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家の査定はAIでできる?おすすめの査定方法を紹介

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • 家の査定には匿名査定(AI査定)、簡易査定(机上査定)、訪問査定があり、それぞれ特徴が異なる
  • 家の売却を本格的に考えているなら訪問査定を依頼することが適切である

不動産を売却するには、まず「いくらで売るか」を決める必要があります。
売値が安過ぎれば損をしますし、高過ぎればなかなか売れない結果につながります。
売却の成否を決める要素として、売り出し価格がとても重要です。

適切な売り出し価格を決めるために、不動産の売却では最初に不動産会社に無料査定を依頼します。
査定価格は適切な価格であるほど、損をせず確実に売れる価格の参考とすることができます。
家の査定方法には、どのようなものがあるのでしょうか。
この記事では「家の査定」について解説します。

家の査定の種類3つ

家の査定の種類について解説します。

匿名査定(AI査定)

近年、不動産会社のホームページ上ではAIを使った査定システムが登場してきました。
無料で使えるシステムであり、利用時に名前や電話番号といった個人情報を入力する必要はないことから、匿名査定とも呼ばれています(ただし、メールアドレス程度は入力することが多いです)。

AI査定は、そのほとんどがマンション専用となっています。
一部に戸建ても査定できるものもありますが、戸建ては実際の価格とはかけ離れてしまっていることがほとんどであるのが現状です。

マンションも、AI査定はシステムによって査定結果にかなり開きがあります。
一部に非常に高い価格精度のあるシステムもありますが、その他の多くのAI査定は高めに査定されることが多い印象です。

AI査定は不動産会社の広告的な位置づけ要素もあり、そこで興味をもってもらい本格的な査定につなげるという企業側の意図もあります。
入口のAI査定で高めの金額が出れば気分も良く、次のステップへ進みやすいことから、高めの金額で出てくるケースが多いのかもしれません。

AI査定のメリットは、査定結果を瞬時に知ることができるという点です。
利用しても営業電話もかかってこないことから、まだ売る気持ちが固まっていなくても気軽に利用できます。

一方でデメリットは、システムによっては価格の精度が低い点です。
査定結果が幅で表示されるシステムも多く、一体いくらなのかわかりにくいという特徴もあります。
また、戸建てに関しては現段階ではAI査定の信頼性が低いという点もデメリットです。

簡易査定(机上査定)

簡易査定とは、不動産会社の営業担当者が簡易に行う査定のことです。
物件を見ずに机上で行うことから、机上査定とも呼ばれています。

簡易査定は、インターネットからでも依頼できますが、人が査定作業を行っている点が匿名査定(AI査定)とは異なる点です。

簡易査定では、不動産会社が売主以外から入手できる資料(例えば住宅地図や過去の取引事例等)を用いて査定します。

現地を見なければわからない部分以外の点は、価格に反映できるため、匿名査定よりは価格精度は高いです。
また、簡易査定であれば戸建てもそれなりに精度の高い査定結果が期待できます。

簡易査定の結果は、1日程度で知ることができる場合が多いです。

簡易査定のメリットは、AI査定よりも信頼性の高い査定結果が得られるという点です。
特に戸建てに関しては、簡易査定から利用した方が良いといえます。

一方で、デメリットは訪問査定に比べると価格精度が低いという点です。
簡易査定は、AI査定よりも精度は高いものの、訪問査定よりは精度が低いため、若干、中途半端な印象があります。

簡易査定は有用性も見出しにくい側面もあることから、売却することがすでに決まっているのであれば、最初から訪問査定を依頼しても構いません。

訪問査定

訪問査定とは、実際に不動産会社の営業担当者が物件を見て行う査定のことです。
日照や眺望、通風、騒音、振動、臭気、管理の状態、リフォームの有無等、実際に見ないとわからない部分を価格に反映できるため、価格の精度は最も高くなります。

売り出し価格は適切な価格を設定する必要があることから、売却する前は最も価格の精度が高い訪問査定が必須です。
訪問査定の結果は、翌日から1週間程度で提示されます。

訪問査定のメリットは、価格精度が最も高いという点です。
訪問査定では、例えば住宅性能評価書等の建物価値を客観的に証明できる資料があれば、それも価格に反映することができます。
売主が保有している資料に基づき、「良い建物は良い」と適切に評価できる点も訪問査定の特徴です。

また、売却に関する相談もできる点も、訪問査定の大きなメリットとなります。
特に、古い家を売る場合には、まずは現状のまま査定を依頼することをおすすめします。
古い家は、取り壊すべきか、リフォームすべきか、そのまま売れるか、迷うところです。
判断に迷う物件は、一度訪問査定を依頼し、不動産会社の意見を聞いてから対処法を決めることが望ましいです。

さらに、訪問査定では売主の希望に沿って査定結果を調整できる点もメリットです。
例えば、「1ヶ月以内に売りたい」「時間をかけてもいいのでめいっぱい高い価格でチャレンジしたい」といった希望にも対応できます。

一方で、訪問査定のデメリットは、多くの不動産会社に査定を依頼すると断りにくくなるという点です。
訪問査定の結果は、あくまでも売却予想価格であり、売却を保証する価格ではありません。
予想価格を多く比較しても、あまり意味はないといえます。
後で断る手間を考えれば、多くても2~3社程度依頼すれば十分です。
査定を依頼する前は、不動産会社のサービス内容をしっかり調べた上で、数社に絞って依頼することをおすすめします。

