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借地権とは?後悔しないために知っておくべき注意点もわかりやすく解説

借地権とは土地を借りて、その土地に建物を建てて使用できる権利のことです。

借地権には、普通借地権や定期借地権などいくつか種類があり、それぞれ契約期間や条件が異なります。


本記事では、借地権の種類を説明したうえで、借地権付き建物を購入するメリットとデメリットを解説します。

後悔しないために知っておくべき注意点も説明するので、住宅購入を検討している方、借地権付きの物件が気になる方はぜひご覧ください。

借地権とは土地を借りて使用する権利

借地権とは、土地を借りて使用する権利のことです。土地を貸す側を地主、借りる側を借地人といいます。

一般的に、土地付きの建物(所有権付き建物)を購入すると、土地と建物の両方を無期限で所有することになります。

一方、借地権付き建物は、借地権が付いた土地と建物がセットで販売されているものです。建物は所有できるものの、土地に関しては一定期間のみ借りることになります。

そのため、借地権付き建物は通常の住宅を購入するよりも2~3割安いのが一般的です。

また、借地権付きの建物は好立地に建っていることが多いなど、魅力も数多くあります。

借地権は、古くからあった「旧法上の借地権」と、借地借家法で定められた「普通借地権」「定期借地権」に大きく分けられます。

借地権の種類により契約期間や条件が異なるので、最初にそれぞれの特徴を知っておきましょう。

なお、借地権には、建物の所有を目的としない「民法上の借地権」もありますが、ここでは建物の所有を目的とした借地権について解説しています。

旧法上の借地権

「旧法上の借地権」とは、借地借家法が施行された1992年8月1日より前に成立した、旧借地法に基づく借地権のことです。

旧法上の借地権では、鉄筋コンクリート造などの堅固建物と、木造などの非堅固建物とで借地権の存続期間が異なります。

建物の構造存続期間更新後の存続期間
鉄筋コンクリート造など30年以上(契約で定めがない場合は60年)30年以上(契約で定めがない場合は30年)
木造住宅など20年以上(契約で定めがない場合は30年)20年以上(契約で定めがない場合は30年)

土地の所有者は、正当な理由がないと契約の更新を拒絶できません。そのため、契約期間は決まっていますが、更新すれば半永久的に借りることができます。

借地借家法における普通借地権と比べると、借りる側の権利に重きが置かれており、借地人側に有利な法律です。

旧借地法に基づいて契約した借地権は、更新しても借地借家法が適用されず、旧法のままとなります。

普通借地権

普通借地権は、旧借地法が廃止され、1992年8月に新たに施行された法律「借地借家法」で定められている借地権です。

存続期間は、建物の構造にかかわらず30年以上と決められています。また、更新する際の存続期間は、1回目の更新が20年、それ以降は10年間です。

契約期間は決まっていますが、旧借地法に基づく借地権と同じく、更新することによって期限を延長して借りることが可能です。

期間満了後、更新したいのにされない場合、借地人は地主に対して建物を買い取ってもらうよう請求することが可能です。これを、建物買取請求権といいます。

定期借地権

定期借地権も、借地借家法による権利です。普通借地権とは異なり、更新がないのが定期借地権の特徴です。定期借地権は契約期間や条件により次の3種類に分かれています。

  • 一般定期借地権
  • 建物譲渡特約付借地権
  • 事業用定期借地

それぞれの定期借地権の特徴を以下で詳しくみていきましょう。

一般定期借地権

一般定期借地権とは、50年以上の期間にわたって土地を借りることができる権利です。

存続期間を50年以上とし、「更新をしない」、「建物の再築による期間の延長をしない」、「建物の買い取りの請求をしない」という3つの特約を公正証書などの書面で定めることが決められています。

そのため、定期借地権では、期間が満了すると土地を地主に返還することが確定しています。更新ができない分、期間が長めに設定されているのが特徴です。

また、建物の買い取りを請求できないため、建物を取り壊し、更地にして返す必要があります。

建物譲渡特約付借地権

建物譲渡特約付借地権とは、借地権の設定から30年以上経過したときに土地を地主に返還し、その土地にある建物を地主に時価で買い取ってもらう特約付きの権利です。そのため、期間満了時、土地を更地にする必要はありません。

契約期間が満了すると、建物の所有権は地主に移転します。所有権が地主に移転したあとは、借地権が消滅しますが、借家として継続して住むことも可能です。

なお、建物を地主に譲渡する旨の特約は、契約時点で定めておく必要があります。書面などで行う必要はなく、口頭でも可能ですが、トラブルを避けるためにも書面で定めるほうが良いとされています。

