ざっくり要約!
- 木造マンションは脱炭素に貢献できることに加え、高い断熱・調湿効果、リラックス効果に期待できるなどのメリットがある
- 「木造マンション」と表記されている物件は、一定の耐久性・耐震性・耐火性を有している
マンションといえば鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨造(S造)が一般的ですが、近年は「木造マンション」と呼ばれる新しい形態の集合住宅が登場しています。木材ならではの温もりや快適性に加え、環境に配慮した点が注目されている一方、耐震性や遮音性に不安を感じる人も少なくありません。
そこでこの記事では、木造マンションの特徴やメリット・デメリットを整理してお伝えします。
記事サマリー
木造マンションとは?
木造マンションとは、柱や梁、床、屋根といった主要構造部に木材を用いて建築された集合住宅を指します。
不動産広告における木造マンションの定義
不動産広告などでは従来「木造の集合住宅=アパート」と表記されていましたが、2021年12月、不動産情報サイト事業者連絡協議会の理事が運営する不動産ポータルサイトでは、以下の要件を満たす木造の集合住宅を「マンション」と表記できるようになりました。
- 3階建て以上の共同住宅
- 住宅性能表示制度における劣化対策等級(構造躯体等)が等級3
- 住宅性能表示制度における耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)が等級3
- 住宅性能表示制度における耐火等級(延焼の恐れのある部分(開口部以外))が等級4、もしくは耐火構造
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ハイブリッド構造のマンションも
「オール木造」ではなく、木造とその他の構造を組み合わせたハイブリッド構造でマンションを建築することも可能です。たとえば、中低層階がRC造で、高層階のみ木造のマンションも見られます。
詳細は後述しますが、木造マンションは現状、鉄筋コンクリート造や鉄筋鉄骨コンクリート造のマンションと比べてコストが高く、工期も長い傾向にありますが、ハイブリッド構造とすることで、こうしたデメリットが一定程度カバーできます。
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木造マンションが登場した背景
木造マンションが登場した背景には、脱炭素実現への意識の高まりがあります。木造建築物は、炭素貯蔵効果に期待でき、二酸化炭素排出量も少ないことから、政府は近年、中大規模木造建築物の普及を推進しています。
国土交通省が、構造部材である木材を見せる「あらわし」による設計が可能となるような構造方法の導入や耐火性能基準の合理化などに取り組んでいることで、従来と比べて木造の中大規模建築物も建築しやすくなっています。
木造マンションの3つのメリット

木造マンションには、主に以下のような利点があります。
1.脱炭素に貢献できる
建築物における木材利用には、次のような意義があるとされています。
- 森林による二酸化炭素の吸収作用の保全と強化
- 二酸化炭素の排出の抑制等
- 山村その他の地域経済の活性化
引用:国土交通省「木材利用の意義」
持続可能な森林経営およびそこから生産される再生可能な資源である木材を建築物に利用していくことは、世界的に推進されている脱炭素の実現につながり、ひいては地球温暖化をはじめとする環境問題の防止にもつながります。
木造マンションを選び、居住することで、こうした取り組みに貢献できるというメリットがあります。
2.高い断熱・調湿効果
木材には、断熱効果や調湿効果が高いという特徴があります。
自然素材である木材には細かな凹凸があり、多くの空気を含んでいます。空気層は断熱効果が高いことから、木造建築物は断熱性能が高いとされています。また、湿度が高いときは湿気を吸収し、乾燥しているときは水分を放出します。
木材は、夏は高温多湿で冬は乾燥しやすい日本の風土にあった建材といえるでしょう。
3.リラックス効果にも期待できる
木材には、リラックス効果もあります。たとえば、檜の香りには、脳の働きを沈静化し、副交感神経の活動が亢進することで、心を落ち着かせる作用があることがわかっています。また、木の手触りや足触りによるリラックス効果やストレス軽減効果も実証されています。
他にも、子どもの集中力を高める効果や良い眠りを引き出す効果など、木材には暮らしにプラスになるさまざまな効果があることが報告されています。