状況別・おすすめの家の査定方法

状況に合わせたおすすめの家の査定方法について解説します。

参考程度に家の価格が知りたい

参考程度に家の価格を知りたいのであれば、マンションなら匿名査定(AI査定)でも良いでしょう。
戸建ての場合、AI査定は参考にすらならない場合もあるため、簡易査定(机上査定)がおすすめです。

家の売却を本格的に考えている

家の売却を本格的に考えているなら、マンションも戸建ても訪問査定を依頼することが適切です。
訪問査定は売却に関するさまざまな相談ができるため、実績が豊富でサービス内容も充実している不動産会社に依頼することが望ましいといえます。

家の査定前に必要な確認事項

家の査定前に必要な確認事項を解説します。

家の相場の確認

自分でもある程度相場を調べておくと、査定結果に対して低過ぎる、または高過ぎるといった判断をすることができます。

家の相場に関しては「レインズマーケットインフォメーション」または「土地総合情報システム」にて無料で調べることができます。
マンションの場合は、匿名査定(AI査定)を使って相場を把握するのも一つの方法です。

住宅ローン残高の確認

住宅ローンが残っている物件を売却する人は、最新の返済予定表等を用いて住宅ローン残高も確認しておきます。

住宅ローン残債のある物件を売るときは、売却代金で住宅ローン残債を一括返済することが一般的です。
そのため、査定結果は原則として住宅ローンを上回っている必要があります。

必要書類の確認

不動産の売却では、最後の引渡時にはさまざまな書類が必要となりますが、とりあえず査定時には以下の書類があることが望ましいです。

【査定時に用意しておいた方が良い資料】

物件種別書類目的
共通※ 登記識別情報通知書または登記済証 売主の本人確認のため
マンション 間取りのわかる図面(分譲時のパンフレット等) 広告用の間取り図作成のため
戸建て 確定測量図 すぐに売却できるかを確認するため
建築確認申請書、建築確認済証、検査済証 重説に書類の有無を記載するため
間取りのわかる図面 広告用の間取り図作成のため

※共通:マンションと戸建ての両方

また、以下のような建物の価値を客観的に証明できる書類を有していれば、用意しておきます。
これらの書類は、査定価格をアップさせる根拠資料となります。

【あれば提示した方が良い資料】

  • リフォームの内容がわかる資料
  • 建設住宅性能評価書
  • 建物状況調査(インスペクション)の報告書
  • 既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書
  • 耐震基準に適合していることが確認できる資料(耐震診断結果報告書等)

修繕履歴の確認

リフォーム等を行っていれば、「実施時期」と「実施した内容」をまとめておきます。
また、マンションであれば、直近3~5年以内に行われた大規模修繕もまとめておくと望ましいです。

土地の境界と利用履歴の確認

戸建てを売却する場合には、確定測量図を買主へ引き渡すことが売買契約書で条件とされることが一般的となっています。
確定測量図とは、すべての境界が確定しているときに発行される実測図のことです。
確定測量図が手元にない場合には、測量会社に依頼します。

また、土壌汚染や地中障害物の有無の可能性についてもヒアリングされることがあります。
売主の知っている限りで構わないので、過去の利用履歴(例えば、以前は雑木林だったと祖先から聞いている等)を確認しておくことが望ましいです。

家の査定にまつわるQ&A

家の査定にまつわるQ&Aを紹介します。

家の査定は無料?有料?

不動産会社に依頼する査定は無料です。
一方で、不動産鑑定士事務所に依頼する査定は有料となります。
不動産鑑定士とは、不動産の適正価格を評価する国家資格者のことです。

不動産会社に依頼する無料査定は、あくまでも売却を前提としたときに利用できるものとなります。

ただし、不動産の場合、売却を前提としなくても単に資産価値だけ知りたいというケースがあります。
例えば、離婚の財産分与や相続の遺産分割等で売却はしないけれども財産を分けるために価格だけ知りたいといった場合です。

売却を前提としない場合には、不動産会社の無料査定は利用できませんので、不動産鑑定士に鑑定評価を依頼することになります。

家の査定で気をつけるポイントは?

家の査定は、念のため複数社に依頼した方が良いといえます。
査定結果は売却を保証する価格ではないため、いたずらに高値を追及してもあまり意味はないものの、他社の意見も聞いておいた方が良いでしょう。
理由としては、複数社の査定結果を比較することで、安過ぎないまたは高過ぎないといった価格の妥当性が見えてくるからです。

ただし、あまり多く依頼すると、後で断る作業自体も手間になります。
不動産会社のサービス内容を調べた上で、2~3社に依頼すれば十分です。

この記事のポイント

家の査定にはどんな種類がありますか?

匿名査定(AI査定)、簡易査定(机上査定)、訪問査定があります。

それぞれ精度や手軽さなどが異なるので、自分の目的に合った査定方法を選ぶことが大切です。

詳しくは「家の査定の種類3つ」をご覧ください。

家の査定で気をつけるポイントは?

家の査定では、複数社に依頼して査定結果を比較することで、安過ぎないまたは高過ぎないといった価格の妥当性をチェックすることがポイントです。

不動産会社のサービス内容を調べた上で、2~3社に依頼するようにしましょう。

詳しくは「家の査定にまつわるQ&A」をご覧ください。

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