事業用定期借地権

事業用定期借地権とは、土地の利用が事業用に限定されて貸し出される権利です。そのため、居住用建物の所有には利用できません。

事業用定期借地権では、一般定期借地権と同様に、契約の更新や建物築造による期間の延長が行われず、建物買取請求権はありません。

借地借家法が施行された時点では、事業用定期借地権の契約期間は10年以上20年以下でしたが、法律が改正され、2008年1月1日以降は10年以上50年未満となりました。

借地権付き建物のメリット

借地権付き建物」とは、借地権が付いた土地と建物がセットで販売されている物件です。借地権付き建物を購入すると、土地は地主から借りたもの、建物は自分の所有のものになります。

借地権付き建物を購入する主なメリットは、以下のとおりです。

  • 土地にかかる税金の負担がない
  • 長期間借りることもできる
  • 所有権付き建物を購入するより安い傾向にある

土地にかかる税金の負担がないメリット

土地の所有権はあくまでも地主にあるため、土地に対する固定資産税、都市計画税がかかりません。

また、通常は土地や家屋を購入すると不動産取得税がかかります。しかし、土地に関しては購入するわけではないため、不動産取得税も納める必要がありません。

好立地にある物件は固定資産税などが高くなりがちですが、借地権付きの建物であれば建物に対する固定資産税、都市計画税だけを納税すれば良いため、税負担を抑えられます。

購入時や毎年の不動産関係の税金を抑えたい方には、借地権付きの建物は良い選択肢となるでしょう。

長期間借りることもできる

借地権付き建物を購入した場合、土地の所有権はありません。しかし、旧法上の借地権や普通借地権なら、期間が満了しても更新して引き続き借りられます。

所有者に正当な理由がなければ更新されるので、半永久的に借りることが可能です。

所有権付き建物を購入するより安い傾向にある

土地を一定期間借りるため、所有権付き建物を購入するよりも一般的に価格が安くなります。

そのため、所有権付き建物では買えないような立地の物件も、選択肢に入れられるでしょう。なお、借地権付き建物は、好立地な物件が多い傾向にあります。

借地権付き建物のデメリット

借地権付き建物を購入する際には、長期視点で見ると安くなるとは限らない、売却に制限があるなどの注意点も理解しておかないと、後悔する可能性があります。

借地権付き建物の主なデメリットは、以下のとおりです。

  • 地代を支払う必要がある
  • 住宅ローンの審査に通らない場合もある
  • 売却や増改築を自由に行えない
  • 残存年数が短くなると売却しにくくなる

地代を支払う必要がある

借地権付き建物では、土地に所有権がなく、あくまでも借りているため、地主に地代を支払う必要があります。

地代は将来的に値上がりする場合もあるので注意しましょう。

一般的に多いのは、固定資産税と都市計画税が高くなったことが理由で値上げされるケースです。

地代の目安は、固定資産税と都市計画税の合計額の3~5倍とされています。仮に、固定資産税と都市計画税が20万円だとすると、年間60~100万円程度の地代がかかる計算です。

立地や面積などさまざまな要因で決まるため実際の金額はさまざまですが、地代の負担は少ないとはいえないでしょう。

なお、地代の支払いに加えて、契約を更新する際には一般的に更新料がかかります。

住宅ローンの審査に通らない場合もある

借地権付きの物件は、通常の物件と比べて住宅ローンのハードルが高めです。融資を受けられた場合も、融資額が低くなる可能性があります。

なぜなら、通常は住宅ローンを組む際に抵当権を設定しますが、借地権付き建物の場合は土地自体に抵当権の設定ができず、担保の価値が低くなるためです。

貸付を行う金融機関からすると、借地人の地代滞納などで借地権を解除されるリスクもあるため、審査に慎重になるのも頷けるでしょう。

また、借地権付きの建物は、住宅ローンの対象としていない金融機関もいくつかあります。

ただし、借地権付き建物向けの住宅ローンを提供している金融機関もあります。場合によっては、完済時に借地権の残存期間が10年以上残っていなければならないなどの条件が設けられているため、残存期間によっては利用できません。

売却や増改築を自由にえない

売却や増改築を自由に行えないのも、借地権付き建物のデメリットです。

借地権には、「地上権」と「土地賃借権」の2つがあり、「地上権」であれば地主の承諾なく自由に売却できます。しかし、多くが「土地賃借権」であり、売却する際には地主の承諾が必要です。

また、売却が承諾されても、譲渡承諾料がかかる可能性があります。建替えや増改築も同様に承諾が必要であり、建替え承諾料、増改築承諾料がかかる場合もあるので、注意が必要です。

