ざっくり要約!
- 円安により、日本の不動産は海外投資家の目からは割安に映る
- 円安の主な要因は日米の金利差。しかし、日本では利上げの機運が高まっており、米国では利下げ観測が高まっている
東京外国為替市場の円相場は2026年4月末、一時、1ドル=160円台にまで下落しました。コロナ禍以降、円安基調は長期化しており、日本経済や企業活動にも大きな影響を与えています。
不動産は近年、顕著に価格が上昇していますが、円安による相対的な割安感や輸入コストの上昇などによるインフレも大きな要因のひとつになっているものと考えられます。この記事では、円安の要因や影響、今後の不動産市場の見通しについて解説します。不動産の購入や投資を検討している方は参考にしてみてください。
記事サマリー
なぜここまで円安が進んでいるのか
近年の円安は一時的な要因だけでなく、金融政策や経済構造の変化が複合的に重なって進行しています。とくに2024年以降は、世界的なインフレと各国の金融引き締め、日本銀行の政策転換などが影響し、為替環境は大きく変化しました。まずは、円安が進む主な要因と、今後の見通しに影響を与えるポイントを整理します。
円安の要因
円安の最大の要因は、海外と日本の「金利差」です。米国や欧州ではインフレ抑制のために政策金利を引き上げてきた一方、日本は長らく低金利政策を維持してきました。この結果、より高い金利を求めて資金が海外へ流出し、円が売られやすい状況が続いています。
地政学リスクも為替相場に影響を与える要素です。ロシア・ウクライナ戦争の長期化、中東地域の緊張の高まりなどによって、エネルギー価格の上昇や市場の不安定化を招けば、円安圧力として作用しやすくなります。
加えて、エネルギーや資源の多くを輸入に依存する日本では、輸入額の増加が円売り圧力につながる構造があります。貿易収支の悪化も円安を後押しする要因のひとつです。さらに、近年は企業の海外投資の拡大や、家計の外貨投資の増加も見られ、構造的に円が売られやすい環境が続いています。こうした複数の要因が重なり、円安が長期化しているものと考えられます。
円安が不動産市場に与える影響の全体像
円安は単なる為替の問題にとどまらず、資金の流れやコスト構造、需要の変化を通じて、不動産市場全体に複合的な影響を及ぼします。
不動産価格の高騰
円安局面では、海外投資家にとって日本の不動産が割安に見えるため、海外からの資金流入が活発化しやすくなります。近年は、個人投資家のみならず、海外の不動産ファンドや機関投資家による大規模な資金流入も見られます。とくに都心部のマンションや商業不動産は投資対象としての人気が高く、需要の増加が価格上昇につながる傾向があります。
また、国内においてもインフレが進む中で「現金よりも実物資産を持ちたい」という動きが強まり、不動産への資金シフトが起こりやすくなります。こうした内外の需要増加が重なり、不動産価格の上昇圧力が高まります。

円安に加え、良好な融資環境やインフレなどを背景に、日本の不動産価格は長らく上昇基調にあります。国内需要の底堅さも相まって、需要が集中しやすい都心部では顕著に価格が上昇している状況です。
建築費の高騰

円安は建築費の上昇にも直結します。日本の建設業界は、木材や鉄鋼、設備機器など多くの資材を輸入に依存しており、円安が進むとこれらの調達コストが上昇します。上記のように、建築費はコロナ禍以降、顕著に上昇。2026年3月の集合住宅(RC造)の工事原価指数は、2015年比140%以上に達しています。
さらに、人手不足による人件費の上昇も重なり、新築物件の供給コストは大きく押し上げられています。その結果、新築マンションの販売価格が上昇し、それに引きずられる形で中古市場の価格も上昇するという連鎖が起こります。
インバウンド需要の拡大

円安は訪日外国人にとって日本での消費を割安にするため、観光需要の拡大を後押しします。これにより、ホテルや民泊、商業施設など観光関連不動産の需要が高まります。
