産となる可能性があります。ただし、築50年と建て替えや取り壊しも視野に入ってくる築年帯であることから、その計画があるかどうかは、所有する見込みの期間を加味し、手放すか賃貸に出すか売却するかの重要な判断材料になります。

築50年のマンションが売れないときの対応策

築50年前後のマンションは、思ったような期間・金額で売ることができないかもしれません。ときには、売りたいのに売れない期間が続く可能性もあります。売れない場合は、次のような施策を検討してみましょう。

インスペクション

築古物件の購入を検討している人は、多かれ少なかれ、物件の状況を気にしています。

  • 雨漏りや水漏れのリスクはないか
  • 排水管の機能は正常か
  • 劣化の状況はどの程度か

これらは素人目には判断できませんが、専門機関であれば検査が可能です。第三者の専門機関が中古住宅を検査することを「インスペクション」といいます。インスペクションは、数万円から可能です。買主の安心のため、そして物件の価値を高めるため、実施を検討してみましょう。

ホームステージング

ホームステージングとは「住まいを演出する」という施策です。モデルルームのように住まいを着飾れば、購入検討者は実際の暮らしを想像しやすくなるため購入意欲を掻き立てられます。近年では技術が進み、バーチャル上でステージングすることもできるようになっています。空室はもちろん、居住中のお住まいも、家具や荷物を消し、Web上で思い通りの家具・家電を配置することも可能です。

不動産買取を検討する

築50年前後のマンションは、不動産買取業者が買主になることも少なくありません。不動産買取業者とは、購入した不動産をリフォームし、再販して利益を出すことを事業としている企業です。買取専門の事業者もあれば、仲介もしている不動産会社が直接買い取ってくれることもあります。

不動産買取のメリットは、仲介による売却と比較して早く売れることです。買取業者は仕入れとして不動産を購入するため、価格との折り合いさえつけば、数日から数週間で買取を決めてくれます。また、現状のまま売却できることも、不動産買取のメリットの1つです。買取業者はリフォーム前提で購入するため、設備や建具に劣化や損傷が見られても売主による修繕やリフォームは基本的に不要です。

まとめ

築50年前後のマンションの資産価値や売れやすさは、管理状態や立地によって大きく異なります。資産価値を維持できる見込みがあり、まだまだ安心して住めるマンションであればお買い得であり、所有を続けて損はないでしょう。判断に迷うときには、不動産会社にご相談ください。

この記事のポイント

築50年のマンションはいつまで住める?

マンションの寿命は100年以上ともいわれています。ただし、管理状態がよく、適切な修繕やメンテナンスがされていないマンションでなければ50年、100年……と住むことはできないと考えられます。

詳しくは「築50年のマンションはいつまで住める?」をご覧ください。

マンションが建て替えになったらどうすればいいの?

マンションが建て替えになった場合は、建て替え後のマンションに引き続き住むか所有権を譲渡するという二択です。

詳しくは「マンションが建て替え・取り壊しになったらどうなる?」をご覧ください。

築50年のマンションを購入するときはどんなことに気をつければいい?

管理状態・建て替えや取り壊しの計画の有無・資産価値の3つを確認しましょう。

詳しくは「築50年のマンションを購入する際の注意点」をご覧ください。

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