残存年数が短くなると売却しにくくなる

借地権の残存年数によっては、将来の売却が難しくなる可能性もあります。

定期借地権付き建物の場合、契約期間の満了が近づくほど一般的に購入者が見つかりにくくなります。

定期借地権は、期間の満了後建物を取り壊して返還しなければならないことが決まっているためです。定期借地権では、契約期間の経過とともに価値が下がる点に注意しましょう。

借地権付き建物を購入する際の注意点

借地権付き建物の購入を検討する際は、以下の点に注意する必要があります。

  • 契約内容をしっかり確認する
  • 購入費用だけでなく維持費も考慮する

契約内容をしっかり確認する

先述のとおり、借地権の種類により存続期間や期間満了後の取扱が異なります。例えば、定期借地権の場合は更新ができないため、期間が満了すると更地にして土地を地主に返さなければいけません。

借地権付き建物を購入した時点だけでなく、将来のことを考えるためにも、借地権の種類や契約期間、更新料、承諾料などをあらかじめよく確認しましょう。

購入費用だけでなく維持費も考慮する

借地権付き建物は、一般的な住宅と比べて購入費用が安い傾向にありますが、購入してからの維持費も考慮することが大切です。

一戸建ての借地権付き建物では、地代だけでなく更新料や承諾料、解体費用などまとまった資金がかかります。これらに充てる資金を計画的に積み立てておくことが必要です。

また、借地権付き建物にはマンションもあります。借地権付きマンションの場合は、一般的なマンションと同様に月々の管理費や修繕積立金がかかるのに加えて、地代や解体準備金も必要です。解体準備金とは、土地を更地にして返すためにかかる費用の積立金を指します。

上記のような費用がかかることも踏まえ、借地権付き建物の購入を検討しましょう。

借地権付きの住宅の購入に向いているのは?

借地権付きの建物は、次のような方に向いていると考えられます。

  • 好立地に割安で住みたい方
  • 一時的な住居として考えている方
  • 土地、物件の所有に重きを置かず、利用したいと考えている方

借地権付きの建物は、駅前や人気の住宅地などの好立地に建つことも少なくありません。土地に対する不動産取得税や固定資産税がかからないので、好立地に割安で住みたい方に適しているといえるでしょう。
また、土地を財産として遺すよりは、一時的に土地を利用して、住む場所を確保したいと考えている方にとっても、割安で購入できる借地権付きの建物は魅力的です。地主の許可は必要ですが、好みに合わせて建て替えることもできるので、借家より自由度の高い暮らし方ができるでしょう。

ライフプランにあわせて土地、住宅を選ぼう

借地権付き建物は、土地を借りて使用する権利と建物がセットになっているものです。土地は所有とならないため、購入費用を抑えられる傾向にあります。

土地を財産として遺したい方にはあまり適してはいませんが、一時的な生活場所として建物を探している方や土地の所有にこだわらない方には選択肢のひとつとなるでしょう。

また、借地権付きの建物を購入すると、土地に関しては不動産取得税がかかりません。固定資産税や都市計画税も建物部分にのみ発生するので、購入時だけでなく毎年の税金を抑えることもできます。

注意点も踏まえたうえで、借地権付き建物の購入を検討しましょう。

この記事の監修

安田 亮
資格情報: 公認会計士、税理士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士

神戸市中央区で「安田亮公認会計士・税理士事務所」を開業している公認会計士・税理士。
大手監査法人で約4年間、東証一部上場企業で6年間勤務した後に独立開業。
税理士として法人企業や個人事業主の方の決算・申告はもちろんのこと、大家業を営まれている方の不動産所得や譲渡所得の申告を数多くこなす。また、1級FP技能士の資格も保有しており、個人のお金・家計・税金分野についても強みを持つ。

この記事のポイント

借地権とはどんな権利?

借地権とは、土地を借りて使用できる権利のことです。

借地権付きの建物を購入する場合、建物は自分の所有となりますが、土地に関しては地主に地代を支払いながら借りることになります。

旧法上の借地権、普通借地権、定期借地権の3種類があり、それぞれ契約期間や条件が異なります。

詳しくは「借地権とは」をご確認ください。

借地権付き建物は売却できる?

土地賃借権の場合、売却をする際は、地主の承諾が必要です。

また、承諾をもらえても、残存年数が短い場合は売却が難しくなる可能性があります。

定期借地権では、期間が満了すると建物を取り壊して土地を返さなければならないため、残存年数が短くなるほど買い手が見つかりにくくなるのが一般的です。

詳しくは「借地権付き建物のデメリット」をご確認ください。

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