2025年の年間訪日外客数は前年比15.8%増で、過去最高となりました。とくに都市部や観光地では、宿泊施設の稼働率や収益性が向上し、不動産投資の対象としての魅力が高まる傾向があります。こうしたインバウンド需要の回復・拡大は、商業不動産や宿泊系不動産の価格や賃料にも影響を与える重要な要素です。
円安時に不動産投資をするメリット
円安が不動産投資にもたらすメリットは、主に以下の4つです。円安は海外資金の流入やインフレの進行を通じて、不動産の価格や収益性にポジティブな影響を与えるケースがあります。
それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
価格のさらなる高騰
円安局面では、すでに不動産価格の上昇圧力が高まっている中で、さらに価格が上昇する余地が生まれます。とくに海外資金の流入やインフレによる資産シフトが継続する場合、需要が途切れにくく、価格の上昇トレンドが長期化する可能性があります。
こうした局面で早い段階から不動産を保有しておくことで、将来的な売却益(キャピタルゲイン)を得られる可能性が高まります。また、価格が上昇している市場では流動性も高まりやすく、売却時に買い手が見つかりやすいという点もメリットのひとつです。単に値上がりを狙いやすいだけでなく「売りやすさ」も含めて有利に働く環境といえるでしょう。
観光地・ホテル・民泊需要の拡大

円安によってインバウンドが増加すると、観光地に多くの人が訪れるようになり、ホテルや民泊の稼働率が高まります。これにより宿泊単価の上昇も見込まれ、収益性の向上につながる可能性があります。また、観光客の受け入れには人材も必要であることから、従業員やその家族の居住需要も高まります。
近年の公示地価変動率の上位には、白馬や野沢温泉、富良野など、外国人観光客に人気の観光地が多く見られます。さらに、浅草など訪日外国人に人気の都心部の商業地においても、インバウンド需要の回復を背景に地価の上昇が続いています。
このようにインバウンド需要が拡大する局面では、投資戦略の幅も広がります。たとえば、賃貸需要が限定的な戸建ても、民泊として活用することで収益化が見込める可能性があります。
・「公示地価」に関する記事はこちら
2026年公示地価、5年連続上昇でバブル後最大更新!需要は都心部に集中
インフレヘッジになる
円安が進む局面では、輸入物価の上昇を背景にインフレ圧力が高まり、現金の実質的な価値は目減りしやすくなります。その点、不動産は現物資産であるため、インフレ下でも価値を維持しやすく、条件次第では上昇も見込めるなど、資産防衛の手段として機能します。
また、インフレ局面では建築費の上昇により新築住宅の供給が抑制され、既存住宅の需要が高まる傾向があります。
家賃上昇にも期待できる
近年は、不動産価格だけでなく賃料も上昇傾向にあります。日本ではこれまで、慣習や借地借家法の影響から賃料は上がりにくいとされてきましたが、その状況に変化が見られます。
背景にあるのは、インフレの進行に加え、不動産価格や金利、管理コストの上昇です。オーナー側のコスト負担が増す中で賃料の見直しが進み、これまで抑制されてきた賃料水準は都心部を中心に顕著に上がっています。
さらに、不動産価格の上昇により賃貸物件の需要が相対的に高まり、賃料の下支え要因となります。円安はインフレ圧力や不動産価格の上昇を後押しするものであることから、賃料の上昇に期待できるという点もメリットのひとつといえるでしょう。
円安時に不動産投資をするデメリット・リスク
一方で、円安時の不動産投資には次のようなリスクが伴います。
リフォーム費用の高騰
円安は、リフォームや修繕コストの上昇要因となります。日本では、住宅設備や建材、その原材料の多くを輸入に頼っているため、円安が進むと仕入れ価格が上昇し、結果としてリフォーム費用も高くなります。
さらに、人手不足による人件費の上昇も重なり、修繕・改修コストは実際に、年々上昇傾向にあります。購入後のリフォームを前提とした投資や長期保有における修繕計画においては、想定以上のコスト増に注意が必要です。
・「リフォーム費用」に関する記事はこちら
マンションのリフォーム費用はどのくらい?注意点や補助金も紹介
リノベーション費用の相場とは?マンション・戸建てでどう変わる?