木造マンションはうるさい?3つのデメリットと注意点
木造マンションにはさまざまなメリットがある一方で、耐火性や遮音性、耐久性については多くの方が気になるところなのではないでしょうか。ただ実際には、一定の基準や最新の建築技術によって性能が補われており、鉄筋コンクリート造と比べて大きく劣るわけではありません。
とはいえ、木造マンションはまだ歴史が浅く、技術面や供給体制が発展途上であるため、建築コストが高く、結果として賃料や分譲価格が割高になりやすい点は注意すべきデメリットといえるでしょう。
木材は耐火性・遮音性が低い
木材はコンクリートや鉄骨と比べて燃やしやすく、音も伝えやすい性質があります。ただ先のとおり、広告などで「マンション」と表記される木造の集合住宅は、住宅性能表示制度における耐火等級(延焼の恐れのある部分(開口部以外))が等級4、もしくは耐火構造です。木材自体の耐火性は低いですが、木造マンションは一定の耐火性能が担保されています。
一方、遮音性能については明確な基準がありませんが、木造マンションを開発・供給する事業者の多くは、遮音性の優れた床材を使用したり二重床を採用したりするなどして遮音性の低さを補っています。
RC造などと比べて耐久性・耐震性を高めることが難しい
「木造マンション」と表記できる集合住宅は、住宅性能表示制度における劣化対策等級(構造躯体等)が等級3、耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)が等級3であるため、RC造などの集合住宅と比べて耐久性や耐震性が劣るということはありません。
しかし、木材は乾燥・収縮する特性を持っており、適切な維持管理を行わなければ性能を長期間にわたり安定して保つことは難しい面もあります。また、鉄筋コンクリートに比べて重量や剛性が小さいため、大規模地震において変形が大きくなりやすい点は留意が必要です。
さらに、長寿命化を図るためには、防蟻処理や耐久性の高い木材加工の採用、定期的な点検や修繕計画の徹底などが求められます。
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賃料・価格が高い傾向にある
高い耐火性・耐震性・耐久性を有する木造マンションですが、木造で中高層建築物を建築する技術やノウハウはまだ歴史が浅く、施工できる事業者が限られているのが現状です。そのため工期が長く、工事費用が割高になりやすいことから、結果的に分譲価格や賃料が高めに設定されることも少なくありません。
ただ近年は官民一丸となって大中規模建築物の木造化、木質化を進めているため、今後、木造マンションの建築技術が進展し、施工数も増えていけば価格が安定していく可能性もあります。
まとめ
木造マンションは、環境性能や快適性の面で優れた選択肢となる一方、まだ普及段階にあるため価格や供給数の面で課題があります。とはいえ、世界的に進む脱炭素の潮流や木材利用技術の進化を背景に、今後はより身近な住まいの選択肢として広がっていく可能性があります。
とくに、都市部における木造高層建築の事例は増えつつあり「マンションといえば木造」がスタンダードとなる未来が訪れるかもしれません。
この記事のポイント
- 木造マンションとはどんなマンションですか?
木造マンションとは、柱や梁、床、屋根といった主要構造部に木材を用いて建築された集合住宅を指します。
詳しくは「木造マンションとは?」をご覧ください。
- 木造マンションのメリットは?
木造マンションには、主に3つのメリットがあります。
詳しくは「木造マンションの3つのメリット」をご覧ください。
- 木造マンションのデメリットは?
木造マンションにはさまざまなメリットがある一方で、耐火性や遮音性、耐久性については多くの方が気になるところなのではないでしょうか。
詳しくは「木造マンションはうるさい?3つのデメリットと注意点」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
脱炭素の実現への高まり、そしてそれに伴う法改正が後押しし、木造マンションが普及し始めています。「脱炭素に貢献できる」というのは所有者や居住者にとって直接的なメリットにはならないように思えるかもしれません。しかし、社会全体が環境価値を評価する方向に進む中で、こうした取り組みは「資産性」にも結びついていく可能性があります。

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