介護疲れ
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介護に疲れを感じたらどうする?要因と症状に応じた対策を解説

執筆者プロフィール

藤川ゆきえ
FP技能士2級、相続診断士

相続・終活を専門に執筆するライター。実家の相続や遺品整理を経験したことにより終活の必要性を実感。お金や制度に関する情報を、高齢世代にもわかりやすく伝えることを信念に活動中。

ざっくり要約!

  • 在宅介護では同居する介護者が介護から離れる時間を持ちづらく、介護疲れを感じやすい
  • 介護疲れを放っておくと、介護うつや虐待などにつながる可能性があるので、介護者が介護から離れて休息をとることが大切
  • 介護疲れを感じたら、早めにケアマネジャーや地域包括支援センターに相談しよう

介護は、休みなく長期間続くので、介護者が疲れを感じることもあります。特に在宅介護では、夜間もトイレの付き添いやおむつ交換といった介護が続くため、身体面・精神面での疲れが取れない状態になるかもしれません。

介護疲れを放置すると、介護うつや要介護者への虐待などにつながる可能性があります。要因や症状に応じた対策を早めに立てることが重要です。そこで、介護疲れの要因と症状、それに対する解決策を解説します。

介護疲れの実態

介護疲れとは、要介護者を支える側が陥る疲弊感を表す言葉です。家族の介護は、突然始まりますが終わりが見えません。とくに長期的に在宅介護を担っている介護者は、体力的にも精神的にも疲れを感じることが多いでしょう。

要介護者等との続柄別主な介護者の構成割合

(出典:厚生労働省「令和元(2019)年 国民生活基礎調査概況」

2019年に厚生労働省が実施した「国民生活基礎調査」では、要介護者の主な介護者として最も多いのは同居の家族(54.4%)でした。しかも、同居の家族の介護をしている人の73.3%が、60歳以上です。高齢の要介護者を高齢の介護者で支える「老老介護」が多い実態が浮き彫りになっています。

介護疲れを引き起こす3つの要因

介護疲れを引き起こす要因は主に次の3つです。介護疲れの要因を知ると、誰にでも起こりうることだと理解できるでしょう。

1.身体的要因

身体的要因とは、介護によって体力的に疲弊することで起きる介護疲れです。日々の介護では、要介護者の身体を起こしたり移動させたりと、体力を使う場面が多々あります。介護者は要介護者の身体を何度も持ち上げたり支えたりするので、腰やひざなどに大きな負担がかかるでしょう。
また、睡眠不足による疲れも身体的要因の1つです。要介護者が寝付けなかったりトイレの介助が必要だったりすると、介護者は十分な睡眠をとることができません。慢性的な睡眠不足によって、介護者は身体的につらい状態になります。

2.精神的要因

精神的要因とは、常に介護をしなければならないというプレッシャーによる介護疲れです。介護者は日常的な介護のなかで、自分の趣味を楽しんだりリフレッシュしたりする時間を持てません。
また、家族が介護状態になっていることに関しても、ショックを受けることがあります。例えば、親や配偶者が認知症になった場合、元気だった頃の要介護者を知っている分、受け入れられない思いがあるでしょう。

3.経済的要因

経済的要因とは、介護のためにかかる費用が高額になることによって、介護する人が疲弊することを指します。介護サービスを受けるためには費用がかかります。しかも、家族の介護を担うために、介護者のなかには離職する人もいるでしょう。介護離職すると、貯蓄を切り崩しながら生活することになるかもしれません。
出費の増加と収入の減少による経済的な負担が大きくなると、余裕がなくなり疲れてしまいます。

介護疲れが引き起こす問題

介護疲れが引き起こす問題は、主に次の2つです。日々の介護疲れが積み重なった結果、悲しい事件が起きることもあります。

「介護うつ」になる

介護疲れを放置すると「介護うつ」になる可能性があります。介護うつとは、介護のストレスによってうつ状態になることです。介護うつになると、食事や睡眠がうまく取れなくなり、慢性的な体調不良になります。介護者が倒れてしまえば、要介護者のケアももちろんできません。介護うつによって共倒れ状態になる恐れもあります。

要介護者を攻撃してしまう

介護疲れが続くと、介護者は要介護者に優しく接する余裕がなくなるかもしれません。攻撃的になったり将来を悲観したりすることで、要介護者にストレスをぶつけてしまう人もいるでしょう。
さらに深刻な状態になると、要介護者への虐待や無理心中などの事件につながることもあります。

こんな症状が出たら要注意!介護うつとは?