ローン金利の上昇
円安の進行による輸入物価の上昇は、私たちの暮らしを大きく圧迫しています。是正のため、政府はこれまで為替介入に踏み切る場面もありました。円安の背景にある日米の金利差も、米国の利下げ、日本の利上げによって縮小に向かう可能性があります。
金利が上昇すれば、住宅ローンや投資用ローンの返済負担は増加します。とくに変動金利で借り入れている場合は返済額が増加するリスクがあるため、資金計画には余裕を持たせておくことが大切です。
また、金利上昇は借入余力を低下させるため、購入できる物件価格の下落や需要の減速につながる可能性があります。投資においては、収支の悪化だけでなく、売却時の価格にも影響を及ぼす点に注意が必要です。
・「金利上昇」に関する記事はこちら
日銀が再びの利上げ!変動金利への影響と「未払利息」のリスク
フラット35がいよいよ2%台に。金利上昇局面の住宅ローンの選び方
為替リスク
円高が進行した場合、海外投資家にとって日本の不動産は相対的に割高となり、投資資金が流出する要因となり得ます。その結果、不動産価格に下押し圧力がかかる可能性もあるため、円安が続くことを前提とした投資判断には注意が必要です。
とくに、これまで海外資金の流入によって価格が押し上げられてきたエリアでは、為替環境の変化が需給バランスに影響を与えやすく、相場価格の変動が大きくなる可能性があります。
円安は不動産の買い時?売り時?投資タイプ別の判断
円安局面では不動産価格や賃料の上昇が見込まれる一方で、金利上昇や為替の反転といったリスクがあります。そのため、「一律に買い時・売り時」と判断するのではなく、投資対象ごとに適した戦略を見極めることが大切です。
区分マンション
区分マンションは流動性が高く、円安による価格上昇局面では売却益を狙いやすい物件種別です。とくに都心部の物件は海外マネーの流入や賃貸需要の底堅さから、価格が上昇しやすい傾向があります。
すでに保有している場合は売り時となるケースも多い一方で、これから購入する場合は高値づかみのリスクもあるため、立地や収益性を慎重に見極める必要があります。近年はマンションの管理費・修繕積立金も増額傾向にあるため、長期修繕計画や過去の修繕履歴、総会議事録などから管理実態を把握するようにしましょう。
・東急リバブルの区分マンション投資サービス「PROPERTISTA(プロパティスタ)」はこちら
・「管理費・修繕積立金」に関する記事はこちら
マンションの管理費の相場は?修繕積立金との違いや高い場合の理由も解説
修繕積立金ってどうして必要なの?相場や値上がりする理由も徹底解説
一棟マンション・アパート
一棟ものは基本的に賃料収入を重視する投資であり、賃料上昇局面では収益性の向上が期待できます。円安によるインフレ環境では、家賃の見直しや需要の底堅さがプラスに働く可能性があります。ただし、建築費や修繕費高騰の影響を受けやすく、初期投資や維持コストが増加する点には注意が必要です。
今が売り時かどうかは、収益性や状態によって判断がわかれます。空室率が低く、当面は大規模な修繕・メンテナンスの必要がない場合は保有し続けるメリットが大きいですが、価格が大きく上昇している局面では売却による利益確定も選択肢となります。一方で、収益性が落ちている物件や今後まとまった修繕費が見込まれる場合は、市況が良い今の時期に売却を検討するのも選択肢のひとつでしょう。
新規に物件を購入する場合は、利回りとコストのバランスに加え、将来的な修繕費や金利上昇リスクも織り込んだうえで判断することが求められます。
民泊・ゲストハウス
民泊やゲストハウスは、円安によるインバウンド需要の拡大の恩恵を直接受けやすい物件種別です。訪日外国人の増加により稼働率や収益性の向上が見込めるため、円安局面では買い時といえます。
一方で、観光需要に依存する側面が強く、景気や国際情勢の影響を受けやすい点はリスクとなります。また、法規制や条例の影響も大きいため、運用方法や転用の可否を確認しておきましょう。
REIT
REIT(不動産投資信託)は、不動産市場の動向を比較的ダイレクトに反映する金融商品です。円安によるインバウンド需要の回復や賃料上昇はプラス材料となる一方、金利上昇は価格の下押し要因となります。
REITは「為替」と「金利」の両方の影響を受けやすい点が特徴です。短期的な値動きは不安定になりやすいものの、分散投資やインカムゲインを重視する投資としては有効な選択肢といえるでしょう。
円安はいつまで?今後の日本経済・不動産市場の行方
円安の動向を考えるうえでも、日米の金利差は最も重要な指標です。米国では2022年以降、急速な利上げが行われたことで、日本との金利差は拡大しました。日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を解除して以降、段階的な利上げを進めていますが、依然として米国との金利差は大きい状態が続いています。
