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所有権保存登記とは?必要な理由や記録内容、申請手続きの流れを解説

自宅を新築すると所有権保存登記が必要となります。所有権保存登記は聞き慣れない方も多いのではないでしょうか。不動産にかかわる登記としては所有権移転登記のほうが有名です。

この所有権移転登記と所有権保存登記は、似ているようで異なる登記です。

簡単にいうと、不動産について初めに行う所有権に関する登記が所有権保存登記、その後に権利関係の変更が生じたときに行われる登記が所有権移転登記です。

そこで、所有権保存登記とは何か、保存登記をしないとどうなるかを説明します。あわせて、所有権保存登記の申請手続きの流れについても解説します。

所有権保存登記とは不動産において最初に行われる登記

不動産の所有権、その他の権利関係に関しては、不動産登記に記載されています。

不動産登記の記載内容は誰でも自由に閲覧することができます。このため、不動産登記に権利関係を記録しておけば、自分が不動産の所有者であることを第三者にも知らせることができます。

不動産登記のなかで、所有権や抵当権などといった不動産の権利関係に関する事項を記録する箇所を権利部といいます。

所有権保存登記は、この権利部の登記が存在しない不動産について、最初に行われる所有権の登記をいいます。

例えば、所有権保存登記は建物を新しく建てた場合に行われる手続きです。新たに建てた物件には、まだ所有権の登記はありません。このため、新たに不動産登記を作成する必要があるのです。

ちなみに、土地については、所有権保存登記がすでに存在していることがほとんどです。したがって、土地を売買する際に土地の所有権保存登記をする機会はほとんどありません。あるとすれば、土地を埋め立てて新たに土地ができたなど、極めてまれなケースに限られます。

なお、中古住宅や、所有権保存登記がある土地を買った場合に行う登記は、「所有権移転登記」となります。

所有権移転登記が行われるのは、所有権保存登記が行われた後に権利関係が変更となったときといえます。

所有権保存登記が必要な理由

所有権保存登記には、不動産の所有権をだれが有しているのかが記載されます。

そして、所有権保存登記があることによってはじめて、不動産の所有権を第三者に主張できます。

また、所有権保存登記は不動産について最初に行うべき登記です。

このため、不動産を売る際の所有権移転登記をするためには、最初に、所有権保存登記が正しい方法で行われている必要があります。

所有権保存登記をしないとどうなる?