介護疲れによって引き起こされる介護うつは、エスカレートすると身体的にも精神的にも介護者をむしばんでいきます。次のような症状が出ていたら、介護うつになりかかっている状態です。介護者の家族や身近な人が気付いて、介護疲れを軽減できるように考えましょう。

喜怒哀楽を感じない

介護のストレスが蓄積すると、今まで「楽しい」「嬉しい」と思っていたことにも心が動かなくなります。また、ささいな事柄にも怒りや不安を感じて、涙が止まらなくなったり怒りっぽくなったりすることもあるでしょう。自分への興味関心がなくなったり感情のコントロールができなくなったりするときは、介護うつになっている可能性があります。

眠れない

介護を担っていると、要介護者のケアで眠れないことも多いでしょう。介護うつになると、寝ようとしても寝られない状態が続きます。時間があっても眠れない場合には、介護うつを疑いましょう。

摂食障害

要介護者のケアを優先していると、介護者は自分の食事を後回しにしがちです。しかし、場合によっては食欲がわかなかったり、反対に過食になったりすることがあります。食が細くなったり食べすぎたりしてしまうときは、介護うつを発症しているかもしれません。

身体的・精神的要因による介護疲れ対策

身体的・精神的要因による介護疲れには、介護者が介護から一時離れて休息を取ることが大切です。介護者だけで抱え込まずに、次のような方法を検討してみるとよいでしょう。

高齢者支援サービスを利用する

要介護者向けの高齢者支援サービスを利用すると、介護者は介護から解放されて自分の時間を持つことができます。要介護者向けの高齢者支援サービスとして、おすすめしたいのが介護保険サービスです。

介護保険サービスを利用する際は介護保険の申請が必要ですが、1割の自己負担額で利用できます。要介護者の収入によっては、2割・3割負担になることもありますが、それでも全額自己負担になる介護保険外のサービスよりも費用を抑えられるでしょう。

在宅介護でおすすめしたい介護保険サービスは、以下の3つです。

訪問サービス

訪問サービスとは、要介護者がいる自宅に介護士や看護師が訪問してケアするものです。訪問介護・訪問看護・訪問リハビリテーション・訪問入浴介護などがあるので、必要なサービスを組み合わせて利用できます。

通所サービス(デイサービス・通所リハビリテーションなど)

通所サービスとは、要介護者が施設に通ってケアを受けるものです。デイサービスや通所リハビリテーションがあります。デイサービスでは、ほかの要介護者が集まってレクレーションをしたり一緒に食事を取ったりすることもあり、要介護者にとってよい刺激になるでしょう。

短期滞在サービス(ショートステイ)

短期滞在サービスとは、数日間施設に宿泊しながらケアを受けるものです。主な介護者が仕事や外出などで自宅を空けるときに、利用できます。数日間完全に介護から離れることができるので、介護者のリフレッシュに適したサービスといえるでしょう。

介護保険サービスを利用する際は、要介護者を担当しているケアマネジャーに相談しましょう。要介護度によって、利用できるサービスや時間は変わるので、ケアプランを組んでもらいます。

また、介護者の負担を減らすために、以下のような民間のサービスを利用するのもおすすめです。

  • 配食サービス
  • 家事援助サービス
  • 送迎・付き添いサービス

介護保険外の民間サービスは、すべて自己負担になります。介護保険サービスと組み合わせて利用することで、介護者の負担を軽減できるかもしれません。

介護施設の入居を検討する

在宅介護は、介護者である家族の負担が大きくなりがちです。とくに要介護度が高くなればなるほど、介護が必要な時間が多くなります。一般的に「要介護2」までは必要なときに手助けすれば、要介護者が自立して日常生活を送ることが可能です。一方、「要介護3」以上になると介護者が介護に費やす時間が増えて負担が重くなります。

特別養護老人ホームも、原則として要介護3以上の人が入居できます。終日介護が必要な状態になり、介護者の負担が重すぎるときは介護施設への入居を検討するとよいでしょう。

適切な窓口に相談する

介護の疲れを軽減するためには、適切な窓口に相談することが大切です。相談先としては、次の2つが主な相談窓口です。

ケアマネジャー

ケアマネジャーとは、要介護者の心身の状態や悩みに応じて、介護サービスを受けられるようにケアプランを作成する専門職です。介護認定を受けると、担当のケアマネジャーが決まります。介護に関する悩みがあれば、どのようなことでもまずはケアマネジャーに相談するとよいでしょう。必要に応じて、ケアプランを変更したり、利用する介護サービスの提案をしたりしてもらえます。

地域包括支援センター

地域包括支援センターとは、保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーなどが配置されている地域ケアの拠点です。介護だけでなく金銭的な面での不安など、高齢者の暮らしに関する総合的な相談窓口になっています。

介護疲れに関して相談する際は、担当ケアマネジャーのほうが状況をよく理解しているので、話が早いかもしれません。しかし、担当ケアマネジャーに話しにくいことなどがあったときは、地域包括支援センターに相談してみるとよいでしょう。