円高に振れることはあるのか
今後の為替動向は、以下のような要素に左右されると考えられます。
- 米国の利下げのタイミングとペース
- 日本の利上げのタイミングとペース
- 世界経済・国際情勢
米国の利下げ・日本の利上げによって日米の金利差が縮小すれば、円高方向に振れる可能性もあります。一方で、金利差が縮まらないようであれば、円安基調が継続するシナリオも十分に考えられます。
中東情勢などを考慮し、日銀は2026年4月の利上げを見送ったものの、依然としてその機運は高まっています。米国は2026年4月まで3会合連続で利下げを見送っていますが、日本とは対照的に今後の利下げ観測が高まっており、日米の金利差は縮小に向かう可能性があります。
金利上昇の影響
日本銀行はマイナス金利政策解除以降、3度の利上げを実施し、住宅ローン金利も上昇傾向にあります。全期間固定金利のフラット35の最低金利(買取型・返済期間21年以上35年以下・融資率9割以下・新機構団信付き)は2%を超え、変動型の平均金利も1%を超えました。不動産投資ローンの金利も上昇傾向にあります。
金利上昇は、買い手の購買力を下げます。不動産投資においてはキャッシュフローが悪化し、円安やインフレによる取得費・修繕費の上昇により、収支のバランスが崩れやすくなります。
・「住宅ローン金利」に関する記事はこちら
日銀が再びの利上げ!変動金利への影響と「未払利息」のリスク
フラット35がいよいよ2%台に。金利上昇局面の住宅ローンの選び方
2026年不動産市場の見通し
不動産投資においては支出が増える可能性が高い一方で、キャピタルゲイン・インカムゲインを狙いやすい市況にあることも事実です。
しかし、円高が進行した場合、海外投資家にとって日本の不動産はこれまでと比べて割高となり、これまで価格を押し上げてきた海外マネー流入の鈍化、あるいは流出に転じる可能性があります。その結果、とくに投資マネーが集中しているエリアでは、価格上昇の一服や調整局面に入ることも考えられます。
金利上昇によって需要が抑制される可能性もあります。とくに、地方や需要の弱いエリア、実需中心のエリアは影響を受けやすいでしょう。一方で、一定程度の金利上昇であれば、キャピタルゲインを狙う投資家や相続税対策を重視する富裕層などの投資判断に与える影響は限定的であることが推測されます。そのため金利上昇は、市場の「二極化」の要因となる可能性があります。
すでに価格や賃料のこれまでの上昇率にはエリア間で格差があり、今後はその差がさらに拡大していく可能性があります。こうした市況下では、単に「円安だから上がる」といった見方ではなく、インフレや金利上昇、取得後の支出なども踏まえた「持続可能性」という視点で投資判断をしていく重要性が一層高まります。
・「不動産市場」に関する記事はこちら
2026年の不動産市場はどうなる?利上げ・税制改正・転売規制の影響は
まとめ
円安は、海外投資家の資金流入や建築費高騰、インバウンド需要拡大など、複合的なルートを通じて不動産市場に影響を与えています。円安局面では、局所的にキャピタルゲインが狙いやすくなり、インバウンドの拡大による観光地の地価上昇、宿泊施設の需要増などが見込まれます。
一方で、建築費・リフォーム費の高騰、金利上昇による返済負担増などには注意が必要です。また今後は、金利上昇や為替動向次第で市場の二極化が進む可能性が高く、立地・収益性・持続可能性を重視した物件選定が一層重要になっていくでしょう。
この記事のポイント
- 円安が進むと不動産価格はどうなるの?
海外マネーの流入や建築費の高騰により、不動産価格は上昇しやすくなります。
詳しくは「円安が不動産市場に与える影響の全体像」をご覧ください。
- 円安時に不動産投資をするメリットは?
価格上昇によるキャピタルゲインや、インバウンド需要の拡大、インフレヘッジなどが挙げられます。
詳しくは「円安時に不動産投資をするメリット」をご覧ください。
- 円安局面では不動産は買い時?売り時?
投資タイプや投資の状況によって判断が異なります。
詳しくは「円安は不動産の買い時?売り時?投資タイプ別の判断」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
円安は不動産価格の上昇要因となる一方で、最終的に価格を決定づけるのは為替ではなく「需給」です。円安・インフレが続く現在の市況は、不動産投資にとって追い風に見える半面、金利上昇や建築費高騰など向かい風も同時に強まっています。短期的な相場観ではなく、収益性と持続可能性を軸に判断することが、投資の成否を分けるポイントとなります。

物件探しや売却がもっと便利に。
無料登録で最新物件情報をお届けいたします。
Myリバブルのサービス詳細はこちら