建物を新築したときなどに所有権保存登記を行わないとどのような問題があるのでしょうか。

基本的には、所有権保存登記がされていないと住宅ローンを組んだり、物件を売ったりすることが困難になると言われています。

したがって、所有権保存登記をしないという選択肢は、通常はほとんどないといってよいでしょう。

住宅ローンを組めない

新築住宅の購入や建築のため住宅ローンを組む場合、土地だけでなく建物にも抵当権設定登記をすることが一般的です。

抵当権設定登記をする前提として、建物の所有権保存登記が必要となります。

つまり、まず所有権保存登記をしていないと抵当権が設定できないので、金融機関の住宅ローンを組めないのです。

このため、住宅ローンを組む場合には必ず所有権保存登記を行うことになります。

売買がスムーズに進まない

不動産の所有権については、登記をすることではじめて第三者に対して自分が所有者であることを主張できるという民法上のルールがあります。

例えば、不動産を購入した後に所有権移転登記をしないでいる間に売主が他の人にも不動産を売却する契約を交わした場合を考えてみましょう。

この場合に、後から不動産を購入する契約をした人が先に所有権移転登記を備えてしまうと、最初に契約した人は結果的に所有権を失うことになります。

これは、いわゆる「二重譲渡」と呼ばれる事例です。所有権を失うことになった買主は二重譲渡をした売主に損害賠償請求をすることはもちろん可能です。

ただし、不動産の所有権を取得することはできなくなるのです。

不動産の売買の際に所有権移転登記をしなくても罰則などはありません。

しかし、登記をしないと上で説明したように大きな不利益を被る可能性があるので、通常は不動産の引渡しと同時に所有権移転登記の申請を行います。

そして、この所有権移転登記をするためには、その前提として不動産の売主が、所有権保存登記を備えている必要があります。

所有権保存登記をしていない建物を売却する場合、買い手が決まってから所有権保存登記をすることも一応は可能です。

しかし、所有権保存登記がなければ、買い手からすると売主が本当にその不動産の所有権を有しているかがわかりません。

不動産の買い手が決まってから所有権保存登記をするとなると、所有権移転登記が円滑に進まない可能性や、買い手自体を見つけることが難しくなる可能性があります。

登記記録に記載される内容

登記記録には不動産の情報や権利関係がわかりやすく記載されています。

不動産登記は、上でも説明したとおり不動産に関する客観的な情報を記録する表題部と、不動産の権利関係を記録する権利部からなります。

表題部の登記を表題登記や表示登記、権利部の登記を権利登記などと呼ぶことがあります。

権利部は、さらに、所有権に関する情報が記録される甲区と、所有権以外の権利に関する情報が記録される乙区にわかれています。

不動産の情報

不動産登記の冒頭の「表題部」には、不動産そのものに関する情報として、所在や地番(家屋番号)、種類、構造、床面積などが記載されます。

不動産の所有権に関する情報

権利部の甲区には、所有権に関する事項として所有者の氏名及び住所に加えて、売買や相続などといった所有権の取得理由と日付が記載されます。

所有権保存登記をすると、甲区に所有者として記載されます。

不動産の所有権以外の権利に関する情報

権利部の乙区には、所有権以外の権利に関する情報が記載されます。

乙区の登記としてよくあるのが、住宅ローンなどを組んだときの抵当権設定登記です。抵当権設定登記が行われると、乙区には設定した抵当権の情報が乙区に記載されます。

具体的には、金銭消費貸借契約の締結日や債権額、利息、損害金、抵当権者である金融機関の名称及び住所などが記載されます。

借入額や債権者の名称まで登記されて誰でも閲覧できる状態になることは案外知られていません。

所有権保存登記にかかる費用

所有権保存登記にかかる費用として必ず必要となるのは、国に納める税金である登録免許税です。登録免許税の金額は、以下の計算式で算定されます。

所有権保存登記の登録免許税 = 不動産の価額 × 0.4%

例えば、不動産価額が3,000万円の場合、登録免許税は12万円となります。

また、所有権保存登記の申請手続きを司法書士に依頼する場合には、司法書士に支払う報酬も必要です。報酬額は司法書士によって異なりますが、おおよその相場は2〜6万円程度といわれています。

そのほか、所有権保存登記の申請に必要となる住民票、住宅用家屋証明書などの発行手数料が別途必要です。

所有権保存登記の申請方法

所有権保存登記は、自分で法務局に申請することも可能です。

ただし、登記申請には専門知識が必要になるため司法書士に依頼することが一般的です。

なお、完成した新築建物を購入するいわゆる一戸建て分譲の場合には、分譲会社が所有権保存登記を済ませていることが一般的です。

このため、一戸建て分譲住宅を購入する場合には購入者自身が所有権保存登記の申請をすることはあまりないでしょう。

必要書類

所有権保存登記の申請に必要な書類としては、以下のとおりです。

  • 住民票
  • 住宅用家屋証明書
  • 登記申請書
  • 司法書士への委任状

司法書士に手続きを依頼する場合には、司法書士の指示にしたがって必要書類を用意すれば足ります。

また、登記申請書は司法書士が作成してくれます。

登記申請の流れ

所有権保存登記の申請をしてから登記が完了するまでの日数は約1週間です。

ただし、時期によっては法務局が込み合っていて、予想よりも時間がかかる場合があるので、余裕をもったスケジュールで取り組むといいでしょう。

なお、所有権保存登記をする前に不動産の表題登記が必要です。表題登記は司法書士ではなく土地家屋調査士が行います。

所有権保存登記の申請手続きの流れを簡単に解説します。

必要書類を準備

所有権保存登記の申請をするときにはまず、上で説明した必要書類をすべて揃える必要があります。

特に登記申請書は間違いがあると申請を受理してもらえないことがあるので、スケジュールに余裕がない場合はとくに慎重に作成しなければなりません。不安があれば、司法書士に申請手続きを依頼したほうが安心です。

法務局に申請書を提出

必要書類がすべてそろったら、不動産の所在地を管轄する法務局に書類を提出します。管轄の法務局は、法務局のHPで調べることができます。

家を新築したら必ず所有権保存登記をする

所有権保存登記をするのは自宅を新築したときがほとんどです。

所有権保存登記がないと、不動産の所有権を第三者に主張できないなど不利益が大きいため、建物が完成したらすぐに所有権保存登記を行う必要があります。

また、所有権保存登記の前に表題登記を行うことも忘れないようにしましょう。

不動産登記は不動産取引において非常に重要な手続きなので漏れのないよう確実に進めていくことが大切です。

この記事の監修

松浦 絢子
資格情報: 弁護士、宅地建物取引士

松浦綜合法律事務所代表。
京都大学法学部、一橋大学法学研究科法務専攻卒業。東京弁護士会所属(登録番号49705)。宅地建物取引士の資格も有している。法律事務所や大手不動産会社、大手不動産投資顧問会社を経て独立。IT、不動産・建築、相続、金融取引など幅広い相談に対応している。さまざまなメディアにおいて多数の執筆実績がある。

この記事のポイント

所有権保存登記をしないとどうなる?

建物を新築したときなどに所有権保存登記を行わないと、抵当権が設定できないので、金融機関の住宅ローンを組むことが難しくなるといわれています。また、不動産を購入する際に、所有権移転登記をしていないと、売買がスムーズに進まないといった可能性も考えられますので、注意が必要です。

詳しくは「所有権保存登記をしないとどうなる?」をご確認ください。

所有権保存登記にはどのくらいの費用がかかりますか?

所有権保存登記には、登録免許税の支払いが必要で、不動産の価額 × 0.4%で算出されます。他にも住民票、住宅用家屋証明書などの発行手数料、申請手続きを司法書士に依頼する場合には、司法書士報酬も必要となります。

詳しくは「所有権保存登記にかかる費用」をご確認ください。

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