経済的要因による介護疲れ対策

介護生活が長期間にわたると、経済的な負担は大きくなります。介護者が介護離職した場合には、要介護者の年金に頼った生活になる可能性もあるでしょう。貯蓄を切り崩す生活を送っていると、金銭的な不安で疲弊してしまいます。経済的要因による介護疲れには、以下の3つの対策が有効です。

リースバック

リースバックとは、不動産の売買と賃貸借契約を同時に行う売却形態です。リースバックを利用すると、自宅を売却して資金を得ながら、売却した家を借りて住み続けられます。自宅の所有権は失いますが、住み慣れた家から引っ越すことなく生活を続けられます。
自宅を売却した際にまとまったお金を得られるので、経済的な不安が大きい人には魅力でしょう。ただし、住み続けるためには、賃料を払う必要があります。

リバースモーゲージ

リバースモーゲージとは、自宅を担保に金融機関からお金を借りられる融資制度です。金融機関や商品によって異なりますが、リバースモーゲージを利用できるのは原則として50歳以上のシニア世代。自宅に住み続けながら資金を借り、毎月借入金の利息だけを支払います。そして、契約者が亡くなったときに元金を一括返済します。元金の返済には、自宅を売却したお金を充てるのが一般的です。

自宅に住み続けながらお金を借りれるのがメリットですが、契約者が亡くなったあとは売却するので、自宅を子どもや孫に相続することができなくなります。

補助金・助成金を申請する

国や自治体が給付している補助金や助成金に申請すると、介護に関する金銭的な負担が軽減できます。主な補助金・助成金は、以下の通りです。補助金・助成金の有無や金額は自治体によって異なるので、事前にケアマネジャーや地域包括支援センターで確認してください。

家族介護慰労金

家族介護慰労金とは、市区町村から支給されるお金のことです。原則として、介護サービスを利用せずに要介護4以上の人を在宅介護している人に対して支給されます。1家族につき年間10万円程度の慰労金が支給されるのが一般的です。

自治体によって要件や支給金額が異なることもあります。この制度自体がない自治体もあるので、申請する前に確認しましょう。

居宅介護(介護予防)住宅改修費の支給

居宅介護(介護予防)住宅改修の支給とは、在宅介護をする際に住宅改修にかかった費用の一部が支給される制度です。介護に必要な住宅改修は、原則として1割負担で行えます。所得が多い人は、2割、もしくは3割負担となりますが、申請すれば20万円を限度にリフォーム代が戻ってきます。

申請先は市区町村役場の窓口です。申請する際は「住宅改修が必要な理由書」が必要なので、担当ケアマネジャーに作成してもらいましょう。

特定福祉用具購入費の支給

特定福祉用具購入費の支給とは、在宅介護に必要な特定福祉用具の購入費の一部が支給される制度です。特定福祉用具は原則1割負担で購入できます。所得が多い人は、2割、3割負担ですが、申請すれば10万円を限度に購入費が戻ってきます。

申請先は市区町村役場の窓口です。特定福祉用具購入費の支給は年間10万円が限度ですが、対象となる期間は毎年4月1日から翌年3月31日となっています。同じ種目の用具の再購入は、破損した場合と用途・機能が異なる場合のみ可能です。

まとめ

同居の家族が主な介護者となる在宅介護では、1日の大半を介護に費やす生活になることが多く、介護者は疲弊しがちです。疲れや不調を感じながら一人で抱え込んでしまうと、介護を続けられない状態まで追い詰められてしまいます。介護疲れを軽減するためには、介護サービスをうまく利用しながら介護から離れる時間を持ちましょう。そのためには、担当のケアマネジャーに相談して、介護者の負担を軽くできるようなケアプランを作成してもらいます。

介護から離れてリフレッシュすることは悪いことではありません。ショートステイや施設への入居を検討しながら、共倒れしないように乗り切っていきましょう。

この記事のポイント

介護疲れはなぜ起きる?

睡眠不足や要介護者を支えるときにかかる「身体的負担」、介護のプレッシャーからくる「精神的負担」、離職して収入がなくなったり介護費用が想定よりもかかったりすることが原因の「金銭的負担」という3つの要因で介護疲れは起きます。

詳しくは「介護疲れを引き起こす3つの要因」をご覧ください。

身体的・精神的要因で介護疲れを感じているときに有効な対策は?

とにかく、介護から離れて休息をとることが大切です。介護サービスや介護外のサービスを組み合わせて利用し、介護者を介護から解放する時間を設けましょう。

詳しくは「身体的・精神的要因による介護疲れ対策」をご覧ください。

経済的な不安があるときに有効な対策は?

自宅を売却したり担保にしたりするリースバックやリバースモーゲージで、資金を得るのがおすすめです。どちらも自宅を売却することになるので、事前に家族に相談して決めたほうがよいでしょう。

詳しくは「経済的要因による介護疲れ対策」をご覧ください。

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